テントを手に入れ、周辺装備が整ったら実践。でも、はじめてのテント泊は不安もいっぱいなはず。「ちゃんと設営できるだろうか」「寒くないかな」と心配事が浮かんでくるでしょう。そこで、はじめてのテント泊に最適なテント場についてまとめてみました。実践する前の準備についても解説します。
「山小屋泊・テント泊を楽しむコツとスキル|初心者のための基礎知識」記事一覧
2022.12.30
YAMAP MAGAZINE 編集部
まずは、はじめてのテント泊でチェックしておきたい条件をご紹介します。テント装備を担いで登るのは、これまでの日帰り登山とは大違い。さらに天候の変化もある山での安全面も考慮したポイントをお届けします。
標高は1,000m前後。高くても2,000mまでが安心。加えて、テント場の周囲が森に囲まれている場所を選ぶといいでしょう。というのも、強い風が吹いても木々が風から守ってくれるから。アルプスのような見晴らしのいい場所では風や雨などの影響をダイレクトに受けてしまうので、テント泊に慣れてからが安心です。
テント泊の装備は、日帰り登山と比べて5kg以上も重くなります。もちろん携行するテントや寝袋のスペックによって変わりますが、これまでの登山よりも体への負荷が大きくなるのは当然。難なく歩けていたコースであっても、荷物が重くなることで行動時間が多く余計にかかってしまうことも。そのため、まずはアプローチが短いテント場にお試しで行ってみるといいでしょう。1〜2時間程度のコースタイムが安心です。
基本的にテント場は山小屋に併設されていますが、なかには山小屋がなかったり、営業期間外だったりするケースも。もしテントに不具合が起こったり、装備の不足があったりしたときなど、万が一のことを考えてエスケープできる山小屋が近くにあるといいでしょう。山小屋があれば食事をとることもできるので、その分装備を減らすことも可能です。
「樹林帯よりももっと高い山の上で泊まりたいな」と思うかもしれませんが、テントでの宿泊であれば早朝に出発してピークハントすることもできます。お試しテント泊に加えて、山頂も楽しめるのであれば一石二鳥。装備一式を背負って縦走したり、山の上のテント場に泊まるのは次のステップでチャレンジしてみましょう。
つづいて解説していくのは、事前準備。この準備がはじめてのテント泊を成功させるか否かを決めるといっても過言ではないでしょう。
はじめて使うテント。山の上で広げて、設営方法を確認していると、あっという間に夕方になってしまいますし、最悪足りない装備が…! という事態になることも。テントの設営が許可されている公園や河川敷、オートキャンプ場、家の庭などで手順と装備を確認し、スムーズにテントを立てられるようになっておきましょう。
出発する前に、忘れ物がないかチェック。一般的な装備に加え、行く山やルート、目的や好みに合わせて自分だけのチェックリストをつくっておくのがおすすめです。
▼参考記事
テント泊登山に必要な持ち物リスト|必需品と便利グッズで快適に
標高が100m上がるごとと気温は0.6度下がるため、標高の低い樹林帯の山であっても、普段暮らしている街とは気温や気候がガラッと変わります。天気予報はもちろん、山小屋のウェブサイトやSNSで状況を確認し、防寒着や雨対策などの準備をしておくと安心です。
インターネットや本などで情報収集するのも大切ですが、登山に詳しい先輩や一緒にはじめる仲間と情報交換をするのも必要。コミュニケーションそのものも山にまつわる楽しみのひとつです。
はじめてのテント泊に最適なテント場と事前準備を理解したところで、おすすめのロケーションをご紹介します。なかには登ったことのある山もあるかもしれません。できれば以前に行ったことのある山やルートの近くのテント場をセレクトするといいでしょう。「このルートは登りがゆるやかだからちょうどよさそう」「道は知っているから荷物が重くても大丈夫そう」など、不安要素が少なくテント泊に集中できます。
長野県川上村にある廻り目平キャンプ場。テント場は広大な芝生エリアと川沿の樹林エリアに大きく分けられ、周囲にはクライマーが集う奇岩群がそびえています。金峰山(2,599m)や瑞牆山(2,230m)への玄関口でもあり、翌日は山頂を目指して登山! ということも可能です。
秩父多摩甲斐国立公園にあり、金峰山と瑞牆山の登山基地として人気の富士見平小屋テント場。登山口からのコースタイムは50分ほどで、心地よい樹林帯のハイクを楽しめるのもポイント。フラットで広いテント場は、仲間と一緒にテントを張っても楽しく、すぐそばにある山小屋の売店では、オリジナル地ビールや鹿3種ソーセージなどの名物も。富士見平小屋のテント場を基点に金峰山や瑞牆山のピークハントも狙えます。
登山の入門ルートとして人気のある大菩薩嶺(2,056m)。その登山道の途中にあるのが山小舎 福ちゃん荘のテント場です。登山口となる上日川峠から福ちゃん荘までは約40分。雷岩から大菩薩峠までの尾根道からは富士山や南アルプスの山々が一望できる見晴らしの良さも魅力です。ほうとう、馬刺し、岩魚の塩焼きをはじめとする山グルメを福ちゃん荘で楽しむもよし、自炊するもよし。いろいろな楽しみ方ができます。
多摩川の水源があるのが笠取山(1,942m)。作場平登山口から笠取小屋までは2時間ほど。小屋までのルートは、急坂の一休坂(3.2km)と、緩やかなヤブ沢峠(3.7kmの)があり、標高差は500mほどあるため、装備を背負って登る感覚を掴むのにも最適。北アルプステント泊登山に向けての練習として訪れてみるといいでしょう。
八ヶ岳は山小屋が豊富に存在し、またテント場も充実しています。また、テント場のほとんどがアプローチのよい樹林帯に位置しており、テント泊の実践に加えてピークハントも楽しめるのがポイントです。
桜平駐車場から1時間20分ほど。はじめの30分は林道歩きで、その後オーレン小屋までの登山道も比較的緩やかで歩きやすく、八ヶ岳エリアではもっともおすすめ。こちらも天狗岳(2,646m)のほか、硫黄岳(2,760m)、赤岳(2,855m)などへの登頂を狙えます。オーレン小屋のヒノキ展望風呂「オーレン山の湯」は、1回1,000円で入浴可(※料金は2022年12月現在)。
麦草峠の駐車場からテント場(青苔荘、せいたいそう)までは15〜20分ほど。バスなどのアクセスも良好。テント場があるのは、日本一高い所にある湖として知られる「白駒池」の畔。苔の森を散策したり、湖を眺めながらのんびりと過ごしたりと、手軽に大自然を満喫できます。ピークハントなら、ニュウ(2,352m)や天狗岳(2,646m)など北八ヶ岳の山々へ。
登山口は渋の湯か唐沢鉱泉。黒百合ヒュッテまでのコースタイムは2~2時間半と少し長いため、テント泊装備を背負っての山行が心配なら余裕を持ってスタートするとよいでしょう。ヒュッテには手ぬぐいなどのかわいくておしゃれなオリジナルグッズがたくさん、ジョッキの生ビールが飲めるのも嬉しいポイント。天狗岳(2,646m)のピークハントと合わせて滞在するのがおすすめです。
赤岳鉱泉と行者小屋への所要時間は、どちらも美濃戸山荘から2時間ほど。樹林帯歩きが少し長くアップダウンもあるため、デイハイクや小屋泊の経験があると安心。硫黄岳や赤岳など南八ヶ岳の山々へのアクセスがよく、体力に自身があり、山も絶対登りたいのであればこれ以上ない選択肢になるでしょう。
立山三山(浄土山・雄山・別山)を眼前に望むキャンプサイト。室堂のバスターミナルからは1時間弱ほどの下り基調。アプローチが良好でありながら、3,000m峰の山々が織りなす雄大な景観を見られるのは雷鳥沢キャンプ場ならでは。テント場付近の施設「雷鳥沢ヒュッテ」と「ロッジ立山連峰」では、日帰り入浴が楽しめます。
北アルプスの入門ルートとして人気の中房温泉~燕岳。日本三大急登の一つ「合戦尾根」を経由するため、テント装備を背負って登るのはある程度の体力が求められますが、燕山荘(えんざんそう)のテント場からは槍ヶ岳や裏銀座方面の絶景を楽しめます。小屋泊登山などで訪れたことがあれば、はじめてのテント泊でもトライしてみる価値はあるでしょう。
事前の準備やリサーチをしておくだけで、現場に到着してからの「思っていたのと違う!」「装備が足りなかった」といった失敗のリスクはかなり軽減できます。また、失敗したとしても軽微なもので済めばOK。テント泊を楽しんでいる登山者はみんなかつては初心者でした。失敗を繰り返しながらレベルアップしてきているんです。少しずつ、自分だけの経験を高めていきましょう。