「金峰山の『五丈岩』に会いに行こう!」と手を挙げてくれたのは、漫画家の鈴木ともこさんと、アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里(よすみゆり)さん。「山だけじゃなく、甲府でしか味わえない&体験できないものも盛り込みたい!」と、旅の達人のふたりが探し出してくれた地元グルメなどの観光情報も紹介します。
甲府市では、2022年10月30日まで、甲府市×YAMAP『山のぼり・まち歩き』キャンペーンを開催中。甲府市の山や観光地でデジタルバッジをゲットできるキャンペーンで、数量限定のオリジナル手ぬぐいは残りわずか。みなさんもふるってご参加ください!
2022.08.29
池田 菜津美
ライター
山梨県甲府市と長野県南佐久郡の境に位置する日本百名山の金峰山(きんぷさん)。標高2,599mの山頂には奥秩父一の展望が広がり、夏山シーズンには多くの登山者が訪れる場所です。そんな金峰山のシンボルといえば「五丈岩」。山頂にそびえる巨大な岩で、登山者を惹きつけるだけでなく、古くから信仰の対象にもなってきました。
「金峰山は変化していく景色が楽しみだね」、「森も岩も稜線歩きもあるもんね」と盛り上がっているのは、鈴木ともこさんと四角友里さん。
鈴木ともこさんはコミックエッセイ『山登りはじめました』シリーズなど、親しみやすいタッチで山登りの楽しみを描く漫画家。山好きが高じて長野県松本市へ移住し、現在は松本市観光大使としても、山と街の魅力を発信しています。
四角友里さんは山スカートを日本に広めた女子登山ブームの立役者。アウトドアウェア・ギアの企画開発を手掛け、自分らしく楽しむ山歩きのスタイルを提案。『一歩ずつの山歩き入門』や『山登り12ヵ月』などの著書や講演活動を通し、山や自然と触れ合う喜びを伝えています。
じつはおふたり、14年来の親友。「私が山登りをはじめた翌年、雑誌で友里ちゃんを知りました。機能に優れた山スカートと洗練されたコーディネート。自分らしく山を楽しめることを友里ちゃんから教えてもらったんです」と、ともこさん。2008年、友里さんが初めて行ったトークイベントの参加をきっかけに親しくなり、今では山でも日常でも励まし合える関係なのだそう。そんなおふたりもコロナ禍もあり、一緒に山を歩くのは久しぶり。「4年ぶりだよね! 久しぶりだから、すごく楽しみだったんです」と友里さんはわくわくが止まらないようす。
スタート地点の大弛峠(おおだるみとうげ)から山頂までは片道約2時間。取材日は曇り空でしたが、シラビソやコメツガ、トウヒが生える針葉樹の森はうっすらと霧に覆われて幻想的でした。「昨晩の雨のおかげで森の香りが強く立ち込めていて気持ちがいい」と大きく深呼吸する友里さん。「霧や雨の森は緑が輝いて見えるよね」と、ともこさんは森の中に差し込む光に目を細めています。
友里さんはときどき足を止めて写真をパチリ。「苔や葉など、自然の中の造形は何とも言えない美しさがありますよね。形も緑の色もそれぞれに違う。足元の小さな景色にも発見がたくさんあるから、ついつい立ち止まってばかりで歩くのがゆっくりになっちゃう」。ともこさんは森を見渡しながら、「『まばたきがシャッターだったらいいのに』って思うことがあるんです。光の具合とか、霧の動きとか、歩きながら心が動いた瞬間を撮り逃したくなくて。見るものすべてが美しいから、困っちゃいます」と笑顔を見せています。
四角友里さんのランドスケープフォト①
「わ! 目があったかも」と声を上げる友里さん。レンズの先には木の幹。よ〜く見てみると、幹の節が目玉のようです。「友里ちゃん、こっちのは畦地梅太郎さんの描く山男みたいだよ!」と、ともこさん。それぞれの感性で楽しむ森歩きです。
四角友里さんのランドスケープフォト②
ふと、先を行くともこさんのバックパックに目をやると…、漫画でおなじみ「ともこ」をモデルにした人形が「ENJOY」と書かれた旗を振って応援してくれています。
「私は『ENJOY』=『楽しもう』という想いを大切にしています。山の楽しみ方は人それぞれ。誰かと比べたりせず、自分が心地いいことを堂々と楽しむ。そして他の人の『ENJOY』も尊重したい。そんなメッセージを込めて、自分のサインやアイテムに『ENJOY』という言葉を添えているんです」。
中間地点の朝日岳に到着。ベンチがあって休憩にぴったりの場所です。早速、行動食を広げてみんなでひと休み。
友里さんのおやつは、すももとシャインマスカット、桃のジュレで、どれも甲府市内でゲットしたもの。「せっかくだから地のものや訪れた土地の方々が作ったものを味わいたくて。道の駅や商店に立ち寄って、行動食を買うようにしています」。ともこさんのおやつで目を引くのは『アウトドア納豆』という発酵調味料で、これも麓の老舗味噌屋さんで購入。納豆を麹漬けにしたもので、深いうまみと味がしっかり。「常温で持ち運べるのが画期的! おにぎりに乗せたり、きゅうりに付けたり、おかずにもおつまみにもなります」と、ともこさんも大絶賛です。アウトドア納豆の詳細は、この記事の後半でご紹介します!
歩き始めてしばらくポツポツと小さな雨粒が落ちていましたが、少しずつ本降りに。「雨が降ることも自然の一部。樹々や草花は生き生きとしていて、雨ならではの表情との出逢いがありますよね」と友里さんはにっこり。さぁ、レインウエアとバックパックカバーをつけて再出発です!
最後のひと登りでいよいよ樹林を抜けました。「視界の開けた稜線に出る瞬間、たまらないです」と、ともこさん。見渡してみると大きな岩があちこちに。はじめはハイマツの登山道でしたが、次第に岩の多い道になってきました。よじ登ったり、飛び渡ったりしながら、慎重に進んでいきます。
「わぁ! 向こうに何か見えてきたよ」と声を上げる友里さん。黒い影のようなものがうっすらと見えています。「霧に浮かぶお城みたい!」と、ともこさんも興奮しています。想像以上に大きい岩の気配。五丈岩の登場です。
五丈岩の前で記念撮影をしていると雨脚が徐々に強くなってきました。名残惜しいけれど、「ありがとうございます、また来ます!」と下山開始。森の中へ入り、枝を広げる木々に守られながらゆっくりと来た道を戻ります。
「灰色の霧の世界から出現した五丈岩が神々しくて、お天気が演出をしてくれたようにも感じるね」と友里さんはニコニコ。「このままもっと歩いて行きたくなるね。山で過ごせる時間は特別だなあ」と、ともこさんは友里さんとの山歩きを噛みしめているよう。奥秩父随一の展望を楽しめる金峰山。今度は秋の気配が漂う森を味わいに、また登りたいねと話すふたりでした。
ともこさんと友里さんが山登りとセットで楽しむのが、「麓でおいしいモノ探し」。せっかくなら、その土地の味を山で味わいたい! そこで、それぞれ事前にリサーチした地元スポットを回り、おやつや行動食を選んでもらいました。
ともこさんが立ち寄ったのは甲府市で創業150年を超える味噌醸造店「五味醤油」。行動食に選んだ『アウトドア納豆』はこちらのオリジナル発酵調味料。店主の五味洋子さんに不思議なネーミングの由来をうかがうと、「兄が友人たちとキャンプしているときに『外で気軽に納豆を食べられたらいいのに』と思ったのがきっかけで。チューブ状になっているのは屋外でも使いやすいように。麹漬けで常温OKで、日持ちもするんです」とのこと。まさに山にぴったりの調味料ですね。
じつはともこさんは無類の味噌好き。暮らしている松本の味噌を基本に、旅先ではその土地の味噌をいくつも買うのだそう。「昔ながらの製法で作られた天然醸造の味噌は、麹の種類や割合、熟成度で味わいが全然ちがうので、その地で愛されているものを知るのが楽しいです。我が家は毎朝、お味噌汁。冷蔵庫に5~6種類の味噌を常備しています。味噌汁が元気の源です!」。五味洋子さんのおすすめは『甲州みそ』。香りが高くまろやかで、こくがある味噌なのだそう。早速手に取るともこさん。「重さは気にしません。後悔しないよう『甲州みそ』は大きいサイズ(1キロ)で。もちろん『米みそ』も買います!」」ちなみにともこさん、後日使った『米みそ』のおいしさに感動して「もっと買えばよかった」と反省したそうです。
友里さんが是非立ち寄りたいと希望したのは朝7時から営業している「ずんちゃんパン」。ガラス張りの棚にはすべて店の奥で手作りをしている惣菜パンがずらり。種類の多さに目を奪われていると、「これでも商品は少なめだよ。夏はパンの消費が減るからね。冬の方がもっといっぱい種類を出してるんだ」とご主人の深沢秀明さんは笑っています。ずんちゃんパンの名前の由来は先代のお父様のニックネームから。「寸胴だったから『ずんちゃん』。今考えるとひどいあだ名だよね。でも変わった店名のおかげで、同じあだ名の人がわざわざ東京から来てくれたりして。ありがたいことだよ」
売れ筋商品は、ささみフライとコロッケサラダ。たくあんや高菜、UFOなど、どんな味なのか気になる商品も並んでいます。「高菜は長野のおやきからもらったアイデアなんだ。どんなのがお客さん喜んでくれるかな、っていつも新作を考えてるよ」
こうして商品を選んでいる間にも、地元のお客さんが続々とお買い物に訪れていました。「訪れた山がそこに暮らす方々にとって大切な存在であるのと同じように、地元の方に愛されているお店に出会えたとき、登山が山旅に変わっていくのがうれしくて。その土地の空気をお裾分けしてもらった感じがするんです」と友里さん。行動食のつもりで購入したパンたちでしたが、取材班みんなでつまみ食いしているうちに、あっという間に完食。「もっと買っておけばよかった」とみんなで後悔しました。
山も街もじっくり楽しむためには、登山の前後に甲府市で一泊するのがおすすめです。甲府市街に泊まれば徒歩圏内に飲食店がたくさん。甲府の夜のグルメを満喫しちゃいましょう!
訪れたのはクラフトビールがおいしい「Hops&Herbs」。ここで提供しているのはアウトサイダーブルーイングという銘柄で、常時6種が取りそろえられています。ビールはどれも、店舗の1階にある醸造所で作ったもの。
まず飲んでほしいのが、ザ・シス・インペリアル・スタウトという黒ビール。国内外で多くの賞を受賞する、アウトサイダーブルーイングの定番ビールです。しっかりとした苦みの中にカカオのような風味があり、飲みやすいと評判なのだそう。
「甲府産の桃の酵母を使っているんですね!」ともこさんが驚いているのは、ブーケ・ベルジャンウィットというビール。エルダーフラワー、カモミール、ジュニパーベリーの2種類のハーブが入っていて、華やかな香りが特徴です。
「少しでも地元に貢献できたらと、山梨県産のものを使ったおつまみも作りました。『フライドほうとう』はその一つ。表面はカリッと、中はもちもちで、ビールが進みますよ」と店員の山田勝さん。さぁ、みんなで乾杯です!
甲府は宝石の街としても知られています。その始まりは水晶。山梨県にはかつて良質な水晶が採れた場所がいくつもあり、古くは縄文時代から採掘・利用されていたと言われています。江戸時代から水晶の加工技術が発展し、明治以降は国内のみならず、海外へも精巧な宝飾品として輸出されるようになりました。
今回登った金峰山も水晶の産地のひとつ。山梨県側の登山道には「水晶峠」という名前も残っていて、水晶を発掘する鉱山があったのだそう。
「山梨ジュエリーミュージアム」は、山梨の地場産業であるジュエリーの歴史をじっくりと学べる場所。山梨で採れた水晶を始め、山梨で制作された宝飾品や、世界各国の宝石まで展示され、実物を間近で見られます。土日祝日には、実演工房でプロの職人さんの技を見学できたり、宝石研磨や貴金属加工の体験に参加したりと、山梨のジュエリーの魅力を体感できるプログラムも。甲府駅から徒歩10分のところにあるので、登山前後に立ち寄ってみてはいかがでしょう。
駅近でお土産を探すなら「甲州夢小路」がおすすめ。かつての甲府城下町を再現した町並みの中に、天然石・アクセサリーショップや甲州ワインをテイスティング・購入できるお店、山梨ゆかりのアーティストの作品展示室など、19店舗が軒を連ねています。目印は「時の鐘」。銅張の大きな鐘楼で、甲府駅の新たなランドマークになっています。
駅から車で10分のところにある「かいてらす」は、山梨県の地場産品を一同に集め、展示・販売する施設。各種ジュエリーを扱う「光」のコーナーや、特産品のぶどうや桃を使った菓子やほうとうなどを販売する「味」のコーナーなど、山梨の名品を4つのコーナーで紹介しています。「蔵」のコーナーには県産ワインのほか、地酒9社の銘酒の販売も。県内でも有数の品揃えなので、日本酒好きは要チェックです。
夕方に甲府城をお散歩していると、遠くに富士山の姿が見えました。「甲府は、どこからでも富士山が見守ってくれているのがうれしいね」と友里さん。「金峰山も楽しかったし、麓の魅力を知れば知るほど、また来たいって思えるね。お店の方もみんな優しかったなあ」「そうそう。ずんちゃんパンも人柄がにじみでているような、やさしいおいしさだったな」と甲府の魅力で話が弾みます。
おふたりの甲府の山旅はまだまだ続きます。9月に公開の第二弾の記事ではロープウェイハイキングができる羅漢寺山と、観光地として名高い昇仙峡をご紹介。もちろん甲府のグルメや観光情報も盛りだくさんです。お楽しみに!
*今回の甲府市満喫旅で2人が訪れたスポットはこちら
YAMAPでは期間限定で、甲府市×YAMAP『山のぼり・まち歩き』キャンペーンを実施中。これは、期間中に甲府市内の指定のランドマークを訪れることで、YAMAPアプリのデジタルバッジ(5種類)を3つ以上集めた方に、指定の配布場所で特製コラボ手ぬぐいがもらえるというキャンペーン。
実施期間は、2022年7月30日〜10月30日まで。デジタルバッジは「金峰山」の他、武田信玄にちなんで「風林火山」をモチーフにした全5種。全部で17か所のランドマークでゲットできます。
※ デジタルバッジとは…YAMAPヘルプセンター
※ YAMAPアプリで当該エリアの地図をダウンロードして活動日記を残すことでデジタルバッジが獲得できます。
※ 今回のキャンペーン対象地図につきましては、期間中(7月30日〜10月30日)、「地図のダウンロード制限」の対象外となります。この機会にぜひ甲府の山旅にでかけましょう!
※ 好評につき手ぬぐいの残数が僅かとなっております。なくなった場合は手ぬぐいを受け取れませんので、あらかじめご了承ください。(デジタルバッジは獲得できます)
詳細は以下の記事(甲府市×YAMAP|甲府の山を登って、まちを歩いて限定手ぬぐいを手に入れよう)をご確認ください。
原稿:池田菜津美
撮影:加戸昭太郎
モデル・イラスト:鈴木ともこ(Instagram:suzutomo1101/)
モデル:四角友里(Instagram:yuri_yosumi)
協力:甲府市