大展望と滝巡りで楽しむ茨城の山旅|常陸国ロングトレイル「鍋足山と塩の道」

茨城県北をぐるりと一周する「常陸国ロングトレイル」。個性的な低山や、美しい里山を歩けるコースが話題を呼び、なんと、2024年度の来訪者は前年度から倍増して10万人を超えました!
今回は常陸太田市・里美地区にある「塩の道」と「鍋足山」を、登山系YouTuber・モデルの山下舞弓さんと一緒にめぐりました。里美地区の楽しい&美味しいも盛りだくさんでお届けします。

2025.12.23

池田 菜津美

ライター

INDEX

常陸国ロングトレイルとは?

茨城県・県北エリア6市町にまたがる、全長約320kmのロングトレイル。計画の8割以上の整備が進み、完成まであと一歩! トレイルには、個性的な低山や美しい里山歩きだけでなく、袋田の滝や奥久慈男体山、竜神峡、花貫渓谷など、県北の有名な観光地やハイキングコースも含まれ、どこを切り取っても楽しいコースになっています。


今回紹介するエリアは、2026年2月28日まで開催中の「常陸国ロングトレイル×YAMAPデジタルバッジキャンペーン」の対象エリアです。

期間中にランドマークを巡るとデジタルバッジをゲットできるだけでなく、協力店舗で温泉の割引や粗品のプレゼントなどの特典も。詳しくはYAMAP MAGAZINE記事の「割引・特典協力店舗一覧」をチェックしてくださいね!

たとえば、今回の記事でご紹介する「グループセブンひたち店」では1,000円以上の買い物でお茶かおにぎりを1つ、「道の駅さとみ」では1,000円以上の買い物でかわいいピンバッジをプレゼント

さらに、茨城の銘柄牛「常陸牛」や銘柄豚肉「常陸の輝き」が当たるハッシュタグキャンペーンも実施しています。こちらにも奮ってご応募ください。

「塩の道」で滝巡り&「鍋足山」で展望をセットで楽しむ

今回ご紹介する「塩の道」や「鍋足山」があるのは、常陸太田市の里美地区。JR常磐線の日立駅から車で40分ほどのところにあり、国道349号と里川という河川が南北に延び、それを挟むようにして標高500m前後の里山が東西に連なります。

該当地図はこちら

沢音に癒やされる「塩の道」ハイクへ

「塩の道」は東側の里山にあるトレイルで、スタート地点は「里美富士登山口・薄葉沢の滝入口」。ここから約2km道のりを往復します。

該当地図はこちら。滝巡りを楽しみ、おしゃべり地蔵で折り返し

「塩の道」は渓谷沿いのトレイル。のんびり渓谷ハイクを楽しもう

スタート地点から徒歩15分、登山道入口にある常陸国ロングトレイル「NE-02」の道標。「ポイントごとに道標があるから安心ですね」と山下さん。QRコードを読み取ると地図が見られるので活用しよう

「塩の道」の名の由来は、太平洋側でつくった塩を内陸へと運んでいた道だったことから。かつては、茨城県には「塩の道」がいくつもあり、塩のほか、海産物や各地の物資が運ばれていたと言われています。ここ、常陸太田市の里美地区の「塩の道」もそのひとつ。

「沢音をこんなに近くに感じながら歩けるなんて、すてきなトレイル。とっても癒やされます」と山下さん

長く人々の生活道として使われていましたが、1960年に車の通れる林道が整備されて以降、人の往来が途絶えて廃道となっていました。2014年、地元の人たちが地域おこしのきっかけにと、荒れた山道を整備。人力でやぶを切り開き、倒木を取り除き、美しい渓谷トレイルへと生まれ変わりました。

渓谷には個性的な滝がたくさんあります。幅広でダイナミックな2段落ちの「薄葉沢の滝」、枝分かれした小さな滝が折り重なる「早瀬の滝」、シンボリックな大岩の間を流れ落ちる「笠石の滝」など、滝それぞれに名前がついています。

「どれも滝の特徴をとらえていて、みやびな響きの名前ばかり。ひとつずつじっくり眺めるだけでも楽しめますね」(山下さん)

渓谷上部にある笠石の滝。じつはここでNHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」の撮影が行われたのだそう!

心地よい渓流沿いのトレイルは夏も涼しいと評判。霧のように細やかな水しぶきが森をうるおしています。「滝の近くまで行けるのが楽しいですね。でも、里に近い場所なのに、どうしてこんなに水が豊富なんだろう?」と不思議そうな山下さん。

里美地区の周辺の山々は全体的に丸みを帯びた、なだらかな山体で、森にたくさんの水を蓄えやすいのだそうです。豊富な水がいたるところから染み出し、いくつもの沢をつくってみずみずしい里山をつくっているのです。

「ほんとに心地よいトレイル! 秋の紅葉の時期、夏の緑が美しい時期、季節を変えて足を運びたいです」(山下さん)

渓流沿いを緩やかに登っていくこと約30分、開けた里山へ出ました。棚田が広がる、おだやかな風景に安らぎます。常陸国ロングトレイルの道標を発見、折り返し地点に到着です。すぐ近くの斜面の上には、かわいいお地蔵さんがちょこんと立っていました。

里山を見下ろす斜面にいた「おしゃべり地蔵」さま。「この里山を、おふたりで見守ってくださっているのかな?」(山下さん)

そのお名前は「おしゃべり地蔵」。「だれとおしゃべりしているのかな、どうしてこのお名前なんだろう?」と、お地蔵さんをのぞきこんでいるところに、軽トラで地元の人が通りかかりました。

「おしゃべり地蔵って、不思議な名前でしょう?」と、声をかけてくださったのは会沢孝一さん。なんとこの方、「塩の道」を整備しようと立ち上がった「塩の道保全隊」のメンバーとのこと。今でも草刈りなど、塩の道の維持に携わっているのだそう。

お地蔵さんについて解説をする会沢さん。「夏も秋もいいところだから、またあそびにきてな」。すてきな出会いがありました

会沢さんによると、お地蔵さんはもともと、2kmくらい先にある川の石の上に鎮座されていたのだそう。「川のせせらぎを、お地蔵さんが『おしゃべり』しているのに見立てたんじゃないかな?」と教えてくださいました。

豊富なルートで何度でも楽しめる「鍋足山」へ

「塩の道」とセットで楽しみたいのが、里美の町をはさんで西側にある「鍋足山」。今回のデジタルバッジキャンペーンの獲得ランドマークにもなっている場所です。
ルートが複数あるのも特徴で、笹原コース入口から滝巡りを楽しみながら山頂をめざしたり、小中コース入口から黒沢山や展望台、鍋足山とピークを結ぶプチ縦走をしたりと、楽しみ方はいろいろ。今回は、笹原コース入口から往復するコースを歩きました。

該当地図はこちら。太線が今回歩いたルート

鍋足山は麓から眺めると、3つの峰がポコポコと飛び出ている。それが3つの足がついた鉄鍋を逆さにしたように見えることから、「鍋足山」の名がついたと言われる(写真提供:茨城県県北振興局)

「すばらしい展望! 里美の町を一望ですね!」と山下さんがはしゃぐのも納得、深い樹林を抜けると、紅葉に彩られた展望の尾根へ出ました。

山頂近くの尾根へ出ると、ここから山頂までは展望ハイキング

尾根には色鮮やかな紅葉も。「光がきれいですね〜!」と撮影タイムに

山頂の展望もよくて、常陸国ロングトレイルの名峰・奥久慈男体山や、遠くには筑波山まで見渡すことができる

標高524mの低山でもあなどるなかれ。稜線付近は岩場になっているところも。歩きにくいところにはロープや鎖が設置されているので、活用しよう

山頂の道標で記念撮影。鍋足山はいちばん短いコースで往復2時間ほど。「こんなにいい山が里からすぐ近くにあってうらやましいなぁ」と山下さん。ルートもたくさんあるので、何度でも楽しめそう!

「里美の美味しい」を求めて! 地元コンビニ「グループセブンひたち店」と「道の駅さとみ」へ

登山前後におすすめなのがグルメスポット巡りです。里美地区の周辺には地元客から愛されるローカルな名店や、地元特産品が集まる道の駅が登山者の食欲を満たしてくれます。

さらにデジタルバッジキャンペーン期間、協力店舗でバッジを提示すると、温泉割引やプレゼントなどの嬉しい特典も!  今回はふたつの協力店舗「グループセブンひたち店」と「道の駅さとみ」に立ち寄りました。

グループセブン ひたち店

「グループセブンひたち店」は地元の人に愛されるコンビニエンスストアで、地元では「G7」(ジーセブン)の愛称で親しまれています。店内には、手作りのおにぎりやサンドイッチ、お惣菜やお弁当などがずらりと並び、地元の人がひっきりなしに立ち寄り、午後には品薄になることも。登山のおともに“地元の美味しい”をどうぞ!

取材はちょうど新米の季節。おにぎりやお弁当のごはんが、常陸太田市産の新米コシヒカリにチェンジしたタイミングだった。なお、お店はデジタルバッジキャンペーンの協力店のひとつ。なんと、1,000円以上の買い物でこのおにぎりを1つプレゼント中!(写真提供:茨城県県北振興局)

山下さん:お気に入りはおにぎり。塩加減がちょうどよくて、具だくさんでお腹いっぱいに。お惣菜やお弁当、サンドイッチも種類がたくさんあって、いろいろ食べてみたくなりました!

「どのサンドイッチもすごいボリューム!」と山下さん。コロッケやハムカツもお店の手作り

お店はデジタルバッジキャンペーンで、手ぬぐいの引換所(現在、配布終了)にもなっています。「たくさんの登山者さんが来てくれています!」と笑顔の店員さん

▶グループセブンひたち店
茨城県常陸太田市町屋町726-2
営業時間:6時〜20時(火曜日は6時〜9時)
定休日:なし

道の駅さとみ

「道の駅さとみ」は茨城県で一番小さい道の駅。小高いところに建っており、里山の風景を見渡せる絶好のロケーション。デジタルバッジキャンペーンの協力店として1,000円以上のお買い物で「道の駅ピンバッジ」がもらえる

大中神社から車で5分ほど行くと、「道の駅さとみ」があります。2025年7月にリニューアルオープンしたばかりで、おしゃれなコーヒーショップ「STREAMER COFFEE COMPANY」を併設しており、里山風景を楽しみながらハンドドリップのコーヒーが味わえます。また販売所では常陸牛100%のハンバーガー*なども販売しています。
*常陸牛100%ハンバーガーは金、土、日、祝日限定

「STREAMER COFFEE COMPANY」店内の様子。自然光が差し込む心地よい空間が広がる(写真提供:茨城県県北振興局)

道の駅には地元産の新鮮な野菜や、特産品など、ここでしか買えないものもたくさん。他にも、日本全国各地から取り寄せた、ドレッシングやお菓子、食材など、こだわりのオーガニック製品も。お土産選びに悩みます!

山下さん:地元産のものがたくさんあって、お土産を買うのにぴったりです。おすすめはトマトジュース。里美地区(常陸太田市大中町)で有機農業を営む「木の里農園」がつくっていて、まさに「里美の美味しい」がぎゅっと詰まった1本です。

木の里農園のトマトジュースを一口。「さっぱりしてるけど、トマトをしっかり味わえる!」(山下さん)

▶道の駅さとみ
茨城県常陸太田市小菅町694
営業時間:9時〜17時(売店。カフェは7時〜17時)
定休日:火曜(売店。カフェは定休日なし)

麓にある大中神社と井坂酒造を回って、下山後の観光も

里美地区には神社や観光施設、商店などが点在しているため、麓の町を散策するのもおすすめです。今回ご紹介するのは、大中(おおなか)神社と井坂酒造。どちらも鍋足山の入下山口のすぐ近くにあります。

大中神社

大中神社は鍋足山の南東にあり、すぐ裏には鍋足山の登山口もあります。赤い大鳥居をくぐると、粛然とした空気をまとう拝殿や、樹齢約500年のご神木の大杉などが出迎えてくれます。

神社を案内してくれたのは宮司の朝日光一郎さん

拝殿の奥にある本殿。江戸時代中期に建てられたとされ、常陸太田市の文化財に指定されている

拝殿の右⼿にはたくさんの「境内社」が並んでいます。境内社とは、神社の敷地内に本殿とは別に祀られている⼩さなお社のこと。 これらの⼩さなお社は、もともと周辺の各地区で祀っていましたが、明治から昭和にかけて、地区の⼈⼝が減ったり管理できなくなったりしたお社を、⼤中神社へお移しして数が増えたのだそうです。 複数あった同じ名前の神社は合祀し、現在は20社となりました。

境内社の中には足の病を治すとされる足尾神社も。「安全登山の祈願をしよう!」と山下さん

「里山を背にした静かな神社なので、ゆっくり楽しんでいってくださいね」と宮司の朝日さん。「よい空気が流れている神社で、下山後のひと休みにぜひ立ち寄りたい場所です」と山下さん

▶大中神社
茨城県常陸太田市大中町1706
https://www.oonakajinjya.com

井坂酒造

大中神社から徒歩30分、鍋足山の小中コース入口にあるのが、1818年創業の井坂酒造です。地元の素材にこだわり、酒米の90%は茨城県産のものを使用、20年くらい前からは「ひたち錦」という、茨城県で初めて生まれた酒造好適米も取り入れています。

案内してくれたのは、井坂酒造の専務で自らも杜氏として酒造りを行う井坂統幸さん。「すぐ裏に登山口があるので、帰りにお土産を買う人もいますよ。どうぞ気軽にお立ち寄りください!」と井坂さん

井坂酒造の酒は淡麗辛口のすっきりとした味わい。かつては越後出身の杜氏さんが酒造りにたずさわっていたというのもあり、茨城県では珍しい辛口寄りの酒になったのだそう。

日本酒が大好きという山下さんは「どうしよう、どれもこれも試飲してみたい…!」と大興奮。まずは井坂さんおすすめの日乃出鶴の純米吟醸(美山錦)から

口に入れるとふわっとお米の甘みが。「バランスのよいお酒! おさしみにも、油物にも合いそう」と山下さん。そのとおり、食中酒をイメージしてつくられたもので、甘みの奥にほんのりと苦みがあり、口の中がリフレッシュできるのが食事にぴったりなんだそう

主力銘柄「日乃出鶴」をはじめ、茨城の地酒ブランドに認定された「しずく」、古代米を使った「紫しきぶ」など、個性豊かな日本酒がそろっているので、井坂酒造に立ち寄った際にはぜひ試飲してみてくださいね。

左は美山錦という酒米を使った「日乃出鶴」、中央はひたち錦という酒米を使った「日乃出鶴」。右は数量限定酒の「里美の雫」。田植えから稲刈り、醸造まで「里美地酒プロジェクト Satomi Sake Way」に参加した日本酒ファンたちが作ったお酒

▶井坂酒造
茨城県常陸太田市小中町187
営業時間:9時〜16時
定休日:日曜
https://www.isakasyuzou.co.jp

この旅で山下さんと巡った里美地区は、常陸国ロングトレイルのほんの一部。低山と里山が織りなす茨城県北は、新しい発見と懐かしさを感じられる地域です。ぜひこのバッジキャンペーン期間に訪れてみてはいかがでしょうか?

「常陸国ロングトレイル×YAMAPデジタルバッジキャンペーン」の詳細はこちら

文章:池田菜津美
写真:西條聡
モデル:山下舞弓
協力:茨城県県北振興局

池田 菜津美

ライター

池田 菜津美

ライター

子供向けの自然科学の本や、図鑑の編集などを行う。子供の頃から外遊びが好きで、山菜採りや野鳥観察、雑草探しに興じていた。現在は自宅裏の神社で鳥&昆虫を愛でるのを日課とし、近所の自然公園へぶらりと植物探しに出かけることも。今も昔も相変わらず、生き物の暮らしや生態に感心しながら、それとのふれあいを楽しんでいる。著書に『飼育員さん教えて!みんなどきどき動物園』『飼育員さん教えて!みんなわくわく水族館』(新 ...(続きを読む

子供向けの自然科学の本や、図鑑の編集などを行う。子供の頃から外遊びが好きで、山菜採りや野鳥観察、雑草探しに興じていた。現在は自宅裏の神社で鳥&昆虫を愛でるのを日課とし、近所の自然公園へぶらりと植物探しに出かけることも。今も昔も相変わらず、生き物の暮らしや生態に感心しながら、それとのふれあいを楽しんでいる。著書に『飼育員さん教えて!みんなどきどき動物園』『飼育員さん教えて!みんなわくわく水族館』(新日本出版社)、『ときめくヤマノボリ図鑑』(山と溪谷社)など。