やまポトレ#3 | 山を行く人のポートレートと山を行く理由

冬山シーズンも真っ只中。各地から雪山登山の報せが舞い込むなか、編集部は八ヶ岳連峰の北横岳(2,480m)へ。気温は氷点下。このような中で山に来る登山者は、相当な山好きに違いありません。冬の八ヶ岳で出会った人たちに「なぜ山に登るのか?」を伺う『やまポトレ』取材、後編をお届けします。

2023.02.02

YAMAP MAGAZINE 編集部

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スタイルは違っても、同じ山を一緒に楽しみたい

見るからにスピード感溢れるアスリートのような出立ちの男性と、かわいらしい女性ハイカー。この異色の組み合わせに惹かれて思わず声をかけたのは、「スカイランナー」のつばささんとハイカーのゆりかさん。

つばささんは海外のレースに本格参戦するほどのランナーで、ふたりはつい数か月前に関東から長野に移住してきたばかりなのだとか。そして月に1度のペースでふたりで一緒に山を楽しんでいるのだそう。

まず気になったのが、スカイランニングのスタイル。防寒着やスノーギアで装備を固めている登山者とは一線を画す見た目に興味津々の編集部。

「山を走るというと、距離の長いトレイルランニングをイメージすると思います。スカイランニングは、距離の長さというよりは、どれだけ垂直方向の標高差がある高い山を一気に駆け上るかという競技です。快速登山とも呼ばれています。今日、基本はトレラン装備です。足元だけ雪山仕様にして登りにきました」

「やっぱり好きなのは、高山の景色ですね。八ヶ岳の赤岳(2,899m)と横岳(2,830m)の稜線を登っているときに、高山帯の厳しくも美しい風景がかっこいいなって目に焼きついてしまって。その山行で世界観がガラッと変わりました。高い山っていいなって(笑)。

奥穂高岳(3,190m)に行ったときは、西穂高岳(2,908m)からジャンダルムを縦走していったのですが、高所ならではのスリルというか、切り立ったところを歩く楽しさを感じました」

「お気に入りの装備は、冬山を走るためのこのシューズカバーですね。トレランシューズの上に着用するもので、セミオートのクランポンも装着できるんです。アプローチはトレランシューズ、雪が出てきたらこのカバーを使ってマウンテニアリング、ピークハントを。冬山でもファスト&ライトな感じが好きですね」

やまポトレVol.11|つばささん

年代:20代
職業:製造業
好きな山:赤岳、奥穂高岳
お気に入りの山道具:スカイランニングのシューズカバー

「勤めていたのは東京だったのですが、長野が本社の会社だったので、希望を出して移住してきました。まだ数か月なのですが、山の近くにいないと見られない景色や自然の美しさがあって、知らなかった世界に毎日のように感動しています」

スカイランニングをするつばささんと対照的な登山スタイルのゆりかさん。「もともとランニングはやっていたのですが、山を走るほどではないので(笑)。たまにゆるい山に一緒に行く感じです。好きな山は蝶ヶ岳(2,677m)です。山頂の景色も感動的だったのですが、オコジョをはじめてみたのが蝶ヶ岳だったので、とても印象に残っています」

「お気に入りのアイテムはバックパック。デザインが好きで、軽いのもポイントです。日帰りも、小屋泊もこれで行っています」

やまポトレVol.12|ゆりかさん

年代:20代
職業:製造業
好きな山:蝶ヶ岳
お気に入りの山道具:RawLow Mountain Worksのバックパック

登山のレベルを上げて憧れの山を登るために

ロープウェイの山頂駅で、ひときわ大きなバックパックで現れたしんじさん。なんと、冬山のトレーニングのために麓からラッセルで雪をかき分け登ってきたのだそう。ハードな山行をしながらも笑顔いっぱいで山の魅力についてお話しいただきました。

「登山歴は5〜6年ですね。山に登るきっかけは、野外救急医療の勉強会に参加したことなんです。受講者に登山ガイドの方がいて、『登山、面白いよ!』って誘われて行ってみたらすっかりハマってしまいました(笑)。仕事は農業です。夏はとうもろこし、冬は野沢菜ですね。農家ということもあり、農閑期の冬の方が山には行きやすいです」

「人生が変わったと感じた山は、焼岳(2,444m)ですね。はじめての本格的な登山で、山頂はピーカンの快晴。眺めがよくてまた登りたくなってしまいました。最初ということもあり、一番印象深いですね。住んでいるのが長野県の伊那市ということもあり、山行は八ヶ岳がメインで、南アルプスや中央アルプスも。今年は北アルプスの燕岳(2,762m)や雲ノ平にも行きました」

ロープウェイも使わず、しかもラッセルで登ってくるとはまさに猛者。しかし山へと向き合う姿勢は謙虚のひとこと。「今はトレーニングをたくさんしたい。冬の北アルプスにも登ってみたいので、技術も体力ももっとつけたいと思っています。まずは知っている山で下積みを。今日は冬の装備一式を担いでいます。救急セット、防寒着、プローブと補助ロープ、ハーネス、食料……、かなり重いです(笑)」

「最近はフィルムカメラで写真を撮っています。独特の質感が好きなんです。現像するまでわからないのが楽しくて。アナログ派なんですよね。好きな山は、よく行く八ヶ岳です。ほかには、はじめて雷鳥を見た南アルプスの仙丈ヶ岳(3,032m)も。人工物も登山者も少なくて、まさに山!という奥まった感じの景色がお気に入りです」

やまポトレVol.13|しんじさん

年代:30代
職業:農業
登山歴:6年
好きな山:八ヶ岳、仙丈ヶ岳
お気に入りの山道具:はじめて買った夏山用の登山ブーツ、フィルムカメラ

ふたりで楽しめる共通の趣味として

こだわりが随所に感じられるコーディネートが光るふたりは、ITの会社でエンジニアをつとめるりょうさんと、カスタマーサポートをしているゆきさん。日頃はロードバイクが趣味というりょうさんが、ふたりでできるアクティビティをということで一緒に登山をはじめたのだそう。

山に登るようになったのは3年ほど前からだというふたり。「ロードバイクが趣味なのですが、運動強度が高いので、もう少しリラックスして楽しめる遊びとして登山をはじめました。最初は丹沢などの関東の低山からスタートして、今では雪山にも登っています」

「思い出深いのは、3泊4日で歩いた雲ノ平ですね。長く山にいられましたし、街や文明社会と隔絶されている感じがよかった。折立から新穂高の方に抜ける定番ルートでした。天気がよければ月に3回くらいは山。悪いときはロードバイクに乗っています」

「お気に入りの山は、西丹沢の畦ヶ丸山(1,292m)。自宅からアクセスがいいのと、沢沿いを歩けて、滝も見られて、人が少ないのが好きなポイントです」

やまポトレVol.14|りょうさん

年代:40代
職業:システムエンジニア
登山歴:3年
好きな山:雲ノ平
お気に入りの山道具:MOUNTAIN COLLECTORのハンカチ

「私も、雲ノ平を歩いたのが思い出深い山行です。景色も良くて、楽しかったですね。彼ほどハードな山行ができないので、強行で1泊で行くような山行のときは、私は家で映画を見ています(笑)。山という趣味は共通ですが、一緒に行くときはゆっくり楽しめる計画を立ててくれているので助かっています」

おそろいのジャケットが目を引くふたり。こだわりはたくさんありそうですが……。「お気に入りの山道具は、ハンカチです。それぞれ4枚ずつくらい持っていて、どの山に行くときも必ず持っていきます。首に巻いたりしてもいいですし、縦走登山で何日も山を歩くときでも、乾きが早いので洗って使っています」

「山の魅力は、解き放たれている感じがすること。携帯電話の電波も入りませんし、日常生活から切り離される時間が好きなんです」

やまポトレVol.15|ゆきさん

年代:40代
職業:ITカスタマーサポート
登山歴:3年
好きな山:雲ノ平
お気に入りの山道具:MOUNTAIN COLLECTORのハンカチ

やまポトレ取材を終えて|山があって本当によかった…

晩夏の上高地につづいて、冬の八ヶ岳から『やまポトレ』をお届けしました。今回はお気に入りの山や、山でのエピソードもお伺いしました。山に登る者誰もが心に秘めている、山に魅せられる理由、思い出を聞いていると、「山があってよかった」とあらためて思います。やまポトレ企画はまだまだつづきます。山でお会いしたら、ぜひあなたの「山に登る理由」を聞かせてくださいね!

取材日:2022年12月25日

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。