宮崎市は「青島」を中心とした海のみならず、実は魅力的な里山や渓谷があり多様なアウトドアが楽しめるエリア。今回は、九州の名峰として名高い「韓国岳」と、市内から気軽に登ることができる「双石山」に登る山尽くしの1泊2日の山旅を、山岳収集家の鈴木優香さん、ジュエリーデザイナーの宮田有理さんとともにご紹介します。
また、宮崎市ではYAMAPとコラボした「宮崎市デジタルバッジキャンペーン」を実施中。キャンペーン期間中(2023年11月1日〜2024年1月31日)に宮崎の山と街を巡ると限定バッジや特製ワッペン&ジップケースがもらえます。詳しくは本記事の最後にあるキャンペーンページへのリンクからご確認ください。
2023.11.27
米村 奈穂
フリーライター
韓国岳は日本百名山霧島山の一つである。霧島山という独立した山はなく、鹿児島県と宮崎県の県境に連なる火山群を総称して霧島山という。
主な峰は、高千穂峰や大幡山、活発に火山活動を続ける硫黄山、新燃岳などがあるが、全体では20を越える火山で構成されている。霧島山は、瀬戸内海、雲仙とともに日本で初めて国立公園に指定され、その最高峰が韓国岳だ。
韓国岳へは、海沿いにある宮崎ブーゲンビリア空港から車で約1時間30分。宮崎市内から少し足を延ばすだけでアクセスできる。海から山へひとっ飛びなのだ。
霧島山は霧島ジオパークエリアの中央に位置する。ジオパークとは、地形や地質から地球の歴史をひもとき、私たちの未来へ活かす場所のこと。自然がもたらす地質資源を知ることで、それらを保護しながら活用していく取り組みがこの地域にはある。
霧島山は火山が折り重なってできており、「火山とは何か」を知るには最適な場所。度重なる噴火は、多様な環境や生態系をもたらす。今も活発に活動を続ける新燃岳の周辺では、噴火によりリセットされた自然がどう再生していくかが見どころとなっている。
火山は、温泉や湧水、地熱エネルギーなど、さまざまな恵みを山麓に与えると同時に、噴火という脅威ももたらす。そして、その山と里のつながりは、自然を畏れ敬う信仰も生んだ。霧島山のまわりに点在する神社の存在は、その信仰を今に伝えている。
鹿児島県と宮崎県南部の田んぼのあぜ道で見ることができる、しゃもじやお椀を手にした素朴な石像「田の神さあ」。田の神は、冬は山麓に恵みをもたらす山の神となり、春になると里におりて田んぼの神となり、豊作をもたらすと信じられてきた。
ドライブしながら、地域によりさまざまな表情をした「田の神さあ」を探してみるのも楽しい。
今回一緒に登るのは、山岳収集家の鈴木優香さんとジュエリーデザイナーの宮田有理さん。どちらも山に登り、山をモチーフにした作品をつくる。二人は、火山がつくりだした大地に登り何を感じるだろう。
※冬季は積雪の可能性があります。事前に情報を確認し、アイゼンなどの適切な装備を携行しましょう。
※火山活動が盛んなため、登山の際はえびの高原エコミュージアムのホームページをチェックしておきましょう。
えびの高原から登る韓国岳のメインの登山道は、この夏、噴火警戒レベルが1から2に引き上げられ立ち入りが規制された。よって今回は、えびの高原から少し南下し、つつじヶ丘登山口から登る。最初は山麓をトラバースするようにゆっくりと高度を上げ、後半で一気に登るメリハリのあるルートだ。
登りはじめは、美しい森のなかを抜ける緩やかな登山道を歩く。朝の柔らかい光に包まれて、森がキラキラ光っている。やっぱり登山は早立ちに限る。
カメラを構えながらゆっくりと進む二人。宮田さんと鈴木さんの視点の違いは、二人がカメラを向けた先を見るとわかる。鈴木さんは遠くと近くをいったりきたり。宮田さんは主に木の枝や葉を。作品のモチーフを自然と追っているように見える。鈴木さんが、色づいた小さな葉っぱを丁寧に拾って撮影した。山岳収集家の鈴木さんの家には、山中で拾ったものたちを入れたA4サイズの箱が山積みだそう。引っ越しも大変なのだと笑う。
森を抜けると、立派な避難小屋のある分岐に出た。その先は木の階段の急登が続く。階段に差し掛かったとたん、スイッチが入ったようにサクサクと歩き出した宮田さん。聞くと「止まると腿が…。止まらない方が楽なんです」とのこと。ペースは速くなり、背後の大浪池がどんどん小さくなっていった。
唯一の難所はこの階段ともいえる。きついけれど、振り返ると霧島の絶景が目の前に広がり、高度を上げるにつれ火山の大地が顔を出してくる。南東には細い噴気を上げくすぶる新燃岳が見える。朝の柔らかい光に包まれた森と、噴気を上げる火山の大地。短い時間で景色のコントラストを楽しめるのが韓国岳の魅力だ。
頂上は360度の大展望。晴れていれば南には噴煙を上げる桜島や、薩摩富士とも呼ばれる開聞岳(924m)が、北方面には九州山地や雲仙岳が見えることも。目を凝らすけれど、今日は霞んで雲なのか噴煙なのかもわからない。正面にそびえる天孫降臨の地、高千穂峰も、雲の中から顔を見せたり隠したり。神様は見えないくらいがちょうどいい。
火山がつくった大地を歩いた後、その大地から湧くお湯に足を浸けてみた。水や温泉に農作物。日々、私たちの生活にもたらされる山からの恵みは、山麓の人々が、厳しい自然の中でそれらを活かし、守り続けてきたからこそいただけるもの。力強い山を歩くと、それが当たり前ではないのだと改めて思う。
夜は宮崎グルメを堪能するため、宮崎最大の歓楽街「ニシタチ」へ。夜毎お祭りのようにともされる提灯の明かりに、吸い寄せられるように人が集まってくる。
そして宮崎の夜の街には「スナック文化」なるものがある。人口10万人あたりのスナックの数が日本一だったこともあるという。下山後にスナックに立ち寄れるのも、山と街が近い宮崎ならではの楽しみ方。
最後にたどり着いたのは、女性一人でも入りやすそうな気さくなママのいる「ブルーボイス」。なんとママは、NHKのど自慢大会で優勝した経験があるほど歌がうまい。そして驚いたのが、一人でアンプを持ち運び、各地で路上ライブを敢行するのだ。そんなママを慕って女性一人のお客さんや、子ども連れのお客さんも来られるのだとか。きっとみんなママに元気をもらいに来てるんだろう。宮崎のスナック文化に触れて、少しスナックのイメージが変わった。
翌日は、宮崎市街地から車で30分ほどの場所にある地元民の山、双石山(ぼろいしやま)に登った。塩類風化が作り出した奇岩と天然記念物の森に囲まれ様々な表情を見せる双石山は、低山ながら登りごたえのある面白い山だ。
双石山の詳細は、別の記事で紹介しているのでぜひご参考に。双石山で奇岩の絶景を堪能したあとは一気に海まで下り、宮崎の代表的な観光名所、青島へ向かった。
※双石山には鎖場が多数あります。登る際は、きちんとした登山用の装備を用意しましょう。
※双石山に登るルートは「小谷登山口-双石山 往復コース」を推奨しています。コースから外れないように十分注意しましょう。
海にかかる橋を渡り青島へ。島自体がご神体の青島へは、かつては神職しか渡れなかったという。周囲1.5キロほどの小さな島には200種類以上の植物が確認され、島を覆う亜熱帯性植物群落が国の特別天然記念物に指定されている。島の中央には青島神社が鎮座する神聖な島だ。
島を囲む奇岩「鬼の洗濯板」は、今日登った双石山と同じ海底の堆積岩が隆起したもの。波によって軟らかい泥岩層は侵食され、硬い砂岩層が残りこのような形に。同じ岩盤でも、場所により削られ方が変わり形も変わってくる。海と山が近い宮崎ならではの自然の不思議を感じる。鈴木さんは、「ここでずっと石を拾っていたい」と、海の底を終始眺めていた。
歩き疲れて小腹が空いたところで、青島駅のすぐ側のタコス屋さん「サンバルコ」へ。宮崎は食べたいものが満載で、お腹がいくつあっても足りない。夜ご飯前にはちょっとつまめるタコスくらいがちょうどいいかもと思い訪れてみたところ、もうここで夜ご飯にしてしまおうかと思うくらいおいしいお店だった。
本場メキシコまで研究に行くというこだわりのタコス生地は、製粉から焼くまでを店でおこなう。焼いた後、おひつで蒸らしモチモチ感を出すのはオリジナル。タコスの他にも、マンゴーチキンカレーやパスタ、タコライスなどもある。
ちょうど店内では、宮崎在住のカメラマンによる展示会があっていて、海外かと思うような美しい宮崎の海の写真が飾られていた。お店も海まで歩いてすぐの場所にある。タコスをテイクアウトして海で食べるのもいいかもしれない。
お腹を満たしたあとは、食後のデザートを。シロップから練乳にいたるまで自家製のかき氷屋さん「宮崎氷菓店」。流行りのかき氷と思えば大間違い。白砂糖は使わず無添加にとことんこだわる。トッピングのフルーツは、その季節にいちばんおいしいものを厳選するため限定メニューが多い。足繁く通いたくなるお店だ。(冬季の営業は要問合せ)
宮崎の山旅は、山と海のつながりを強く感じることのできる旅だった。前に地質学者が言っていた、「海の水を抜けば全て山」という言葉を思い出しながら、宮崎をあとにした。
1日目:
■ 宮崎空港から出発(羽田空港6:50発→宮崎空港8:40着)
■ つつじヶ丘登山口から「韓国岳」登山
■ 「足湯の駅えびの高原」にて足湯と軽食・お土産購入
■ ナイトスポット「ニシタチ」で宮崎名物とスナック文化を堪能
2日目:
■ 小谷登山口から「双石山」登山
■ 「青島神社」にて参拝・観光
■ タコス屋さん「SANBARCO」にてお昼ご飯
■ かき氷屋さん「宮崎氷菓店」にてスイーツを堪能
■ 宮崎空港を出発(宮崎空港15:55発→羽田空港17:25着)
足湯の駅えびの高原 えびの高原にあるお土産屋さんに併設された無料の足湯。外の広いデッキで、山を眺めながら疲れを癒せる。館内にはお土産屋さんと観光案内所があり、山の情報も得られる。DATA 住所:えびの市末永1495 電話:0984-33-1155 営業:11:00~16:00(店舗 9:00~17:00) 休:無休 (Yショップのみ第3火曜日) |
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厨 日向屋(みくり ひゅうがや) 宮崎といえば鶏料理。宮崎名物“地頭鶏(じとっこ)”を使用した炭火焼きが自慢の人気地鶏居酒屋。新鮮な鳥刺しもいただける。備長炭で焼かれる串焼きもおすすめ。DATA 住所:宮崎市高松町3-30サカモトブライトビルB1 電話:0985-28-6848 営業:17:00~23:30(ラストオーダー22:50) 休:不定休 |
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スナック ブルーボイス NHKののど自慢大会で優勝経験のあるママが、カウンターで歌ってくれるスナック。明るいママを慕って訪れる女性一人客や、子ども連れの女性客も多く入りやすい雰囲気。DATA 住所:宮崎市千草町8-23ニュー六本木ビル4階 電話:080-3970-7386 営業:20:00〜24:00 休:日曜日 |
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青島神社 青島の中央に鎮座する神社で、島全体が境内となっている。海幸、山幸の神話で知られるヒコホホデミノミコトを祭神とし、縁結びのご利益があるとされる。周囲の海は「鬼の洗濯板」と呼ばれる奇岩に囲まれ、亜熱帯植物の群生地として島全体が特別天然記念物に指定されている。DATA 住所:宮崎市青島2-13-1 電話:0985-65-1262 |
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SANBARCO(サンバルコ) 本場メキシコ仕込みの味が楽しめるタコス屋。製粉から焼き上げまで店でおこなうこだわりの生地はモチモチの食感。タコスセットは、ジューシーなチキンと、枝豆の食感を感じるチーズ、プリプリのエビの3種類。マンゴーチキンカレーやパスタ、タコライスなどもある。DATA 住所:宮崎県宮崎市青島2-8−11 電話:0985-72-5772 営業:11:30〜16:00 、18:00〜21:00 休:木曜日、不定休 |
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宮崎氷菓店 シロップから練乳、トッピングにいたるまで全て手作りのかき氷屋さん。白砂糖は使わず、種子島産きび粗糖、麦芽水飴、沖縄県産黒糖などを使用するこだわりよう。旬の果物や材料を使うため、季節により変わるメニューが楽しみ。DATA 住所:宮崎市青島2-8-1 電話:0985-82-6367 営業:11:00〜17:00(冬季営業は要問合せ) |
現在、YAMAPと宮崎市がコラボした「デジタルスタンプラリー」を実施中。キャンペーン期間中(2023年11月1日〜2024年1月31日)に宮崎の山と街を巡ると限定のYAMAPアプリ内バッジや、鈴木優香さんがキャンペーンのためにデザインした特製ワッペンとジップケースのセットが先着でもらえます。詳細は以下のキャンペーン記事リンクからご覧ください。
文:米村 奈穂
写真:藤田 慎一郎
協力:宮崎市