目にするのはスマホやパソコンの画面ばかり、外に出れば都会の雑踏…そんな日常に疲れた人におすすめなのが山歩(さんぽ)です。日常のあれこれを忘れて、五感で自然を感じる豊かな時間。もちろん、心地よい汗を流した後の温泉は格別! 温泉×山歩はデトックスとエナジーチャージが一気に叶うベストな組み合わせです。そんな素敵な休日を約束する福岡周辺の山歩道を紹介します。
2023.04.28
YAMAP MAGAZINE 編集部
山歩(さんぽ)とは、少し足を伸ばすだけで出会える心地よい自然を無理なく楽しむこと。お日さまのぬくもり、風のそよぎ、水のせせらぎなどを感じつつ、道ばたの草花や苔むした石碑にも目を留めながら、のんびり歩きましょう。ふと予定が空いた休日や天気が良い日は絶好の山歩日和。手持ちの歩きやすく、乾きやすい服装と履き慣れた滑りにくい靴、十分な水分などを用意しましょう。
そんな山歩をより爽快にしてくれるのが、歩いた後の温泉でのひと時。ただお湯に漬かるだけでも気持ちの良いものですが、山歩の程よい疲れを癒やすお風呂タイムはリラックス感も倍増。お湯の中でゆったりと身体をほぐせば疲れも吹き飛び、休日がより豊かな時間になること請け合いです。
なお、今回の山歩道選定の目安は以下の通りです。
・歩行時間:3時間以内
・歩行距離:5km以内
・上り累積標高差:400m以下
・温泉までの距離:下山口から5km以内
これはハイキング初心者でも無理なく気軽に歩ける数値。これから山や自然の中で遊びたいと思っている人にもぴったりです!
※一部、上記目安を超えるコースもあります。
大平山(315m)への山歩の起点となる甘木公園は、池を中心として春は県下有数の桜の名所となり、色鮮やかなツツジも見事。初夏の花菖蒲・秋の紅葉など、いつ訪れても四季を感じる場所です。
公園を抜けると森の中の歩きやすい山歩道が続きます。のんびり休憩できる東屋がある山頂は広場になっており、天空の園にも花々が。展望も抜群で眼下の筑後平野はもちろん、くじゅう連山までを見渡すことができます。
桜やツツジとともに春の風物詩となっているのが、地元有志の方々が大平山を訪れる人を歓迎するために山頂に張るたくさんの鯉のぼりです。春の空を泳ぐカラフルな鯉のぼりの下で過ごす休日は、思わず長居をしてしまうほどの気持ちよさ。子どもの日を中心に例年4月から5月中旬まで見ることができます。
大平山が位置する甘木・朝倉地区では、弥生時代後期の住居跡・出土品が大規模に見つかっていることなどから、かつて邪馬台国があったとされる有力な候補地のひとつとなっています。それにちなんで「卑弥呼」を冠した入浴施設「朝倉市健康福祉館 天然温泉卑弥呼ロマンの湯」(情報提供元:ニフティ温泉)は、ph9.4超のアルカリ性単純温泉で、トロトロした肌触りのよさが特長。
大浴場(低温湯・高温湯)と打たせ湯でじっくりと源泉かけ流しの天然温泉を堪能できるほか、食事処や広い憩いの間、ラウンジなどもあり、ゆっくりと山歩の疲れを癒すことができます。
・歩行時間:2時間20分
・歩行距離:4.6km
・上り:352m
・アクセス
車で:大分自動車道・甘木ICから甘木公園駐車場まで約10分
・温泉所在地:福岡県朝倉市美奈宜の杜3丁目1−6
・コースを詳しく見る
可也山(365m)は糸島半島にそびえる独立峰で、その円錐形の美しい姿から「糸島富士」や「筑紫富士」とも呼ばれています。山歩道のスタートは階段が続きますが、次第に傾斜はゆるやかになり森の中の気持ちの良い道へ。
神武天皇を祀る可也神社を過ぎると山頂へ到着、さらに200mほど進んだ場所が山頂展望台です。晴れた日であれば糸島ブルーの呼び名にふさわしい玄界灘の絶景が広がり、能古島や遠く壱岐までを眺望することができます。
可也山の中腹には石切場跡があります。江戸時代には良質な岩石の産地としても重要な存在だった可也山。福岡藩初代藩主・黒田長政公が日光東照宮に寄進した国指定重要文化財の石鳥居も、ここで産出された石を利用していました。今は草木が繁茂し苔むした石もありますが、自然に溶け込みつつある光景もまたノスタルジックです。
糸島の田園風景を見下ろす丘の上にある「伊都の湯どころ」(情報提供元:ニフティ温泉)は、こんこんと湧き出る天然水を利用した入浴施設です。大浴場・ジャグジー・露天風呂はもちろん、サウナや多彩な岩盤浴を楽しむこともでき、家族風呂やリクライニングチェアのあるリラックスルームもあります。糸島産の食材を使った食事処の料理や水にも、豊かな天然水が利用されています。
・歩行時間:2時間30分
・歩行距離: 4.1km
・上り:392m
・アクセス
車で:西九州自動車道・前原ICから可也山登山口駐車場まで約10分
・温泉所在地:福岡県糸島市泊765番地
・コースを詳しく見る
これまでも「森林浴」にはリラックス効果があるとされてきましたが、近年これを科学的に解明して森の力を心と身体に活かす「森林セラピー」が広がりを見せています。篠栗町は全国に設定されている「森林セラピー認定基地」のひとつで、6つのコースで森の力を享受することができます。
落陽コースはその中でも歩きやすいコースで、まさに山歩にぴったり。若杉山西麓のメタセコイアなどの巨木がそびえる森に延びた比較的平坦な道は、ウッドチップが敷き詰められた区間もあり、手軽に森林セラピーを体感できます。
コースから少し寄り道した場所にあるのが「大和の大杉」です。それまでは深い森の中にひっそりとたたずみ、2000年にようやく発見されたという高さ40mにも及ぶ巨木は存在感抜群。5本に枝分かれした幹は今なお成長を続けており、そのパワーを実感できるでしょう。
今回の山歩道から篠栗市街地へ下る途中にあるのが、「若杉山麓 若杉の湯」(情報提供元:ニフティ温泉)です。内湯の他に露天岩風呂・露天檜風呂・サウナを楽しむことができます。そして何といっても最大の魅力は、それぞれに趣の異なる10室の家族湯があること。利用者が入れ替わるごとに洗浄して新しいお湯を張るという嬉しい気づかい、お子さまと一緒に山歩を楽しんだ後の一家団らんにもってこいのバスタイムになるでしょう。
・歩行時間:1時間
・歩行距離:1.7km
・上り:135m
・アクセス
車で:九州自動車道・福岡ICから篠栗森林セラピーロード落陽コース入口駐車場まで約25分
・温泉所在地:福岡県糟屋郡篠栗町若杉679
・コースを詳しく見る
鏡山(283m)は別名・領巾振山(ひれふりやま)とも呼ばれ、眼下に国の特別名勝・虹の松原を望む絶景の山です。山頂周辺には、県道鏡山公園線を通って車でアクセスできます。広く開けたスペースに展望台・休憩所が点在し、芝生広場などが整備されています。
春は桜だけでなく、鏡山ツツジ園の鮮やかな色彩のカーペットが広がります。北側の山麓からは1,278段の「虹の階段」も整備されており、体力づくりにも好適。誰もが思い思いのスタイルで楽しむことができる山歩スポットです。
鏡山山頂には鏡山稲荷神社をはじめ道祖神などの史跡も多く、さまざまな伝承が残っています。中でも有名なのが松浦佐用姫伝説です。6世紀に地元の豪族として生まれた彼女が、朝鮮半島へ遠征するために船出する恋人との別れを惜しみつつ、「領巾(ひれ)」という肩にかけた布を振りながら見送ったという逸話は、万葉集にも記されています。
地下1,600mから湧き出る源泉かけ流し(一部ろ過式循環)の湯が美肌にも効果があるという「鏡山温泉茶屋 美人の湯」(情報提供元:ニフティ温泉)には、家族風呂もあります。施設名に「茶屋」とあるように、立地は唐津バイパス沿いで交通至便。食事だけの利用も歓迎しています。目玉は何といっても地元の海産物、刺身や天ぷらなどのメニューで、新鮮な海の幸を堪能することができます。
・歩行時間:1時間40分
・歩行距離:1.8km
・上り:284m
・アクセス
車で:西九州道・唐津ICから虹の階段駐車場まで約10分
・温泉所在地:佐賀県唐津市鏡4733番地
・コースを詳しく見る
九州本土の最高峰・中岳(1,791m)をはじめ久住山(1,786m)・大船山(たいせんざん、1,786m)などの山々が連なるくじゅう連山は、九州屈指の山好きたちが集まるスポットです。そして手軽な山歩でも、その魅力を味わうことは可能。玄関口のひとつである牧ノ戸峠からわずか30分足らずの沓掛山(くつかけやま、1,503m)からも、こんな景色が見られるんです。
初夏にはピンクのミヤマキリシマの花、秋には色とりどりの紅葉が山肌を染め上げ、その絶景には息を呑むほど。ここを歩けば、山歩の魅力にハマること請け合いです。
沓掛山の往復だけではあっという間に終わってしまう山歩、少し移動してひと味違ったくじゅうの景観も楽しんでみませんか。やまなみハイウェイを車で5分ほど走った長者原(ちょうじゃばる)からは、ラムサール条約にも登録されているタデ原湿原へと木道が延びています。春から夏の花々や秋の草紅葉など、貴重な湿原ならではの風景を楽しみながら歩くことができます。
九重連山からの4種の異なる泉質の天然温泉をぜいたくに源泉かけ流しで利用しているのが、「九重星生ホテル 山恵の湯」(情報提供元:ニフティ温泉)です。胃腸に効く飲用可能な酸性緑礬泉のほか、硫黄泉など様々な温泉を、16種類の湯船で楽しむことが可能です。とりわけ露天風呂からはくじゅう連山を一望でき、心地よい山歩の余韻も相まって格別な時間となることでしょう。
・歩行時間:1時間
・歩行距離:1.6km
・上り:187m
・アクセス
車で:九州横断道・九重ICから牧ノ戸峠駐車場まで車で約30分
・温泉所在地:大分県玖珠郡九重町大字田野230番地
・コースを詳しく見る
福岡から少し足を延ばすだけで手軽に楽しむことができるのが山歩です。自然の中で研ぎ澄まされていく五感や癒されていく心…日常から解放されたリラックスモードで漬かる温泉は、きっと明日からの元気を与えてくれることでしょう。さあ、山歩にでかけましょう。
※紹介している入浴施設は、沸かし湯の施設も含まれます。
トップ画像:やすさんの活動日記より
編集協力:鷲尾 太輔