『ヤマノススメ Next Summit』第7話を登山ガイドが解説|日和田山・高尾山編

2022年10月4日よりアニメ最新作となる「Next Summit」シリーズが放送開始された、女の子だけのゆるふわアウトドアアニメ『ヤマノススメ』。今回は、11月15日に放映された第7話を振り返りながら、アニメの舞台となった日和田山・高尾山の魅力を、ヤマノススメの大ファンである山岳ライター鷲尾太輔さんが紹介します。

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2022.11.16

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

INDEX

キャラクターたちの成長も『ヤマノススメ』の魅力

左から:青羽ここな、雪村 誠(あおいの父)、雪村あおい、倉上ひなた(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

それぞれの成長過程を見守る

『ヤマノススメ』の魅力のひとつが、登場するキャラクターたちの成長過程。さまざまな山に登りながら少しずつ経験を重ねていく彼女たちの姿に、胸が温かくなるファンも多いのではないでしょうか。アニメ最新作となる『ヤマノススメ Next Summit』第7話では、主人公の雪村あおいと倉上ひなたは高校1年生、登山仲間の青羽ここなは中学2年生の冬休みを迎えます。

雪村あおいの成長

雪村あおい(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

『ヤマノススメ』に登場するキャラクターの中でも、その成長過程からひときわ目を離せないのが雪村あおい。何しろわずか9ヶ月前の高校入学までは、山とは無縁のインドア派かつシャイな性格だったのです。いつもひとりで本を読んでいたり、編み物をしていたり、机で突っ伏していたり、誰かと目が合っても気まずそうに下を向いてしまう…。中学校時代のあおいは、そんな少女でした。

左手前:倉上ひなた/右奥:雪村あおい(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

そんなあおいが、高校入学をきっかけに再会した幼なじみの倉上ひなたに半ば強引に誘われて、地元の天覧山(197m)に登ったのが『ヤマノススメ』のアニメ第1話(単行本第1巻)。ここから、あおいの登山が始まりました。アニメセカンドシーズン(単行本第3巻)では富士山で高山病にかかり、あおい以外のひなた・ここなだけが登頂するという挫折も経験したあおい。今回はそんな彼女の成長にも注目しつつ、第7話を振り返りましょう。

第7話「初日の出、どこで見る?」の舞台・日和田山

観音寺の白い象(撮影:鷲尾 太輔)

白い象がいるお寺

第7話は、あおい・ひなた・ここなの3人が、美しい夕焼け空を背景に白い象がいる鐘楼の前で、大晦日の予定を話し合うシーンから始まります。ここは飯能市内にある「般若山 長寿院 観音寺」というお寺の鐘楼。西武池袋線・飯能駅から天覧山に向かう途中にある大きなお寺なので、聖地巡礼の際に参詣してみるのも良いでしょう。

あおいの父・誠の提案で日和田山へ

ひなた・ここなをあおいと一緒に迎える父・雪村誠(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

観音寺での約束通り、大晦日にあおいの家に集合したひなたとここな。当初は天覧山での初日の出を予定していましたが、あおいの父・誠から「大混雑で展望台が足の踏み場もないくらいになる」と聞かされます。代わりに誠が提案したのが、飯能市の隣・日高市にある日和田山(305m)です。作中では誠の運転で向かいますが、車がなくても飯能駅から2駅の西武秩父線・高麗駅から徒歩約15分で登山口に到着します。

田部井淳子さんの碑(撮影:鷲尾 太輔)

アニメには登場しませんが、誠が車を停めた登山口駐車場には、女性初のエベレスト登頂と世界七大陸最高峰登頂を成し遂げた登山家・田部井淳子さん(2016年没)の碑があります。ロッククライミングの練習場もある日和田山は、田部井さんが若かりし頃から晩年まで足しげく通った山なのです。山ガールという言葉ができる遥か前から活躍していた田部井さん。あおいやひなたの先輩で、真冬の八ヶ岳で年越しをした斎藤楓には、田部井さんのような登山家になる素質があるかもしれませんね。

一の鳥居(撮影:鷲尾 太輔)

登山口から一の鳥居までは斜面を左回りに巻くように登る、砂利が敷き詰められた歩きやすい登山道が続きます。斜面を直登する踏み跡もいくつかありますが、特に初日の出観賞など薄暗いうちから登る場合は、この正規ルートをたどるようにしましょう。ここでは鳥居の上を見上げてみてください。コントロールの良い人が投げ上げたと思われる、たくさんの小銭が乗っていますよ。

いざ!岩場の続く男坂へ

男坂・女坂の分岐(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

一の鳥居をくぐると、山頂へ向かう2つのコース・男坂と女坂の分岐点です。あおいとひなたが寝坊したため(原作では誠が寝坊)日の出時刻が迫り、先を急ぐ一行は「ハードだけど、ちゃっちゃと登れそうな気がする」というひなたの提案にここな・あおいも賛同して男坂をめざすことに。

岩場が連続する男坂(撮影:鷲尾 太輔)

ひなたが「後で飲もうぜ」と言った水場まではゆるやかな下り道の男坂ですが、ここから先は木の根も張り出した傾斜の急な岩場の始まりです。鎖・ハシゴ・ロープなどは設置されていませんが手で岩を掴んで登る場所もあるので「軍手を持ってくれば良かったですね」というここなの言葉通り、手袋があった方が安心です。

岩場のペンキマークも忠実に描写(ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

アニメに登場したペンキマークを探すのも楽しみ(撮影:鷲尾 太輔)

実際の風景にきわめて忠実な背景描写も魅力の『ヤマノススメ』。岩に描かれたルートを示すペンキマークを探してみるのも楽しみです。ただし何通りかのルートどりができる区間もあるので、思わず通り過ぎてしまうこともあるかも知れません。そんなファンの皆様へ、ここで耳よりのワンポイント情報です。

この岩を見逃さないように(撮影:鷲尾 太輔)

アニメには登場しませんが、この「左右どちらに行ってもOK」のペンキマークがある岩をお見逃しなく。ここは、右のルートへ進んでください。すると……

「もう少し」のペンキマーク(撮影:鷲尾 太輔)

アニメで描かれた「もう少し」のメッセージが描かれた岩を見つけることができますよ。この先でルートはひとつに合流して、男坂終盤の岩場へと続きます。最後に斜度のきつい大岩が現れますが、左から右へ横切るようにルートが刻まれています。

最後の大岩を越えるあおいたち(ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

このあたりのシーンは、アニメでのあおいたちの動きも参考になります。この大岩を越えると前方に見えてくるのが二の鳥居。奥に金刀比羅神社があり、鳥居越しに下を見ると秋の彼岸花で知られる日高市の名所・巾着田も望むことができる、日和田山のシンボル的存在です。傾斜がゆるくなった岩場を登り切った二の鳥居で、男坂と女坂が合流します。

男坂から見上げる二の鳥居(撮影:鷲尾 太輔)

ここでのあおいの発言・行動とその後の展開はアニメオリジナル。ポジティブ思考で山に向き合う、あおいの成長を感じ取ることができます。

初日の出は山頂で!あおいの成長が際立つアニメオリジナルの展開

初日の出を待つ人で大賑わいの二の鳥居(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製委員会)

ようやく到着した二の鳥居ですが、先に登っていた初日の出待ちの人々だらけで見る場所がない状況。原作では「ここからギリ見れるかな?」と人混みに加わって、4人は二の鳥居で初日の出を鑑賞してエンディングをむかえます。

あおいが山頂まで行こうと提案した場所(撮影:鷲尾 太輔)

しかしアニメでは“山頂 0.3km”と書かれた看板を見たあおいの「まだ上がある。日の出までちょっと時間があるし、どうせなら山頂まで行ってみよう!」という発言をきっかけに、ひなた・ここな・誠も山頂をめざすことに。これまでどちらかというと活発な性格のひなたに引っぱられることが多かったあおいですが、ここでは自らの提案で行動して山でもリーダーシップを発揮するのです。

日和田山の山頂直下(撮影:鷲尾 太輔)

ひなたを先頭に山頂に到着した4人。大きな宝篋印塔がシンボルの日和田山の山頂は、実際に東側の樹林が大きく開けており初日の出鑑賞には好適です。何とか場所を確保して日の出を待つシーンでは、あおいがひなたに富士山頂からのご来光の様子をたずねるやりとりが原作通りに描写されています。

初日の出に照らされたひなた・あおい・ここな(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製委員会)

あたたかな日の光を浴びながら、新年を祝うあおい・ひなた・ここなの3人。その様子を見守りながら「帰りは女坂でもいいか?」とあおいに尋ねた誠も、この初日の出登山を通じて、娘の成長を実感したのではないでしょうか。

第7話「クラスメイトと山登り!」の舞台・高尾山

今回のキーパーソンは右端のかすみ(提供:『ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

あおいがクラスメイトを高尾山へ案内

新年早々、あおいはクラスメイトのみお・ゆり・かすみから「山登りが好きでしょ」と、ひなたと一緒に高尾山(599m)への初詣に誘われます。原作(単行本第10巻・六十五合目「クラスメイトと初詣!?」)ではみおからの誘いでしたが、アニメではかすみからの電話。原作でのズバズバ発言キャラな側面はそのままに、アニメではクールビューティーな表情も見せますが、今回のキーパーソンである点は変わりません。

原作では旧駅舎だった高尾山口駅もアニメでは新駅舎で登場(撮影:鷲尾 太輔)

集合場所の東飯能駅で登山装備の準備も万端に待つあおい。しかし、みお・ゆり・かすみは登山には程遠いアーバンな服装で登場します。ケーブルカーで登るつもりだった3人に拍子抜けするあおいをひなたが茶化すのが、高尾山の最寄駅である京王線・高尾山口駅。原作が『コミック アース・スター』に掲載された当時は旧駅舎だったこの駅も、アニメでは2015年4月にリニューアルされた現在の駅舎で描かれています。

初詣の時期以外でも行列の絶えないケーブルカー(撮影:鷲尾 太輔)

ケーブルカー(高尾登山電鉄)乗り場までやってきた一行ですが、早くも乗車を待つ人で大行列。ここで原作でのみおに代わって「歩いて登ったりしないの?」と、遠慮がちながらも口火を切ったのがかすみでした。登山に適さない服装を気にするあおいですが、みお・ゆりもノリノリで賛同。登山道が舗装されている1号路なら大丈夫ではというひなたの意見もあり、5人は歩いて高尾山をめざします。

かすみに対するあおいの口調の変化に注目

かすみの肩掛けかばんを持って1号路を登るあおい(ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

アニメの描写通りにジグザグの急坂が続く1号路(撮影:鷲尾 太輔)

舗装されているとはいえ、1号路は意外と急な上り坂。特に道がジグザグになっている区間では、勾配が一気にきつくなります。気合いで登るみお・ゆりとそれを励ますひなたですが、かすみだけが徐々に遅れてしまいます。ここであおいは思い切ってかすみに「あの、かばん持ちますよ」と声をかけ、かすみの肩掛けかばんを受け取ります。同学年にも関わらず、ここまであおいはかすみに対して敬語で接していました。

自分のペースを守るようタメ語でアドバイスするあおい(ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

みお・ゆり達に追いつくために急ごうとするかすみに、去年初めて高尾山に登った時の自分自身を重ね合わせ「焦らないで、自分のペースで大丈夫だよ」とアドバイスするあおい。そう、ここであおいのかすみに対する言葉が敬語からタメ語に変化するのです。

去年の高尾山では急ぐあまり“即効へばった”ことをひなたに持ち出されて「私の成長ぶり、見せてあげるわ!」とムキになったあおいですが、まさにこれを有言実行。登山の経験を通じて自信がつき、クラスメイトのサポートまでしている……あおいの心境の変化が垣間見えた瞬間です。

山登りで自信をつけたあおいを見直すかすみ(ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

かすみも驚くことなく「あおいちゃん、流石だね」と応じ、展望台がある霞台園地では「中学の時とは別人みたいだった」と形容します。ここから回想される中学時代のあおいは、冒頭で紹介した通りの性格。中学・高校と4年近く一緒に過ごしてきたクラスメイトたちも、この高尾山での初詣を通じて、あおいの成長を実感したのです。

薬王院で初詣!かすみとあおいの願いごととは

かすみのことをもっと知りたいと願いながらあおいが潜った願叶輪潜(撮影:鷲尾 太輔)

いよいよ一行は薬王院へ向かいます。正式名称は「高尾山 薬王院 有喜寺」と言い、8世紀に開かれた由緒ある寺院。このご神域であったことから、高尾山の豊かな自然は大切に保護されてきたのです。みおのスマホカメラ目線で切り取られた、さる園・ひっぱり蛸・参道の灯籠・山門・願叶輪潜(ねがいかなうわくぐり)・仁王門などアニメの描写そのままの風景を楽しみながら、ファンの皆様も薬王院へ参詣してみてはいかがでしょう。

仁王門を通り本堂へ(撮影:鷲尾 太輔)

今回の目的は初詣ということもあり、ゴールは高尾山頂ではなく薬王院の本堂。ここであおいに願いを聞かれ「2年になっても、みんなと一緒のクラスになりたい」と答えたかすみ。2年生への進級も間近に迫り、あおいの胸にも「みんなとバラバラになるかも知れないんだ」という切ない想いがこみあげます。

5人で記念撮影(ヤマノススメ Next Summit』 製作委員会)

「クラスが分かれても、また来ようよ!高尾山」というみおに呼応して、ゆりとひなたは早くも次の登山へ想いをめぐらせます。そんなひなたとも会話しつつ、かすみに「次も一緒のクラスになれるといいね」とそっと声をかけるあおい。同じ願いを込めて、2人は合掌するのでした。ここで撮影した集合写真を後日スマホで見返し微笑むかすみと、画面に映し出された5人の笑顔……素敵なラストシーンでしたね。

それではまた次回、第8話もお見逃しなく!

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ヤマノススメ巡礼マップ(赤城山・地蔵岳)
ヤマノススメ巡礼マップ(瑞牆山・金峰山)

『ヤマノススメ Next Summit』放送・配信情報

TOKYO MX:毎週火曜日24:30~
MBS:毎週火曜日26:30~
BS11:毎週火曜日24:30~
ABEMA:毎週火曜日24:00~
ほか、各種配信サービスにて順次配信中

©しろ/アース・スター エンターテイメント/『ヤマノススメ Next Summit』製作委員会

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイドやギアレビューから山登り初心者向けのノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」から、写真撮影・山岳信仰・アウトドアクッキングなど「登山+αの楽しみ」まで、幅広いテーマの講習会を開催しています。とはいえ登山以外では根っからのインドア派 ...(続きを読む

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイドやギアレビューから山登り初心者向けのノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」から、写真撮影・山岳信仰・アウトドアクッキングなど「登山+αの楽しみ」まで、幅広いテーマの講習会を開催しています。とはいえ登山以外では根っからのインドア派…普段は音楽・アニメ・映画鑑賞や、読書・料理・ギター演奏などに没頭しています。