まずは落とさないことから|登山ガイドが教える、山のごみ対策【全国一斉・清掃登山キャンペーン】

「全国一斉・清掃登山キャンペーン」(実行委主催、YAMAP事務局)が、ごみゼロの日の5月30日(金)までの予定でスタート。あめ玉の袋一つでも、活動日記に「YAMAP清掃登山2025」のタグを選んで公開すれば、クリーンハイカーのシンボルとなる限定バッジを獲得できます。

ただ、清掃登山の前に忘れてはいけないのが、自分たち登山者が、山にごみを捨てない、落とさないということ。自然を愛する人たちがお世話になっているフィールドで、意識的にごみを捨てるとは考えにくいですが、気付かないうちに落としていたり、山小屋のトイレなどでやっていたりするNG行為もあります。

そこで、人気登山ガイドの上田洋平さんに、山でのごみの保管の仕方や便利グッズなどについて教えていただきました。

2025.04.18

上田洋平

登山ガイド

INDEX

「うっかりごみ」をなくせば山はきれいに

登山の楽しみが、山で食べるごはんや、おやつ。登山道では、おにぎりやパンの包装、お菓子の小袋をみかけることが多い

自然を愛する人たちが利用する登山道。そこにあるのはどちらかというと、無意識の「落とし物」のほうが多いかもしれません。あめの袋や、おにぎりやパンの包装、マスク、ティッシュといったところが、定番。逆にいえば、こうした「うっかりごみ」をなくせば、誰かが清掃する必要もなくなりますね。

山のごみは家で処分しよう

山でのごみは麓の登山口や駐車場、山小屋のどこかで捨てられると思っている人がいるかもしれませんが、持ち帰りが基本です。登山者の代表だと思って、山中はもちろん、途中のコンビニや駅、サービスエリアなどで捨ててくることがないようにしましょう。

山小屋では、購入したものであっても、持ち帰るところがありますので、ガベッジスタッフサックやごみ袋の用意が必要です。

無意識のポケットinにご注意

まずは小分けの菓子については、可能であればジップロック付き保存袋にまとめておきたいところ。とはいえ、小分けの袋のお菓子は、グループ登山のときには仲間に配りやすくていいので、その配られたごみをいかに落とさないようにするかが大事。ぜひみなさんが率先して回収してあげたり、落とさないように声掛けしたりしてあげてください。

ズボンのポケットは、ごみ専用の場所を決めておかないと、携帯や財布を取り出した際に一緒に落ちるとみられる

小さいゴミはズボンのポケットに入れる人も多いですが、そのままスマートフォンや財布をとりだそうとしたときに一緒に落としがち。ジッパー付きのポケットをごみ専用にするなど、決めておく必要があります。

ショルダーベルトに装着できるPOY(ポーイ)。ポケットと違って、ごみ専用で、入口も自然に開かないので、うっかりごみが減らせる

鼻をかんだティッシュやおにぎり・パンの包装のような細かいものであれば、手のひらサイズの携帯ごみ箱、POY(ポーイ)を利用するハイカーさんも増えてきました。

ガベッジスタッフサックの利用

外付けできるガベッジスタッフサック

ジップロック付きの保存袋をゴミ入れに利用している方が多いかと思います。しかし、中身が見えてしまうのが弱点でもあります。

レジ袋は便利だが、外付けで落ちていることがあるほか、枝などでやぶれ、ごみをばらまいてしまうことも

家の中や家の前にごみが見えるようにして保管している人はほとんどいないと思います。それと同様に、山でも自分が出したごみが見えないようにすると、ちょっとしたストレスがなくなるのも事実。

そこで活躍するのがガベッジバッグ。バックパック内で衣類や食品と隣り合ってごみを置くのに抵抗感がある人は、外付けもできるので、安心です。

YAMAPのオリジナル ガベッジスタッフサックで山をきれいに

YAMAP STOREを見る

おむつ用の防臭袋はトイレ紙の持ち帰りにも

ドラッグストアでも簡単に手に入る、子育て世帯におなじみのおむつ用の防臭袋。開封口をクルクルと結ぶだけで、あら不思議。使用済みのおむつや、犬のうんちの臭いももれてきません。登山のごみなら特に問題なし。ジップロック付きのジップロックの中に入れて使えば、やぶれることもほぼありません。

また、色付きで内容物も見えないので、山小屋のトイレなどで、使用済みのトイレットペーパーを持ち帰るところもあるときには、重宝します。

汁物はスクリューロックで解決

「山小屋の排水に寄ってきたクマが人を襲ったこともある」(国立大学の研究者)ということもあり、パスタの茹で汁や、ラーメンなどの汁物の残りも、自然のなかで捨てるのは避けましょう。茹で汁はインスタントスープなどに再利用したりできます。

ラーメンの汁物は、100円均一でも手に入る凝固剤か、ジップロックのスクリューロックを使えば、簡単に持ち帰ることもできます。ジップロック付きの保存袋よりも耐久性もあり、帰りに漏れるリスクは格段に減ります。

100円均一で購入できる汁物用の凝固剤

カップ麺の残り汁を山のトイレやトイレ内の洗面所に捨てるのも、トイレの洗浄水配管や処理槽に油分が付着して詰まりの原因になるので、絶対にやめてください。

果物の皮などの生ゴミも、自然に還るから、と思いがちですが、標高が高く微生物の働きが弱いため分解されにくく、野生動物が寄ってきて次に来た人たちの遭遇につながるかもしれないので、避けてください。

みんなで少しずつ山をきれいに

自分たちがお世話になっている場所は、自分たちできれいに。登山道に落ちているごみはわすかしかれませんが、YAMAPの清掃登山キャンペーンへの参加をきっかけに、登山口の駐車場や道中、近所のごみを意識し、みんなで少しずつ、きれいにしていける世界になることを願っています。

YAMAPで活動し、活動日記の編集画面のタグの一覧から「YAMAP清掃登山2025」を選び、保存、公開すると、清掃登山バッジが獲得できます!

上田洋平

登山ガイド

上田洋平

登山ガイド

1979年2月10日生まれ。愛知県名古屋市出身、神奈川県藤沢市在住。2児の息子の父。日本の山々だけでなく、海外の山々(アフリカ最高峰キリマンジャロ、南米最高峰アコンカグア)への登山経験を経て、2017年から富士山の登山ガイド。2019年4月に日本山岳ガイド協会登山ガイドステージI資格、2022年4月に登山ガイドステージII資格を取得し、専業ガイドに。山岳写真を撮るため、フルサイズ一眼レフ、ジッツォ ...(続きを読む

1979年2月10日生まれ。愛知県名古屋市出身、神奈川県藤沢市在住。2児の息子の父。日本の山々だけでなく、海外の山々(アフリカ最高峰キリマンジャロ、南米最高峰アコンカグア)への登山経験を経て、2017年から富士山の登山ガイド。2019年4月に日本山岳ガイド協会登山ガイドステージI資格、2022年4月に登山ガイドステージII資格を取得し、専業ガイドに。山岳写真を撮るため、フルサイズ一眼レフ、ジッツォの三脚、雲台、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズを担いだドM登山も敢行。キャンプ、空手、筋トレ、旅行、読書、トレイルランニング、ギター、ゲームなど趣味多数。https://y-hey.com/