もうすぐ訪れる本格的な夏山シーズン。テント泊や縦走を計画されている方も多いと思います。出発の数日前から計画を具体化し、道具を揃えていく。そんな時間も楽しいものですよね。でも、いざという時のエマージェンシーグッズは、きちんと揃っていますか? 例年夏山では、数多くの遭難事故が発生しています。そして、いざという時に頼れるのはやっぱり自分の道具たち。命を守ってくれる道具は抜かりなく揃えておきたいものです。今回は「山で命を救うエマージェンシーグッズのチェックリスト」についてご紹介します。
2020.08.05
小川 郁代
編集・ライター
トラブルは突然やってきます。ケガや病気で動けない、道迷いや急な天候の悪化で日没までに下山できないなど、命の危険にさらされることが次の登山であなたに起こるかもしれません。「自分は大丈夫」「簡単な山だから平気」などと思っていたら大間違い。思いもよらないときにこそ、危機は訪れるのです!
いざという時のために必ず用意しておきたいのが、エマージェンシーグッズ。命を守るために、登山者が常に携行すべき必需品です。荷物が増えるのに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、できるだけ軽くかさばらないものを選べば、それほど荷物を増やさずにすむはずです。
また、グループの誰かが持っているから自分には必要ないと思いがちですが、ほとんどのものは、個人がそれぞれ持つのが基本。仲間とはぐれたとき、滑落したときに、自分の身を守れるのは自分しかいないのです!
ここでは、主に無雪期の登山に必要な、代表的なエマージェンシーグッズを紹介します。どんな山でも必ず必要なもの、行く山や状況に合わせて必要なもの、普段使うものをエマージェンシー用に流用できるものに分けて、シーン別にリストアップしました。
「あ、今日に限って持っていない……」などということがないように、必ず毎回、出かける前にチェックリストを使って、忘れ物がないかを確認する習慣をつけましょう。
へッドライト |
山中で日没を迎えたとき、移動にもビバークにも、人に自分の位置を知らせるにも、明かりは絶対に必要です。スマートフォンのライトで代用できそうですが、手がふさがって危険なうえに、バッテリー切れで大切な連絡手段や地図アプリを失うことになりかねません。どんなに気軽なハイキングでも、ヘッドライトは必ず用意しましょう |
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エマージェンシーシート |
遭難時のビバークで重要なのは、体温を下げないこと。じっとしている状態で体温を温存するのは、とても難しいのです。安価で手に入るアルミ製のシートでもいいですが、ほとんど使い捨てになるので、何度も使える丈夫なものや、シュラフカバーや防水パックなどほかの用途にも使えるタイプを選ぶと、非常時以外にも活躍します |
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ファーストエイドキット |
山中でのけがや病気は、自分で応急処置をしなければなりません。ウェブの情報や講習会などで必要なものをチェックして、もれなく用意しておきましょう。すばやく取り出せるようにしておくことも重要。虫が多い時期にはポイズンリムーバーなども有効です |
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・GRANITEGEAR(グラナイトギア)/ファーストエイドエアポケット |
予備バッテリー・電池 |
スマートフォンやヘッドライトなどは、バッテリーが切れたら何の役にも立ちません。必ず予備を持つのが現代登山者の常識。充電がフルにできているか、充電ケーブルの種類が間違っていないか、電池のサイズは正しいかも、毎回必ずチェック! |
非常食 |
非常食は必ず行動食とは別に用意するもの。行動食を多めに用意するのではなく、毎回食べずに持ち帰るのが基本です。高カロリーで保存性が高く、水がなくても食べやすいものがおすすめ |
地図とコンパス |
スマホアプリを持っていても、故障やダウンロード忘れなどのトラブルに備えて、紙の地図とコンパスは必携。広い範囲を把握するのには、アプリよりも紙の地図のほうが適しています。もちろん地図の読み方、コンパスの使い方は、必ず事前に学習しておくことが必要です |
ホイッスル |
遭難時に自分の存在を人に知らせるためには、ホイッスルが有効。大声を出して体力を消耗するのを防ぎ、山では高い音の方が聞こえやすいという利点も。小型で遠くまで音が届きやすい、登山用や防災用のものを選ぶと安心です。トレラン系のバックパックには、ホイッスル付きのモデルもあります |
強度のある細ひも |
細引きやガイラインでもいいですが、パラコードはそのままで使うほかに、中の繊維を抜いて太さを調節したり、糸として使ったりできて便利。スタッフバッグなど持ち物の紐を、すべて強度のあるものに変えておくという手もあり |
ダクトテープ |
登山靴やバックパック、ウェア、テントなどの破損に備えてガムテープよりも粘着力が高く水にも強い、ダクトテープが有効。必要な分だけを、トレッキングポールや保温ボトルなどに巻き付けると手軽に持ち運べます |
ライター、マッチ |
日帰りで調理をしないときも、火を起こせるものは必要。コンロが着火しないときの備えにもなります。防水対策をしっかりとしておきましょう |
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金属製カップ |
飲み物用にひとつカップを用意するなら、エマージェンシー的には火にかけられる金属製のものがおすすめ。木製やプラスチック製だけでは、ビバーク時にお湯を沸かせません! |
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浄水器 |
ビバーク時に飲み水を切らして清潔でない水を飲むしかないときも、浄水器があれば安心。普通のウォーターボトルとしても使えるタイプが便利です |
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ツエルト |
緊急用の簡易テント。シンプルな布状なので、そのままかぶることも、トレッキングポールや木の枝を使って設営することも可能。ただし、設営には技術が必要。持っていても使えなければ意味がありません |
熊よけスプレー |
万が一、熊に襲われそうになった場合に備えて。特に目撃例が多い山では携帯を検討しましょう |
保温ポット |
あたたかい飲み物は、体を温める効果抜群。心細い気持ちを和らげる効果もあります |
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トレッキングポール |
長さ調節ができるものは、ケガをしたときの杖代わりや、ツエルトやレジャーシートと組み合わせて使うなど、本来の役割以外にも大活躍 |
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タープ |
軽量コンパクトなタイプなら、普段は休憩やリラックスタイムに、緊急時はシェルターとして活用が可能 |
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レジャーシート |
防水シートは、風雨よけや保温など幅広く使えて、緊急時にも役立つアイテムです |
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傘 |
雨を遮る以外にも、レジャーシートやタープと組み合わせると、簡易テントのような空間が簡単に作れます |
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キャンドル |
沸騰させることはできなくても、温かい飲み物を作る程度ならキャンドルが役立ちます。わずかな炎ですが保温力も期待でき、アロマ用のティーキャンドルなら、安くて軽く思いのほか長持ちします |
その他 |
人に救助を呼んでもらうとき、家族への連絡を依頼するときなど役立つ「筆記具」、遠くの人に光を反射させて合図を送るための「鏡」、ウェアや道具の破損時に手軽に使える「安全ピン」、緊急時の工作などにも役立つ「ナイフ」など |
チェックリストを見て、必要なものは一通り揃っていたでしょうか? 万が一を考えればどれもあるに越したことはないものばかりですが、荷物をやみくもに増やすのは、荷物の重量を大幅に増やすことになり、安全性を損なうことになりかねません。モバイルバッテリーや電池は必ず必要なものですが、どうしてもやや重め。それ以外のものは、できるだけ軽く済ませたいところです。
ここでは「どんな時でも必ず必要なもの」で示したもののうち、YAMAP STOREで取り扱っている3点についてご紹介します。どれも軽量コンパクトなものですので、手軽に安全性がアップすること間違いなし。ウルトラライトな遭難対策です。
たった28gという軽さで約400ルーメンの光量が得られる超軽量ヘッドライト。ウェアや帽子に留められるクリップタイプで、付属のヘッドバンドで頭に着けることもできる、マルチタイプです(ヘッドバンド装着時重量:46g)。
重量が30g以下の軽量タイプのヘッドライトは各社から発売されていますが、どれも光量が50ルーメン程度の、あくまでもサブライトという位置づけ。このモデルのようにメイン使いできる400ルーメンでこの軽さは、他のモデルの追随を許しません! 多彩なライトパターンを備え、安心の防水仕様。USB充電式で、最長14時間連続点灯が可能です。
いざという時にあわてないために、ファーストエイドキットはすぐに取り出せることがポイント。一目で見つけられる赤色の専用ケースを使うのがおすすめです。絆創膏やテーピング、内服薬や消毒綿、ガーゼなど、必要最小限のもが入れられる13×18cmサイズ。撥水性の素材で濡れに強く、薄くて軽量なのに丈夫で長持ち。ループにストラップを通して、バックパックなどに付けておくことも可能。間違って他のものが入ったポーチを持って行ってしまった経験のある人、いつもどこに入れたか忘れてしまう人にもおすすめです。※中身は入っておりません。登山スタイルに合わせて、必要なものを揃えましょう。
ビバークの必需品、エマージェンシーシート。安価で手に入るペラペラのアルミシートは、ほぼ使い捨てなのに対し、エスケープライトヴィヴィなら丈夫で何度でも使えて、体温を利用した高い保温性も、ムレを外に吐き出す透湿性も、撥水性も手に入ります。
ただのシートではなく封筒型なので、シュラフのように体を包みこんで保温性を発揮。緊急時に潜り込めば風や寒さから体を守り、心細い気持ちも温めてくれます。シュラフカバーや防水シート、パックライナーなど、ひとつでさまざまな役割を担ってくれ、緊急時以外にも積極的に使えます。
そして、重さ0g、スマートフォンでできること。ここからは、YAMAPのアプリについてご紹介します。
全国の登山地図を無料で使え、携帯電波の届かない山中でも現在地が確認できる登山用GPSアプリ。ログの記録や活動計画・活動記録の作成などの機能に加え、山行中のGPS位置情報を、家族や友人などに随時通知できる「みまもり機能」も搭載しています。
いろいろなエマージェンシーグッズについてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか? ソロでもグループでも、登山に危険はつきもの。使わずに済むのが一番ですが、使いたいときに持っていなければ、必ず後悔することになります。そして、エマージェンシーグッズは、究極の防災用品でもあるのです。登山やハイキングでも使えて、日常生活でも、自分や家族の安全を守るための道具。備えておいて絶対に損はありません。この機会に、安全対策について見直してみませんか?
※ご紹介したエマージェンシーグッズの内容は一例です。登る山やご自身の状況に応じて調整するようにしてください。
万が一に備えて加入しておくと安心なのが、遭難救助費用を補償してくれる登山保険。YAMAPグループの「外あそびレジャー保険」は、高額になりがちなレスキュー費用やケガの補償など、登山の万が一に備えられる「登山者のための保険」です。
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