登山・ハイキングの必需品「行動食」の選び方と手作りレシピをご紹介!

一段と冷え込みが増してきて、秋の紅葉シーズンも終わりに近づいてきた今日この頃。お手軽な低山を楽しむなら、山ごはんを作って食べるほどではないかな?と思っていても、予想以上にカロリーを消費してしまうのが登山です。不足しがちなエネルギーをミックスナッツや羊羹、温かい飲み物などの行動食で補ってみてはいかがでしょうか? 今回は栄養面でも万全な「5つの目的」を押さえたヤッホー!!さんおすすめの行動食と、手軽に作れる山のおやつレシピ2品「黒糖柿ピー」「さつまいものお汁粉」をご紹介します。

ヤッホー‼さん&shihoの山ごはんを始めよう #05連載一覧はこちら

2020.11.25

ヤッホー‼さん&shiho

管理栄養士・山の料理研究家

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登山に「行動食」が必要な理由とは? 山ごはんとの違いは?

shiho:山ごはんも行動食も「山で食べるもの」ということでは同じだけど、山ごはん=食事のこと、行動食=おやつのこと、っていう考え方でいいのかな?

ヤッホー!!さん:基本的にはそれでいいと思う。ただ、おやつは楽しむものといったイメージが強いかもしれないね。行動食は食事だけでは不足してしまうエネルギーや栄養素を補うことが目的なんだ。

shiho:たしかに、激しい運動で食欲がなくなる人は、一度にたくさんの量を食べられないから、山行中にエネルギー不足になっちゃうよね。そういう人は行動食をこまめに食べないとバテちゃうね。

ヤッホー!!さん:ほかにも、山岳環境の場合、ルート設定や気候の変化によってはのんびりと山ごはんを食べていられないこともあるから、その日の目的地(テント場など)に到着してから山ごはんを食べるといったケースが多い。そんなときには、日中、行動食だけが栄養補給の手段になるんだ。

shiho:つまりは、調理する必要がなくて、サッと取り出してパッと食べられるものが行動食ってことだね。

ヤッホー!!さん:簡単な日帰りハイキングでも行動食だけで済ます人が多いよ。ちょっとした休憩の時や、歩きながら食べることが多いから、ほとんどの人は市販のチョコレートやクッキー、飴などのお菓子を行動食として使っているよね。今回は栄養のことも考えながら、僕のおすすめの行動食を紹介しよう!

調理をしないで、手軽にエネルギー補給できるものが行動食に向いている

行動食を上手に選んで「シャリバテ」と「血糖値スパイク」を防ごう!

ヤッホー!!さん:行動食を選ぶために押さえておきたいのは血糖値のコントロール。運動などで消費するエネルギーの多くは、血液中のブドウ糖によって作られるので、血液中のブドウ糖量(血糖値)を安定させることが、安定したエネルギー供給につながるんだ。

shiho:激しい運動で血糖値が下がりすぎると、カラダが重く感じたり、頭がボーっとしたりする症状が現れるよね。

ヤッホー!!さん:それが行動食の第一のポイント、登山でいう「シャリバテ」なんだ。シャリ(ごはん)を食べないでバテるといった意味だね。スポーツの世界では「ハンガーノック」ともいわれているんだ。

shiho:ここで注意しなきゃダメなのは、脳もブドウ糖をエネルギーとして使っているということだよね。

ヤッホー!!さん:うん。シャリバテは脳にも影響が出るから、注意不足による道迷いや転倒を引き起こす危険がある。登山では命に係わることだから注意が必要だね。

shiho:行動食にチョコレートやクッキー、飴とかの甘いものが好まれているのはこのためだよね。でも、私は甘いものを食べるとかえってカラダがだるく感じるから、行動食は柿ピーみたいに甘くないもののほうが好きだな。

ヤッホー!!さん:そう、それが第二のポイント「血糖値スパイク」だね。人間のカラダは血糖値を一定にしようとする働きがあるから、甘いものなどを食べて急激に血糖値を上げてしまうと、インスリンというホルモンが大量に出て血糖値を下げようとする。人によってはこの反応が過剰に起こってしまうため、甘いものを食べた後、余計にバテてしまうこともあるんだ。

shiho:甘いものを食べてもバテない人も大勢いるよね。これは個人差があるから。私のように血糖値スパイクを起こしやすい人は注意が必要だよね。

ヤッホー!!さん:自分が血糖値スパイクを起こしやすいかどうかは、針のついたセンサーなどを取り付ければ測定できるけど、わざわざそんなことをしなくても、甘いものを食べた後はなんとなく体がだるくなるなぁと思う人は、急激に血糖値を上げるものを食べるのは控えたほうがよいだろうね。

shiho:私は甘いものを食べたいときにはGI値(食後血糖値の上昇度を示す指標)の低い食品を選んでいるよ。

チョコレート効果(Meiji)やSOYJOY(大塚製薬)など低GIを掲げた商品も多い

ヤッホー!!さんのおすすめ行動食を、目的別5タイプで大公開!

①エネルギー効率を考えるなら、糖質を中心とした行動食

ヤッホー!!さん:エネルギーになりやすいのは糖質中心のもの。とくに甘いものは急速にエネルギーチャージができる。あんぱんや羊羹、チョコレート、クッキーなどだね。万一、シャリバテになってしまったときにも、食べればすぐに元気になるのが実感できると思う。

shiho:糖質中心で考えるなら、おにぎりとかサンドイッチなんかもいいよね。甘くないもののほうが、緩やかに血糖値が上がるから、血糖値スパイクを起こしにくいと思う。

②血糖の急激な上昇を抑えて、かつ、高エネルギーな脂質中心の行動食

ヤッホー!!さん:ナッツやサラミ、チーズといった脂質の多い食品も行動食として使える。糖質よりも高カロリーなのに、血糖値を急激に上昇させないのが特徴。ただし、エネルギーを生み出すには多少の時間がかかる。

shiho:そうだね。血糖値スパイクを起こしやすい人にはおすすめだけど、消化吸収に時間がかかるから、激しい運動をしたときに食欲がなくなる人にはちょっと不向きかもね。

③気分転換・リフレッシュするならすっぱい系の行動食

ヤッホー!!さん:これはエネルギー補充だけでなく、リフレッシュという意味でおすすめ。梅干しやドライフルーツ、柑橘系のグミなんかもいいね。同じ味ばかり食べていると飽きてしまうので、味に変化をつけた行動食を用意しておくことが大切。

shiho:秋でもたくさんの汗をかくことがあるから、梅干しは塩分補給になってgood!だね。

④総合的な組み合わせを自分で作るトレイルミックス

ヤッホー!!さん:栄養素の多くは単体で働くのではなく、お互いに作用しあっている。だから、たくさんの種類のものを食べることがベストなんじゃないかな。自分の好きな組み合わせで、オリジナルのトレイルミックスを作る人も多いよ。

shiho:ナルゲンボトルに入れておけば、手軽に取り出せるし、飲むようにして食べれば、いちいち手袋を外したり、手を洗ったりしなくても大丈夫だね。

⑤カラダを温めてくれる、お湯+αで作る行動食ドリンク

ヤッホー!!さん:秋から冬にかけて、おすすめしたいのが魔法瓶に入れたお湯。スープの素やココアなどを溶かして、ちょっとした休憩時に飲むんだ。体を温めるにはこれが一番だね。いろんな種類を持っていけば、味に変化をつけられるから飽きないよ。僕の場合、チキンラーメンのミニサイズがお気に入り。袋の中で細かく砕いてからシエラカップに入れてお湯を注ぎ、箸を使わずに、飲むような感覚で食べてしまうよ。

shiho:う~ん、ワイルドだね~。女性がやったら周りの人はちょっと引くかも?(笑)

おすすめ行動食レシピ① 黒糖柿ピー

shiho:ここからは、私がレシピをご紹介します。
まず1品目は黒糖柿ピーです。市販の柿ピーをshiho流に少しアレンジして美味しく楽しめる行動食を作ってみました。

*材料(1~2人分)
柿の種・・・1袋
*柿の種は200g入り6袋詰めのものを使用
黒砂糖(粉末)・・・大さじ1.5
水・・・大さじ2/3

*つくり方(調理時間:5分)

【1】フライパンに黒砂糖と水を入れ、中火にかける。
【2】フライパンをゆすりながら、全体的に泡立ってきたら(1分程度)火を止めて柿の種を加える。
【3】かき混ぜていると徐々に黒砂糖が水あめ状から結晶化してくるので、まんべんなく結晶化したら広げて冷ます。

shiho:黒糖のコクのある甘みにピリッとした柿の種がマッチして手が止まらなくなる美味しさです。個人的にはお酒のおつまみにもお勧めですよ!

ヤッホー!!さん:うん、美味しい! 家で作ってトレイルミックスに入れるのもありだね。

おすすめ行動食レシピ② さつま芋入りミルク汁粉

shiho:次はしっかりお腹を満たしたいときにお勧めの行動食です。
相性の良いミルクとあずきをお汁粉にしてみました。さらに具材にお餅とさつま芋を入れることで、満足度も抜群! 秋にぴったりのこっくりと温まるミルク汁粉をご紹介します。

*材料(1~2人分)
牛乳・・・200ml
ゆであずき・・・100g
さつまいも甘煮・・・適量
*お惣菜やパウチタイプのものでOK
スライス餅・・・3枚
くるみ・・・適量

*つくり方(調理時間:5分)

【1】鍋に牛乳・ゆであずきを入れ、中火にかける。
【2】時々かき混ぜながらふつふつと沸騰してきたら、さつまいも甘煮・スライス餅を加え、餅が柔らかくなったら火を止める。くるみを砕いて散らす。

ヤッホー!!さん:とっても優しい味だね。体も温まるし、秋にピッタリのおやつだね。甘党の僕としてはもうちょっと甘くして飲みたいところだね。

shiho:たまにはこんな風に一風変わったお汁粉も良いかなと思います。甘いものが苦手な私は少し躊躇してしまいますが、お好みに合わせてゆであずきの量を加減してください。

shiho:いかがでしたか? 簡単なハイキングでもエネルギー不足にならないよう、行動食をしっかりと食べましょうね。

ヤッホー!!さん:行動食はいざといったときに非常食としても使えるから少し多めに持っていくのが基本。きちんと装備を整えて安全登山を心がけよう!

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ヤッホー‼さん&shiho

管理栄養士・山の料理研究家

ヤッホー‼さん&shiho

管理栄養士・山の料理研究家

登山ガイド・ヤッホー!!さんと、アウトドア料理研究家・shihoさんによる「山ごはん」ユニット。共に管理栄養士の資格を持ち、登山経験も豊富。各種メディアやイベントを通じ、山ごはんの楽しさを広めている。現在ヤッホー‼さんが「山の炊き込みごはん」365日連続投稿に挑戦中! https://www.instagram.com/ikiikitozan/