日本百名山で最も標高が低い山として有名な筑波山(877m)。関東では古くから「東の筑波、西の富士」と親しまれてきました。関東平野を一望できる山頂からの景色はもちろん、春のツツジや秋の紅葉が美しいことでも知られる名峰です。
未経験・初心者はもちろん、友人・知人を連れていきたい経験者におすすめのコースについて、人気登山ガイドの上田洋平さんが厳選して解説します。
2023.06.20
上田洋平
登山ガイド
①標高1,000mに満たない、日本百名山で最も低い山で、レベルに合ったコースが複数ある
②霞ヶ浦、太平洋、そして関東平野を取り囲む山々を一望できる
③トイレや売店、近隣の温泉が充実している
登山コースが複数あり、初心者から上級者まで楽しめるのが筑波山。ロープウェイやリフトもあるため、体力に自信がない大人や子どもでも気軽に山頂まで行けます。
日本百名山でありながらも、国内屈指の人気を誇る高尾山のように混雑しないので、山頂からゆったりと景色を楽しめるのも特徴。各登山口や山頂付近にトイレや売店があり、初心者が不便な思いをして、山から遠ざかってしまう心配もありません。
しかし、筑波山は山頂へのコースが四方に伸びており、地元以外の人にはどの道がいいのか、わかりづらいことも。そこで、登山ガイドの上田洋平さんに、魅力別に3コースに絞って紹介していただきました。
①車で一番高い登山口から山頂を目指せるので、標高差が少ない
②体力が不安な場合に、ロープウェイで戻れる
③男体山山頂(871m)から関東平野を一望できる
体力度:1(5段階中)
コースタイム:約3時間
歩行距:4.7km
累積標高差(上り):539m
累積標高差(下り):539m
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登山口のつつじヶ丘の標高は530m。車やバスで行ける一番高い場所から山頂を目指せるコース。つつじヶ丘にはトイレや売店があるため、登山前の準備も安心です。
ガマの像がある登山口から登山道へ入り、しばらくおたつ石コースを登って振り返ると展望が開けます。
さらに進んだ弁慶茶屋跡からは、白雲橋(しらくもばし)コースと合流。合流後は弁慶七戻り、出船入船、北斗岩、屏風岩、大仏岩、ガマ石などの奇岩群が続き、飽きることなく登れます。
山頂が近くなると岩場・鎖場が出てきますが、足元はしっかりしているので注意して進みましょう。
山頂近くで南側へ進路を変えて社を過ぎれば筑波山の最高峰、女体山山頂(877m)に到着。
関東平野から霞ヶ浦まで間近に望める女体山の山頂部分は狭く、週末は混雑しているので、すれ違いで転落しないように注意が必要です。
展望を楽しんだ後は御幸ヶ原まで進めば、売店、レストラン、茶屋が立ち並び、観光客の歓声が行き交う絶好の休憩ポイントです。
バーナーを使う場合、使用許可エリアのロープ内で行いましょう。筑波山ではその他のエリアではバーナーは使えないので注意して下さい。
休憩した後は双耳峰のもう一方、男体山を目指します。岩場や鉄階段を登り、社が見えると男体山山頂(871m)です。社の奥には展望スポットがあり、再び関東平野を見下ろせます。
下りは往路を戻ります。御幸ヶ原を過ぎ、女体山から先の岩場の下りは登りより難易度が上がります。頂上に着いた時点で体力に不安のある方は、ロープウェイで女体山駅からスタート地点のつつじヶ丘駅に戻りましょう。
登山口の筑波山ロープウェイつつじヶ丘駅にトイレがあります。登山道途中にはトイレはありませんが、御幸ヶ原の山頂部にもトイレはあり、安心です。
①豊かな森や奇岩群をながめ、じっくり登れる
②木道が整備された御幸ヶ原コースが快適
③下りも歩きやすい
体力度:2(5段階中)
コースタイム:約4時間
歩行距離:5.5km
累積標高差(上り):739m
累積標高差(下り):738m
筑波山神社を起点とし、豊かな森や奇岩群を楽しみ、歩きやすいルートを下るコース。筑波山神社から白雲橋(しらくもばし)コースへ入ります。
約20分程度進むと迎場(むかえば)コースとの分岐である酒迎場に着くので、左の白雲橋コースに進路を取り、巨木が多い樹林帯を進みます。
弁慶茶屋跡から男体山山頂までは「コース①」と同じルートをたどります。
男体山山頂から御幸ヶ原に戻ったら、筑波山ケーブルカー筑波山頂駅の脇にある道から御幸ヶ原コースを下ります。
御幸ヶ原コースは木段の整備された歩きやすい道です。20分ほど下ると岩の間から湧き水が出る男女川(みなのがわ)源流の湧水に到着します。
さらに下ると中の茶屋跡に到着します。近くにはケーブルカーのすれ違いポイントがあり、カメラを構える登山者を見ることができるかもしれません。
段々と傾斜が緩やかになり、山麓にある筑波山ケーブルカーの宮脇駅を右手に見ることができればゴールの筑波山神社はまもなく。
登山口周辺では、筑波山神社入口バス停や筑波山神社、筑波山ケーブルカー宮脇駅にトイレがあります。山頂部の御幸ヶ原にトイレがありますが、登山道途中にはトイレはありません。
①電車・バスとマイカー利用にも対応できる縦走コース
②関東平野を見下ろせる絶景の御幸ヶ原や男体山、女体山を経由
体力度: 2(5段階中)
コースタイム:約3時間20分
歩行距離:5.3km
累積標高差(上り):779m
累積標高差(下り):464m
上りは御幸ヶ原コース、下りはおたつ石コースを使う縦走ルート。帰りは下山口のつつじヶ丘からバスで登山口の筑波山神社やつくば駅まで戻れるため、電車・バスの場合、マイカーの場合の両方に対応できる縦走コースです。
筑波山神社入口から鳥居をくぐって参道を進み筑波山神社へ。本殿前から左手側に進み、山麓の筑波山ケーブルカー宮脇駅が左手に見えたころから登山道が始まります。
最初は緩やかな傾斜ですが、途中から急坂になってきます。神社からおよそ40分登れば、東屋のある中ノ茶屋跡に到着。
木段の多い道をさらに進むと、平坦で開けた場所である男女川(みなのがわ)源流に着きます。
ここから先はさらに傾斜が強まり、ひたすら木段を登れば観光客で賑やかな御幸ヶ原に到着。売店、レストラン、茶屋、トイレがあるので休憩して一息つきましょう。
御幸ヶ原から先は「コース①」と同じく、男体山、女体山へ登り、奇岩群のおたつ石コースを下り、下山口のつつじヶ丘まで下ります。
弁慶茶屋跡では白雲橋コースとの分岐があるので、左側のおたつ石コースへ進んで下れば、筑波山ロープウェイつつじヶ丘駅があるつつじヶ丘へと下山できます。
登山口周辺では、筑波山神社入口バス停や筑波山神社、筑波山ケーブルカー宮脇駅にトイレがあります。山頂部の御幸ヶ原にトイレがありますが、登山道途中にはトイレはないので、注意してください。
おたつ石コースと白雲橋コースが合流するポイント。新しいおしゃれな東屋「BENKEI HUT」が2023年春にオープンしています。
山頂付近の広大で平坦な広場。筑波山ケーブルカー筑波山頂駅があるため、観光客でにぎやかです。バーナーは決められたバーナースペースでのみ使用可能。
御幸ヶ原コースにある平坦な場所。2023年春までに真新しい東屋「MINANO HUT」がオープンし、ゆったりと休めるようになりました。
御幸ヶ原コース途中にあり、湧水が出ています。
山頂近くの御幸ヶ原には売店、レストラン、茶屋があり、自販機も設置されています。
筑波山のご当地グルメである「つくばうどん」。筑波山頂の茶屋や筑波山神社前の仲見世など各店で提供されているご当地うどんです。
つ・・・筑波地鶏の「つ」くね
く・・・ごぼう、しいたけなどの「く」ろ野菜
ば・・・茨城産ローズポークの「ば」ら肉
これらの具材に、霞ヶ浦特産のレンコンを練りこんだうどんを使用した「つくば」が盛り沢山な一品。筑波山を登山した際には、是非つくばうどんを食べてみてください。
筑波山の良さは登山後に立ち寄れる温泉が多いこと。お風呂で山の汗を流せば、最高の休日が出来上がります。
パノラマ露天風呂“雲上の湯”からは、茨城の温泉ナンバー1の絶景が楽しめます。 日帰り入浴の場合、正午〜午後3時までの利用となるのでご注意ください。
詳細はこちら:公式サイトを見る
宿泊もできる施設ですが、ランチコースや温泉を日帰りでも楽しめます。日帰り温泉の受付は午後2時までなので注意が必要です。
詳細はこちら:公式サイトを見る
2023年春にリニューアルオープン。食事処もあり、営業時間は土祝前日午前10時~午後9時、平日午前10時~午後7時。温泉と食事の両方を満喫できます。
詳細はこちら:公式サイトを見る
*営業時間は2023年5月末時点です。公式サイトなどで事前にご確認ください。
つくばエクスプレスの場合は、秋葉原駅〜つくば駅間で最速45分。つくば駅から登山口までは、直行筑波山シャトルバスを利用。筑波山神社入口まで40分〜つつじヶ丘まで15分。
JR常磐線の場合は、JR上野駅~土浦駅間で、特急約45分、普通約70分。土浦駅からは路線バスで、沼田まで約50分。沼田で下車し、直行筑波山シャトルバスに乗り換え。筑波山神社入口まで10分、つつじヶ丘までさらに15分。
車の場合は、常磐自動車道の土浦北IC、北関東自動車道(桜川筑西IC)からそれぞれ約40分。
駐車場は、市営筑波山駐車場(第1〜第4、有料)ほか、ロープウェイの麓駅にあるつつじヶ丘駐車場(有料)。そのほか、民間の駐車場が周辺に点在しています。
アクセスや駐車場の情報の詳細はこちら:つくば市公式サイトを見る
筑波山を登る際には、以下のような装備が必要です。
登山靴:
筑波山を登る時はスニーカーでも大丈夫ですが、ソールが滑りにくいことをチェックして下さい。
●登山靴について詳しく知る:足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう
服装:
季節に応じた防寒・防水・通気性のある服装を用意しましょう。
肌着には速乾性の高いものを。急な天候変化に備えて、防風・防水のレインウェアも必要です。
●服装のレイヤリングについて詳しく知る:基本6アイテムを活用した、1日のシーン別レイヤリングをご紹介|登山装備のチェックリスト
ザック(バックパック):
水や食料、着替えなど必要なものを入れるためのザック(バックパック)。雨の日で無ければ、ご自身が持っている旅行用のリュックサックでも良いでしょう。
●ザック(バックパック)について詳しく知る:登山用バックパックの選び方を徹底解説|「どれがいいかわからない」に終止符を
水筒:
季節にもよりますが、1L程度を準備しましょう。筑波山では山頂で飲み物を購入できますので、下りに足りない分は補充するようにしましょう。
●水筒について詳しく知る:登山用水筒(ボトル)を3タイプで解説|自分にぴったりな一本を見つけよう【山登り初心者の基礎知識】
行動食:
エネルギー補給のために、栄養価の高い軽量な食料を用意しましょう。ドライフルーツ、ナッツ、チョコレート、スポーツドリンクなどが適しています。
●行動食について詳しく知る:山でバテない行動食の選び方とポイント|山のお悩み相談室 Vol.2
GPSアプリ・地図:
道迷いしないように、登山GPS地図アプリ「YAMAP」と地図をインストールしたスマートフォンで、事前にコースを確認しておくことも重要。GPSアプリを使う場合、バッテリーが減った場合に備えてモバイルバッテリー(容量10000mAh程度)も用意しましょう。
●登山地図GPSアプリについて詳しく知る:登山地図GPSアプリの活用法をガイドが解説【山登り初心者の基礎知識】
ヘッドライト:
日帰り登山であっても、怪我などのトラブルがあった場合、予定通り下山できずに日没を迎える可能性があります。その場合にそなえ、ヘッドライトを準備して下さい。
●ヘッドライトについて詳しく知る:登山用ヘッドライトの選び方|日帰り登山でも必要なアウトドアの必需品【山登り初心者の基礎知識】
あると便利なもの:
手袋、帽子、サングラス、日焼け止め、ストック、防虫スプレー、タオル、救急セットなど、そのときの天気などに応じて用意しましょう。
●手袋について詳しく知る:登山用グローブの悩みを解消! 理想の一双が見つかる選び方を徹底解説
●サングラスについて詳しく知る:目の日焼けが体力を奪う原因に! 登山の紫外線対策に必須のサングラスを正しく選ぼう
事前にしっかりと準備し、安全に登山を楽しんでください。
装備について詳しく知る:「まず揃えたい山道具の基本6アイテム|登山装備のチェックリスト」
執筆・写真協力:登山ガイド・上田洋平