登山の楽しみ方が変わる超タフカメラ「OM SYSTEM TG-7」|水中撮影も超マクロ撮影も欲張りに

今や誰もが簡単に綺麗な写真を撮ることを可能にした「スマホ」。とはいえ、登山中の撮影では落下による故障を気にしたり、ズームの限界や手ブレにやきもきしたりすることはありませんか?

今回紹介するのは、スマホやミラーレス一眼にはない圧倒的タフさが魅力の「OM SYSTEM Tough TG-7」。

山でありがちな手元からの落下に耐える頑丈さに加え、水中撮影や、肉眼では見えない超マクロ撮影も可能と、アウトドア好きには気になる機能が揃うこのカメラ…。自身も登山にはカメラを持参するという、編集者の森山憲一さんにフィールドで試してもらいました。

2024.01.24

森山 憲一

山岳ライター/編集者

INDEX

​​小型軽量でタフなカメラが揃う「OM SYSTEM」

OM SYSTEMというカメラブランド、知ってますでしょうか? 聞いたことがないという人も多いと思われますが、前身がオリンパスだといえば、「それは知っている」という人がこれまた多いことと思われます。

OM SYSTEMは、オリンパスのカメラ部門が「OMデジタルソリューションズ」として独立し、2021年にできたブランド。つまり、今回紹介する「OM SYSTEM Tough TG-7」というカメラは、オリンパスが2019年に発売したコンパクトデジタルカメラ「Tough TG-6」直系の後継機になるわけです。

……ということは、カメラに関心がない人は知らなかったかもしれないのですが、私はもちろん知っていました。というのも、いま私がメインで愛用しているミラーレス一眼カメラがオリンパス製だからです。

私の愛機・オリンパス OM-D E-M1 Mark II。過酷な環境でもいつも肌身離さずです

私がいま使っているのはOM-D E-M1 Mark IIというカメラ。これの何がいいかというと、とにかくタフ。防塵・防滴性能は多くのミラーレス一眼のなかでも最高レベル。雨の日に一日中首から下げて山を歩いたときでも、問題なく作動してくれました。

雪山やクライミングなどハードな現場にはたいていこれを持っていくので、もうボロボロガキガキの傷だらけになっていますが、元気に動いてくれています。小さくて軽いのも気に入っているポイントで、そのくせ描写性能は雑誌の印刷用途にも使えるほど高品質です。

もともとオリンパスは、「軽量」「コンパクト」「タフ」という点にとりわけ定評があったブランド。年配の登山者のなかには、1980年代に当時のトップクライマー、加藤保男氏を起用したカタログを見た覚えのある人もいることと思います。昔から登山とは親和性の高いカメラブランドだったわけです。

Tough TG-7(以下TG-7)は、そうした系譜を継ぐブランドの、なかでも「タフ」であることに特化したカメラ。防水性能は、私の愛機E-M1 Mark Ⅱのさらにずっと上をいき、防水ハウジング等がなくても水中撮影が可能だといいます。

これがTough TG-7

近ごろ、個人的に山で使うカメラは一眼とスマホに二極化していて、コンパクトカメラを持っていくことがめっきり少なくなりました(そういう人多いと思います)。しかしTG-7を山で使ってみて、一眼にもスマホにもない大きなメリットが2つあることに気づきました。以下、それを説明してみます。

「水中撮影」が楽しい

まずはこれです。

TG-7の防水性能は、カタログスペックでいえば「IPX8」。水深15mに沈めても耐えられるというもので、ほとんど水中カメラといえる数字です。

行動中に雨が降ってきても防水ケースに入れたりする必要はなく、手が滑って水たまりや川に落としても問題なし。泥まみれになったとしても流水で洗えばいいそうです。電子機器は一般的に濡れが大敵なのですが、TG-7はその手の気遣いがほぼ不要になるわけで、これはフィールドではだいぶノーストレスなことであります。

上の写真は、小さな滝の水面スレスレにカメラをかまえて撮影を試みたときのものです。こういう撮り方も気軽にできてしまうわけですね。ちなみにそのときに撮れた写真がこちら。

TG-7で撮影

おお、なんか見たことない迫力!

こういうアングルで写真を撮ろうと考えたことがなかったので、新鮮に感じます。これは沢登りで使ったら、かなり面白い写真が撮れるんじゃないの!?

そこで思いついて、こんなのも撮ってみました。

TG-7で撮影

カメラを半分水に沈めて、陸上と水中を同時に撮影してみたものです。これは以下の写真のようにして撮りました。

15m防水なので、もちろんカメラを全部沈めても問題ありません。このように。

その状態で撮った写真がこちら。

TG-7で撮影

さすが山奥の沢、水がキレイ!
ここにイワナが写り込んだらめっちゃいい写真になりそうです。

でもこれくらいの水深なら、スマホでも撮影できるのでは?と思いついてやってみました。ところがスマホは水中では画面タッチが反応せず、撮影できませんでした。こういうところは、物理シャッターのあるコンパクトカメラの強みです。

ちなみに今回の撮影をしてくれた宇佐美博之カメラマンは、TG-7の前身機となるTG-6を沢登りの取材などで実際に使用しているそうです。

確かに、画質や操作性はプロ用のミラーレス一眼に劣るものの、それらでは撮影不可能な環境下で、写真が撮れるのは見逃せないメリット。

強力な防水性能があれば、こうした今までにない表現が可能になることは個人的にも発見でありました。

驚異的な「接写性能」

これ、なんの写真かわかりますでしょうか?

気づく人は気づくと思うのですが、これ、地図です。登山地図の等高線部分を超接写したものです。全体に散らばっている丸点は、印刷のドットです。そしてこれ、TG-7で撮っています。

このようにして撮りました。モードダイヤルを「顕微鏡」に合わせて、カメラを地図の上に乗せただけ。物理的な距離ゼロです。こんな近距離で撮れるカメラ見たことありません(後述の「LEDライトガイド LG-1」を使用)。

そう、これがTG-7の2つめのメリット。超接写性能です。

それがフィールドでどう役に立つの? ということは、私もやってみるまであまりピンときていませんでした。しかしいざやってみると、これが楽しい!

フィールドでの超接写の世界。これも知らなかった楽しみ方でした。

たとえばこういうもの。蜘蛛の巣に付いた水滴を接写したものです。こんな小さなもの、肉眼でまじまじと見ることは通常ありませんが、こうして写真にしてみると、なんだかアーティスティックな小世界になっていると思いませんか。

TG-7で撮影

ちなみにスマホで撮影してみると、接写はこれが限界でした。

Google Pixel 6で撮影

撮影時の距離はこれくらい

この接写性能、花や虫を撮るときには特に威力抜群。TG-7で花を撮ると、ここまで寄ることができますし、やろうと思えばもっと寄れます。

TG-7で撮影

一方、スマホではこれが限界でした。

Google Pixel 6で撮影

このときの撮影距離はこんな感じ

ほかにも、フィールドには接写すると面白いものがたくさんありました。

霜柱とか。

ヘビイチゴとか。

コケとか。

コケなんか、遠目には緑の絨毯のようにしか見えませんが、接写してみると、まるで樹林帯のように見えたりします。

このように、本格的な接写が簡単にできることが、TG-7の大きな魅力であると感じました。これはこのカメラを使わないかぎり、あまり体験できない楽しみなので、ここには大きなメリットがあると思うわけです。

なお、接写をよりキレイに仕上げたいと思う人は、別売アクセサリーの「LEDライトガイド LG-1」(もしくは「フラッシュディフューザー FD-1」)を使うことをおすすめします。

接写をするときはカメラの影が入ってしまってうまく撮れないことも多いのですが、これを使えば常に一段クオリティの高い写真を撮ることができます。軽くてかさばらないので、付けっぱなしでTG-7を運用してもいいんじゃないかと思うくらい便利です。

左はカメラ単体で撮影したもの。被写体にかなり近づいているので、カメラの影が入ってしまう。LG-1を使うと(右)、全面に光が回ってキレイに撮れる

滝で落としても本当に大丈夫だった

私がフィールドで強く感じたTG-7の利点は「強力な防水性能」と「超接写性能」だったわけですが、TG-7にはほかにもいろいろ便利な機能があります。

そのひとつが「耐衝撃性能」。2.1mの高さから落としても安心といいます。

しかし今回使ったカメラは取材用の借り物。さすがにはばかられたので耐衝撃性能を試してはいなかったのですが、アクシデントがありました。

これは冒頭のタイトルカットを撮影中の宇佐美カメラマン。このとき、置いていたTG-7がスルッと滑って下の岩に落ちてしまいました。

落下距離約1m。一瞬ヒヤッとしましたが、グリップ上部に少しキズがついたほかは見た目に問題はなく、電源を入れてみると無事起動しました。その後もTG-7は問題なく動き続けたのでひと安心。思わぬアクシデントで耐衝撃性能の高さも実証できたというわけです。

登山中に嬉しい便利機能たち(コンパス/気圧計/GPS搭載)

ほかにも、便利だなと思った機能がこれ。


ボタンをワンプッシュすると、モニター画面にコンパスが表示されます。画面上にはコンパスのほかに、時刻/気圧/標高/気温/GPS座標も表示されます。登山中に知りたい情報がひと目で確認できるというわけです。

これらはアウトドアウォッチなどによく搭載されている機能ではありますが、TG-7は大きな画面で見やすいので、利用価値はあるなと感じました。アウトドアウォッチを持っていない人には大きな魅力にもなると思います。

それからTG-7にはGPSログを記録する機能も付いています。

このスイッチを「LOG」にするとログ記録開始

このログデータをOM SYSTEMのスマホアプリ「OI.Share」で開くと、歩いたルートの地図や高低図が簡単に見られます。

OI.Shareで歩いたルートの平面地図(左)と高低図(右)を表示させた画面。写真の撮影地が地図上で正確にわかる

また、ログデータを書き出して他のアプリで表示させることもできます。

Google Earthで歩いた軌跡を表示させてみた例

まあ、こうしたログ機能はYAMAPなどの登山アプリにもあるものなので、登山アプリを使っていればわざわざTG-7のログ機能を使うことはないと思いますが、登山アプリを使わない人には魅力のひとつになるかもしれません。

あと、撮影した写真データにGPSの位置情報が記録されるので、下山後に山行記録を整理するときに便利ですね。

アウトドアに特化したカメラ「Tough TG-7」

こうして一日TG-7を持って山を歩いてきましたが、登山用に作られたのかな?と思うほど、登山で便利な機能が詰め込まれていて、さすがアウトドア指向のカメラメーカーだなと感じました。

高性能な一眼カメラと手軽なスマホカメラの両者にはさまれて、コンパクトカメラは存在意義を失いつつありますが、そんななかでも独自の立ち位置を築いているのがTG-7。これならば持つ価値はあるかと思います。正直、私も1台欲しくなりました。

なおTG-7にはブラックカラーもあります。自分が買うならやっぱりブラックかな~。そして「LEDライトガイド LG-1」もセットで買って、付けっぱなしで常用したいと思います。

原稿:森山憲一
撮影:宇佐美博之
協力:OM デジタルソリューションズ

森山 憲一

山岳ライター/編集者

森山 憲一

山岳ライター/編集者

1967年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学教育学部(地理歴史専修)卒。大学時代に探検部に在籍し、在学中4回計10カ月アフリカに通う。大学卒業後、山と溪谷社に入社。2年間スキー・スノーボードビデオの制作に携わった後、1996年から雑誌編集部へ。「山と渓谷」編集部、「ROCK&SNOW」編集部を経て、2008年に枻出版社へ移籍。雑誌『PEAKS』の創刊に携わる。2013年からフリーランスとなり、登山と ...(続きを読む

1967年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学教育学部(地理歴史専修)卒。大学時代に探検部に在籍し、在学中4回計10カ月アフリカに通う。大学卒業後、山と溪谷社に入社。2年間スキー・スノーボードビデオの制作に携わった後、1996年から雑誌編集部へ。「山と渓谷」編集部、「ROCK&SNOW」編集部を経て、2008年に枻出版社へ移籍。雑誌『PEAKS』の創刊に携わる。2013年からフリーランスとなり、登山とクライミングをメインテーマに様々なアウトドア系雑誌などに寄稿し、写真撮影も手がける。ブログ「森山編集所」(moriyamakenichi.com)には根強い読者がいる。