新潟県の沖合に浮かぶ花の島「佐渡島」。島の周りの日本海を背に可憐に咲き誇る花々は、ここでしか味わえない絶景です。今回は、花爛漫の佐渡を1泊2日で満喫できる島旅プランをご紹介。初日はジェットフォイルで佐渡に入り、ドンデン高原から「花の百名山」として知られる金北山へ。2日目は、観光名所の佐渡金山周辺を散策。山の絶景と奥深い文化を両方味わえる島旅の魅力をお伝えします。
また、佐渡島では『佐渡手ぬぐいキャンペーン』も展開中! この記事を参考に佐渡の山旅を楽しんでみては?
*キャンペーンの詳細はこちら
2022.06.23
池田 菜津美
ライター
新潟市から西へ45km、日本海の沖合に浮かぶ佐渡島。島へ上陸するのは大変そうに感じますが、実はカーフェリーで2時間半、ジェットフォイル(高速船)で1時間7分と、あっという間に着いてしまう距離なんです。
1泊2日の島旅の初日は大佐渡の縦走登山へ。佐渡島はカタカナの「エ」を左に少し回転させたような形をしていて、北側を大佐渡、南側を小佐渡、南北をつなぐ平地を国中平野と言います。大佐渡には佐渡の最高峰・金北山(きんぽくさん・1,172m)があり、今回の登山スタート地点となるドンデン高原ロッジからは約10 kmの道のりです(下山口の白雲台までは、さらに4km)。
新潟港を6時に出るカーフェリーに乗れば、佐渡の玄関口、両津港に着くのは8時30分。4月下旬から5月下旬の花の時期には『ドンデンライナー』という登山に便利なバス便が出ているので、両津港から登山口まで直行することができます。
*時期によってフェリーの時刻表は変わるので事前にチェックすること。また『ドンデンライナー』の運行は5月末までなので注意。
取材時は5月下旬、例年よりも雪が多かったため、花の時期も少し遅れていました。稜線付近にはまだまだカタクリやシラネアオイなどの野草も見られるとのこと。
今回、佐渡の島旅に参加してくれたのは北海道在住の野草愛好家 KUSACOさん。北海道各地の野山から海辺まで歩き回り、出会った植物を写真に収めSNSなどで発信しています。
「佐渡に来るのがとっても楽しみでした! 佐渡には北海道で見られない植物もいっぱい。出会えたらうれしいなと思っているのはマキノスミレ。東日本を中心に分布しているスミレで、まだ出会えていないんです」と、出発前から野草愛が炸裂しています。
「今年は雪が多かったので、樹木の枝が折れたり樹が倒れたりして、登山道が結構荒れてましたね」と語るのは、大佐渡縦走を案内してくれる佐渡在住のガイド・金塚広太さん。花のシーズンが始まる4月から、地元のガイドさんを中心に警察や消防の人も交じって、登山道の整備を行ってきたとのこと。今日も腰にかけたノコギリで、ところどころ整備をしながら歩くのだそう。
ドンデン高原ロッジから林道を進み、縦走路入り口の看板から登山スタート。ここから最初のピークとなる「マトネ」までは樹林帯の中をおよそ80分ほど進んでいくのですが、その道中は野草の宝庫。
「オトメエンゴサクだ! 北海道ではエゾエンゴサクしか見られないんです」「シラネアオイ、美しいなぁ…」と感嘆の声を上げるKUSACOさん。登山道脇の野草、ひとつひとつをじっくり観察&撮影しながら進んでいきます。
しばらく進んだところで、地べたに這いつくばって、笑顔を浮かべるKUSACOさん。「見て見て!ヤマトグサがこんなにたくさん。北海道には自生していないので、ずっと憧れてたんです。出会えてうれしい!」垂れ下がった花が特徴で、のぞき込むとかわいいお顔がよく見えるのだそう。
「赤や黄の美しい花ももちろん好きですが、緑や茶の地味な色味の花が特に大好きなんです。おしとやかな感じが本当に愛らしくて」。
なかでもホウチャクソウはKUSACOさんが大好きな野草のひとつ。花の色が白から緑のグラデーションになっていて、その淡い色合いがたまらないのだそう。じつは、KUSACOさんがアドバイザーをつとめるアウトドアブランド・ミレーから、ホウチャクソウの写真をデザインしたレインカバーが発売されています。その写真を撮ったのはKUSACOさん。「すごくかわいいレインカバーなので、ぜひチェックしてみてください!」
この日、KUSACOさんが見つけた野草は60種類以上。「いつもなら早足で通り過ぎてしまう樹林帯も、野草の名前がわかると発見の連続! 山歩きがもっと楽しくなりますよ〜」
ミズナラやブナの混交林の中でひときわ目立つのが大きなスギの木。「島の周りには対馬海流という暖流があり、大量の水蒸気を放出しています。それが大佐渡の斜面を上るときに雲霧帯をつくり、大佐渡の天然スギを育てているんです。この木は200年くらいは経ってるんじゃないかな」と金塚さん。
雲霧帯は湿度が高くて寒いため、日本ではスギやブナが大きく育つんです。『縄文杉』のある屋久島が有名ですが、ここ佐渡にも雲霧林があり、『大佐渡石名天然杉遊歩道』などで特に大きなスギの森を見ることができます。
アオネバ十字路まで来ると、登山道のところどころで青っぽい土が見られるようになりました。金塚さんが土を触りながら「ちょっと触ってみてください。ネバネバしているでしょう? 青くて粘っこい土なので『アオネバ』っていうんですよ」。
この土は緑色凝灰岩(グリーンタフ)と呼ばれるもので、火山灰などがもとになったもの。もともと佐渡は大陸の一部で、激しい火山活動が起こっていた場所なのだそう。佐渡金山の鉱床も火山活動のマグマと熱水から形成されたものなんです。
急坂を登り切ると、マトネに出ました。ここからは金北山へ向かう稜線歩きがスタート。時折、景色のよい開けた区間を交えながら、樹林を進んでいきます。
稜線の樹林はスギやヒノキの針葉樹が多く見られます。その樹形は奇怪で、ぐにゃりと曲がったりねじれたりしていることも。「標高1,000m前後しかない稜線付近でも、冬にはシベリア風が直接吹きつけます。風雪に耐えているうちに、こんな形になっちゃったんですね」と金塚さん。佐渡のスギはしなやかで、風雪で枝や幹が折れにくくなっているのだそう。
金北山の山頂に到着するころには、沸き立っていた雲はすっかり消え、眼下には国中平野を眺める絶景が広がっていました。「雲がなくなってよかった。大きい湖は加茂湖で、その奥に見えるのは小佐渡。いい眺めでしょう?」と笑顔の金塚さん。KUSACOさんも「いろんな野草が見られて、最後にこんな景色が出迎えてくれるなんて。楽しすぎる!」と大満足のようすです。あとは白雲台のバス停まで防衛省管理道路を下るだけですが、もちろん道々、野草を探しながら。大佐渡山地を最後まで堪能しながら、のんびりと下山したのでした。
下山後は、白雲台からタクシーで30分ほどの相川エリアにある北沢浮遊選鉱場跡(きたざわふゆうせんこうばあと)のライトアップを見学しましょう。北沢浮遊選鉱場は佐渡金山の史跡のひとつで、金山で採れた鉱石をここで処理し、金をはじめとする鉱物資源を取り出していました。現在残されているのはコンクリートの基礎部分だけですが、そのたたずまいが古代遺跡のようだと人気の撮影スポットになっています。昼間の雰囲気もすてきですが、夜間に見られるライトアップも必見です。
この日の夕ご飯は地元の人も通い詰めるという『四季菜割烹 伝』へ。新鮮な魚はもちろんのこと、野菜や米も佐渡産のものを大切にしているお店です。メインディッシュは豪華な刺身の盛り合わせ。旬の魚を使っているので、季節によって食べられるものは違います。6〜8月頃は甘くてとろりとした食感が特徴のメジマグロが美味。
佐渡では割烹料理屋や居酒屋、リーズナブルな回転寿司や定食屋など、さまざまな飲食店で旬の魚を扱っていますので、ぜひご堪能ください!
絶品の海の幸を堪能したKUSACOさんは、すっかり満足した様子で今夜の宿へ。佐渡にはコンドミニアムやコテージ、貸別荘など、グループでの宿泊や長期滞在、ワーケーションなどに便利な宿がたくさんあります。
今回泊まったのは『Guest Villa on the 美一』。2015年にオープンした宿泊施設で、レストランやホールが併設されています。2階に上がると広々としたラウンジがあり、デッキに出れば真野湾を望む絶景。のんびり海を見ながら、リゾート気分を味わうことができます。キッチンが付いているので、佐渡の食材を買い込んで連泊しても良いでしょう。人数によっては貸し切りも可能ですが、春や夏の登山シーズンは予約でいっぱいになることも。人気のお宿なのでご予約はお早めに。
帰りの船まで時間はたっぷりあるので、史跡 佐渡金山でゆったり観光を楽しみます。
佐渡金山は1601年に開山されました。1989年に休止するまでの約400年間に算出した金は78トン、銀は2,330トン。日本最大の金銀山で、鉱脈は東西3,000m、南北600m、深さ800mに広がっています。
今回は5つの見学コースのうちのひとつ、道遊坑を訪ねました。明治期の近代化から1989(平成元)年まで使用されていた坑道で、『道遊の割戸』と呼ばれる場所の直下の鉱脈を採掘するために開削されました。現在はその一部が開放され、トロッコやその線路、粗砕場や機械工場などが操業当時の姿で残されています。
見学コースのクライマックスは『道遊の割戸』の展望所。ぽっかりと大きく開けた穴と、山頂をV字にえぐった深い溝を間近に見ることができます。江戸時代の露頭掘りの跡地で、金脈を掘り進めるうちに山頂がV字に割れた姿になりました。割れ目の幅は約30m、深さは約74mにもなり、目の前で眺めるとその規模の大きさに驚きます。
真野湾の海岸や史跡 佐渡金山でも野草を見つけて観察していたKUSACOさん。「山だけでなく、野原や海岸、道ばたや庭など、どこでも出会えるのがいいところ。特別な野草じゃなくても、かわいい花や不思議な葉っぱがあるので、ぜひ観察してみてください」
大佐渡山地の縦走と史跡佐渡金山を楽しむ1泊2日の島旅プラン。「佐渡と言えば!」を凝縮し、内容盛りだくさんのプランでした。8月公開予定の第二弾の記事ではドンデン高原周辺の散策と佐渡の玄関口・両津港周辺の観光をセットに。ドンデン高原を彩る花々と満天の星空、日本百景に数えられる加茂湖やトキが暮らす里地里山の風景など、佐渡の魅力を深掘りしていきます。どうぞお楽しみに!
YAMAPでは期間限定で佐渡×YAMAPコラボ手ぬぐいキャンペーンを実施中。
『佐渡手ぬぐいキャンペーン』は、期間中に佐渡島の指定のランドマークを訪れることで、YAMAPアプリのデジタルバッジ(8種類)を2つ以上集めた方に、指定の配布場所で特製コラボ手ぬぐいがもらえるというキャンペーンです。
キャンペーン期間は、2022年5月16日〜10月31日までの期間限定。デジタルバッジは「金北山山頂」や「ドンデン高原—金北山の縦走路」「史跡佐渡金山」「北沢浮遊選鉱場跡」など、この記事の中に出てきたランドマークのほか、酒造や温泉など、全部で15か所のランドマークでゲットできます(全8種類)。
※ デジタルバッジとは…YAMAPヘルプセンター
※ YAMAPアプリで佐渡島の地図をダウンロードして活動日記を残すことでデジタルバッジが獲得できます
※ 今回のキャンペーン対象地図につきましては、期間中(5月16日~10月31日)、「地図のダウンロード制限」の対象外となります。この機会にぜひ佐渡島への旅にでかけましょう!
詳細は以下の記事(佐渡×YAMAPコラボ|佐渡の島旅を堪能して限定手ぬぐいを手に入れよう)をご確認ください。
原稿:池田菜津美
撮影:川野恭子
モデル:KUSACO(野表 結 https://kusaco116.com/)
協力:佐渡市、佐渡トレッキング協議会