肌寒い秋も、夏の高山も。信頼できる山の相棒|パタゴニアのベースレイヤー「キャプリーン・ミッドウェイト」

登山中の快適さを一番左右するのが、肌に直接触れる「ベースレイヤー」です。そのなかでも、群を抜く知名度を誇るパタゴニア「キャプリーン」シリーズが、今年リニューアルしました。歴代の同シリーズを愛用してきた山岳ライター・高橋庄太郎さんが、1日の気温差が激しい北アルプス・唐松岳(2696m)で実際に試し、進化点を忖度なしにレビューしてくれました。

2026.09.23

高橋 庄太郎

山岳/アウトドアライター

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パタゴニアの名作キャプリーンがリニューアル


パタゴニアの「キャプリーン」シリーズといえば、同社どころかアウトドア界におけるベースレイヤーの代名詞的存在だ。一方で、その進化はとどまることを知らず、今季もさらなるリニューアルを遂げている。いうまでもなく、以前からの長所は生かしたままだ。

さて、2026年バージョンの新型キャプリーンはどんなものなのだろうか? これまでにキャプリーンシリーズを愛用してきた僕もリニューアルバージョンの登場を心から楽しみにしていた。

これまでに僕が使ってきたキャプリーンはもっぱら薄手だった。いわゆるライトウェイトタイプで、夏は問題ないが、秋や春は少し物足りない。また、テント泊を行なう際は、涼しい夜のためにもう少し保温力が高いタイプも持っていたかった。

新作の“ミッドウェイト”で向かった北アルプス

そんなわけで、僕は新作のキャプリーンのなかでも「ミッドウェイト」タイプをチョイスし、テストがてらに北アルプスの唐松岳へ!リサイクルポリエステル100%の素材を使用した、4.1オンスの生地の実力を探ることにした。

そこにいるだけで汗が噴き出してくるような山麓とは異なり、標高3000mに近い高山はさすがに涼しい。なにしろ、物理学的には標高が100m高くなると気温は約0.6℃下がるとされ、しかも風速1mにつき体感温度は1℃くらい低くなるといわれているのだ。とはいえ、稜線に向かって標高を上げようと登り続けていれば、さすがに暑くもなる。もともと僕はかなりの汗かきなのだ。

かいた汗をいかに効率よく吸収し、すばやく乾かしていくか? 高機能を誇るベースレイヤーの勝負のときである。

新作キャプリーンの特徴のひとつは、そのフォルム。以前よりも少し緩やかなシルエットなのである。パタゴニアの表記に従えば、フィット感は「スリム」から「フィッテッド」へ。体を締め付けるほどのタイト感はないものの、汗をしっかりと吸収できる程度には肌に触れる、といったサイズ感だ。

ちなみに、身長178㎝、体重70㎏ほどの僕は、パタゴニアのウェアであれば上下ともにサイズ「M」がちょうどいい。

しかし…。
今回の「キャプリーン・ミッドウェイト」はサイズ「S」にしよう!

なぜならば、タイトさを抑えたフォルムの新作キャプリーンの場合、サイズMでは緩すぎるように感じたからだ。人によって好みもあるが、ルーズな着心地を好まない方は参考にしていただきたい。

高ストレッチ性とフラットなステッチで、間違いない着心地

伸縮性の高さは相変わらずだった。腕をどんなに曲げても、肩をどんなに動かしても、まったく違和感はない。

なんというか、着ている感覚がほとんどないのである。

指でつまんで引っ張ってみると、そのストレッチ性が改めて実感できる。

ベースレイヤーというものは肌に密着させて着用するものとはいえ、シチュエーションによっては他のウェアの上に重ねて着ることもあるだろう。これだけ伸縮すれば、Tシャツなどの上に重ねても窮屈な思いをしなくてよさそうだ。

このストレッチ性の生地は、体に合わせて立体的に縫製されている。そして、そのステッチ部分は表面、裏面ともに非常にフラット。肌に当たってもゴロつく感じは一切ない。

また、このステッチ部分も生地と同様に伸縮するため、ウェアのストレッチ性が失われていないのも大きなポイントだ。

肩の部分はこのステッチが斜めにとられている。要するにラグランスリーブの仕様である。

いくらステッチがフラットにとられていても、バックパックの重みが加われば、肩との間に摩擦感が生じやすい。しかし、ラグランスリーブであれば、そんな心配も無用だ。

僕は以前、肩の部分にステッチが入ったTシャツを着て歩いていたときに、肩の皮膚を擦りむいてしまったことがある。ウェアが劣化して生地か糸がいくらか硬化していたからだろう。あれは不快な体験だったな…。

だが、キャプリーンのようなステッチの配置であれば、もとから擦り傷を負う可能性はない。今回はステッチの擦れ具合を確かめながら重いテント泊装備を担いで歩いていたが、途中からステッチのことなどすっかり忘れてしまっていた。それほど肌触りに支障はないのである。

歩けば暑く、立ち止まれば涼しい、登山ならでは状況に対応

着用していたのはキャプリーンのなかでも「ミッドウェイト」だけあって、保温性の高さはすぐに実感できた。夏でも冷涼な北アルプスでは活躍の幅が広そうである。

ただ、正直なところ、登り坂で、しかも日差しが強いときは少し暑苦しくもなる。しかし、生地自体の保温力は抑えようがないのである。

しかし、キャプリーンのトップスにはクルーネックタイプとジップネックタイプが用意されている。シンプルな着こなしにはクルーネックタイプだろうが、体温調整に便利なのはジップネックタイプだ。

胸元のジッパーを開閉するだけで体温調整がしやすく、保温性が高すぎると感じる状況で無用な熱気を排出でき、それによって暑い場合でも涼しさを呼び込める。

キャプリーンのジップネックタイプが優れていると感心したのは、ジッパーにロック機能が搭載されていることである。

スライダーが上を向いているときはスムーズに上下動するが、下を向いているときはその位置で固定される。そのために、胸元の開閉具合を好みの位置でロックできるのだ。この機能、僕が持っていたかなり昔のキャプリーンにはなかった気がする。いや、どうだったか? いずれにしても、うれしい機能だ。

ともあれ、胸元から涼しい空気を取り入れながら、登山道をさらに登っていく。胸元が開いているだけでも涼しさが増しているのがよくわかる。

稜線では強い風が吹きつけてくることもあった。すると、当然ながら涼しさはさらに大幅にアップ。しかし、それはたんに風の温度によるものではない。キャプリーンのもつ吸汗速乾性による、いわゆる気化熱の作用も貢献しているようだ。

ダブルニット構造の生地の裏地は柔らかく、ドット状にもライン状にも見えるわずかな凹凸によって汗をすばやく吸収してくれる。

その汗が乾燥するときに余分な熱を奪ってくれるわけだ。もちろん、それでは涼しすぎる場合は、キャプリーンの上にミッドレイヤーやアウタージャケットを羽織って調整すればいい。

後述するが、僕も翌日の早朝には薄手のレインウェアを重ねて体感温度を微調整した。もともと肌の上に直接着るベースレイヤーは、その上に他のウェアをレイヤードしていくときの“ベース(土台、基礎)”になるウェアだ。

さまざまな気象条件に対応するためには重ね着することが重要で、もとからこれ一枚だけで対応できるものとは考えないほうがいい。

ただし、あまりにキャプリーンの吸汗速乾性がすばらしく、汗がどれくらいのスピードで乾燥していくのかはよくわからなかった。そこで、思い切って腕の部分に水をかけてみる。

その際に驚いたのは、水分の拡散力だ。わずか2㎝ほどの面積に水をかけただけなのに、生地の表面へあっという間に広がり、濡れている面積は直径5㎝以上に。これだけ水分が広く拡散されれば、乾燥も速い。

じつのところ、いつの間にか水で濡らした箇所がわからなくなってしまい、危うくあらためて試してみなければいけない状況になりそうだった。

そういえば、この生地は異物への引っ掛かりにも強かった。

狭い登山道では何度かハイマツの枝に引っ掛かったが、破れることがないばかりか、毛羽立つことすらほとんどなかった。もちろん強く引っ掛かれば傷みが生じることもあるだろう。だが、よほどのことがない限り、十分な強度を発揮してくれそうである。

うっすらと汗をかきながら稜線に登りつめた僕は、北アルプスの涼しい空気とすばらしい眺望を満喫した。自分の足で歩かねば見られないこの風景、やはり贅沢すぎるよな!

あとは夜に備えて、テント泊の準備である。

寒い夜に備え、ボトムスも用意。これで安眠も確実に

高山らしく森林限界を超えたテント場は、完全なる吹きさらしだった。はじめのほうこそ汗ばんでいた体に冷風が心地よかったが、次第に肌寒さを覚えてくる。

僕はキャプリーン・ミッドウェイト・ジップネックの上にダウンジャケットを重ね、保温に努めた。

同時に、下半身には同じ素材を使ったタイツである「キャプリーン・ミッドウェイト・ボトムス」。肌に密着したタイツは下半身の保温力に直結する。

ここではショートパンツを合わせているが、気温が低い時期や悪天候のときはロングパンツの下に着用すれば、いっそう保温効果を高めてくれるだろう。

ボトムスもジップネックと同じ生地を使っているだけあって、伸縮性は上々だ。

足を組んでも突っ張った感じはまったくなく、すばらしい履き心地である。

このボトムスの股下にはガゼット(マチ)が設けられ、立体的な形状になっている。これによって、いっそう足の動きはスムーズというわけだ。

なお、同様のガゼットはジップネックの脇の下にも採用されている。

足部分の末端、裾の部分もフラットに縫い合わされている。フィット感も過不足ない。

だから、先の写真のようにボトムスの上にソックスを重ねてもすっきりする。

すっきりという意味では、腰元のゴムバンド部分にも触れておかねばならないだろう。

この部分にも非常にフラットな素材が使われ、縫い付けているステッチもフラット。パンツのウエスト部分と重なってもゴロつかず、無用に腹部を押さえつけるような感覚もないのが快適だった。

そういえば到着時は体が汗で少々ベタついていたが、キャプリーンの吸汗速乾力によって、いつの間にかドライになっていた。

サラサラの肌で、もう汗冷えの心配はない。あとは夜を迎えるだけである。

高山の夜はさすがに涼しかった。じつは、このときの下界は非常に高温だったこともあり、この晩はダウンジャケットを着ていれば、キャプリーンはライトウェイトで済んだのではないかと当初は考えていた。

だが実際はミッドウェイトで正解! 就寝時の保温力は着込んだウェアの総合力に加え、スリーピングバッグの性能に大きく左右されるが、肌に直接触れるベースレイヤーが温かいものであれば、間違いはない。しっかりと安眠できたのであった。

保温力を高めるジャケットとのコンビネーション

翌日は早朝から行動開始。

しかし、キャプリーン・ミッドウェイト・ジップネックを着ていても、けっこう肌寒い。さすがは北アルプスの高山だ。

こんなときに役立つのは、袖に付けられたサムループである。

このループを親指に引っかければ、袖の末端が簡易的なグローブとして、甲の部分を寒さから守ってくれる。些細なディテールだが、こんな点もちょっとうれしい。

ひとしきり歩いた後に稜線上で休憩していると、少し汗冷えを感じてきた。

そこで上半身にレインウェアを重ねる。雨は降っていないが、ウインドシェル代わりというわけだ。

レインウェアなどに袖を通す場合、先ほどのサムホールに親指を引っかけておくと、袖がまくれなくて便利である。そもそもキャプリーンに使われている生地は滑りがよく、スムーズに腕を通せるのだが。

体温が回復するまで、そのままレインウェアを着て歩き続けた。

このときに実感したのは、ジップネックタイプの心地よさだ。

襟が高いジップネックを着ていれば、首裏がレインウェアに触れずに済む。レインウェアのような素材に汗ばんだ肌が触れるとべたついてしまって嫌なものだが、ジップネックタイプなら不快ではないのである。

普段の僕はシンプルなクルーネックタイプのウェアを多用している。だが、クルーネックタイプよりも温度調整がしやすく、首周りのべたつきも抑えられるジップネックの便利さも捨てがたい。状況に応じて使い分けられるとベストだな、と考えた。

形状やカラーで何着も欲しくなる、いくつかのバリエーション

こんな感じでパタゴニアのリニューアルされたベースレイヤーを試してみた北アルプス。さすがは「キャプリーン」、ベースレイヤーの代名詞的存在の実力は確かなものであった。

とくにミッドウェイトは汎用性に富み、涼しい時間帯や季節の登山や高山でのテント泊に非常に適している。新作キャプリーンが気に入ってしまったら、真夏や気温が高い低山に合わせてライトウェイトタイプもそろえるのもよく、より保温性が高いサーマルウェイトで真冬に備えるのも悪くない。汗かきの僕はライトウェイトタイプも買い足すことになりそうだが、これからの季節を考えるとサーマルウェイトにも気をひかれてしまうな…。

山中での視認性が高い、派手なカラーリングも魅力的である。高機能であることは当然のこととして、選ぶ楽しさも感じられるのがキャプリーンシリーズのよさ。しかし、結局なにを手に入れるのか最終決断するまでには、悩ましい時間を過ごすことになりそうだ。

高橋 庄太郎

山岳/アウトドアライター

高橋 庄太郎

山岳/アウトドアライター

出版社勤務後、国内外を2年間ほど放浪し、その後にフリーライターに。テント泊にこだわった人力での旅を愛し、そのフィールドはもっぱら山。現在は日本の山を丹念に歩いている。著書に『トレッキング実践学 改訂版』(ADDIX)、『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)など多数。イベントやテレビへの出演も多い。