太陽の国 宮崎はハズレなしの登山エリア|絶景・グルメ・温泉を愉しむ秋の旅

知る人ぞ知る魅惑の登山エリア「宮崎」。豊かな自然が手つかずで残り、美しい景色に出会えるスポットとして、近年情報通のハイカーの間で注目を集めています。

宮崎市までは福岡から高速経由で3時間半。東京から1時間半、大阪からでも飛行機で1時間。空港から市街地までも30分圏内とアクセスも良好。

さらに宮崎は日照時間・快晴日数が全国トップクラス! ハズレなしの山旅を叶えてくれる頼もしい存在なのです。

今回は、宮崎の「登山×絶景×グルメ×温泉」を愉しむ1泊2日、至福の山旅を計画。福岡在住の編集者・後藤麻与さんをお誘いして、出かけました。

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2024.10.30

Goto Mayo

編集者兼ライター

INDEX

秋こそ美しい「太陽の国 宮崎」

みなさんは「宮崎」と聞いて、何を思い浮かべますか?

「日本神話ゆかりの高千穂峰」「南国情緒漂うフェニックスの木々」「真っ赤なブランドマンゴー“太陽のタマゴ”」などが頭をよぎった方も多いかと思いますが、いずれにも共通するのは「太陽の恵み」。

太陽の神「アマテラスオオミカミ」にはじまる日本神話や、豊かな陽光が育んだ植物や農作物、温暖な気候。宮崎は太陽に祝福された地域なのです。

年間の平均気温・日照時間・快晴日数は、いずれも全国都道府県の中でも3位以内に入り、これからの秋は晴天も多く気候も温暖。山の幸、海の幸も楽しめるベストシーズンです。

今回の旅では、百名山「高千穂峰」やパワースポット「青島神社」、巨大な奇岩が見るものを圧倒する「双石山」、日本一の種類を誇る照葉樹の森「加江田渓谷」をはじめ、一風変わった温泉や地元民イチオシのグルメなどを巡ります。自然が好きなら誰でも気軽に楽しめるプランなので、ぜひ記事を参考にお出かけください!

旅のはじまりは太陽の神の聖地「高千穂峰」から

高千穂峰への登山口「高千穂河原」

「太陽の国 宮崎」の山に興味ありませんか? 美しい山々に温泉、名産の地鶏、美味しいお酒も付きます」というお誘いをYAMAP MAGAZINE編集部から受け、ただ自然散策が好きなだけの“登らない山派”の私が山旅へ。

とにかく絶景と「太陽の国」という明るい響きに惹かれ、取材をお引き受けしました。日々溜まった疲れを、雄大な景色に解き放とうと期待に胸を膨らませつつ、いざ福岡から高速道路経由で3時間半。宮崎へ向かいます。

旅のはじまりは“天孫降臨”で知られる霊峰「高千穂峰」。最初に、登山口にあるビジターセンターで霧島連山の歴史や文化を学んでから出発します。

昨年リニューアルした高千穂河原ビジターセンターは展示&ミニシアターで、霧島連山の歴史や自然について楽しく学べる

高千穂峰は坂本龍馬と妻・おりょうさんが日本初の新婚旅行で訪れた場所だったそう。龍馬も歩いたであろう風景を味わう山歩きに期待が高まります。

今回歩いたのは、高千穂河原登山口-高千穂峰往復コース。所要時間は4時間弱。YAMAP該当地図はこちら

「高千穂河原」の鳥居をくぐって参道を5分程歩くと、旧「霧島神宮」社殿(二代目)があった場所「古宮址」に到着。平安時代中期頃、山頂付近にあった社殿が噴火によって、ここに移されたそうです。登山の無事を願ってご挨拶を。

鳥居の奥に見える「高千穂峰(左)」「御鉢火山(右)」が御神体。参拝中は、優しい光があたりを照らし、なんだか神々しい雰囲気

「古宮址」からしばらくは森の中に伸びる石段を進みます。まだ紅葉は始まっていませんでしたが、陽光が差し込む明るい森は、思わず深呼吸したくなる気持ちよさ。11月頃には、錦秋を迎えるそうです。

気持ちの良い森を抜けると、急な斜面。本格的な登山のスタートです。

初心者にはややキツめの砂利・岩の急登。ただ振り返ればそこに広がるのは、大パノラマ!

「御鉢」までは、火山地帯特有の植物「ミヤマキリシマ」が大きいマリモのようにまばらに生えています。鮮やかなピンクの花がつくのは5、6月だそう(見頃の登山記録はこちら)。火山特有のダイナミックな大地は、迫力抜群です。

高千穂峰は自然の造形美の宝庫!とくに赤・茶・黒・灰色・黄土色など様々な色の土や砂、地層が格好いい

出発から約1時間半。いよいよ待ちに待った「御鉢」が、硫黄の香りとともにお目見え! 日常生活や近所の低山では、絶対に出会うことができない大迫力の風景に、時を忘れて見惚れてしまいました。

最後の噴火から昨年で100年が経過。直径約600m、深さ約200mの火口を目前に息をのむ

御鉢の後は「馬の背越え」と呼ばれる火山縁のルートを進みます。

高千穂峰山頂を前に急に霧が立ち込め、ゴゴゴゴ〜と下から煽る風の音に圧倒されます。怖さもありつつイリュージョン的なワクワク感が。登山道にある「霧島神宮元宮」で無事の登頂を祈願して、山頂に向かいます。

初代「霧島神宮」と言われる「元宮」

祈りが天に通じたのか、この後、ザレ場を経て無事に登頂。山頂は「天孫降臨の地」と伝わっており、太陽の神「アマテラスオオミカミ」の孫「ニニギノミコト」が高天原(たかまがはら)から降り立った場所とのこと。

山頂にはかつて神々が日本列島を創り出す際に使ったという「天逆鉾」が今も突き刺さっています。坂本龍馬が新婚旅行中にこれを抜いたという、破天荒な逸話も残っており、なんだかちょっと笑ってしまいます。

写真に写っている「天逆鉾」は複製品だけど、元の柄の部分は現在も埋まっているそう

今回、往路はおおよそ2時間と少し。復路は岩場やザレ場のエキサイティングな下りを楽しみ、1時間半で無事下山。

神聖さもダイナミックさも感動もあって、ただ頂上を目指す登山とは違うエンタメ感がたっぷり。宮崎まで来た甲斐がありました!

登山のご褒美はスイーツと天然泥温泉

登山後は高千穂河原ビジターセンターのそばにある、スペシャルティコーヒーの店「ミコト乃フモト」へ。ハンドドリップコーヒーと甘味をいただきました。

ミコト乃フモト 住所:鹿児島県霧島市霧島田口2583-12。写真は、高千穂の山を模したかき氷、抹茶とエスプレッソ(あんこ・練乳・黒蜜付き)・期間限定

甘いものでエネルギー補給した後は、温泉へ。高千穂河原ビジターセンターのガイドさんも「宮崎の山に登ったら温泉に入らないと!」と熱弁していましたが、本当にその通り。高千穂峰の近くにも、個性豊かな温泉が点在しています。

さくらさくら温泉 住所:鹿児島県霧島市霧島田口2324-7 電話:0995-57-1227

今回、立ち寄ったのは高千穂河原ビジターセンターから車で15分ほどの「さくらさくら温泉」。弱酸性の硫黄泉成分を含んだ泥で、髪も体もまるごと美容パックできる、全国的にも珍しい温泉です。湯船はもちろん、源泉掛け流し。

温泉と泥パック、Wの発汗作用で疲労回復だけでなく、痩身にも効くのだそう。露天風呂もあり、木立から差し込む暖かな日の光も楽しめました。ぬるめのとろりと優しい温泉の効能は抜群で、入浴後には肌がさらっさら!

効果は抜群ですが、全身に泥を塗った自分の姿を鏡で見ると…、なかなかのインパクト(笑)

夜はYAMAPユーザーもイチオシのご当地グルメ

入浴後は、本日の宿泊地となる宮崎市内の歓楽街へ約1時間半かけて移動。お目当てはもちろん、美味しい宮崎グルメとお酒です。宮崎では、5つの通りからなる「ニシタチ」というエリアが人気だそう。提灯が灯る通りには、約1,200件の飲食店が立ち並びます。

カラフルな提灯が連なる通りには、勢いよく自転車で行き交う卸業者さんたちの活気ある姿も

狙うは、YAMAPユーザーアンケートでも人気だったご当地グルメ「地鶏の炭火焼き」。宮崎は、年間平均気温が約17度と温暖であり、かつ県内に広がるシラス台地が農業向きではなかったことから畜産が盛んになったのだとか。

特に地鶏の研究開発には歴史があり、多くのブランド鶏が存在します。今回は最も有名な「みやざき地頭鶏(じどっこ)」を実食。

萬歳亭 住所:宮崎県宮崎市中央通1-22 電話:0985-20-8787

今回訪れたのは、中央通りにある鳥焼専門店「鳥焼 萬歳亭(ばんざいてい)」。キッチンでは、盛大に炎が上がり、名物の地鶏が焼かれていました。

本場のもも焼きは絶品。炭火の香りと適度な塩味、ゆず胡椒のアクセントが堪らない!

人気No.1の「もも焼き」は、これまでの地鶏のイメージを覆すやわらかさ、適度な歯応え。旨みと甘さのバランスがいい上品な味でした。お酒によく合う!

ゆっくりくつろげる個室(座敷)と職人さんの調理風景を見ながら食事をいただけるカウンター席を完備

2日目は良縁結びの「青島神社」からスタート

2日目は眠い目をこすり、早朝から活動開始。宮崎市街から車で30分ほどの場所にある「青島神社」へ向かいます。

お目当ては、海から登る美しい朝日。夜明け前の波打ち際で、静かにその瞬間を待ちます。

青島を取り囲む奇岩群「鬼の洗濯板」と、朝日に染まる雲がなんとも神秘的!

平日の早朝で地元の人もほぼおらず、朝日を独り占めできる贅沢なひととき。この美しい景色を眺めていると、この地で神話が生まれた理由も納得が行きます。

青島神社は820年代以前から奉祀されていたと言われていますが、島全体を霊域としていたため江戸の頃まで庶民の入島は許されなかったそうです。

境内を歩くと、絵馬で出来たトンネル、ビロウ樹のアーチなどがフォトジェニックで素敵な雰囲気。さらに進むと元宮があります(境内に自生する植物は226種!)。

ここは日本神話で、山幸彦と豊玉姫が結ばれた地でもあることから、良縁結びにご利益があるとのこと…。

真剣にお祈りしてひいたおみくじは…、見事「大吉」でした。

(左)良縁にご利益がある「御縁継ぎ」。(右)磐境に土器の皿を投げ入れ、入ると願いが叶い、割れると開運厄除にご利益があると言われる「天の平瓮投げ」

奇岩そびえる神秘的な低山「双石山」

参拝後は車で20分ほどで市街地に移動して朝食。その後、宮崎市民に最も親しまれているという「双石山」へ向かいます。

登山口から、ほんの5分でこの景色!

双石山は標高509mの低山ながら様々なルートを持ち、宮崎市民に愛される郷土の山。山頂に向かうルートはやや険しいため、登山初心者の私は山頂を目指さず、見所2箇所を巡ります。


今回歩いたのは、小谷登山口から天狗岩・象の墓場のピストン。所要時間は1時間強ほど。YAMAP該当地図はこちら

「双石」の名が示す通り、山中には目を見張る巨岩・奇岩があちこちに。

大きな石のトンネルを通るエキサイティングなポイントも

20分ほど行くと、「針ノ耳神社」のご神体である奇岩の数々が現れます。

豊かな森と静かにそびえる巨岩。神秘的な雰囲気が漂う

中でも圧巻なのが「天狗岩」。双石山は、海底で浸食を受けた砂岩と礫岩が隆起してできた山と言われおり、天狗岩をよく見ると、海の気配が。

天狗岩から15分くらいで、もう一つの見所「象の墓場」に到着。その名は「僧の墓場」が転じたとも言われるミステリアスな場所です。美しい緑と鳥の声、大絶壁が作り出す空間は静謐な雰囲気。

夏でも陰が多く涼しいので森林浴にも最適

双石山の登山道はほぼ市民による手づくりとのこと。石工ハンマーや鎌、ロープなどを持参し少しずつ手をかけ仕上げているそうです(現在も進行中)。本当に必要最低限の整備といった感じで、無駄に自然へ手をかけたくないという人の思いが伝わってきます。

種類数日本一の照葉樹の森は生き物の宝庫!

山全体が天然記念物の双石山を満喫した後は、山系から流れる加江田川沿いへ。

「加江田渓谷」は照葉樹の天然林が残る希少なスポット。その種類の豊富さでは日本一とも言われています。

照葉樹は冬でも落葉しない広葉樹。葉の表面に光沢感があるのが特徴

棲息する生き物も様々。この日は、ホオジロ・クワガタ・カニ・アマゴに出会えました。

(左)案内板の上にはひっそりとクワガタが。(右)豊かな自然と、その自然の価値を伝える案内板

渓谷は全長約8km、魚の群れが見えるターコイズブルーの清流を眺めながら、自然と生き物の観察を楽しめます。

地元の方々の散歩スポットとしても愛されているそうです。毎日の散歩でこの景色を味わえるなんて、贅沢!

最後はやっぱり温泉とご当地グルメ

太陽の恵みをふんだんに味わった旅もいよいよ終わり。締め括りはやっぱり温泉とグルメです。

まずは、加江田渓谷から車で20分の「ANA ホリデイ・イン リゾート宮崎」に移動し、トレッキングの汗を流します。

肌にいい「炭酸水素イオン」の含有量が日本屈指とのことで、ややとろみがあり、さらっと軽い泉質。ぬるめなので長く浸かることができました。

ANA ホリデイ・イン リゾート宮崎 住所:宮崎県宮崎市青島1-16-1 電話:0985-65-1555

窓からは、広々した芝生広場やサーファーがボード片手に自転車で行き交う風景が眺められます。しっぽりと風情を感じる温泉もいいけど、この青島のカラッと爽やかな南国ムードはなかなか味わえないですね。

入浴後のランチは名店揃いの宮崎市内でやっぱり「ご当地グルメ」!

この日は、宮崎駅近くの「八九」さんで、宮崎発祥のチキン南蛮を堪能。ふわっとした肉質と、ジュワ〜と滲み出る優しい甘さの肉汁でボリュームがあるのにペロッと食べられてしまいます。

「八九」のあら汁付きの自家製チキン南蛮。 住所:宮崎県宮崎市広島2-12-29中尾ビル1F 電話:0985-25-0891

そしてダメ押し! せっかく宮崎に来たんだからと食い意地を張って同じく駅近くのお店「ぐんけい」へはしごしました。いただいたのは、地鶏炭火焼き入りの辛麺です。

チキン南蛮と並んで、宮崎が発祥と言われる辛麺。しかも、宮崎名産の地鶏炭火焼きがトッピングされているという贅沢さ! 午前中に登山を済ませているので、カロリーを気にせず(笑)、完食です!

住所:宮崎県宮崎市錦町1-10 宮崎グリーンスフィア壱番館2F 電話:0985-33-9001

ぜひ、皆さんもお店を巡って食べ比べてみてください。

旅を終えて

私も40代ということで体力に不安があった山旅ですが、帰りの車中でも県内に伝わる神話の数々に盛り上がるなど余裕がありました。

今だったらSNSでバズるようなネタもちらほら。温泉で気分も体もすっきり、お腹もいっぱいで、終始にこやかなまま旅は終わりを迎えます。

燦々とした陽光や天然林の鮮やかな緑を楽しみながら、テンポよく体を動かし続けた1泊2日。太陽の国らしいアクティビティで普段よりグッとポジティブに。自分本来の感性を取り戻すことができました。仕事でも優しくなれそう!

「太陽の国 宮崎」は、やっぱりハズレなしの登山エリアです!

今回の旅の行程【1日目】
5:00〜8:00 福岡市内を車で出発し、高速道経由で高千穂河原へ
8:00〜13:00 高千穂峰登山
13:00〜14:00 休憩後、移動
14:00〜15:00 さくらさくら温泉入浴
15:00〜16:30 移動
16:30〜18:00 休憩
18:00〜 夕食後、市内宿泊


【2日目】
早朝 青島神社 日の出参拝
8:00〜9:30 朝食後、双石山へ移動
9:30〜11:30 双石山登山
11:30〜13:30 加江田渓谷ハイキング
13:30〜14:00 移動
14:00〜15:30 ANA ホリデイ・イン リゾート入浴後、移動
15:30〜16:30 宮崎駅周辺で遅めの昼食
16:30〜19:30 高速道路経由で福岡市街へ移動

宮崎空港へは、羽田・成田・伊丹・関西国際・中部国際・福岡・沖縄の各地からの航空便が発着しています。ぜひ、本州にお住まいの方も、太陽の国で極上の秋を体験してください!

各地からの航空便就航情報はこちら

原稿:後藤麻与
撮影:村上智一
協力:宮崎市 観光商工部観光戦略課

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Goto Mayo

編集者兼ライター

Goto Mayo

編集者兼ライター

福岡を拠点に活動する編集者兼ライター。 様々なつくり手が集まり、暮らしを楽しむヒントを発信していくコミュニティ「 T.READ」主宰。樹林や湿原をあじわう低山散歩好き。