「歩いてみたいトレイル」の人気投票で第1位に選ばれたのが「常陸国(ひたちのくに)ロングトレイル」。今回は、この道をよく知るYAMAPユーザーが本気で推す、厳選された4つのトレイルコースを紹介します。絶景ルートからとっておきの下山メシ、温泉まで登山者目線のリアルな体験談は必見です。
2026.03.11
大関直樹
フリーライター
「常陸国ロングトレイル」は、かつて常陸国と呼ばれた茨城県北部をつなぐ、計画延長約350kmのロングトレイル。里山、海辺、峠道、古道を縫うように歩くこの道は、昨年、日本ロングトレイル協会加盟29トレイルを対象とし、山と渓谷社が実施した「これから歩いてみたいJAPAN TRAIL」投票で第1位を獲得! 今、注目を集める人気トレイルです。
その魅力は、大きく4つあります。
1|歴史と文化を感じながら歩ける
コースには、『常陸国風土記』に登場する常陸国最古の霊山や、『万葉集』に詠まれた浜辺、さらには幕末の志士が駆け抜けた古道などが含まれ、歩くことがそのまま時間を越えたタイムトリップに。
2|首都圏からのアクセスが良好
トレイルエリアは首都圏から100〜150km圏内。マイカーなら約2〜3時間、特急利用なら最短1時間30分ほどで到着。思い立った週末に、ふらりと出かけられる距離感は、大きな魅力です。
3|地場産の下山メシが充実
常陸牛、奥久慈しゃも、常陸秋そば。さらに、あんこうやしらす、伊勢海老などの海の幸も豊富。山を歩いた後に、その土地ならではのグルメに出会えるのも、このトレイルならではの楽しみ。
4|自由度の高いコース設計
常陸国ロングトレイルには決まったスタートやゴールはありません。体力や日程に合わせて自由にルートを組み立てられるのが特徴。日帰りハイクから本格的な縦走まで、自分に合った歩き方が選べます。
その「常陸国ロングトレイル」のコースマップが、この3月から、いよいよYAMAPアプリに地図登録されました。
計画延長約350kmのうち、2026年3月現在、開通している約275kmを10区間に分割し、それぞれのコースマップを登録しました。
コースの魅力をより分かりやすく伝えるため、地図上のランドマークを充実させ、それぞれのスポットを写真付きで解説しているので、まるでガイドさんと一緒に歩いているかのようにトレイルの魅力を知ることができるでしょう。

常陸国ロングトレイルは、低山地帯でありながら本格的なトレッキングが楽しめるトレイルです。安全で快適に歩くためにも、YAMAPアプリを活用して事前準備を整え、ぜひチャレンジしてみてください。
2026年も、YAMAPアプリとともに、より充実した「常陸国ロングトレイル」の旅を楽しんでみませんか。
YAMAPでは、本トレイルを対象に「常陸国ロングトレイル×YAMAPデジタルバッジキャンペーン」を実施しました(2025年11月〜2026年2月)。キャンペーンはすでに終了していますが、6,000人を超すユーザーさんにご参加いただくことができました。
今回の記事では、キャンペーンに参加した4名のYAMAPユーザーさんがオススメする、イチ推しのコースを徹底紹介!それぞれの方が何度もトレイルを歩いているので、ルートはもちろん、立ち寄り温泉やとっておきの下山メシ情報まで、登山者目線のおすすめ情報が満載です。

赤岩展望台からは、本州一長い歩行者専用吊橋といわれる竜神大吊橋がよく見える
目標の山:おかめ山(440m)、西金砂山(418m)
登山口:竜神大吊橋第2駐車場
下山口:天下野地区
行動時間:5時間45分
紹介者:空ちゃんさん

Q:どんなコースなの?
A:里山の尾根や稜線をつないで歩くコースで、四季折々の植生やのどかな里山風景を楽しみながら歩けます。おかめ山や西金砂神社のように、歴史や信仰と結びついたスポットも点在。見晴らしの良い尾根からは、周囲の里山や遠くの山並みが一望できるのも魅力です。マイカーの場合、下山後は徒歩1時間かバス(堀之内バス停)利用で、スタート地点まで戻れます。
Q:見どころを教えて!
A:特に外せないのは、この5つ!
①赤岩展望台から望む竜神大吊橋
②おかめ山のスリリングな岩尾根歩きと360°の展望
③迫力のある地割の景観
④西金砂山(にしかなさ・西金砂神社の本殿)展望台からの眺め
⑤歴史を今に伝える西金砂神社と大祭礼の古道

おかめ山(東峰)は、景色もいいので休憩にも最適
赤岩地区の樹林帯を過ぎると、岩尾根の急登が始まります。足場はしっかりしていますので、焦らずに一歩ずつ登るのがポイント。登り切った先にあるのが、「おかめ山(東峰)」です。ここでは360°の大パノラマが広がり、達成感とともに絶景を楽しめます。

地面が真っ二つに割れたかのような光景から、「地割」の名で呼ばれている

西金砂神社は、平安初期の創建とされ、長い歴史をもつ山岳信仰の拠点
境内から下山口までは、平安時代から72年に一度行われてきた「金砂神社磯出大祭礼」の古道を歩きます。切り立った崖が点在する地形にもかかわらず、この道は穏やかな下りで歩きやすいです。長い歴史の中で人々が祈りを込めて歩いてきた理由が実感でき、千年以上続く祈りの道を、自分の足でたどれる特別な体験になります。

平安時代から人々が歩いてきた歴史を感じる古道

竜神峡鯉のぼりまつりの様子
なお、竜神大吊橋では4月下旬〜5月中旬に「竜神峡鯉のぼりまつり」が開催され、約1,000匹の鯉のぼりが空を泳ぐ圧巻の光景が広がります。山歩きの締めくくりにぜひ立ち寄ってほしいですね。
Q:おすすめ下山スポットは?
A:次の3つです
①横川温泉(中野屋旅館、元湯 山田屋旅館)
アルカリ性の強い天然温泉で、肌にまとわりつくようなとろみが特徴。美肌効果や新陳代謝促進が期待でき、歩き疲れた体をやさしくほぐしてくれます。
②常陸秋そば
このエリアはそばの名産地。どこも美味しいのですが、私がおすすめなのは、「そば処 いい友」、「そば園 佐竹」、「SOVA TEA 越路」です。

常陸秋そばは、茨城県の誇るブランド品種。そば通の間でも評価が高い
③道の駅ひたちおおた
地元の新鮮野菜や特産品が充実していますが、個人的なおすすめは「里美のむヨーグルト」。すごく美味しくて、迷わず手に取りたい逸品です。

目標の山:高鈴山(623m)、御岩山(530m)
登下山口:御岩神社第二駐車場
行動時間:3時間10分
紹介者:そらまめさん

Q:どんなコースなの?
A:常陸国ロングトレイル南東部を歩くこのコースのメインは、御岩神社から高鈴山に向かうルート。推定樹齢600年の神木「三本杉」が目に入る頃には、周囲に凛とした空気がただよい、山域の神聖さを肌で感じるはずです。
整備された登山道は歩きやすく、初心者でも安心。広々とした高鈴山の山頂からは海まで見渡せ、開放感あふれる絶景の中で山ごはんを楽しめます。下山は裏参道を選べば、登りのハイカーとのすれ違いも少なく、快適な周回登山が可能です。山歩きに慣れた方なら月山や大室山と常陸国の出羽三山を巡り周回するのもおすすめです。

御岩山は、常陸国最古の霊山といわれ188柱の神々が祀られている。写真は188番目の御嶽神社
Q:見どころを教えて!
A:次の5つポイントを見て感じてほしいです。
①神秘的な雰囲気の御岩神社
②斎神社天井の雲龍図と神仏習合を感じる阿弥陀如来像、大日如来像
③御岩山山頂の石柱と展望
④御岩山から高鈴山に向かう馬酔木のトンネル
⑤高鈴山山頂の眺めと天測点
まずは、森に包まれた御岩神社のお参りから。境内に一歩入ると、空気がすっと澄むのを感じられるはずです。そのまま御岩山山頂の「賀毗禮之高峯(かびれのたかみね)」へ。山頂にひっそりと立つ石柱は、宇宙からも光って見えると話題になった神秘的なもの。
御岩山山頂からの展望もこのコースの大きな魅力です。荒々しく切れ落ちた奥久慈男体山の姿を間近に、晴れた日には日光連山や那須連山まで見渡せます。岩壁にぽつんと空いた小さなハート形の穴も、ぜひ探してみてください。

賀毗禮之高峯から奥久慈男体山を望む

パワースポット御岩山山頂にあるハートの形をした岩壁の穴
そして高鈴山の山頂では、大きなコンクリートの天測点にも注目を!これは昔、天文測量のために設けられた基準点で、対になる子午線標は、約3キロ離れた奥日立きららの里の園内にあります。見えない線でつながるふたつのポイントを思い浮かべるのも、ちょっとしたロマンではないでしょうか?

高鈴山山頂にあるコンクリート製の天測点
Q:おすすめの下山スポットは?
A:歩き終えたあとは、「がっつり下山メシ」と「海がまる見え温泉」を楽しみましょう。
①久慈サンピア日立
太平洋を一望できる開放的なロケーションが魅力。天然鉱石「光明石」を使用した大浴場は、やわらかな湯ざわりで歩き疲れた体をじんわりほぐしてくれます。海を眺めながら湯に浸かる時間は、下山後ならではの贅沢です。
②勘太そば
ひたち南ドライブイン内にある食事処。久慈浜漁港をはじめ県内の漁港から仕入れる新鮮な刺身定食が人気です。うどんやそばも揃い、価格も手頃です。

満腹セットは、海鮮丼とヒレカツ丼にうどんまでついているお得なセット
③いづみや本店
武士が好んだとされる極太でコシが非常に強く、食べ応えのある手打ち麺が特徴の西山うどん。常陸太田市のソウルフードで、山を歩いた日なら罪悪感無く食べられる満腹必至の一杯です。大盛り以外にもスーパー、ウルトラなど増量ができてボリューム満点。

常連さんの要望で作られた「秋山スペシャル」は、大人気のメニュー
Q:最後に一言お願いします!
A:今回紹介した御岩山は、実は私が登山を始めるきっかけとなった特別な山なんです。賀毗禮之高峯で味わったあの爽快感は今も忘れられません。常陸国ロングトレイルは、多彩なルートがあり、歩くたびに新しい発見があります。人と地域をつなぎ、物語を生み出していく道だと思います。

御岩山の山頂近くに鎮座する霊場、「かびれ神宮」

茨城のジャンダルムのスリリングな稜線
目標の山:生瀬富士(406m)、茨城のジャンダルム(406m)、月居山(403m)
登山口:袋田滝本町営第一無料駐車場
下山口:袋田の滝
行動時間:4時間45分
紹介者:めぐみるくさん

Q:どんなコースなの?
A:奥久慈らしい岩稜や渡渉、断崖の展望地など、低山とは思えない変化に富んだ地形が続く人気コースです。
スリリングな「茨城のジャンダルム」や、日本三名瀑のひとつ、袋田の滝を真上から見下ろす「滝のぞき」など、迫力ある見どころが点在。月居観音堂や城跡などの歴史的スポットも織り交ざり、自然と文化を同時に味わえます。
新緑や紅葉、氷瀑など四季折々で風景も変わるので何度でも訪れたくなります。トレイルのフィニッシュは観瀑台で、迫力満点の袋田の滝を五感のすべてで味わうのがおすすめ。さらに奥久慈男体山へとつなぐ縦走も可能で、レベルや時間に応じてルートを自由に組み立てられるのも醍醐味だと思います。

高さ120m、幅73mの圧倒的な大きさを誇る袋田の滝

袋田の滝を真上から見下ろす「滝のぞき」。断崖なので十分ご注意を
Q:見どころを教えて!
A:とくに外せないのは次の5つです。
① スリル満点の「茨城のジャンダルム」先端からの360度の大展望
② 袋田の滝を真上からのぞき込む「滝のぞき」
③ 奥久慈の山並みと、滝が織りなす爽快な風景
④ 月居観音堂の奥に佇む鐘楼の静かな佇まい
⑤ ニリンソウやカタクリ、イワウチワ、ミツバツツジなど可憐な春の花

里山の山岳信仰の面影を残す月居観音堂。その奥には鐘楼が見える
スリル、絶景、歴史、そして季節の花ーー。奥久慈の魅力を一度に味わえる、変化に富んだコースです。ただし、切れ落ちた岩稜帯や急勾配、断崖、渡渉箇所なども含まれるので、悪天候時や高所が苦手な方は無理をせず、装備とコンディションを十分に整えて挑んでくださいね。

生瀬滝上部の渡渉ポイントは、無料の長靴が用意されている。水量が多いときは迂回路もあり
Q:おすすめの下山スポットは?
A:温泉で汗を流すなら、月居温泉「白木荘」へ。下山メシは、次の4軒がオススメです。
①「昔屋」の特製昔屋そば(つけけんちんそば)
②「川ふじ」のハンバーグステーキ
③袋田の滝・仲見世通りのしゃもテール焼き、鮎の塩焼き、さしみこんにゃく
④奥久慈珈琲焙煎所ルージュノワールのコーヒー
月居温泉「白木荘」は、袋田の滝上流に佇む、旅人に長く親しまれてきた湯宿。昭和レトロな空気が漂い、歩き終えた体と心をじんわりほぐしてくれます。
つけけんちんそばは、温かな具だくさんのけんちん汁に冷たい蕎麦をくぐらせて味わう、茨城のソウルフード。野菜の旨みが溶け込んだ滋味深い一杯です。「川ふじ」のハンバーグは、しっかり濃いめの味付け。汗をかいた後の体に、力強く染み渡ります。また、夜まで通し営業なのもハイカーには嬉しいですね。

けんちんそばを看板に掲げて半世紀という「昔屋」のけんちんそば
「ルージュノワール」は、奥久慈パノラマライン沿いに建つログハウスのカフェ。もともとは水戸市で人気を集めていた店が、奥久慈に移転しました。おすすめは、テラス席や窓際の席。奥久慈男体山や長福山の景色を眺めながら、香り高い本格コーヒーをゆっくり楽しめます。

窓際の席から奥久慈男体山と長福山を望む
今回は王道コースをご紹介しましたが、ほかにも岩稜をつなぐタフな縦走路や、ディープな里山ルートなど、奥久慈は歩くほどに奥行きが広がるエリアです。訪れるたびに新しい発見があるので、ぜひ何度も足を運んで欲しいですね。

目標の山:奥久慈男体山(654m)、鍋転山(423m)、月居山(404m)
登山口:西金駅
下山口:袋田駅
行動時間:7時間45分
紹介者:tana_shuさん

Q:どんなコースなの?
A:名瀑や展望など見どころが多く飽きないコースです。また、登山道は整備が行き届き、安心して歩けるのも魅力です。
水郡線・西金駅から大円地を経て奥久慈男体山へ。さらに鍋転山、月居山をつなぎ、袋田の滝へと下る充実の縦走コース。とくに紅葉の時期は格別で、各所で鮮やかな色づきに出会えます。その中でもルート上のラストピークとなる月居山では、頭上いっぱいに広がるモミジに圧倒されます。そしてフィナーレは日本三名瀑のひとつ、袋田の滝へ。豪快な瀑布を間近に仰ぎ見ながら、充実の一日を締めくくれます。
Q:見どころを教えて!
A:外せないのは、次の4つです。
① 奥久慈男体山からの大展望
② 月居山の鮮烈な紅葉
③ 日本三名瀑・袋田の滝
④ スリリングな鎖場が続く(健脚コース)
奥久慈男体山のハイライトは、山頂直下の石宮裏へ回り込むポイント。足元は切れ落ちた断崖で、十分な注意が必要ですが、そのぶん遮るもののない大パノラマが広がります。県内の名峰、神峰山や高鈴山、筑波山を一望し、視線を西へ伸ばせば日光連山、好天に恵まれた日には遠く富士山まで見渡せるスケール感が魅力。

奥久慈男体山の山頂から筑波山を望む
北上ルートの終盤を飾る月居山は、紅葉期の主役。とくにモミジの色づきは鮮烈で、頭上を一面に覆う赤や橙に包まれる感覚は圧巻です。疲れを忘れさせる、ドラマチックなワンシーンが待っています。

「月居山山頂の燃えるような紅葉。写真は、全く色加工をしていません」(tana_shuさん)
コースのフィナーレは、日本三名瀑のひとつとして名高い袋田の滝。四季折々に表情を変え、春の新緑、秋の紅葉、そして厳冬期の氷瀑と、何度でも訪れたくなる名所です。水量が少ない時期は迫力がやや控えめになりますが、その繊細な流れもまた一興。条件次第でまったく違う景観に出会えるんです。
岩場と鎖場が連続する健脚コースは、奥久慈らしい緊張感を味わえる区間。適切に整備されているため挑戦しやすく、岩稜歩きの入門としても良いですね。スリルと達成感を求める人にこそ歩いてほしいルートですが、ただし行動は慎重に。もし岩場が苦手なら大円地越経由ルートもあり、こちらもきれいな紅葉が楽しめるんですよ。

緊張感のある鎖場が連続する健脚コース
Q:おすすめの下山スポットは?
A:月待の滝近くの「もみじ苑」がおすすめです。紅葉に包まれた渓流沿いで、“裏見の滝”を楽しみながら食事ができる贅沢な一軒です。名物は自家製粉のそば。香り高く、のど越しも軽やかで、歩き終えた体にすっと染み渡ります。定番のざるやもりはもちろん、温かいとろろそばも滋味深く、冷えた体をやさしく温めてくれます。

常陸秋そばを使った「もみじ苑」の石臼挽きそば(写真:ジャッキーさん)
さらに紅葉期なら、奥久慈りんごのアップルパイもぜひ。りんご園や道の駅には、もぎたての完熟果実を使った焼きたてが並びます。甘みと酸味のバランスがよく、山行後の体にちょうどいい爽やかな後味。ひと口頬張れば、疲れがふっとほどけるはずです。
YAMAPユーザーさんがおすすめするコースは、いかがだったでしょうか。自然、歴史、そして名瀑。歩いたあとの温泉や土地の味まで、ひとつの流れで楽しめるのが常陸国ロングトレイルです。首都圏から電車でも車でも無理なくアクセスできますので、少しだけ日常を離れる気分で、次の休日は茨城県県北エリアに出かけてみませんか。
原稿:大関直樹
協力:茨城県県北振興局