山岳医療ドラマ「マウンテンドクター」プロデューサーに聞く撮影こぼれ話|YAMAP巡礼マップも完成

人気俳優・杉野遥亮さんと、演技派俳優の大森南朋さんが共演する山岳医療ドラマ「マウンテンドクター」(カンテレ・フジテレビ系)。北アルプスの雄大な風景やおなじみの山荘での撮影シーンが多くあることから、登山好きの注目を集めています。

そこで放送を記念し、関西テレビのプロデューサー近藤匡さんにインタビュー。山での撮影の苦労や出演者の裏話、第1話からの見どころなどをお聞きしました。

YAMAPではマウンテンドクターの放送を記念し、ドラマ内の印象的なシーンのロケ地がわかる巡礼マップも作成。マップをダウンロードし、山を登りながらドラマの感動を甦らせてください。

ドラマは動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」などで、最新話まで全話を配信。無料動画配信サービス「TVer(ティーバー)」でも第1話と最新話をご覧頂けます。これまで見逃した方も、第1話から楽しめます。

2024.09.13

YAMAP MAGAZINE 編集部

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登山好きも注目する「マウンテンドクター」

江森岳人(左、大森南朋)と宮本歩(杉野遥亮)(提供・関西テレビ)

マウンテンドクターは、長野県松本市の病院を舞台に、山岳医療現場で奮闘する医療従事者の活躍や葛藤を描いたオリジナル作品。

杉野遥亮さん演じる整形外科医・宮本歩が、故郷である長野県松本市にある信濃総合病院で山岳診療科を兼務しながら、患者や山岳医療チーム「MMT」の仲間とともに成長していく姿を描いています。

ときに向こう見ずな歩の行動に厳しく接するのは、大森南朋さんが演じる先輩の国際山岳医・江森岳人。負傷した登山者の命を救いながらも、山に憎しみすら抱くようになった過去のトラウマが次第にわかっていく様子も、ストーリーに欠かせない要素になっています。

山岳医療を通して、山の雄大さというポジティブな面だけでなく、一歩間違えたら命も落としかねない厳しさがあることも伝えているのが特徴。

長野県の北アルプス・唐松岳(2,696m)や美ヶ原高原・王ヶ鼻(2,008m)など、登山者にはおなじみの山で、実際に出演者が登りながら演技した姿も、毎回の放送後にSNSなどで話題になっています。

*記事最後に、ドラマの山で撮影した場所がわかる巡礼マップを公開しています

ドラマプロデューサーの近藤さんに聞く撮影裏話

マウンテンドクターのプロデューサー、近藤さん(提供・関西テレビ)

──主人公の山岳医・宮本歩の山での活躍が印象的でした。杉野さんはもともと登山の経験があったわけではなかったそうですね。

プロデューサー・近藤匡さん(以下、近藤):杉野さんは役を細かく、繊細につくってくれる俳優さんです。ちゃんとした登山の経験はなかったそうなのですが、「山がどういうものか肌で感じたい」とおっしゃっていたので、クランクインの2〜3週間前にはスタッフと一緒に神奈川県の大山(1,252m)に登りました。

ドラマの撮影が全て終わった後には「長野の本格的な登山のほうが好きかもしれない」「登っているとき、下っているとき、山が自分のなかに入ってくる感じ、一歩、一歩進むと、頭が空っぽになるのがいい体験だった」と言っていて、すっかり山にはまっているようでした。

ちなみに、歩がドラマで履いている登山靴は、杉野さん本人が登山ショップで選んだものです。登山者の皆さんにはおなじみだと思うのですが、店内に設置された坂道を歩きながらフィッティングし、「これがいいかも」というのが、僕らも履いてほしいと思っていた靴でした。

ドラマで歩が山に行く際はずっと履いているので、ぜひ登山好きな方は歩の足元にも注目してみてください。

NHK大河でも共演した2人の信頼感

俳優の杉野遥亮さんが若手山岳医を演じる(提供・関西テレビ)

──演技派俳優として知られる大森南朋さんが演じた国際山岳医・江森岳人のクールというか、近づきがたい雰囲気も、情熱的な青年医師の宮本歩とは対照的で、存在感を放っていました。

近藤:杉野さんと大森さんは、NHKの大河ドラマ「どうする家康」でも共演していたので、お互いに信頼があり、歩と江森を軸にした展開については、2人で相談しながらお芝居をつくっている姿も印象的でした。

大森さんが江森を演じているときは、わりと厳しい印象ですが、大森さんは現場ではチャーミングで懐深い方でそのギャップも本当に魅力的な方でした。

大森さんは「眼前に山が広がるところでのお芝居は、役にも入りこめるし、ぜいたくな撮影をさせてもらった」と言っていて、実際に山で撮影して良かったなと僕らも思いました。

大森さん、杉野さんに限らず、長野の山に囲まれた環境が、スタッフ、役者のパフォーマンスと一体感を高めてくれたと実感します。一緒に山に登って、山を降りることで、チームとしてまとまっていくのが、山での撮影の良さですね。

懸垂下降は現場で「やってみる」

要救助者を背負っての登り返しのシーン(提供・関西テレビ)

──ドラマ中に出てくる杉野さんの懸垂下降や、要救助者を背負っての登り返しなども、登山経験がないとは思えないほど見事でした。

近藤:登山の技術的な部分は、国際山岳ガイドの近藤謙司さんに協力してもらっています。杉野さんも技術指導を事前に受けていました。

クライミングジムで必要なロープワークや懸垂下降はもちろん習得したのですが、特にこだわっていたのが、上り下りのときの歩き方です。登り慣れている人から見ると、すぐわかってしまう部分なので、階段をつかって、足の運び方の練習に力を入れていました。

懸垂下降のシーンは当初、歩と同じ衣装を着た代役の方がやる予定でした。ただ、杉野さんはロープワークの練習も熱心にやっていたので、現場で「やってみようかな」と言ってくれたんですよね。

監督には「僕がうまくできなかったら、代役の方役のカットをつかってください」と言っていたのですが、現場で挑戦したらかっこ良く撮れ、そのシーンが採用されました。

本人がやることで、全アングルから撮影できたのも良かったです。また、負傷した女性を背負って登り返すシーンも本人が行い、杉野さんの役者としての吸収力には驚きました。

ドキュメンタリー撮影かと思った唐松岳登頂

──第1話目に出てくる唐松岳の頂上のシーンも素晴らしい景色のなかで撮影していますね。あの山に登るだけでも一苦労ですが、撮影はもっと大変だったのではないでしょうか。

近藤:撮影の前日、ゴンドラ頂上駅のところにある八方池山荘(1,838m)に泊まり、体力に自信のある少数精鋭のメンバーで、約5時間かけて唐松岳の山頂に到達しました。

撮影したのは6月中旬。約400mぐらいの雪渓が残っていて、本格的な12本アイゼンで、ロープにハーネスをつないで降りた場所もあります。

ドラマというか、ドキュメンタリーなんじゃないか、と思うぐらいでした。でも撮影機材を運んでくれた歩荷さんも普段はガイドだったりするので、手際よくルートを確保してくれ、たのもしかったです。

山荘を出た朝は雲海が広がり、白馬岳の山肌もみえていて「こんな近くで雄大な山を感じた経験はない」「目がバグったのではないか」と皆で言い合っているほどでした。

でも、相手はやっぱり自然なんですよね。山頂に着いたタイミングで、雲のなかにすっぽり入ってしまいました。1m〜2m先も真っ白。カメラのセッティングをして待機するも、1時間、2時間と時は流れるのですが、ガスは流れず。ワンカットもとれない状況が続いていました。

第1話の唐松岳の山頂シーン。宮本歩の成長がうかがえる(提供・関西テレビ)

撮影隊のなかには初心者もいるので、今度は時間制限の問題も出てきました。一緒に登ったガイドの近藤さんからも「下りも4、5時間みなければいけない、この時間ぐらいまでには下り始めないと危ない」と注意がありました。

撮影隊の間でも「今日は無理なんじゃないか」という雰囲気が漂っていて、杉野さんも天に祈ってました。

そうしたら、突然に雲がなくなって、眼の前に360度のアルプスの景色が広がったんです。

現場では「ワーーー!」と歓声が上がりましたが、「奥に雲がきている」とガイドの近藤さんが言っていて、みんなで瞬時に集中して撮影にとりかかり、ドローンを飛ばして1話最後のシーンが撮影できました。

時間にしてわずか10分ぐらい。またすぐに雲に覆われてしまいましたが、「撮りきれた!」とみんなで拍手し、ハイタッチしながら降りてきました。

登らなかった麓にいるスタッフたちは、頂上付近が雲で覆われている様子がわかり、現地の撮影隊が携帯圏外で連絡もとれなかったので、「クルーは大丈夫なのか」「きちんと撮れているのか」とかなり心配されていたようです。

下山したときには、下で待っていたスタッフがみんな集まっていて、ゴンドラを降りると拍手で出迎えられ、恥ずかしかったけど、けっこう感動的でした。

街中のドラマの撮影にはない苦労が多くあるので、毎話の放送が終わるごとに、SNSで「映像がきれい」「みたことのない映像だった」という声があると、「やっぱり撮影してよかった」と思い返しています。

山をなめたときの仕打ちもリアルに

山に軽装で挑んだ若者グループは…(提供・関西テレビ)

──ドラマでは、山岳医療の現場のシーンを通して、山の美しい面だけでなく、人間にはコントロールできない自然の怖さや、軽装で挑む登山者の末路など、昨今の山をめぐる問題も伝えていますね。

近藤:山できれいな景色だけが見られるという内容と描写だけでは、嘘になると思っています。気を抜くと命にかかわり、軽い考えで来ると、こういう仕打ちがあるということも見せたかったです。この部分については、しっかりとセリフのなかにも反映しています。

山での負傷シーンは、地上波で賛否両論あるかもしれませんが、できるだけリアルに、痛々しいメイクにこだわりました。

一歩間違えると「これだけのことになるんですよ」と伝えることで、気軽な思いで山に入って、不幸な事故に合う人が一人でもなくなってほしいという願いもあります。

──最終回を前に、登山好きやYAMAPユーザーにメッセージをお願いします。

近藤:テレビドラマとしての毎回のストーリー展開はもちろん、まだ山の絶景を見たことがない人にも楽しんでもらえるドラマだと思っています。ぜひ登山をやってみたいと思ってくれる人が増えてほしいですね。

ドラマ内では、撮影のことも考え、ビギナーが多く登っている山が中心ですので、YAMAPのロケ地巡礼マップで登山道を予習しながら、当日はドラマと自然の景色を照らし合わせて登ってほしいです。ドラマでもわかる通り、事前の準備と予測を大事にしながら、長野の山を楽しんでください!

YAMAPでロケ地巡礼マップも公開

主人公の宮本歩が故郷の長野県松本市に戻り、JR松本駅のアルプス口(西口)から降りて北アルプス・常念岳を見上げるところから1話目がスタートするマウンテンドクター。長野県を中心に撮影が行われ、山好きにはおなじみの場所が多く登場してきます。

YAMAPでは、山で撮影された4つの山域のロケ地巡礼マップを用意しました。アプリをダウンロードすると、撮影エピソードを見ることができます。ぜひダウンロードして、長野の山旅とともにマウンテンドクターの聖地巡礼を楽しんでください。

ダウンロードはこちら

白馬は八方尾根〜唐松岳に、おなじみ村営猿倉荘

鮎川山荘のモデルとなった村営猿倉荘(提供・関西テレビ)

主人公・宮本歩(杉野遥亮)が所属する信濃総合病院の山岳医療チーム「MMT」と提携し山小屋診療所を構える「鮎川山荘」(村営猿倉荘)や、国際山岳医の認定を取得して帰国した歩が登った「唐松岳」、先輩山岳医・江森岳人(大森南朋)が婚約者と登った八方尾根など、ドラマの名場面が満載!

▼マウンテンドクター巡礼マップ(八方尾根〜唐松岳)
https://yamap.com/maps/42127

三峰山では落雷の負傷者を救命

ツアーに帯同し、落雷被害の負傷者を救命することになる宮本歩(右)(提供・関西テレビ)

三峰山(1,887m)のマップでは、主人公・宮本歩(杉野遥亮)が落雷被害を受けた負傷者を救命した第4話の名場面などを掲載!

▼マウンテンドクター巡礼マップ(三峰山)
https://yamap.com/maps/42193

美ヶ原高原・王ヶ鼻では、滑落した負傷者を救出

滑落した負傷者を救助、救命した撮影が行われた美ヶ原高原・王ヶ鼻(提供・関西テレビ)

美ヶ原王ヶ鼻のマップでは、主人公・宮本歩(杉野遥亮)が滑落した負傷者を救助・救命した第2話の名場面などを掲載!

▼マウンテンドクター巡礼マップ(美ヶ原王ヶ鼻)
https://yamap.com/maps/42226

車山の神社で江森岳人になりきる

江森岳人(大森南朋)が山頂の神社を訪れる撮影が行われた車山(提供・関西テレビ)

車山のマップでは、山岳医の江森岳人(大森南朋)が山頂の神社を訪れた第3話の名場面などを掲載!

▼マウンテンドクター巡礼マップ(車山)
https://yamap.com/maps/42227

Blu-ray & DVD 2025年3月7日発売 予約受付中!

出演:杉野遥亮 岡崎紗絵 宮澤エマ 向井康⼆ 近藤公園 トラウデン直美 ⼯藤美桜 吉⽥健悟  ⼋嶋智⼈   遠⼭俊也  平⼭祐介   ⽯野真⼦ ⽯丸謙⼆郎  檀れい ⼤森南朋

公式サイト:マウンテンドクター

配信:
NetflixとFODで最新話まで全話配信
TVerなどで最新話を無料配信中

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。