遭難救助の一助にも。ヤマップ「みまもり機能」設定&使い方を開発者が解説!

登山中、家で待つ家族や友人に自分の位置情報を共有できるー。登山アプリYAMAP(ヤマップ)が安心安全の無料機能として提供する「みまもり機能」について、開発担当・森脇さんが徹底解説!福岡の人気低山・糸島を舞台に、設定方法と使い方をレクチャーします。

2020.08.07

森脇 誠智

YAMAPスタッフ/iOSエンジニア

INDEX

「みまもり機能」を使うとできること

YAMAP(ヤマップ)の「みまもり機能」、使ってますか?

「知らない」「名前は聞いたことあるけど使ったことはない」というそこのあなた。みまもり機能は安全登山の常識を変え得る、非常に可能性を秘めたツールです(ありがたいことにそうした評価をいただいています)。

控えめに言っても、YAMAP(ヤマップ)のアプリを使って登山するならば活用しない手はない機能のはずですが、「使い方がわからない」との声を耳にすることもしばしば。

そこで今回は、私、開発担当の森脇が実際に山で使ってみたレポートを交えながら、みまもり機能の基本機能や使い方、メリットを紹介していきます。

みまもり機能とは?

ひとことで言うなら、登山中の位置情報を家族や友達に共有できる機能です。みまもり機能を使うと、

① 電波の届かない山の中でも「待つ人」に自分の位置を逐一知らせることができる(家族・友人にとっての安心安全)
② 遭難時など万一の際には、救助のための有用な情報になる(山岳遭難救助のときの安心安全)
③ スマートフォンさえあれば、安全登山のネットワークに加わることができる(登山者同士の安心安全)

といったことが可能になります。

しかも無料です(これも質問されることが多いので記載しておきます)。YAMAPのアプリをダウンロードしさえすれば、課金は不要です。なお、YAMAPアプリ自体も主な機能は無料で使うことができます。

「画期的!」と言ってもらえる理由

みまもり機能の一番のポイントは、先に挙げた③の部分。山ですれ違った人の位置情報をYAMAPのサーバーに送ることで、たとえ山奥で携帯の電波が届かないエリアであっても、位置情報を共有できるという点にあります。

仮に他の登山者とすれ違った場所が圏外エリアであっても、その相手がオンラインに入れば、すれ違った地点の位置情報を確認することができます。そのため、万が一、山中の圏外エリアでトラブルに遭うなどして身動きが取れなくなった場合にも、「この時点ではここにいた」という情報が残り、山岳救助に役立てることもできるのです。

みまもり機能の機能解説や開発背景は以下の記事にて詳細を記していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。

山で“人とすれ違う”ことで、誰かの命を救えるかもしれない機能をつくりました

家族を安心させようとしたら、YAMAPの安全性がアップデートされた – みまもり機能開発者&春山さん対談

みまもり機能の使い方(設定編)

さて、ここからがいよいよ本題! みまもり機能の設定についてお伝えします。

できれば、設定は登山の前日までに済ませておくのがベター。さっそく、私の妻を連絡先に登録してみます。

まず、アプリを開き、[マイページ]▶[右上の歯車アイコン]▶[みまもり機能] の順、または[地図]▶[設定画面]▶[みまもり機能]の手順で進んでください。

みまもり機能の画面にたどり着いたら、位置情報を共有したい相手の連絡先を登録して、みまもり機能を有効にします。連絡先はメールアドレスとLINE(プレミアム会員限定)から選択できますが、今回はメールアドレスを登録してみます。

1. スイッチをオン→ 2. 「メールアドレスを登録」を選択 → 3. スマホの連絡先から選択または直接メールアドレスを入力し、登録完了!

はい、これだけです。

正しく登録できるとこんなメールが届きます

念のため、登録先の相手に登録完了のメールが届いていることを確認しておいてくださいね。

みまもり機能の使い方(登山編)

登山当日の特別な設定は不要!

さて、設定が終わったので、実際に山に出かけてみます。今回の行き先は、福岡の糸島市にある通称・糸島四座(二丈岳、女岳、浮嶽、十坊山)。

登山口に着いたら、いつもどおりYAMAPアプリで「活動開始」ボタンを押し、登山を開始します。前日までに先ほどの設定だけ済ませておけば、特別なことをする必要はいっさいありません。

あとは、いつもどおり鼻歌交じりで歩きはじめ、糸島の山々の自然と景色を満喫するだけです。

安全登山ネットワークに参加するためのワンポイント

ただし、ここで一つだけお願いがあります。

登山当日、いざ歩き出す前に、「こんにちは通信」と呼ばれる、すれ違った相手を検出する機能を有効にしていただきたいのです。

活動中の画面で「こんにちは通信」のアイコンが「白色」なら、こんにちは通信は無効になっている証拠

設定画面から「こんにちは通信」のスイッチをオンにして、Bluetoothへのアクセスを許可すれば設定は完了です

こんにちは通信を有効にせずとも、事前登録した相手には自分の位置情報が共有されます。しかし、こんにちは通信も合わせて有効にしておくことで、すれ違った相手の位置情報を送信できるようになり、自分や自分の家族・友人にとっての安心安全だけではなく、すれ違った他の登山者の安心安全にもつながるのです。

みまもり機能もこんにちは通信も一度設定すればずっと有効ですので、未設定の方は最初のひと手間だけ、よろしくお願いします。

登山中のみまもり機能、「待つ人」にはどんな通知が来るのか?

登山中、みまもり機能はどんな感じで機能しているのか。主に「待つ人」にとってはどう見えるのか。そんな疑問を持つ人は少なくないと思います。ここからは私の山行の様子とともにこの辺りを解説していきます。

登山開始時、妻に一通のメール

さて、みまもり機能とこんにちは通信をそれぞれオンにして、鼻歌交じりで歩きはじめた私。

夏の糸島らしい雰囲気や樹林を楽しみつつ、ずんずん進んでいきます

一方、その頃、通知先として登録した私の妻宛には、こんなメールが届きます。

メールのリンクを開くと、こんな具合に夫の現在地を示す地図が表示されます。

これを見て、私の現在地を確認した妻は「無事登山口に着いて登り始めたみたいね」と、予定通り登山開始したことを知り、「今日は旦那もいないし、内緒でネットショッピングでもしようかな」と、安心してほくそ笑むことができるのです。

※YAMAPユーザーが電波が届かないエリアで活動開始した場合、通知が届くのは実際に登り始めた時刻より遅くなります

糸島の絶景を堪能するはずが…

今回私が登った糸島四座は近郊の登山者にはおなじみの、少しハードな歩きごたえがあるコース。にもかかわらず、途中の山頂や展望台から見える絶景を求めて、季節を問わず多くの登山者を惹きつけて止まない縦走路なのです。

そして、この縦走路の魅力を少しでもお伝えできればと、普段は写真撮影にほとんど興味がない私は、出発前に同僚からスマホのカメラの「ポートレートモード」なるものを教えてもらい、なるほどこれはいいことを聞いたと、糸島四座の素晴さをみなさまにお伝えするための準備は万全な状態だったのでした。

ところが…

登り始めて小一時間、遠くに見える色の濃い雲が気になりはじめます。

最初のピーク、二丈岳からの景色。ここまでは天気もまずまずだったのだが…

妻のもとには、夫の無事を伝えるメールがコンスタントに届く

私が遠くの雲を見て不吉な予感がし始めた頃、妻にまたメールが届いていました。活動中は、一定の間隔を空けて通知が届くのです。設定時に届いたメール同様に、地図リンクを開くと…

登山開始地点から現在位置が順調に移動していることが分かり、家で待つ妻は、「順調なペースで登山しているみたいね」と、私の無事を確認でき、安心してネットショッピングに専念することができるのです。

※YAMAPユーザーが電波が届かないエリアで活動中の場合、通知の間隔が一定ではなくなるケースがあります

嫌な予感が的中! 豪雨のなか途中撤退

しかし、2座目の女岳に向かう途中で遠くの黒雲近づいてきてポツポツと雨が降り出し、女岳を通過してしばらくすると、雨はあれよという間に勢いを増し、ついには滝のような状態に。昨今の各地の豪雨被害の状況が頭をよぎり、ここで無理して進むのは危険と判断し、予定を変更して大人しく来た道を引き返したのでした。

アスファルトの林道に叩きつける激しい雨に一人慄きながら撮った一枚

これまで見たこともない程の濃い色の泥水が流れている林道

ただ、このまま引き返してしまうだけだと、糸島の山の魅力も伝わらないし、せっかく覚えたポートレートモードも活用できないので、雨ならでは糸島の山の魅力をお伝えしようと、下山途中で雨に打たれながらも、頑張って何枚か撮影してみました。

雨に濡れた切り株

岩肌に張り付いた葉っぱ1

岩肌に張り付いた葉っぱ2

雨に濡れた光っていたシダの葉

ポートレート感を通じて、雨なら雨なりの登山の良さが、多少なりとも伝ったら嬉しいのですが、どうでしょうか?

忘れがちな「下山報告」も、みまもり機能でカバー

豪雨に打たれながらもなんとか無事に下山した私は、いつもどおりYAMAPで活動を終了、活動日記を保存します。

終了した時に表示されるこちらのダイアログでは、活動中にすれ違ったユーザーの人数が確認できます。この人数が多ければ多いほど、登山の安全に寄与したことになるのです。

夫の下山とともに、本日最後のメールを受け取る妻

私が活動終了すると、妻宛てにこんなメールが届いて、無事下山したことが分かります。

これを読んだ妻は「無事に下山したようね、よかった、ひと安心!」と、ネットショッピングのサイトで時間をかけて選んだブラウスの購入ボタンを、安心してポチッと押すことができるのです。

ついつい忘れがちな、家族への下山連絡も兼ねることができるのも、地味に便利なポイントです。

※YAMAPのユーザーが電波が届かないエリアで活動終了した場合、通知が届くのは実際に下山した時刻より遅くなります。

みまもり機能を使ってみた@糸島登山の振り返り

下山途中、雨に打たれつつもヒキガエルを見つけ急いでシャッターを切った、今山行の思い出の一枚。ピントがぼやけているのはご愛敬…

今回の登山を振り返ってみると、途中、想定外の大雨に打たれている時でも、家族が自分の現在位置を把握している、という安心感はやはり大きいなとあらためて実感しました。

縁起でもないですし考えたくもないですが、今回のような大雨だと、最悪の場合、登山中に土砂崩れに巻き込まれてしまう、という事態も想定されます。

そのような万一の時でも、自分の位置が共有できてさえいれば最終的には何とかなるだろうと前向きに捉えることができて、落ち着いて下山できました。

こうした精神的な余裕が、いざという時の正しい判断に繋がるはずだと信じています。

この記事を読んで、「私もみまもり機能を使ってみるか?」と一人でも多くの方に思っていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。

次に予定している登山の前に、みまもり機能の設定を済ませておきましょう!

森脇 誠智

YAMAPスタッフ/iOSエンジニア

森脇 誠智

YAMAPスタッフ/iOSエンジニア

1974年生まれ、熊本県出身。いちユーザーとしてYAMAPを使い続けるうちに、「どうせなら好きなことを仕事にしてしまおう!」と入社を決意。遭難救助や山の安全に役立つサービスとして「みまもり機能」を発案、開発も担当した。