言わずと知れた日本一の山「富士山」。 「人生で一度は富士登山に」と思っている人も多いのではないでしょうか。この記事では、登山道開通期間に富士山に登ったYAMAPユーザー約9,000人の行動データを分析。そこから見えてきた、富士登山前に知っておきたい4つの事実をお伝えします。
2024.04.01
YAMAP MAGAZINE 編集部
※この記事は、『YAMAP 山登りベストコース』(株式会社ヤマップ著、KADOKAWA)内のコラムページ、「富士登山で知っておきたい4つの事実|5,000人の登山データから見えてきた行程選びのコツ」(P220-222)を2022年度の登山者データに更新し、写真、内容などを一部追記したものです。
登山者にも大人気の富士山には複数の登山道がありますが、中でも主要なのは「吉田ルート」「須走ルート」「御殿場ルート」「富士宮ルート」の4つ。それぞれ特徴があり、必要な登山技術や体力も違ってきます。ではこれらの中で、最も登山者に人気のルートはどこでしょうか?
次のイラストは、主要4ルートに関して、YAMAPユーザーの通過人数の割合を表現したものです。これを見ると4ルートのうちでも「吉田ルート(登山口標高約2,305m)」が一番人気。次いで「富士宮ルート(登山口標高約2,380m)」が多いことがわかります。
人気の理由は、首都圏からのアクセスの良さや山小屋などの施設の多さに加えて、登山口から山頂までの標高差にあります。「吉田ルート」と「富士宮ルート」は、登山口が標高2,000mを超え、「須走ルート(登山口標高約1,970m)」や「御殿場ルート(登山口標高約1,440m)」と比べて高い場所からスタートできるため、山頂までの標高差を小さく登れるのです。
また、「吉田ルート」の人気の理由は歩きやすさにもあります。2番目に人気の「富士宮ルート」は岩場が多いのに対し、「吉田ルート」は比較的傾斜角度が緩やかな登山道が整備され、さらに山小屋も最も多いため、富士登山ビギナーにおすすめのルートと言えるでしょう。
続いて主要4ルートについて、登山口からお鉢(山頂火口周縁部)に到着するまでの参考所要時間と距離を見てみましょう。
下の図の「登り」が示すように、富士宮ルートの236分が最短、御殿場ルートの468分が最長という結果に。この違いを生み出す要因は、登山口の標高と登山口からお鉢までの距離にあります。
先ほどもお伝えした通り、富士宮ルートの登山口は標高約2,380mであるのに対し、御殿場ルートの登山口は標高約1,440m。その差は940mにも及びます。また、歩行距離も富士宮ルートが約4.0kmであるのに対し、御殿場ルートは約9.2kmと2倍以上! この差が所要時間に影響しているのです。
ちなみに、下りはというと、最短が富士宮ルートの169分、最長が御殿場ルートの237分でした。
御殿場ルートは、距離と標高差共に最も大きなルートだけに健脚向きですが、だからこそ好んでこのルートを登る玄人が多いのも事実。 特に火山砂利をスピーディーに下る「大砂走り」は、エキサイティングな登山を楽しめるとあって、人気スポットとなっています。
ただし登山者、目印ともに少ないため道迷いにはくれぐれも注意。靴に火山砂利が入り込まないようにゲイターも必須です。
自分の体力や技術、装備を考えずに挑戦して、登山中に日暮れを迎えてしまった、という状況にならないよう、綿密な計画を立てましょう。
では、富士山に登るために、どういう予定を立てればいいのでしょうか? 山小屋に宿泊すべきか、それとも日帰りでも大丈夫なのか?
上記でもご紹介しているように、4つのメインルートの平均所要時間は、おおよそ7時間半~12時間(休憩や宿泊を除く)と、ルート次第では日帰りでも行けなくはない行程です。実際、YAMAPの活動日記を見ると、日帰りで富士登山に臨む人も多いようです。
しかし、気をつけてほしいのは、高山病や体力の問題。無理な登山は遭難や事故の危険性を高めることにも…。技術・体力・経験に自信がない方は、山小屋で1泊する計画を立てるようにしましょう。
山小屋に宿泊すると、満天の星や大空を染める日の出を拝められ、一層思い出深い登山になるはずです。事前予約を忘れずに!
最後にご紹介するのは、富士登山の開始時刻について。YAMAPユーザーの登山開始時刻で最も多かったのは午前7時台という結果でした。大半は5合目からスタートしており、日の出後に登り始める人が多いようですね。
早い時間に登山を開始すると、山頂でゆっくりと過ごせ、登山道渋滞(富士山では登山者の渋滞が発生することも…)に遭遇しても安心です。主に日帰り登山を予定している登山者が、早朝に出発していると推測されます。
一方、お昼の12〜13時頃にも小さな山がありますが、これは山小屋泊の登山者の一部がゆっくりと登り始めているためだと思われます。
中には、夕方以降に登山を開始している人も一定数いますが、日暮れ後の登山は危険がぐっと増します。基本は明るいうちの行動を心がけ、安全に留意するようにしましょう。
標高3,776mを誇り、日本一の山として多くの人を魅了する富士山。登山者ならば、一度は登ってみたい憧れの山です。登山道も整備されており、幅広い層の方が富士山を訪れていますが、気軽に誰でも登れる山ではありませんので、くれぐれも注意を怠らないように心がけましょう。
まずは、高山病や遭難・事故のリスクをきちんと把握し、無理な登山は行わないようにすること。そして、天気予報もきちんとチェックしておきましょう。
富士山の登山道は標高が高く、強い日差しや雨風を遮るものがないので、熱中症や天候悪化による低体温症にかかる恐れがあります。しっかりと装備を揃え登山計画を立て、体調管理をした上で、挑戦するのがおすすめです。
本記事の初出『No.1登山アプリのユーザーの声から生まれた YAMAP山登りベストコース 関東周辺版』(著:株式会社ヤマップ、KADOKAWA、2022年7月発売)は第5刷も決定。ぜひ合わせてご覧ください!
※このコラムに掲載の各種数値はYAMAPユーザーの登山DATAを分析して求めたものです。そのため、登山者全体の傾向とは若干異なる場合があります。
登山にあたり、命を守るために身につけておくべき装備・道具や、知っておくべき知識・技術は色々ありますが、登山保険もぜひ入っておきたい、大事な備えのひとつ。
YAMAPグループの「外あそびレジャー保険」は、いざ遭難救助が必要になったときの高額費用や、部位・症状別のケガの補償をしてくれるだけでなく、登山以外での外遊びや日常のケガの補償もしてくれます。
また、遭難・行方不明時には、同じ山に登っていたYAMAPユーザーから目撃情報を募ることができるサービスも提供。
期間は7日から選べるので、単発での山行にも対応。登山や海・川でのアクティビティによく行く方にも便利な保険です。
TOP画像=PIXTA