阿蘇の秋は、一年で最も華やぐ季節。
黄金色のススキが風に揺れ、山肌は紅や橙に染まります。
その大自然を満喫しながら歩くと、今だけの特別なバッジと手ぬぐいがもらえることを知っていますか?今回は、日帰りで山やグルメを楽しみつつ、3つのバッジと手ぬぐいがもらえるルートをご紹介。
さらに時間に余裕があれば、温泉に宿泊して翌日もう1座に挑戦し、阿蘇の踏破バッジを狙うのもおすすめです。
2025.10.15
上川 菜摘
エディター
「阿蘇の手ぬぐい、かわいいよね」。そんな何気ない会話から、今回の旅がはじまりました。
YAMAPを開き、ランドマークを3ヶ所以上巡ってゲットできるのは、世界的にも希少な花・ヒゴタイをあしらった限定デザインの手ぬぐい。
とある秋晴れの日、友人を誘って「1日で3スポットをめぐる欲張りプラン」を決行してきました。
ヒゴタイが描かれた限定手ぬぐい
朝6時過ぎ。あたりがまだ薄暗いなか、草千里駐車場に到着しました。
九州には「朝駆け(あさがけ)」という登山文化があります。夜明け前に登りはじめ、山頂や山腹でご来光を迎えるという、ぜいたくな登り方です。
夜明け前の草千里ヶ浜
今回は日帰りのため、最初の山・杵島岳(きしまだけ)を“朝駆け”することにしました。
杵島岳の標高は1,327m。登山口のある草千里駐車場がすでに約1,100m地点にあるため、山頂までは片道わずか40分ほどで辿り着けます。登山道もよく整備されていて、初心者にもやさしいコースです。
まだ人がいない早朝に出発
歩きはじめると、あたり一面にススキが広がりました。草原を抜ける風はひんやりと冷たく、頬をかすめるたびに秋の訪れを感じます。
やがて朝日が地平線から顔を出し、ススキの穂が金色に輝きはじめました。昼間は観光地として賑わうのに、この時間は自分たち以外、誰もいません。
朝日が出て、一面が金色に輝く瞬間
ここで、本日一つめの「草千里バッジ」を獲得!
杵島岳は山頂部がぐるりと火口跡になっており、その外輪を周回できます。距離は約1.5km、ゆっくり歩いても30〜40分ほど。コース全体が360度開いていて、歩くたびに景色が変わるのが魅力です。
阿蘇の美しい風景を象徴する「米塚」
ふと足元に目をやると、道脇にノアザミがひっそりと咲いていました。この美しい草原は、自然の力だけで維持されているわけではありません。阿蘇の草原は、毎年春に「野焼き」をして真っ黒になり、人の手によって保全されています。一度焼かれたことで草花が若返り、アザミやリンドウのような野花も毎年美しく咲き続けているのです。
阿蘇やくじゅうでよく見かけるノアザミ
時計を見るとまだ7時40分。阿蘇の朝は始まったばかりです。次の目的地・烏帽子岳(えぼしだけ)へ、その足で向かうことにしました。
★杵島岳のランドマーク情報はこちら
駐車場に戻ってトイレ休憩をとり、すぐに出発。駐車場の前の道路を渡ればすぐに草千里ヶ浜です。
朝の光に照らされた草原の中を、写真を撮りながらゆっくり進んでいきます。
草千里ヶ浜では乗馬体験ができます
草千里ヶ浜を横断し、東の尾根に取りつくと、ゆるやかな上り坂になりました。しだいに傾斜が出てきて、歩くたびに景色が少しずつ開けていきます。
振り返れば、さっき登った杵島岳が背後にどっしりと構えていました。
眼下には草原とその背後に杵島岳。遠くには阿蘇の外輪山が見えます
ミヤマキリシマに包まれた山道をぐんぐん進み、稜線に出ると、烏帽子岳のなだらかな山頂はもうすぐそこ。
山頂からは中岳の噴煙が間近に見え、はるか遠くに雲仙・普賢岳まで見渡せました。
ここで2つ目の「根子岳バッジ」をゲット!
★烏帽子岳のランドマーク情報はこちら
草千里エリアがまるごと見渡せる特等席です
朝のうちに2座を登り終え、すでに2つのバッジをゲット。そんなことができるのも、草千里エリアならではです。
草千里ヶ浜の中を、駐車場目指して歩く
ふたつの山を歩いたあとは、さすがに足が重い!「なにか飲もうか」と、私たちは草千里の駐車場の一角にある小さな焙煎所「草千里珈琲焙煎所」へ入りました。
注文したのは、大阿蘇牛乳をたっぷり使ったカフェラテ。泡のやわらかさとコクのある甘みが、疲れた体にじんわりと沁みていきます。
左から、竹炭が入ったラテ“炭(アイス)”650円、“ラテ(ホット)”600円、“カヌレ”450円
大きな窓の外をぼんやり眺めると、さっきまで歩いていた烏帽子岳が広がっています。
「早起きしてよかったね」。そんな話をしながら、登山の疲れを癒やしました。
コーヒーとおやつで癒しのひととき
抹茶や小豆などの羊羹も売っているので、行動食にもピッタリ。目の前の烏帽子岳を背景に、写真を撮るのもおすすめです。
どこを切り取っても素敵な写真が撮れるロケーション
草千里珈琲焙煎所
住所:熊本県阿蘇市永草2391-15
定休日:なし(公式SNSでお知らせ)
営業時間:10:00~17:30(LO17:00)
https://www.instagram.com/kusasenricoffeeroastery?igsh=bjZpZHV4YW9ndHBk
草千里でのコーヒータイムでひと息ついたら、お次はランチタイム。
草千里から高森町を抜け、山あいの道を進み、車を走らせること約1時間。山都町・馬見原商店街の中にある「JUGAAD BROS DOUGHNUTS(ジュガード ブローズ ドーナッツ)」へ到着。ここは、世界中を旅しながら暮らしている山元夫妻が営むドーナツ屋さんです。
ショーケースに並ぶドーナツは半数以上がヴィーガン対応
ランチでは、世界を旅してインスピレーションを受けた創作料理が楽しめます。
おすすめは、ハンガリーの揚げピザ“ランゴーシュ”。カリッと揚げられた生地に、オーガニックトマトを使った自家製ソースと新鮮な野菜、チーズが絶妙にマッチします。普通のピザとは違う、軽い食感と旨味たっぷりのソースが好相性。
ランゴーシュ1,000円
平日限定で“ヴィーガンスパイスカレー”も。スパイスがふんだんに使われていますが、辛みが抑えられているため、お子さんでも楽しめます。ヴィーガンだからあっさりしているのかと思いきや、コクがあり食べ応えは抜群です。
ヴィーガンスパイスカレー1,300円
チュニジアのおやつ“バンバローニ”は、オーダー後に揚げるので、熱々でモチモチ食感!ドライブのお供にもおすすめです。
“バンバロー二”400円
スタッフで改装したという店内は、オレンジと白のツートンカラーで、ゆっくりとくつろげる雰囲気。店内では世界中で買い付けた雑貨や食器、古着なども販売され、旅行気分が味わえます。
店内には旅先で撮った写真が飾られる
JUGAAD BROS DOUGHNUTS
住所:熊本県上益城郡山都町馬見原102-1
定休日:不定休(訪問の際は Instagram で確認を)
営業時間:10:30〜16:30(※売り切れ次第終了)
https://www.instagram.com/jugaad_bros_doughnuts?igsh=MThsdWV4eDR6amNsZw==
さきほどの商店街から車で30分。いよいよ3つ目のバッジをゲットしに、景勝地「五老ヶ滝(ごろうがたき)」へやってきました。
山都町は、阿蘇の南外輪山の裾野にあり、豊かな伏流水が多くの名瀑を生み出しています。なかでも五老ヶ滝は最大級で、落差は約50mを誇ります。
通潤橋から歩くこともできる(片道徒歩約15分〜25分)
階段を下り滝つぼ付近まで降りれば、水しぶきと轟音とともに水が流れ落ちるダイナミックな迫力を間近で見ることができます。
ここで3つ目の「萌の里バッジ」と、3つのバッジを集めるともらえる「コンプリートバッジ」を獲得しました。
晴れた日は虹がかかることも
滝つぼの壁面には柱状節理というめずらしい地質が見られ、幻想的な雰囲気です。しばらく滝つぼ付近に設置されたベンチに座り、マイナスイオンを浴びながら休憩しました。火照った体が、浄化されていくよう。足取り軽く、駐車場へ戻ります。
滝の周囲は、阿蘇山の噴火によってできた溶結凝灰岩でできている
★五老ヶ滝のランドマーク情報はこちら
五老ヶ滝の遊歩道を散策し、少し汗ばんだところで、滝から車でわずか5分の場所にある「ARBOL ICE CREAM(アルボアイスクリーム)」へ向かいました。ここで提供されているのは、地元・山都町の食材をふんだんに使ったヴィーガン対応のアイスクリームです。
乳製品や白砂糖、卵を使わずに、自家製の塩糀やナッツミルク・豆乳をベースに作るため、体に優しく、疲れた体にもスッと染み渡ります。素材の味が生きた、深みのある風味に手が止まらなくなりました。
柿バニラカカオ+塩糀キャラメルコーヒー(左)、甘夏ラムレーズン+青ゆずブルーベリー(右)、米粉のプレーンクッキートッピング
シングル550円、ダブル800円、トリプル950円、クッキー50円
一風変わった食材の組み合わせに、店主・藤川さんのセンスが光ります。「山都町は有機農業日本一で、美味しい野菜や果物が豊富なんです。そんな農作物を活かして、山都町でしか作れないアイスを作りたいんです」
手間暇かけて作られたアイスはまさに唯一無二の味わいで、わざわざ遠方から訪れるお客さんが絶えません。
店舗内にはコーヒースタンド「Appartment」も併設されており、ハンドドリップコーヒーを楽しむこともできます。
店主の藤川さん。素敵な笑顔で出迎えてくれます
優しい味わいのアイスでほっとひと息ついたら、阿蘇の旅もいよいよクライマックス。手ぬぐいと秋の風景を求めて、最後は西原村へ向かいます。
ARBOL ICECREAM
住所:熊本県上益城郡郡山都下市57 Appartement内
定休日:水・木曜※冬季は不定休
営業時間:11:00〜17:00
https://www.instagram.com/arbol_icecream_sandwich?igsh=ODhjcTU0Y3N2YmV5
※駐車場は「山都文化の森」へ
※イートインの場合、1ドリンクオーダー
限定手ぬぐいの交換のため、西原村にある「俵山交流館 萌の里」へ向かいました。阿蘇外輪山の中でも美しい眺めを誇る俵山の麓にあり、地元の農産物や特産品が豊富に並んでいます。
受付でコンプリートバッジを提示し、旅の目的であった「阿蘇限定手ぬぐい」を無事にゲットしました。
受付で交換することができます
手ぬぐいは阿蘇地域の複数のスポットで交換できますが、今回ここを訪れたのは、コスモス畑が目的でした。萌の里の敷地内には広大なコスモス畑が広がり、優しく美しい景色が楽しめます。遠くには、雄大な阿蘇の外輪山が連なり、まさに阿蘇の秋の醍醐味。カメラ片手に、最後まで阿蘇を堪能しました。
コスモス畑の奥には雄大な俵山がそびえる
俵山交流館 萌の里
住所:熊本県阿蘇郡西原村小森2115-3
定休日:不定休、年末年始
営業時間:本館9:00〜17:00、レストラン11:30〜14:00
https://moenosato.net
時間に余裕がある方は、黒川温泉で1泊するのがおすすめです。夕暮れどきには、川沿いの小道に灯りがともり、温泉街の風情を感じることができますよ。
湯船から夜空を見上げれば、満天の星。山あいの温泉地だからこそ味わえる静寂の中で、登山後のご褒美タイムを過ごしましょう。
夕暮れ時の黒川温泉
翌日は、阿蘇北外輪山の名峰・涌蓋山(わいたさん)や、なだらかな稜線歩きが楽しめる猟師岳(りょうしだけ)へ。どちらも黒川温泉からアクセスしやすく、標高1,500m級ながら、初心者でも安心して登れる整備されたコースが魅力。山頂に立てば、目の前にはくじゅう連山の壮大な景色が広がります。
どちらかに登頂すれば「黒川温泉バッジ」をゲットでき、4つのバッジを制覇した人だけがもらえる「踏破バッジ」も同時に獲得。せっかくなら、1泊2日で阿蘇をすべて歩ききり、達成感とともに“阿蘇の秋”を満喫しましょう。
涌蓋山の山頂にて。くじゅう連山が目の前に広がる
下山後は、お昼を食べに『UBUYAMA PLACE』へ。ここは旧うぶやま牧場をリニューアルし、2024年7月にオープンした注目の複合施設です。広大な敷地には、パークゴルフ場やカフェレストランが併設されており、登山のあとゆっくり過ごすのにぴったり。
UBUYAMA PLACEの広大な敷地
カフェレストランの看板メニューは、本格的な薪窯で焼き上げるナポリピッツァ。併設施設で製造されたフレッシュチーズを使い、地元産の旬野菜がたっぷりトッピングされています。大きな窓から臨む阿蘇の山々を眺めながら、旅の締めくくりにふさわしいランチタイムが楽しめるはずです。
新鮮なチーズや野菜を使ったピッツァ
UBUYAMA PLACE
住所:熊本県阿蘇郡産山村山鹿2100-3
定休日:なし
営業時間:平日11:00〜20:00(LO19:00)、土日祝日8:00〜20:00(LO19:00)
https://ubuyama-place.com/
阿蘇の山や名所を巡りながら、旅の証となるアイテムを手に入れられるのは、なんだか特別な体験ですよね。
今回の旅で手に入れた手ぬぐいは、鮮やかなターコイズブルー。ヒゴタイの可憐なデザインが映え、登山コーデの差し色にぴったりです。
阿蘇の野花が描かれた手ぬぐい
首元に巻けば日除けや汗拭きとして活躍し、ザックにつければワンポイントに。眺めるたび、阿蘇の風景や草原の匂いがふっとよみがえるはずです。
あなたもこの秋、阿蘇を歩いてみませんか?
手ぬぐいを旅の思い出にしよう
限定バッジが貰えるスポットは阿蘇地域に全部で8ヶ所。今回紹介しきれなかった魅力的なスポットもたくさんあります。
色づく山々や花が咲き誇る公園など、ぜひチェックしてあなただけの旅を楽しんでください。
執筆=上川菜摘
撮影=村上智一