登山で活躍するメスティンの選び方とレシピ【山登り初心者の基礎知識】

登山やキャンプの料理で大活躍するのが、長方形をしたアルミ製の飯ごう「メスティン」。「メスティンってよく聞くけど、何がいいの?」という方のため、基本的な使い方や種類の違い、登山ガイドがおすすめするレシピを紹介します。

2023.01.06

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

山ごはんの便利アイテム「メスティン」の魅力

メスティン(Messtin)とは、アルミ製飯ごうの総称。英語の「Mess」(軍隊での食事)と「tin」(ブリキ缶)という2つの単語が合わさった言葉です。

もとはヨーロッパの軍隊が、野営先の食事の取り分けや調理のために考案したもの。軽くて丈夫なアルミ製が誕生し、世界の軍隊はもちろん、アウトドア好きにも普及しました。

コロナ禍でのキャンプ人気を追い風に、多くの国内メーカーが参入。登山やキャンプ、自宅など、場所を選ばずに使える便利さから、アウトドア好きを中心に、愛好者が増えています。

炊飯もできるメスティン(PIXTA)

日本でメスティンが注目されはじめたのは、ソロキャンプの人気が高まり始めていた2019年ごろ。固形燃料に着火して待つだけでいい「自動炊飯」の便利さと、小物入れのようなおしゃれさから、キャンパーの間でまたたく間にブームになりました。

SNSなどでおしゃれなレシピが多数公開され、一時は入手が困難な時期もあったほど。その汎用性の高さと軽さから、登山での愛用者も増え、山ごはんをテーマにした漫画『山と食欲と私』でもたびたび登場し、読者の食欲をそそっています。

メスティンが登山に便利な理由

パスタも調理できるメスティン(PIXTA)

アルミ製で軽量・コンパクト

メスティンはアルミで作られているため、登山の荷物が軽量・コンパクトに。熱伝導率も高いため、必要な燃料も少なく済みます。

容器だけでなく、調理もできる

メスティンはお弁当箱や食器として使えるのはもちろん、アウトドアでの調理器具としても優秀。「炊く」「煮る」「蒸す」「焼く」を一つでこなせます。特に「炊く」に関しては、熱伝導が高いのでムラなく、おいしいご飯を炊けます。

登山に最適なメスティンの選び方

容量と重量で選ぶ

ミディアムタイプでは1〜2合分のお米を炊ける(PIXTA)

メスティンの主なサイズは、大きく分けてミディアムタイプとラージタイプの2種類。登山にミディアム、ファミリーやグループのキャンプでラージと使い分けてみましょう。

ミディアムタイプ
1人用の食事を作るのにピッタリのサイズがミディアムタイプ。メーカーによって異なりますが、1〜2合分のお米が炊け、1人分のラーメンが作れます。

ラージタイプ
ラージタイプは3〜4人分の食事を作れます。約3.5〜4合前後のお米を炊けるため、グループ登山やファミリーキャンプにもオススメ。空の状態だと、ミディアムタイプのメスティンをすっぽり中に収納できます。

表面加工の種類で選ぶ

表面加工の有無の確認が重要(PIXTA)

メスティンはメーカーによって表面加工の有り・無しがあります。初心者でも扱いやすいのは、準備がいらない表面加工があるメスティンです。

アルミ無垢(表面加工無し)
アルミ無垢の素材でできていて表面加工無しのメスティンは使う前に焦げつきを防止するため、米の研ぎ汁で煮るなどして皮膜をつくる「シーズニング」という作業が必要です。

アルマイト加工
アルミの表面に酸化皮膜を作って耐食性・耐摩耗性を高める処理をしたもの。シーズニング作業は不要になります。

フッ素加工
フッ素樹脂を材料の表面に塗膜化する加工で、表面の滑りを良くして高温でもモノを付着しにくくします。こちらもシーズニング作業は不要。

ブランド別、最適なメスティンの選び方

メスティンは色々なメーカーから販売されています。それぞれのメーカーの特色や違いについて解説していきます。

トランギア

トランギアのメスティン(著者撮影)

国内で展開されているメスティンの先駆けといえば、1925年にスウェーデンで創業された老舗メーカー「トランギア」。国内で数多く販売されているメスティンの中でも、代名詞的な存在です。ミディアムサイズ(750ml)とラージサイズ(1350ml)の2サイズ。ミディアムは約1.8合、ラージは約3.5合のお米を炊けます。

使う前に縁のバリ取りや、皮膜をつくってこげにくくするシーズニングという作業(後述)が必要とされていますが、そのような手間をかけることによって「自分専用メスティン」となり、愛着がわいてきます。

ミリキャンプ

ミリキャンプのメスティン(著者撮影)

ふたがぴったりと閉まるので気密性が高く、おいしいご飯を炊けます。本家のトランギアにはない目盛り付きで、炊飯の水の量がひと目で分かります。容量は800mlで、最大2合のお米を炊けます。バリ取りや、耐食・耐摩耗性を向上させる「アルマイト加工」がしてあるため、購入後はすぐに使用できます。

キャンパーズコレクション(山善)

キャンパーズコレクションのメスティン

コストパフォーマンスにすぐれた家電・家庭用品で知られる「山善」。そのアウトドアブランドが「キャンパーズコレクション」で、国内ブランドならではの安心感があります。容量は850ml。トランギア製のミドルサイズよりも一回り大きいながらも、重量は160gとほぼ同じ。

バリ取りの処理がしてあるため、使用前にはシーズニングの処理をするだけで使えるようになります。

ロゴス

ロゴスからは一般のメスティンとは若干異なるテイストで「メスキット」という名前で販売されています。ふたに取っ手が付き、アルマイト加工が施されています。容器のフチが折り返して丸められているので、バリ取りも不要。安心してすぐに使えます。

ニトリ

マットな質感でおしゃれなデザイン。容量は850mlで、目盛り付きで炊飯時の水の量がひと目で分かります。バリ取りやアルマイト加工もされているため、購入後すぐに使用できます。収納袋やレシピが付属しているのもポイントです。

ダイソー

容量は500mlで、炊飯は約1合。これまで紹介した中で最小ですが、価格はなんと500円(税抜)。バリ取りやアルマイト加工がされているため、購入後すぐに使用できるのも魅力です。持ち運びやすさを求めるソロ登山者や、小物入れがわりに何個もほしい人にはおすすめ。

スペック比較表

代表的な6メーカーを紹介しましたが、それぞれのメーカーのミディアムサイズのスペックを比較し、特徴をまとめました。最適なメスティンを選ぶめやすにして下さい。

メスティンを使う前に必要な準備

トランギアのメスティンは使う前に準備作業が必要です。メーカーによってはバリ取りの処理や表面加工がされているので、購入前にチェックしましょう。

バリ取り

バリ取りが必要になるものもある(著者撮影)

ふたや本体のフチに指を当て、ひっかかるようなら「バリ取り」が必要。「バリ」というのは製品をプレス機で打ち抜く際にできるフチの「出っ張り、トゲ、ザラザラ」のことです。そのままにしておくと、製品を使っているときに手をけがすることもあります。

国内ブランドのほとんどは、工場でバリ取りをしてから出荷するため、消費者は気付かないかもしれません。しかし、メスティンは海外の軍用品だった由来もあり、国外メーカーのもののなかには、無骨な作りのものが混じっています。

バリ取りを行うことにより、ふたや本体のフチにある「バリ」を取って滑らかにし、けがのリスクを減らします。

バリ取りの方法

1.最初は400番程度の粗い紙やすりを当ててゆっくりこすり削っていく
2.次に1000番程度の目の細かい紙やすりを当てて仕上げる
3.削りカスを柔らかいスポンジで洗い流す
4.指でフチを触ってバリが取れていれば完成

シーズニングが必要な理由

一部のメーカーでシーズニングが必要になるモデルがある(PIXTA)

アルミ無垢のままのメスティンは焦げやすいため、「シーズニング」という作業が必要。シーズニングで酸化皮膜を作ることにより、以下の効果が得られます。

・焦げにくくする
・アルミ臭の緩和
・黒ずみ防止

毎回する必要はなく、初回に使用する前と、焦げ付いたり汚れてきたりしたタイミングで定期的にシーズニングをするのが理想です。

※アルマイト加工やフッ素加工がされているメスティンはシーズニング不要。購入したメスティンが表面加工されているか、確認しましょう。

シーズニングの方法

1.ハンドルを外す
2.メスティンを中性洗剤で洗う
3.鍋に米の研ぎ汁を入れ、中火で沸騰後、約15分煮る
4.冷めてから水とスポンジで軽く洗い流す

メスティンの登山での便利な使い方

コンパクトに収納

小物も収納できるメスティン(著者撮影)

メスティンの中にはコンパクトに色々なものを入れることができます。小型バーナーやポケットストーブ、食材を入れておけばザックの中の収納スペースを無駄に使いません。

登山でのメスティン調理に便利な燃料

固形燃料

固形燃料と相性がいいメスティン(PIXTA)

固形燃料は旅館などで小型鍋の保温に使われていることでおなじみの燃料です。一気に燃え上がらないのでアルミ製のメスティンと相性抜群。固形燃料を使用して、あとは置いておくだけの「自動炊飯」もできます。

ポケットストーブとセットで使うと風除けにもなります。
サイズによって燃焼時間は異なりますが、一般的に以下のようになります。

15g:14〜19分
20g:15〜20分
30g:20〜25分

180mlのお湯を沸かすのに10分程度がめやす。固形燃料のサイズを選ぶ際の参考にして下さい。

ガス缶

バーナーと一緒に使うことにより安定した力強い火力が得られるのがガス缶。OD缶と呼ばれるアウトドア用の丸い缶と、CD缶と呼ばれるカセットコンロ用の円筒形の缶があり、登山用品店やホームセンターで入手できます。

メスティンのおすすめ登山レシピ

白ごはん

<材料(1人分)>
・米:1合
・水:200ml

<必要な道具>
・メスティンミディアムタイプ
・固形燃料 30g
・ポケットストーブ
・ふきん
・軍手

<作り方>
1.メスティンに研いだ米と水を入れ、ふたをして30分以上吸水
2.折りたたみ式の固形燃料用バーナー(ポケットストーブ)に燃料をセット。メスティンを置き、ハンドルを畳んだ状態で重し代わりに。着火して、消えるまでそのまま待つ
3.火が消えたらふきんを敷いてメスティンを包み込み、ふたが下になるように逆さまにする。15分ほど蒸らせば完成

鮭としらすの炊き込みごはん


<材料(2人分)>
・米:1合
・水:200ml
・酒:小さじ1
・鮭:1切れ
・釜揚げしらす:50g
・刻みネギ:適量

<必要な道具>
・メスティンミディアムタイプ
・固形燃料 20g
・ポケットストーブ
・ふきん
・軍手

<作り方>
1.メスティンに研いだ米、水、酒を入れ、ふたをして30分吸水させる
2.鮭としらすをのせ、ふたをして固形燃料に着火。消えるまで待つ
3.火が消えたらふきんで包み、10分ほど蒸らせば完成

カルボナーラ


<材料(1人分)>
・スパゲッティ:80g
・「A」
 玉ねぎ:1/8個
 にんにくチューブ:2cm
 水:120ml
 塩:適量
・牛乳:100ml
・ブロックベーコン:40g
・粉チーズ:大さじ1
・卵:1個
・黒胡椒:適量
・塩:適量

<必要な道具>
・メスティンミディアムタイプ
・固形燃料 20g
・ポケットストーブ
・軍手

<作り方>
1.メスティンにスパゲッティを半分に折って入れ、「A」を加えて蓋をし、固形燃料に火をつける沸騰したら牛乳を加え、ふたをずらして7分程度煮る
2.ふたをあけ、ベーコンを加えて混ぜ、汁気を飛ばし、溶き卵・チーズを加える
3.黒胡椒、塩で味を整えて完成

ガーリックシュリンプ


<材料(2人分)>
・無頭エビ:10尾(約150g)(背わた、腹わた、脚を取り除く)
※殻を剥くと食べやすくなりますが、殻ごと炒めると旨味が出ます。
・「A」
 オリーブオイル:大さじ2
 にんにくチューブ:4cm
 しょうがチューブ:1cm
 白ワイン:大さじ1
 黒胡椒:適量
 塩:適量
・バター:10g
・レモン:1/8切れ(半月切り)

<必要な道具>
・メスティンミディアムタイプ
・固形燃料 20g
・ポケットストーブ
・軍手
・ジップロック

<作り方>
1.ジップロックにエビと「A」を入れて混ぜ、10分置く
2.メスティンにバターを入れ、固形燃料に着火
3.バターが溶けてきたら「1」を入れてふたをし、音が出てきたらエビを裏返す
4.エビに火が通ったら火を止め、レモンを添えて完成

使用後のメスティンのお手入れ

加工がされていないメスティンが焦げ付いても、お酢を使って対処できる(PIXTA)

アルマイト加工のされていないメスティンで炒め調理をすると困るのが、メスティン本体の焦げ付き。ここでは焦げを取る方法を説明します。

お酢を使う

1.焦げが浸かるくらいの水を入れる
2.酢を大さじ2〜3杯入れる
3.沸騰させて約20分煮込む
4.割り箸でこする
5.スポンジで擦って仕上げ洗い
※アルミはアルカリ性に弱いため、「重曹」を使うのはNG。ご注意下さい。

周辺グッズも充実

ポケットストーブ


折りたたみ式で、固形燃料用とマッチするモデルがオススメ。メスティンと同じ数のポケットストーブも用意すれば、同時調理も可能です。

ハンドルカバー

ハンドルは炊く調理の場合、重し代わりにふたの上に乗せるため、火傷防止にハンドルカバーがあると心強いです。

トレイ


蒸し料理をする場合に必要なのがトレイ。蒸しパンやスイーツ類、茶碗蒸しなどのメニューも作れます。

着火グッズ


固形燃料は自動点火できないため、コンパクトな着火ツールが必要。ライターでも良いですが、アウトドア用のコンパクトな着火ツールがあると便利です。

メスティンで山ご飯を楽しもう

本記事ではメスティンの選び方、使い方、代表的なレシピを紹介しました。最適なメスティンを見つけ、山ごはんを楽しんで下さい。

執筆協力・一部写真提供:上田洋平(登山ガイド)

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。