「登山道具三種の神器」のひとつに数えられるレインウェア(雨具)ですが、実は正しいお手入れの方法を知らない方もいるのではないでしょうか? 洗濯をした方が良い?それともなるべく洗わない方が良い?疑問を持たれている方も多いかもしれません。しかしメンテナンスを怠ったレインウェアで突然の雨に遭遇すると、環境次第では低体温症による遭難など、生命の危険にも繋がることがあるのです。夏の変わりやすい天気に備えて、この時期だからこそやっておきたい「レインウェアのメンテナンス」について、今回はご紹介します。
2020.08.02
YAMAP MAGAZINE 編集部
登山の必須アイテム、レインウェア。メンテナンス(お手入れ)は万全でしょうか?
結論からお伝えすると、レインウェアのお手入れの秘訣は「使ったらすぐに洗濯」です。登山用のレインウェアはその高機能さから高価なものが多く、買い換える機会はそう多くないはず。長く大切に使っていくためにも、正しくメンテナンスをしていきましょう。
ろくにメンテナンスをしないまま使用を続けていると、せっかくの高機能もみるみる低下…。劣化の原因になるだけでなく、使い勝手も悪くなります
考えられるのは、例えばこんなパターン。レインウェア表面の撥水性が失われると、生地表面に付着した水滴は徐々に内部へ浸透し、ウェアが素肌にまとわりつく原因に。水分を含んだ分だけウェアの重さが増し、動きにくく感じることがあるのです。
また、肌が濡れることで体温が奪われ、低体温症のリスクが高まります。動きにくさもさることながら、リスク管理の点でも見逃せません。
さらに、内側の生地に汚れや皮脂が付着すると、水蒸気が抜ける穴が詰まり透湿性がなくなってしまいます。結果、体から出る湿気が内部にこもってしまうことに…。ウェア内が蒸れると熱気がこもり汗をかきやすくなるため、脱水症状の危険にも繋がります。
レインウェアのメンテナンスを疎かにすると、いろんな意味で痛い目に合いそうです…。
繰り返しになりますが、登山におけるレインウェアは生命を守る重要な道具。メンテナンスの時間は自分の生命を守る時間でもあります。大切に洗濯をしていきましょう。
用意したのは、数年前に購入して以来、正しい洗濯をしてこなかったレインウェア(私物)。恥ずかしながら、雨の時には水が染みてくるだけでなく、中の蒸れもひどい状況になっています。
まずは現状の撥水性を確かめるところから。ということで、さっそく水をかけてみると…
この通り、じんわりと染みてきてしまいました。表面の撥水性はほとんど失われていることがわかります。内側には皮脂などの汚れが溜まっているため、蒸れも発生しやすくなっています。
なお、水をかけた直後は撥水しているように見えても、時間を置くと染み込むことも多いのでご注意を。
手洗いでも洗濯機を使ってもOKですが、手軽に洗うなら洗濯機がおすすめです。
間違っても、撥水性がなくなってきたからといって、すぐに防水スプレーをかけたりしないこと。最初にウェア全体の汚れを落とし、その後に撥水加工をしていくのが正しい順番です。
洗濯機に入れる前に注意したいこと
洗濯したいレインウェアのジッパー・ベルクロはすべて閉じます。ジッパーの金具は、裏地に当たると生地を傷めてしまうことがあるからです。
フードは収納せずに出しておきましょう。また絞ってあるドローコードは戻しておく。絞ったままだと洗いにムラができるだけでなく、他の部分にコードに引っかかって生地が痛む可能性があるからです。
袖口や襟などの気になる汚れがあれば、洗濯機に入れる前に軽く汚れを拭きます。目立つ汚れには、洗剤の原液を予め少量垂らして馴染ませておくのも効果的です。ウェアによっては、色落ちのリスクもあるため、事前にタグなどに書かれている洗濯方法を確認しておくと良いでしょう。
洗剤選びが重要!
生地が傷まないように、レインウェアはネットに入れます。洗濯機に規定量の洗剤を投入し、 デリケートコースで洗濯しましょう。
この時に重要なのが洗剤。アウトドア専用洗剤のfinetrackのケアファイン オールウォッシュを使います。
finetrackのケアファイン オールウォッシュ はアウトドアウェアの機能を阻害せず、皮脂や汚れだけを綺麗に落とすことができる、まさにアウトドア用品専用といえる洗濯用洗剤です。
市販の洗剤の中には、ウェアにとって重要な性能が損なわれる成分が入っている商品もあります。大切な登山道具は、専用の洗剤を使って正しくお手入れすることをおすすめします。
洗濯で繊維の奥に入り込んだ汗や泥汚れなどをすっきり落とした後は、撥水性を復活させるために加工液に浸していきましょう。撥水性を復活させるにはfinetrackケアファイン ウォーターリペルを使用します。
撥水加工といえばスプレータイプのものがあります。しかしながらスプレーは手軽な反面、レインウェアなど面積の大きなものに、ムラなく均一に吹きかけるのは結構難しいもの。量もかなり多く使用するため、噴射時の換気などにも気を使わなければなりません。
一方、ウォーターリベルは、水を加えウェアを付け置きするだけで簡単に撥水加工が元通り。一度ケアをすると、その後10回の洗濯をしても撥水効果を持続させることができるというスグレモノ。レインウェアなどの防水透湿性のウェアだけでなく、ドライレイヤーや撥水機能を備えた様々なウェアに利用できます。
1)オールウォッシュで汚れを落とし
2)ウォーターリベルで撥水加工!
ということを覚えておきましょう。
ウェアが入る容器に、ウォーターリペルを10倍の水で薄めた加工液をつくり、洗濯・脱水後のウェアを浸します。ウェアの種類や大きさによって、どのくらいの量で加工液を作ればよいか明記されているので、誰でも安心して作ることができます。
ウェア全体をしっかりと優しく押し込むようにして、全体に馴染ませましょう。全体にムラがないように浸らせていきます。
このまま1時間、加工液が馴染むのを待ちましょう。
浸し終わったら、加工液から引き上げ、軽く絞ります。ウェアに記載されている表示に従って干しましょう。風通しのよい直射日光の当たらない日陰がおすすめです。
もっと撥水性を高めたいという方は、熱を加えるとさらに効果を実感することができます。ウェアの取り扱い表示に従ってアイロンで熱を加える方法か、乾燥機をかけて熱処理を加えましょう。そうすることで自然乾燥よりも強力な撥水力を得られることができます。
今回は検証のために自然乾燥で外干しをしました。
乾燥の過程でウォーターリペルが繊維にしっかりと固着し、撥水加工を取り戻してくれます。しっかりと乾いたら、これで完了です!
洗濯、撥水加工、乾燥が終わりました。色落ちなどもなく、綺麗に洗濯ができました。それでは前回同様、水をかけてみましょう。
しっかりと水を弾いており、前回は数秒ほどで染みてきていましたが、加工後にはそのような様子は見られません。
アーム部分もこの通り。購入直後のようにしっかりと水が浮いており、本来の機能を充分に発揮していますね。まだまだ長く使っていけそうです。アウトドア専用の洗剤を使うことで、確かな効果を実感することができました。
今回の内容をまとめると、レインウェアを長く使うには
・レインウェアは使ったら洗うという意識を持つ
・洗濯をし、全体の汚れを落とす
・撥水が失われていたら、つけ置きをする
・洗濯・つけ置きの際には、専用の洗剤や撥水加工液を使用する
という以上のことを大切にしてもらえればと思います。
生命を守るレインウェアは、高価なものが多いです。大切に長く使うためにも、アウトドア専用の洗剤を使ってメンテナンスをしていきましょう。
finetrackケアファイン オールウォッシュ はこちら
finetrackケアファイン ウォーターリペル はこちら
ウェアは風通しのよい場所にハンガーにかけた状態で保管しましょう。風通しがいい場所とは、湿気がこもりにくい場所ということ。しっかり乾かしたつもりでも乾ききっていないこともあり、それがダメージにつながるからです。
また高温になるような車のトランクや倉庫などにも置かないように心がけましょう。レインウェアは、一部生地同士を接着することで縫製しているため、その粘着性が落ちてしまう恐れがあるからです。
突然雨が降ってきた時には、なるべくはやくレインウェアを着たいところ。しかし付属の袋から取り出し、ウェアを広げてファスナーをあけていると時間のロスになってしまいます。そんな時におすすめの収納法をご紹介します。
このように上着の前面ジッパーを開けたまま折りたたみ、くるくると丸めてフードの中にしまっていく方法です。ズボンもフードの中にしまいましょう。その状態で、すぐに取り出せる場所に入れておくと、急な雨の時でも慌てなくてすみます。
またこの方法で畳むと、雨で濡れた部分をフードの中に収納することができるので、他の荷物が濡れることも防いでくれます。覚えておいて損はないので、ぜひ次回の山行から試してみてくださいね。
機能を維持しながらレインウェアを使用していくためには、しっかりとした洗濯とお手入れが必要です。もっと言うと、長く使うことで、何より愛着が湧くはずです。ぜひお家にある大切なウェアを、これからもずっと大切にしていきましょう。
レインウェアの選び方について詳しく知る:登山用レインウェアの選び方・着用のコツ| 正しい山道具の選び方・使い方 Vol.4