テント用マットの選び方・使い方・メンテナンス【山登り初心者の基礎知識】

テント泊の必需品、マット。就寝時にシュラフの下に敷いたり、テント内でリラックスしたりするときのクッションとして活躍してくれる、大切なアイテムです。マットを使用することで、地面のデコボコを緩和したり冷えをブロックしたりと、使用するメリットはたくさん。本記事では、マットが必要な理由や選び方、メンテナンスの方法まで解説します。

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2023.05.20

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

テントマットが必要な理由

1. 快適な寝心地を支えるクッション性

テント場は小石や木の根がある不整地。フラットなウッドデッキがあったとしても、硬い地面の上では背中が痛くなってしまい、快適な睡眠をとることはできません。

そこで、クッション性を備えたマットの出番。地面からのアタリを軽減し、寝心地をよくしてくれるマットは、テント泊における必須アイテムなんです。

2. 地面からの冷気をシャットアウトする断熱効果

保温性のあるシュラフに入ったとしても、地面との間に断熱効果のあるものがなければ、冷えがじわじわと伝わってしまい、安眠することはできません。

テント泊用のマットは上記のクッション性に加え、断熱性能を備えており、地面からの冷えをシャットアウトしつつ、体温を地面に逃さない効果もあります。

テントマットの選び方

テントマットは、大きく分けて3つのタイプに分類できます。それぞれに特徴があり、山行スタイルや目的に合わせて選ぶことが大切。まずは、3つのタイプからご紹介します。

1. クローズドセルタイプ

蛇腹やロールタイプの発泡素材でできたマット。もっとも古くから使われてきたタイプで、主にウレタンやEVAを素材としており、広げればすぐに使える手軽さが魅力です。

使いやすさ ★★★
広げるだけなので、テント内での使用のほか、山行途中の休憩の際にもサッと取り出して使うことが可能。

収納性 ★
発泡素材ということもあり、折りたたんだり、丸めたりして携行します。携行時であっても体積自体は変わらないので、かさばってしまうのがデメリットのひとつ。サイズにもよりますが、歩行時に邪魔にならないよう、バックパックの正面や横にくくりつけるのが一般的な持ち運び方法です。

耐久性 ★★★
地面や岩とのスレで表面が痛むことはありますが、穴が空いて使えなくなることもないため、比較的長く使い続けることができるのが特徴です。

保温性 ★★
厚みや素材の質により、保温性に差があるのがクローズドセルタイプの特徴。夏用のものは薄め、一方冬用のものは厚手となっており、シーズンや山域に合わせて選ぶ必要があります。

なお、YAMAP STOREでも販売している「EXPED(エクスペド) フレックスマットM」は長さが183cmのもので325g。価格は税込で¥5,280(2023年5月時点)。

2. エアーマットタイプ

使うときに空気を入れて膨らませるタイプ。フワフワとした寝心地が魅力で、断熱効果にも優れます。空気を抜けばコンパクトになるので、荷物量を減らすことが可能。

デメリットとしては、扱いがデリケートなこと。穴が空いて空気が抜けてしまうと潰れてしまいます。地面の上に直接敷いて、枝や石などで穴が空くことがないように注意を払うことが大事です。

使いやすさ ★★
使用時に空気を入れる手間がかかるのが、デメリットのひとつ。ただ、近年はコンパクトな電動エアーポンプや専用の袋型の空気入れも登場しており、数分あれば膨らませることも可能。

収納性 ★★★
空気を抜くことができるので、携行時はコンパクトになるのが魅力。荷物をできる限り軽くするUL(ウルトラライト)向けのモデルは、生地を薄くすることで軽量性と収納時の小ささを追求したものもあり、荷物量を少しでも抑えたい方にはオススメ。

耐久性 ★
風船のように膨らませる構造のため、穴が空くとマットとしての機能が損なわれてしまいます。扱いに細心の注意を払い、また万が一に備えてリペアキットを携行しておくのが鉄則。

保温性 ★★★
空気を断熱材として使用しているため、保温力は抜群。空気を断熱材として使用しているため、保温力は抜群。冷え込むことの多い春や秋ではエアマットタイプが活躍します。

なお、YAMAP STOREでも販売している「KLYMIT(クライミット)スタティックV2/UNISEX
は長さが183cmのもので463g。価格は税込で¥15,400(2023年5月時点)。その他多数のタイプがあるので、興味がある方はYAMAP STOREをのぞいてみてください。

3. インフレータータイプ

エアーマットタイプのマットの内部にスポンジのような素材を入れることで、バルブを開ければ自動的に膨らむ構造を採用したタイプ。使うときは最後の調整のみ空気を入れるだけで済みますが、携行する際は空気を抜く手間がかかります。

使いやすさ ★★
クッション感の調整に空気を入れる必要はありますが、おおむね自動で膨らむためエアーマットに比べて使用前の準備がスムーズ。ただし、収納時には空気を抜く必要があります。

収納性 ★★
エアーマットタイプにはないスポンジが内蔵されている分、多少かさばりますが、空気を抜く分コンパクトになります。

耐久性 ★
こちらも穴が空くと使えなくなってしまうのが難点。扱いに注意することと、リペアキットの携行が必須。

保温性 ★★★
クローズドセルタイプとエアーマットの中間のような設計で、内部には断熱性のあるスポンジ素材を内蔵しているため、保温性は良好。

自分の好みのテント用マットを見つけよう

扱いやすく万能なクローズドセルタイプは、比較的安価で手に入るのが魅力。一方で、エアーマットやインフレータータイプは値段が張るものの、コンパクトで軽量という特徴があり、それぞれのメリットとデメリットを見比べて、お気に入りのマットを見つけるとよいでしょう。

ちなみに、テント用マットには、「R値(Thermal resistance value、熱抵抗値)」とよばれる断熱性能を示す数値が記載されているものがあります。数値が大きくなればなるほど断熱性が高い=保温性に優れるということで、テントマット選びの一つの指標になります。

おおよそですが、3シーズンのテント泊であれば、R値が4〜6のものを選ぶのがベター。体感温度は人によって異なりますし、使用するシュラフとの組み合わせで温かさは変わってきますので、一概には言えませんが、上記を目安にするとよいでしょう。

長さについては、身長より少し長めが基本。少し大きめの方が、頭や足がはみ出さないので快適です。軽量化を追求したい場合は、ショートタイプを使用し、足の部分を空のバックパックで代用することも可能。クローズドセルタイプはカットして、自分のサイズに合わせると携行時に軽量化&コンパクト化できます。

マットのメンテナンス方法

最後に、マットのメンテナンス方法についても解説します。しっかりと手入れをすることで、マットの寿命が伸び、安心して使うことができます。

クローズドセルタイプ
シンプルな構造のクローズドセルタイプは、濡れた布で汚れを落とせばOK。バックパックの外にくくりつけて携行した際に土や砂が付着すると、スレによって表面の加工を傷めてしまうこともあるため、できるだけ綺麗にしておくのが、長く使うためのコツです。

エアーマットタイプ&インフレータブルタイプ
こちらも表面に関しては、汚れを落とすことで生地の劣化を防ぐことができます。

また、いずれのタイプも空気を入れて膨らませる仕様ですが、できれば息を吹き込むのではなく、ポンプや空気入れを使うのがベター。息には水分が含まれているため、内側に湿気が溜まることでカビが生えてしまったり、素材が劣化したりしてしまいます。

また、生地に穴が空いてしまったら専用のリペアキットで補修をしましょう。

インフレータータイプに関しては、内蔵されているスポンジの膨らみを維持するためにも、保管時はバルブを開けて空気を入れておくとよいでしょう。

寝心地を左右するテント用マット

テント、シュラフと合わせて、テント泊の三種の神器とも言えるテント用マット。質の高い睡眠は、翌日の山行のパフォーマンスを支える大切な要素です。

クローズドセル、エアーマット、インフレーターの、3つのタイプそれぞれの特徴をしっかりと理解し、ご自身の山行に合ったマットを選んでみてください。

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。

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