登山道具はタフだけど、使われる環境が過酷なだけにどうしても破損はつきもの。そんなアウトドアシーンの困った! に備える新サービスとして「アウトドア家財保険」の取り扱いがヤマップでスタートしました。とはいえ、「家財保険って何?」「火災保険とどう違うの?」と思う人が多いはず。そこで本連載では、人気インスタグラマーで家財保険初心者のヤマガスキナダケさん(質問者)とヤマップネイチャランス損害保険 [※] のウチコさん(解説者)をお迎えし、家財保険の謎を解き明かしていきます。全6本(予定)すべてを読み終えたら、あなたも家財保険マスターになれるかも!?
[※] ヤマップネイチャランス損害保険は、登山アプリ「YAMAP」等のサービスを運営するヤマップのグループ会社です。
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第1回:家財保険って何? 火災保険との違い、補償内容を解説
2024.06.28
ヤマガスキナダケ
会社員イラストレーター
ヤマガスキナダケ:前回、保険内容を確認するなら「保険証券」をまずは見るべし! との教えをいただきさっそく保険証券を引っ張り出してみたのですが、意外に見やすいんですね。てっきり文字だらけで難しいものなのかと思ってました。
ウチコ:それはよかった。たしかに最近ではイラストを用いて一目で契約内容を理解できるよう、わかりやすく表現している証券が増えていますからね。
ヤマガスキナダケ:我が家の保険証券がまさにそれでした。保険に加入している人ならみんな、一度見ておいて損はないなって思いましたね。
ウチコ:そうですね。保険証券は保険契約が成立した証として保険会社から交付されるもので、契約者や被保険者(保険がかけられている人)の氏名、証券番号、補償の開始日、保険金が支払われる条件、保険料などが記載されているんです。補償内容の見直しはもちろん、保険金の請求手続き、契約者、住所変更などの手続きでも必要になるので、紛失しないよう大切に保管しておきたいですね。
ヤマガスキナダケ:ついこの間まで家の片隅で眠っていたけれど、保険証券ってとっても重要な存在なんですね。ところで、保険証券を見るときのポイントってあるのでしょうか? 契約時に細部まで理解しきれていなかったので、これを機に保険契約全体を見直し、我が家にとって家財保険が必要なのかどうかを考えたいと思いまして。
ウチコ:保険証券に記載の内容はどれも重要項目ではあるのですが、強いて挙げるなら見るべき箇所は大きく2つ、「補償の対象」と「補償内容」を確認することでしょうか。それから大前提として「自分の暮らしに合っているかどうか」という観点で確認することもポイントですね。
ヤマガスキナダケ:ふむふむ。補償の対象と補償内容、そして暮らしに合っているかどうか……と。どういうことなのか詳しく教えてください!
ウチコ:はい、まずは「補償の対象」から。火災保険の補償対象には建物と家財の区分があって、家財を補償する保険が家財保険です。加入中の保険の補償対象が「建物」なのか「家財」なのか、あるいはその両方なのかをまずは確認しましょう。
ヤマガスキナダケ:なるほど。我が家は「建物のみ」の契約となっていて家財保険には加入していないことがわかりました(汗)。あれ、でも家に住んでる以上、誰しも「建物」には保険がかかっているような気も……?
ウチコ:いえ、家財保険だけのケースもありますよ。よく勘違いされやすいのですが、賃貸契約の場合は「建物」の保険は必要ないんです。
ヤマガスキナダケ:ん? どうしてでしょう?
ウチコ:建物の方は大家さんが加入しているからですね。
ヤマガスキナダケ:そうか、建物は大家さんの所有物に区分されてるってことか。
ウチコ:火災保険・家財保険の契約において、持ち家なのか賃貸なのかは一つの大きな分かれ目です。詳細は別記事でより詳しくお伝えするとして(後日、本連載の一記事として公開予定)、今は話を先に進めますね。
ウチコ:補償の対象を確認したら、次に見るべきは「補償内容」です。
ヤマガスキナダケ:ああ、この「火災・落雷」とか「水漏れ」とか書いてあるところですね。
ウチコ:そうです。先ほど確認した補償の対象が、どんなシーン・条件で適応されるのかが記載されているところですね。「基本補償」が何なのか、「特約補償」では何をつけているのか。「自分の暮らしに合っているかどうか」という視点で、補償内容を確認してみましょう。
ヤマガスキナダケ:そうか。保険には基本補償と特約補償の区分があるんでしたっけ。
ウチコ:はい。自分の暮らし、そこで起こりうるリスクと照らし合わせたときに、基本補償では足りないところを特約補償で補う、というイメージですね。例えば洪水や土砂崩れ(土石流)、高潮などが対象となる「水災」の補償。これは河川のそば、ハザードマップの危険区域などに住んでいる人にとっては非常に重要な補償ですが、逆に水害リスクが低い地域に住んでいる人にとっては必ずしも必要でない場合があります。このように自分の生活環境や地域のリスクを考慮して適切な補償内容を選ぶことが大切なんです。
ヤマガスキナダケ:なるほど。自分が住んでいる地域でどういったことが起こりやすいかを考えて、必要か不必要かを補償内容と照らし合わせて考えるわけか。それが、自分の暮らしに合っているかどうかの視点を持つってことなんですね。実際、保険が適用されるような自然災害は多いものなんですか?
ウチコ:近年、増加傾向にあるゲリラ豪雨や台風被害は水災補償や風災補償の対象になります。
ヤマガスキナダケ:基本補償と特約補償、そして自分の暮らしをセットで考えることで、自分によりぴったりの、本当に必要な補償を選ぶことができるわけかー。考えたこともなかった。
ウチコ:ヤマップグループのアウトドア家財保険も、自然災害から第三者の損害賠償まで特約で自分に合った選択をすることが可能ですよ。
ヤマガスキナダケ:かなり頭が整理されてきました。けど、結局、僕は家財保険に入るべきなんだろうか。単純に家財保険に入った方がいい人って、ズバリどんな人なんでしょう?
ウチコ:ズバリ、モノが多い人ですね。
ヤマガスキナダケ:モノが多い人……って、何か基準みたいなものがあったりするのでしょうか? 自分はどうなのかイマイチ判断できず。
ウチコ:家族構成や年齢、趣味などにより異なるので正確にお伝えすることは難しいのですが、以下の表「家財の再調達価額の目安」は参考になるかもしれません。
ヤマガスキナダケ:再調達価額、というのはなんでしょう?
ウチコ:保険用語的には、補償の対象と同等のものを新たに新築・購入・取得するのに必要な資金のことを指します。わかりやすく言うと、罹災して家財が損害を受けた際に、それらの家財を再度買い直すのに必要な費用、といったところでしょうか。
ヤマガスキナダケ:なるほど。つまり、再調達価額とだいたい同等の家財を所有している、と考えられるわけですね。どれどれ、うちは家族3人(大人2人+子ども1人)の45歳前後だから……1,400万円!!!? 思ってたより高い……!!
ウチコ:そうなんです、家財って意外に高額なんです。この表でも、5人家族(大人2名+子ども3名)なら最大1,800万円程度、独身世帯でも300万円程度が相応と見て取れますよね。
ヤマガスキナダケ:一人暮らしでも300万円かあ。でも、なんとなく「自分は一人暮らしだし大してモノ持ちでもないから大丈夫」って思っている人は多そう。
ウチコ:たしかに家財保険は必要ないと考えている人は一定数いらっしゃいます。そもそも家財保険は火災保険の一部であることや、建物を対象とした火災保険に入っているだけでは家財は補償対象外だということを知らない人が多いですからね。
ヤマガスキナダケ:少し前の私だ(笑)。
ウチコ:「家財保険の必要性を感じない」「所有家財の金額が正しく把握できない」という方は、引っ越しを思い浮かべてみるといいと思います。今頭に浮かんだあれやこれや、そのすべてが家財です。どうですか? 一口に家財と言っても、家電や家具、衣服や趣味のものまで積算すると結構あるんですよ。
ヤマガスキナダケ:へー、家電や家具はイメージしていたけど、確かに服だけで考えても相当な金額になりそうですね……。夫婦で趣味の登山ウェアや用品を含めたら恐ろしくなってくる。とはいえ正直なところ、どこかでまだ「万が一のことかぁ、まぁどうにかなるか」って思ってしまう自分もいます。
ウチコ:わかります。万が一のことって、やっぱり想像しにくいものですからね。家財保険と聞くと単に家財の破損なんかを補償するだけの保険、みたいな印象を受ける人が多いかもしれませんが、罹災した際の「いち早く元の生活に戻るための元手」になる、という考え方もできるんですよ。
ヤマガスキナダケ:あれ?? 保険で補償されたお金って何に使ってもいいんでしたっけ?
ウチコ:もちろん、そのために保険はあるんですよ。保険会社から支払われた保険金は、広く捉えれば「元の生活に戻るための元手」。引っ越し費用や、修復に充てることもできます。罹災時というのは突然まとまったお金が必要になるんです。まとまったお金が必要になるから保険は必要なんだと思います。
ヤマガスキナダケ:保険に入っていることで、いち早く日常生活に戻ることができるという発想はなかったなあ。罹災したときのことなんてなかなか想像しきれないけど、少し現実味を感じました……
ウチコ:まぁどうにかなるさと思ってしまう気持ちもわかりますが、罹災してしまってから「やっぱり保険に入っておけばよかった」と後悔するお客様を一人でも減らしたいと、保険に携わる者としては切に願っています。
万が一のことってなかなか想像しにくいから、保険を見直すことに躊躇していたんだと思います。保険の仕組みが複雑だと思い込んでいたから、余計に踏み出せなかったんですよね。でも、実際に学んでみると、保険証券は意外とわかりやすく書いてあるし、補償の対象も意外と身近なことが多いと気付きました。
保険は登山におけるエマージェンシーへの意識と同じなんだなと、つくづく感じます。何かあってからでは遅いし、「どうにかなる」と思っても備えがあるのとないのとでは解決のスピードも違う。何より、トラブルが起こったときの精神的な負担も全然違うと想像できました。
ここで学んだ通り、みんなが同じリスクを抱えているわけではないし、それぞれに合った備えが必要です。そのためには、まず保険証券をしっかりと確認することが大事。それだけでも、いざというときの行動が大きく変わるんじゃないでしょうか。
監修:ヤマップネイチャランス損害保険
承認番号:YN24-070
承認日:2024/6/28