『ヤマノススメ Next Summit』第5話を登山ガイドが解説|武甲山・天覧山編

2022年10月4日よりアニメ最新作となる「Next Summit」シリーズが放送開始された、女の子だけのゆるふわアウトドアアニメ『ヤマノススメ』。第1話から第4話までは、過去に放送があったストーリーをもとに構成されていましたが、11月1日に放映された第5話からはアニメとして初めてのエピソードがスタート。今回は、第5話の舞台となった武甲山・天覧山や飯能市の魅力を、ヤマノススメの大ファンである山岳ライター鷲尾太輔さんが紹介します。

2022.11.02

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

INDEX

山に行きたくなる『ヤマノススメ』の魅力

本記事のライターよりごあいさつ

こんにちは、山岳ライターの鷲尾です。『ヤマノススメ』の舞台である埼玉県飯能市に住んでいた経験もあり、同作は単行本の第1巻刊行時から愛読してきました。雑誌連載・単行本化・アニメ化と歴史を歩んできた『ヤマノススメ』も、2022年10月より新作が放送開始。勝手に父親感覚で、キャラクターたちの活躍を見守っています。

『ヤマノススメ』とは

ヤマノススメ Next Summit キービジュアル(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

『ヤマノススメ』はイラストレーター・漫画家であるしろ氏原作のコミック作品。月刊漫画雑誌『コミック アース・スター』にて2011年8月から連載開始、アース・スター エンターテイメントより2012年6月から単行本刊行開始、TOKYO MXほか各局で2013年1月からアニメ第1期が放送開始と、ハイペースに多くのファンの心を掴んでいきました。

左:雪村あおい/右:倉上ひなた(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

メインキャラクターは高校入学をきっかけに再会した幼なじみの雪村あおいと倉上ひなた。ある日インドア派で高所恐怖症のあおいは、活発で登山好きのひなたに、2人が暮らす埼玉県飯能市の天覧山(195m)へと半ば強引に連れて行かれます。その頂上で苦手意識を抱いていたひなたと山への認識が変わったあおい。ここから高校の先輩であり北アルプスをソロで縦走するなど山の経験豊富な斎藤楓と、高尾山(599m)で偶然出会った中学生の青羽ここなも加わり、ストーリーが進むごとに様々な山へ登っていきます。

リアルな背景描写は聖地巡礼に最適

第1話にも登場した天覧山(撮影:鷲尾 太輔)

『ヤマノススメ』の大きな魅力のひとつが、極めてリアルな背景描写。原作コミックでは、作者のしろ氏自身がカメラで撮影した写真を元に山などの背景を描いています。その場所を訪れれば、誰もが作品そのままの景色を目の当たりにすることができるのです。

現実の風景そのままの作画(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

アニメ版の背景も同様に、実際の風景そのままの背景が描かれています。カラーになることでさらにリアル感が増し、充実した聖地巡礼(作品の舞台巡り)を楽しむことができるのです。『ヤマノススメ』の聖地巡礼をきっかけに登山を始めたという人も多く、タイトル通りに山登りの魅力を広く普及させた作品といえるでしょう。

第5話「武甲山で愛のムチ?」の舞台を探訪!

往路の車中であおいたちが見たのとほぼ同じ位置からの武甲山。この記事のトップ画像と見比べていただきたい(こういちさんの活動日記より

日本二百名山・武甲山

第5話後半であおいとひなたがあおいの母親・恵の運転で向かった武甲山(1,304m)。堂々とした三角形の山容は秩父地方のシンボルであり、日本二百名山にも選定されています。毎年12月に開催される例祭・秩父夜祭で知られる秩父神社の御神体とされる山で、山頂直下には武甲山御嶽神社があります。ひなたの台詞にもある通り山麓の羊山公園は、例年4〜5月に芝桜を楽しみに多くの観光客が訪れます。

今なお活発に行われている石灰岩の採掘(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

あおいを登山部に誘った先輩の小春による説明で触れられていましたが、武甲山は北側が石灰岩によって構成されています。セメントの材料として好適であったことから、明治時代から採掘が始まり、戦後の高度経済成長期にこれが最盛期をむかえます。北側斜面はこの採掘によって人工的に削られており、山頂自体も明治時代の1,336mという測量から低くなってしまいました。秩父石灰工業 武甲工場から石灰を搬出するダンプカーが、今なお山麓を行き交います。

3人が歩いた一ノ鳥居往復コース

武甲山の主要登山口・一ノ鳥居(シャチさんの活動日記より

今回3人が歩いたのは、登山口の一ノ鳥居に大きな駐車場があり、もっともメジャーな一ノ鳥居-武甲山 往復コース。あおいたちは恵の運転するクルマでアプローチしましたが、公共交通機関利用の場合は西武秩父線・横瀬駅か西武秩父駅からタクシーを利用しましょう。2022年4月に循環式浄化システムを採用した武甲山観光トイレが完成し、さらに快適になりました。地名の通り武甲山御嶽神社の一ノ鳥居があり、アニメでは鳥居周辺に鎮座する狛犬ならぬ狼もアップで描写されていましたね。

山頂までが壱丁目から五十二丁目に分けられた登山道(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

武甲山御嶽神社への表参道であったこのコースは、一ノ鳥居から山頂直下までが壱丁目から五十二丁目に分かれており、随所に設置された石標を見れば「まだこれだけ?」「あとひと頑張り!」がわかるようになっています。原作にもあった散歩中の“ちっこい犬”にあおいが抜かれたシーンはもちろん、アニメでは登山道沿いの風景がさらに細かく紹介されています。

スパルタな恵が水運びへの協力をあおいとひなたに命じた不動滝(としぞうさんの活動日記より

途中にある不動滝には、空のペットボトルが置かれています。山頂のトイレは雨水を利用しているため水不足になりがち。登山者にここで水を汲んで山頂まで運んでくれるよう、協力を呼びかけているのです。あおいとひなた(恵に4ℓの焼酎ペットボトルを渡された)に負けずに、武甲山に登る時にはトライしてみてはいかがでしょう。

この表記と異なり「あと60分」と記載された近くの看板にひなたがキレた(かずさんの活動日記より

このコースのシンボルでもある大杉を越えてもひたすら急登が続きますが、丁目を示す石標をはじめ次々と現れるアニメに登場する場所をモチベーションに歩きましょう。ひなたが「ヒョ〜!絶景〜!」と叫んだ山頂から見下ろす秩父の街並は、ぜひ自分の目で確かめてください。

原作派も必見!アニメオリジナルの設定&シーン

武甲山御嶽神社で記念写真を撮ってもらうひなた(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製委員会)

実はこの武甲山、原作(単行本第12巻・八十四合目「武甲山で特訓!?」)ではあおいと恵の母子だけで登頂しています。アニメでの設定は、ひなた推しには嬉しいですね。また原作では描かれなかった武甲山御嶽神社の立派な鳥居や社殿も、アニメでは美しい作画で登場します。

3人と同様にランチタイムは、まともに北風が当たりあまり広くない山頂よりも、森の中にある神社・山頂トイレ周辺がおすすめ。料理が得意な人なら、作中でトレーニングのためにあおいが背負った、恵お手製のサンドイッチ弁当を再現してみるのも楽しいですね。

山ガールファッションにも注目(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 制作委員会)

原作であおいと恵が武甲山を訪れたのは春、あおいはカットソー1枚で登山しています。しかし放送時期に合わせてアニメの設定は秋に変更。おなじみのウィンドブレーカー(あおい:淡いグリーン/ひなた:濃いイエロー)や、あおいのゲイター、ひなたのカーゴパンツなど、秋ならではのコーディネートにも注目してください。

とはいえこの武甲山は、あおいとひなたが(水を運んでいたということもあり)げっそりしながら登った、それなりに体力が必要な山。冬は登山道が凍結することもあり、登山初心者には少しハードルが高いコースです。

せっかくここまで読んだのに、私では無理かもーー!?という方も安心してください。後半は第5話前半で登場した「ふたりの始まりの山」天覧山(197m)を紹介します。しかもアニメの追体験を堪能すべく、一般的な登山コースとは異なるアニメのストーリーに忠実なルートをたどりますよ。

第5話「登山部からの挑戦!?」は登山初心者の聖地巡礼もOK

右:あおいを登山部に勧誘しにきた小春/中央:あおいを小春に紹介した楓(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

アニメオリジナルのコースで天覧山へ

原作(単行本第6巻・四十六合目「色々な登山」)よりかなり高めのテンションで、自らが部長を務める登山部へあおいを勧誘しにきた千手院小春。あおいに体力づくりのための天覧山(195m)へのランニングを一緒に体験することを提案します。自身は登山部への入部を断り続けている楓も、小春にあおいを紹介してしまった手前、あおいと一緒に走ることに。あおいがひなたと一緒に初めて登ったのは天覧山 往復コースですが、今回走ったのはアニメオリジナルのコースです。

鳥居越しに登山部の面々が駆け抜けた水種稲荷神社(撮影:鷲尾 太輔)

スタートは彼女たちが通う高校のモデルになった聖望学園。2022年夏に甲子園球場で開催された第104回全国高校野球選手権大会にも出場した、野球の強豪校でもあります。ランニングするあおいたちの服装も秋アニメバージョン。原作では半袖・短パンの体育着姿ですが、アニメでは季節に合わせてジャージの上下です。学校周辺にある水種稲荷神社の鳥居や馬頭観音・石橋供養塔の石碑も、リアルな描写で登場します。

夢馬に応援されながら走るあおい(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

飯能・狭山バイパス沿いでは、早くも先頭集団の登山部員に差をつけられて最後尾を走るあおい。森林文化都市・飯能市のイメージキャラクターである夢馬(むーま)がさりげなく沿道から楓やあおいにエールを送る HANNO HOMEの場所には、実際にホームセンターのカインズ飯能武蔵丘店があります。

あおいが散歩中のここなに出会った高架橋(撮影:鷲尾 太輔)

中山(西)の信号を左折すると、西武秩父線・東飯能駅〜高麗駅間の高架橋をくぐります。ここであおいがばったり出会ったのがいつもの散歩中のここなです。登山口まで伴走しながら日陰の凍結に注意するようあおいにアドバイスするここな、年少者ながらしっかり者のキャラクターが短いシーンながらもきっちり描かれています。

茶畑の中の登山口(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

作画そのままの登山口(撮影:鷲尾 太輔)

天覧山山頂直下の階段が連続する登山道では、早くも山頂から折り返してきた小春たちとすれ違うあおい。山頂直下に連続する階段も、途中のあずまやも背景に描き込みながら、実際の登山道に忠実な描写がなされています。

あおいが必死に登った階段(撮影:鷲尾 太輔)

あおいはふらふらになりながら、ひとりで山頂へたどり着きます。ただし、これはランニングしながら登ったから。ゆっくり歩いても、武甲山よりもはるかに短時間で、絶景の山頂に立つことができますよ。

富士山を望む初日の出スポットとしても人気の天覧山(イチローさんの活動日記より

天覧山の山頂にはコンクリート製の展望台があり、登場するキャラクターたちが暮らす飯能市街はもちろん、富士山も眺望することができます。毎年元旦は、初日の出の鑑賞スポットとしても賑わう場所でもあります。

あおいたちが走ったランニングコース

学校から天覧山へのランニングコース(出典:登山アプリYAMAP

第5話前半でのランニングコースのポイントを、YAMAPアプリの地図上に記入してみました。よろしければ聖地巡礼の参考にしてみてください。

①スタート&ゴールの聖望学園
②水種稲荷神社
③カインズ飯能武蔵丘店
④西武秩父線高架橋
⑤茶畑の中の登山口
⑥山頂直下の急な階段

人それぞれの登山の形

3人とも登山部には入らないけれども(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

ランニングに精一杯で景色を見る余裕もないーー自分のやりたい登山の形とは違うと感じたあおいは、登山部への入部を断って楓とともに学校を後にします。校門で待っていたのは、これまた「私のやりたい山登りとはちょっと違う」という理由で入部を断った経験のあるひなたでした。ストイックな登山部のスタイルとは違うけれども、あおい・ひなた・楓それぞれの登山の形があって、それぞれのペースで楽しんでいるのです。

普段は飯能から離れた高崎に暮らすほのか(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

最後にあおいが想いを馳せた群馬県高崎市に暮らす黒崎ほのかも、写真撮影の趣味をきっかけに登山に出かけたことから知り合った友達。まさに十人十色の「人それぞれの登山の形」をすべて受け入れてくれる山の懐の深さと、それぞれの形で山に魅せられた彼女たちの友情を実感できる、アニメならではの演出が光るエンディングでした。

それではまた次回、第6話もお見逃しなく!

そして、11月5日(土)〜6日(日)には2年ぶり、第50回となる「飯能まつり」も開催予定。これにあわせて飯能市商店街連盟では、まつり衣装に身を包んだあおい・ひなたのパネル展示など登場キャラクターを巡るスタンプラリーも11月5日(土)〜27日(日)に開催されます。

山を歩くなら、登山地図GPSアプリYAMAP

YAMAPは電波が届かない山の中でも、自分の現在地とルートがわかる登山GPS地図アプリ。登りたい山を見つけたり、山の友だちをつくったり、初心者から上級者まで楽しめるコンテンツを楽しんだり、山歩きに関するあらゆることが詰まっている、日本最大の登山・アウトドアプラットフォームです。(2022年11月時点で330万ダウンロード)

YAMAPの「ヤマノススメ巡礼マップ」も活用を!

YAMAPでは、過去のアニメ(サードシーズン)に登場した山をアニメのストーリーに沿って歩ける「ヤマノススメ巡礼マップ」もリリースしています。楽しく安全な聖地巡礼登山のパートナーとして、ぜひ活用してください。

ヤマノススメ巡礼マップ(筑波山)
ヤマノススメ巡礼マップ(天覚山・大高山・子の権現)
ヤマノススメ巡礼マップ(赤城山・地蔵岳)
ヤマノススメ巡礼マップ(瑞牆山・金峰山)

『ヤマノススメ Next Summit』放送・配信情報

TOKYO MX:毎週火曜日24:30~
MBS:毎週火曜日26:30~
BS11:毎週火曜日24:30~
ABEMA:毎週火曜日24:00~
ほか、各種配信サービスにて順次配信中

©しろ/アース・スター エンターテイメント/『ヤマノススメ Next Summit』製作委員会

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイドやギアレビューから山登り初心者向けのノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」から、写真撮影・山岳信仰・アウトドアクッキングなど「登山+αの楽しみ」まで、幅広いテーマの講習会を開催しています。とはいえ登山以外では根っからのインドア派 ...(続きを読む

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイドやギアレビューから山登り初心者向けのノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」から、写真撮影・山岳信仰・アウトドアクッキングなど「登山+αの楽しみ」まで、幅広いテーマの講習会を開催しています。とはいえ登山以外では根っからのインドア派…普段は音楽・アニメ・映画鑑賞や、読書・料理・ギター演奏などに没頭しています。