新潟県・佐渡島の「金北山(きんぽくさん)」は、花の百名山にも選ばれている離島の名山。その魅力は気持ちの良い稜線歩きと山頂から周囲の海が見渡せる大展望です。また、佐渡といえばグルメや観光も見逃せません。離島ならではのとっておきの2泊3日の山旅を紹介します。
2020.12.01
池田 菜津美
ライター
日本海側で一番大きな島、新潟・佐渡島。最高峰の金北山(きんぽくさん・1,172m)は花の百名山に選ばれ、イワカガミの群生をはじめ、カタクリやシラネアオイなど、春から初夏にかけて咲き乱れる花々で有名な山です。
今回訪れたのは暑さが残る9月中旬。金北山の縦走をメインに、佐渡のグルメや観光を詰め込んだ、2泊3日の欲張りな山旅を計画しました。
新潟港からカーフェリーに揺られること2時間半、佐渡の玄関口・両津港に到着。港には大きな売店があり、佐渡の地酒や海産物、お菓子などのお土産がたくさん。食事をする場所や、おしゃれなカフェ「maSanicoffee(マサニコーヒー)」もあるので、一日中、観光客や登山客で賑わっています。
明日の登山に備えて、初日は港から徒歩5分の「おにCafe」でのんびり過ごすことに。
地元の人おすすめのカフェで、名前の由来は佐渡の祭り「鬼太鼓」にちなんだもの。太鼓の拍子に合わせて鬼が舞う祭りなのですが、「鬼の数だけ踊りがある」と言われ、しっとり優雅な舞や、鬼が激しく掛け合う舞など、集落ごとにスタイルが全く異なります。4月は島の各地で春のお祭りがあり多くの観光客が見物に訪れます。
おにCafeおすすめのメニューは餃子ライス。ぽってりとした形の餃子には、ジューシーな肉汁がたっぷり。食後は店主こだわりのクロモジという樹木の皮をブレンドしたさわやかな香りのコーヒーでほっと一息。他にも佐渡の野草を使ったスパイシーなクラフトコーラなど、めずらしい&おいしい&体に優しいメニューがたくさんあって、目移りしちゃいました。
初日は両津港の宿に宿泊。お風呂は泉質の良い温泉で大満足でした。明けて2日目。早朝にチェックアウトを済ませて地元のコンビニ「ハーティ・ウッズ」で買い出しを。店内には、裏の厨房で作ったお弁当やサンドイッチなどが所狭しと並んでいます。中でも人気なのは、鮭やすじこ、おかかなど、10種類以上のおにぎり。どれも、びっくりするほど具だくさんで大満足。登山のお供にぴったりです。
登山のスタート地点は、標高890mに建つドンデン高原ロッジ(ドンデン山荘)。縦走登山の宿泊地としてはもちろん、夏場には高原散策や山野草ハイキングの拠点として、登山者だけでなく観光客も多く訪れる場所です。展望デッキからは両津港や国中平野を見渡せ、天気がよければ本州の北アルプスまで望めるのだそう。日帰りの利用も可能なので、お風呂で汗を流したり、軽食をいただいたり、下山後に立ち寄るのもおすすめです。
佐渡島は、カタカナの「エ」を左に少し回転させたような形をしていて、北側の大佐渡山地と南側の小佐渡山地を、中央の国中平野がつなぐような地形になっています。ドンデン高原ロッジは大佐渡山地の中央あたりに位置し、金北山へは稜線を南下するように向かいます。ゴールの白雲台までは約13kmの道のり。スタート地点からの標高差は250mほどですが、小さなピークをいくつも越えるのでなかなかハード。
稜線は終始、左手に国中平野を、右手に海府南部の海岸線を見渡す大展望が続き、島の山ならではの縦走気分をしっかり味わえます。
花の百名山とあって、晩夏でもいろいろな高山植物&山野草に出会いました。本州では標高2,000m前後の亜高山帯で見られる植物が、さほど高くない佐渡の山で見られるのは強い海風のせい。風が吹きつける稜線は気温が低くなりやすく、そもそも水が豊富ではないので、厳しい環境でも生きられる高山植物が生き残っているのだそう。
稜線を歩いていると、ところどころ、緑色の岩石が露出しているのが目立ちます。このあと出てくる「真砂の芝生」の写真でも、斜面のザレが青っぽくなっているのがわかるはず。この岩石はグリーンタフといい、溶岩や火砕流が変質したもの。現在の佐渡に火山はありませんが、かつての佐渡は大陸の一部で、激しい火山活動が起こっていた場所でした。大陸が割れたとき、佐渡はいったん日本海に沈みますが、地殻変動によって隆起します。そのときにできたのが大佐渡山地と小佐渡山地で、それぞれから流れ出た土砂などが積もって国中平野ができました。ちなみに、金銀鉱床はマグマと熱水の産物なので、佐渡の金山も火山活動の賜だそうです。
天狗の休場という小ピークを越えると縦走も終盤へ。今までの展望&ザレの稜線と打って変わって、ミズナラやカエデが低く生い茂る樹林や、鏡池・あやめ池といった湿地など、みずみずしい佐渡の自然にふれあうことができます。
金北山山頂には本日一番の大展望が広がっていました。南東側が開けていて、小佐渡山地の峰々や、国中平野のパッチワークのような水田、曲がりくねった川筋など、佐渡のジオラマを見ているようです。地図を片手に楽しむもよし、記念撮影をするもよし、存分にその景色を楽しみましょう。
最終日は、小佐渡の南端にある宿根木集落を散策。
江戸時代から明治時代にかけて廻船業で栄えた集落で、船頭や船乗りだけでなく、船大工などの造船業に携わる人も多く住んでいました。現在の町並みが形成されたのはその頃で、海に向かって延びる路地や、集落の入り口に広がる荷揚げのための広場など、海を中心とした暮らしが集落の形に残っています。そして、何よりも驚くのは人家の密集っぷりです。海に面した狭い谷間は1ヘクタール(100メートル四方)ほど。その中に、110棟の家や蔵がひしめくように建っているのだから、当時の繁栄ぶりをうかがい知ることができます。
旅の締めくくりは、宿根木集落から車で10分、小木港の側にあるカフェ「日和山」へ。スリッパに履き替えて店内に入ると、手ぬぐいやTシャツ、文具など、佐渡をモチーフとした雑貨がズラリ。奥には、こだわりの書店コーナーもあり、時間が経つのも忘れてのんびりしてしまいそうです。
ランチメニューは、日替わりのパスタやスパイスチキンカレー、サンドイッチなど。どれも地元の新鮮な野菜や海産物を使ったもので、佐渡の味を楽しむことができます。このときのスイーツメニューは「おけさ柿」と自家製バニラアイスのミニパルフェ。おけさ柿は佐渡のブランド柿で、とろりとした果肉とまったりとした甘さが特徴。バニラアイスのミルキーな味に溶け込んで、最高においしい一品でした。
2泊3日の佐渡の旅は、グルメに登山に観光に、盛りだくさんの内容でしたが、まだまだ巡っていないところがたくさん。今度は花の時期に。いや、やっぱり鬼太鼓に合わせて。いえいえ、加茂湖で牡蠣三昧でしょ! …と、佐渡の魅力に後ろ髪引かれながら、カーフェリーに乗り込んだのでした。
おにCafe
新潟県佐渡市両津湊110
0259-27-2420
ハーティ・ウッズ
新潟県佐渡市両津夷300
0259-23-2697
ドンデン高原ロッジ
新潟県佐渡市椿697
0259-23-2161
交流センター白雲台
新潟県佐渡市中興乙3534-158
0259-61-1172
日和山
新潟県佐渡市小木町232
0259-86-3550
ワーケーションとは、仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせたもので、リモートワークをしながら観光地などに滞在する過ごし方のこと。佐渡でもワーケーションを広める取り組みが進められていて、連泊すると割引になるサービスや、アウトドア体験を盛り込んだプログラムなどが増えています。
2020年9月中旬に佐渡観光交流機構が提供したワーケーションプランは、たらい舟や、カヤック、バーベキューなどのアクティビティが盛り込まれ、仕事の合間に佐渡の自然やグルメを満喫するのにぴったり。今後もこうした企画があるそうなので、興味がある方はお問い合わせを。
(一社)佐渡観光交流機構
新潟県佐渡市両津夷384-11
登山に関するお問い合わせは
佐渡トレッキング協議会(佐渡観光交流機構内)
0259-23-4472
観光全般に関するお問い合わせは
佐渡観光情報案内所
0259-27-5000
ワーケーションに関するお問い合わせは
佐渡観光交流機構 マーケティング事業部
0259-23-5230
取材・原稿:池田菜津美
撮影:星野秀樹
協力:環境省・佐渡観光交流機構