山登りで欠かせないのが、エネルギーや栄養を手軽に補給するための「行動食」。柿の種、チョコ、パン……。初心者だけでなく、ベテランであっても、自分にとっての正解を探す試行錯誤に終わりはありません。行動食が必要な理由とともに、選ぶ基準や、定番から最新コンビニ系までのおすすめを紹介します。
2024.07.31
YAMAP MAGAZINE 編集部
「何も食べずに山に登ればダイエットになってやせられるのでは?」
こう思った方もいるかもしれませんが、この考え方はかなり危険。
登山は長時間の有酸素運動。多くのエネルギーを消費します。運動でエネルギーを消費し続けても全く補給しない場合、体内の血糖値が下がり、体だけでなく、脳の活動も低下。注意力や思考力、判断力が低下し、さらにひどくなると意識を失う場合もあります。
車にたとえると「ガス欠」の状態で、登山用語で「シャリバテ」や「ハンガーノック」と呼ばれます。
糖質(炭水化物のうち食物繊維以外のもの)を補給せずに運動を続けた場合、筋肉や内蔵のタンパク質が分解され、エネルギーにあてられます。このような状態を防ぐためにも適度な間隔で行動食によるエネルギー補給は必須です。
行動食選びの際に把握しておきたいのが、カロリー。担ぎ上げる荷物が限られる登山では単純にカロリー量だけを気にするのではなく「1gあたりのカロリー」について考えてみると、より軽量で高カロリーのものに目が向きます。
行動食の代表的な物の「1gあたりのカロリー」について比較してみました。
こうして見ると、カロリーメイトの優秀さが目立ちます。カロリーだけでなく、後述する五大栄養素も入っていて、栄養バランスが良いのも特徴。注意点としては水分が少なく口の中がパサパサになること。一緒に食べるのに飲み物が欠かせません。
行動食の選び方として、持ち運びやすさ(携帯性)も大切な基準。当然、小さくて、軽いほうが荷物の容量が限られる登山向きと言えます。
大きなパッケージに入っている行動食は、ジップロックやナルゲンボトルを使ってコンパクトにまとめておけば、山の中で余分なゴミがでなくなります。
行動食は休憩時にサッとザックから取り出して素早く食べれるよう、食べやすさも大切なポイント。
調理することなく、開封してすぐに食べられる個包装になっているタイプがオススメです。開封した時に粉やタレが手についてしまわないか、という点も考慮します。
人間に生命維持活動にとって必要となる栄養素は大別して5つ。
炭水化物:エネルギー源となる「糖質」と、腸内環境の改善に使われる「食物繊維」。糖質は1gで4kcalのエネルギーになり、すぐに使えるメリットがありますが、約1.5時間分しか体の中に蓄えておくことができません。
脂質:1gで9kcalのエネルギーになり、約7.4日分を体の中に蓄えておくことができますが、通常は糖質と一緒でなければ燃やせません。
タンパク質:筋肉や内蔵、皮膚、髪の毛を作る素になる栄養素。登山では下山後に多く摂取することで、疲労した筋肉を修復します。
ビタミン:水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあり、体の調子を整えます。
ミネラル:骨や血液の素となり、体の調子を整えます。登山では発汗によってナトリウムが失われるので足のつり防止のため、塩分補給も大切です。
糖質は体内に1.5時間分しか蓄えられないため、行動中の休憩時には意識して糖質を摂取する必要があります。下山後やテント場、山小屋での夕食時にその他の栄養素(脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラル)も補うようにします。
登山の場合、ザックの中に入れて行動食を持ち運ぶことになるため、常温で長期間が経過しても味が損なわれないような「保存性」も大切。バナナなどのフルーツは、行動食としては良いのですが、保存性は低いため、日帰りの登山や、テント泊や山小屋泊の1日目に向いています。
甘い系は行動食の代表格。手早く糖質を補給できるので行動食にうってつけです。
無添加系:ようかん、甘納豆、ナッツ、甘栗、きなこねじりなど、ヘルシーな行動食
スイーツ系:クッキー、サブレなど、自分の好きな味で選ぶと山歩きが楽しくなります
キャンディ系:アメやグミ等、行動中にも食べやすい
ブドウ糖系:ラムネはブドウ糖の塊なのでエネルギーになりやすくオススメ
お腹を満たす系の行動食は、主に4系統があります。
主食系:パン、おにぎり、サンドイッチ
ソーセージ系:おさかなソーセージやささみバー
バー系:カロリーメイトや満足バー
ゼリー系:inゼリー、リポビタンゼリー
オススメは5個程度の小分けで入っているパン。保存性も高く、クリームやピーナッツバターが入っていると口の中に入れたときのパサパサ感が少ないため、水分を飲むことが無くなります。
昔ながらの梅おにぎりもオススメ。梅に含まれているクエン酸には疲労回復効果も期待できます。コンビニで手軽に入手できるのも便利。
保存性が高いのがおさかなソーセージ。常温で保存できて食べ応えもあり、タンパク質補給もできる優等生です。
カロリーメイトやジェルも保存性が高いため、何かあった場合の非常食として持っておくのも良いと思います。
登山では汗をかくことで体内のナトリウムが外に排出されるため、塩分(塩化ナトリウム)などのミネラルを補給する必要があります。ミネラル不足の状態になると脚がつる原因になるため、登山中は意識して塩分を補給することが大切。
登山中の塩分補給のオススメは、塩分と糖分が含まれている「経口補水液」をこまめに飲むこと。市販の経口補水液が濃く感じる場合は水で薄めた物でも大丈夫です。
塩分補給系の行動食は、以下の通り。
スナック菓子系:柿の種やポテトチップス
おつまみ系:サラミ、さきいか、イカ天など
アメ系:塩飴や塩分タブレット等
スナック系やおつまみ系行動食は行動中に食べても良いですし、山小屋泊やテント泊の場合は夜にお酒のつまみにするのにも使えます。
アメ系は行動中に舐めながら塩分が補給できるので、ザックの腰ベルトのポケットやサコッシュに忍ばせておくと良いでしょう。
酸っぱい系の食べ物には疲労回復に効果のあるクエン酸が含まれているため、行動食にも取り入れたい種類です。
疲れた時は塩昆布やカリカリ梅、レモンキャンディーなどを食べて疲労を回復すると良いでしょう。
柿の種やナッツ・ドライフルーツ類は飲み口の広いナルゲンボトルに入れておくと休憩時にサッと取り出せます。
小型の乾燥剤もボトルの中に一緒に入れておけば食品が湿りにくくなります。ボトルが大きすぎる場合は、積み重ねて色々な種類の行動食を入れる容器もあるので、お好みに応じて使ってみてはいかがでしょうか。
大袋に入っている行動食はジップロックを使って軽量・コンパクトに収納できます。食べ終わったらジップロックをごみ袋として使えるので、積極的に活用すると良いアイテムです。
今回紹介した行動食はどれもコンビニ・スーパー・100均で手に入りやすいものばかり。登山口近くのコンビニで行動食を購入し、快適な登山やハイキングを楽しんで下さい。
行動食の選び方について詳しく知る:
山でバテない行動食の選び方とポイント|山のお悩み相談室 Vol.2
山ゼリー習慣をはじめよう! vol.1「スーパーで買う行動食選びの正解は?」
執筆・素材協力=上田 洋平
YAMAP MAGAZINE 編集部
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