マウンテンハードウェア|創業30年の歩みと注目の新GORE-TEXシリーズ

今年、創業30年を迎えたアウトドアブランド「マウンテンハードウェア」。アニバーサルイヤーとなる2023年は、4年振りにGORE-TEXを採用したシェルシリーズが生まれ変わって登場します。

気になる最新モデルのディテールと具体的な使用シーンについて、プロスノーボーダーや登山ガイドとして幅広く活躍する水間大輔さんにお話を伺いつつ、ブランドの歴史についても振り返ってみましょう。

2023.03.21

池田 圭

編集・ライター

INDEX

ブランドのテーマは「あらゆるマウンテンスポーツのために信頼に値するタフなギアを作ること」

マウンテンハードウェアは、30年前の1993年にカリフォルニアで産声を上げました。ファンの間では、親しみを込めて「マンハー」なんて略称で呼ばれることもあります。

ブランドロゴとしてデザインされたナットには、耐久性のあるハードな製品を作るという信念が込められています。また、踏んづけても投げつけても割れない頑丈さという意味合いもあるそうです。

その名の通り、30年間にわたってハードに山を遊びたい人に向けて、信頼できるタフなギアを手掛けてきたマウンテンハードウェア。しかし、西海岸生まれの会社らしく、その根底にはリラックスして自然を楽しもうという遊び心も溢れています。じつは山だけに限らず、あれもこれもと幅広くアウトドアを遊び尽くしたい方にこそおすすめしたい、魅力的なラインナップを揃えているんです。

そのラインナップの特徴は、ターゲットとするフィールドの幅広さと発想の柔軟さ。8,000m峰のアルパインの世界から、クライミング、登山、スノーアクティビティにキャンプまで、さまざまなジャンルで活躍するアスリートたちの声をもとに開発をおこなってきたことが、現在の個性的な製品展開に繋がっています。

90年代には、フリースの表面に防風性のある薄手のシェルを貼り付けた「ウィンドストッパーシェル」や、吊り下げ式テントの室内スペースを拡張するための「テンションアーチ」を開発。2000年代に入ると、着用した瞬間に透湿が始まるテクノロジー「ドライQ」、縫い目を省いた「溶着構造」の寝袋やダウンウェアも手掛けてきました。今となっては、すっかりアウトドアギアのスタンダードになった感のある構造と技術ですが、これらをいち早くアウトドア製品に採用し始めたのはマウンテンハードウェアでした。

ターゲットは、本気でアウトドアの遊びに取り組んでいる人たち。でも、ストイックに1つのジャンルを突き詰めようというだけの話とは、ちょっと違います。幅広く、本気でアウトドアを楽しみたい欲張りなユーザーに合わせて、遊ぶフィールドを選ばない機能的かつスタイリッシュな製品を作り続けてきたブランドなのです。

GORE-TEXを使ったシェルラインを一新

そんな彼らの今年一番のトピックスは、2019年以来、4年振りにGORE-TEXテクノロジーを使ったラインを一新すること。

今回は春先の残雪の山や、さらには夏〜秋山に活躍してくれそうな3着をピックアップして、サポートアスリートの水間さんに解説してもらいましょう。

残雪期のアルパインシーンをサポートする「ドーンライト ゴアテックスプロジャケット」

1着目は、「ドーンライト ゴアテックスプロジャケット」

ゴアテックスのテクノロジーの中でも、もっとも丈夫な耐久性と極めて優れた透湿性を誇る「GORE-TEX PRO」を採用したハイエンドモデルです。表地は40デニールとかなり薄めに仕上げ、軽さも兼ね備えていることが特徴。

水間さんはこう語ります。「まず、袖を通した瞬間にわかるほどの軽さが印象的です。高い耐久性がありながら薄く軽量な生地を使っているので、ハーネスを着用してもスッキリ収まってモタつきません」

腕上げを前提としたカッティングなので、動きはしなやかでストレスフリー。アルパインエリアである程度激しく活動することを想定し、脇の下には大きめのベンチレーションも備えています。ジッパーは腕を上げた時に前にくるような位置に配置されており、雪山での登山やアイスクライミング、スノーアクティビティのような激しい動きでも邪魔になりません。

裏地は滑らかで肌触りがいい「マイクログリッドパーカー」を採用。吸汗と拡散性にも優れ、運動強度の高いアクティビティにも対応するデザインです。

「滑走よりも、アルパインクライミングや登山を想定したミニマムなデザインですね。無駄なものを削ぎ落として、軽さを求めつつプロテクションも諦めないための選択肢かな。使用シーンを想定するなら、残雪の春山にちょうどいい。フィールドはまだまだ雪山だけど、青空が出て暖かいような状況下での活躍がイメージできます。非常に軽くて着心地もいい。ハードなシーンでも信頼のおけるジャケットだと思います」

夏山から秋口は軽量シェル「ミニマイザーゴア」の出番

2着目に紹介するのは、「GORE-TEX PACLITE®︎PLUS」を採用した「ミニマイザーゴアテックス パックライトプラス ジャケット」です。

表地は13デニール、Mサイズで重量245gと非常に軽量なバックアップシェル。ディテールの要素も最小限に抑え、シリーズ中もっともミニマムな造りに仕上がっています。

「梅雨が明けてから、7〜9月の高所でも気温が安定する時期はこのジャケットの出番でしょう。とても軽いし、すごくコンパクトにパッキングできる。僕のレインウェアの中では、パックライトのものが一番ミニマムな選択肢で、真夏の登山には必ず持っていきます」

「大型ベンチレーションを兼ねた胸ポケットも配置されていますし、極端に要素を削っているモデルではないので使いやすそうですね。薄いとはいえゴアテックスなので、耐久性には安心感があるのもポイント。荷物をコンパクトに抑えたい夏山の長期縦走時は、これ一枚でレインウェアとウィンドシェルを兼ねて、荷物の軽量化を図ることもできると思います」

環境にやさしい「ePEメンブレン」を3レイヤーに採用

3着目は「トレイルバースゴアテックスジャケット」

最大の特徴は、耐久性の高さと環境負荷低減を両立する革新的な「延伸ポリエチレン(ePE)メンブレン」を採用していること。マウンテンハードウェアは、この素材を3レイヤーのシェルにいち早く採用した世界でも数少ないブランドの1つとなります。

「生地はしっかりしていて、ベンチレーションも設けられているので、春山の残雪期から少し肌寒い梅雨時期まで活躍してくれそう。前出のゴアテックスプロほど本格的なプロテクションが必要になる使い方はしないけれど、パックライトだと少し不安な時の選択肢。ちょうど、2着の中間的な使い方に向いていると思います」

「インナー次第では冬山の登山にも対応できる厚みですし、使い方や時期を考えれば汎用性はかなり高いと思います」

フード部分にはスタンドがついていて、フードをかぶらなくても雨や風をある程度防ぐことができます。また、防水ハットと組み合わせれば、雨の日も音が遮断されません。

ちなみに「ePEメンブレン」とは、延伸ポリエチレンとPU(ポリウレタン)を組み合わせることで、PFCフリーおよびカーボンフットプリントの削減を実現したもの。これは、製造時の自然環境への負荷を最小限に抑える、環境に優しい最先端の防水透湿性素材です。

75デニールの表地には、100%リサイクルポリエステルを採用しています。

また、染色方法は「ソリューションダイ」を採用。ソリューションダイとは、化学繊維の原料自体に染色、色材を加え、着色済の原料から繊維を製造する「原液着色」のこと。従来の染色方法は、すでに繊維化されたものを後から着色するので、その洗浄工程において大量の水が必要でしたが、原料自体に色をつけることで染色時に使用する水の量は従来の20%で済むそうです。

マウンテンハードウェアが創業時からGORE-TEXテクノロジーを使えた意味

マウンテンハードウェアは30年前の創業時から、GORE-TEXのテクノロジーを採用したウェアを作り続けてきました。じつはGORE-TEXテクノロジーを使えるのは、素材ブランドであるゴア社が「製品のクオリティを認めたひと握りのブランドのみ」ということをご存知でしょうか?

マウンテンハードウェアが創業当時からGORE-TEXを使った製品を手掛けることができたという事実は、このブランドの信頼性の高さを物語るストーリーなのです。

ちなみに水間さんがシェルウェアを選ぶ時は、運動強度の高いアクティビティの時には透湿性に優れたマウンテンハードウェアの独自素材「ドライQ」のウェア、耐久性や防寒性を求めるシーンでは「GORE-TEX」のウェアと使い分けているそうです。

この春夏から新たにラインナップに追加された、マウンテンハードウェアの新「GORE-TEXシリーズ」をあなたの選択肢にも加えてみてはいかがでしょうか。

​​原稿:池田圭
撮影:廣瀬順二
モデル:水間大輔
協力:マウンテンハードウェア(コロンビアスポーツウェアジャパン)

池田 圭

編集・ライター

池田 圭

編集・ライター

登山、キャンプ、サーフィンなど、アウトドア誌を中心に活動中。下山後に寄りたい食堂から逆算して計画を立てる山行がマイブーム。共著に『”無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社)、編集を手掛けた書籍に『Two-Sideways 二刀流』(KADOKAWA)、『ハンモックハイキング』、『焚き火の本』、『焚き火料理の本』(ともに山と溪谷社)、『サバイバル猟師飯』(誠文堂新光社)など多数。