秋は山も美しく色づき気候も涼しくなる、絶好の登山シーズン。しかし、昼間に夏のような暑さを感じても、朝夕はグッと冷え込むこともあり、最適なウェアを選ぶのが難しい季節でもあります。そんな寒暖差が激しい秋から初冬のウェア選びについて、ミレーの4種類のサーマルウェア(保温着)を例にご紹介しましょう。
2023.09.14
大関直樹
フリーライター
秋山を快適に歩くためのウェア選びのポイントは、汗をかかないことです。冷え込みから身体を守る寒さ対策も確かに大切ですが、着込み過ぎて汗をかくのはNG。汗冷えは低体温症の原因になるだけでなく、筋肉が固まって転倒のリスクも高くなります。そこで重要になるのが、通気性に優れながらも保温力のあるサーマルレイヤー(保温着)なのです。
一般的に秋から初冬にかけてのレイヤリングは、次の4つのアイテムを基本にチョイスします。
肌寒い時期のレイヤリングアイテムと役割
アンダーウェア | 汗を吸い上げる |
ベースレイヤー | 汗を拡散し、蒸発させる |
サーマルレイヤー | 通気に優れ、保温力がある |
シェル | 雨や風を防ぎ、蒸れを逃がす |
秋から初冬のシェルは防風・防水の機能があればOKです。一般に冬山用として販売されている中綿が入った保温性の高いものは、あくまで厳冬期に重宝するアイテム。それ以前の秋〜初冬の登山においては、レインウェアで十分。保温に関しては、サーマルレイヤーで調節しましょう。
ただし、肌寒いからといって厚手のサーマルレイヤーを選ぶと、歩き出しで汗をかき、汗冷え・低体温症のリスクを招いてしまうので要注意。サーマルウェアを選ぶ際は、保温力と通気性を念頭に、きちんと選ぶことが大切なのです。
今シーズンのミレーは、保温力と通気性によってチョイスできる4種類のサーマルレイヤーをリリース。この中から自分の登山スタイルに合ったものを選ぶと、きっと秋冬の登山がもっと快適になるはずです。
ここからは、各モデルを詳しくレビューしていきましょう。登山ガイドさんなどの着用レビューもぜひ参考にしてみてください。
表生地と裏生地を取り去って、中綿をそのまま着るという斬新なサーマルレイヤー。
メッシュを起毛させたオリジナル素材「スルーウォーム」は、非常に高い通気性と吸汗性を備えているので、激しいハイクアップで体温が上昇しても、熱や湿気を素早く放出してくれます。
もうひとつの特徴は、保温力が一般的なサーマルレイヤーと同等レベルでありながら、190gという驚くほどの軽さを実現していること。バックパックにもコンパクトに収納できるので、荷物が多くなりがちな秋冬登山では、とても重宝します。
「最初に手に取ったときは、軽くて生地が透けていたので『これ、本当に温かいのかな?』と思いました。でも、実際に着てみたら、想像以上に暖かったです。しかも、通気性が高く汗ヌケもいいので、体を動かしてもムレることがないんですよね。肌触りもすごく滑らかで、着ているだけで気持ちがいいです!」
「フードがバラクラバになっている点も気に入っています。寒いときにさっと被ると、すごく暖かいですし、フードの上からヘルメットや帽子も着用できます。また、首の部分もしっかり保温してくれるので、ネックウォーマーを持っていく必要もありません」
▼トレイルランナー渡邉ゆかりさんのおすすめレイヤリング
ドライナミックメッシュ+スルーウォームフーディ+コールドフロントバリヤー
「スルーウォームフーディは、フードにボリュームがあるので、上に着るならクルーネックのコールドフロントバリヤーがおすすめです。両方とも、とても軽量なので軽快に歩くことができます。先日、尾瀬にハイキングに行ったときは、朝の寒い時間帯にはコールドフロントバリヤーを着て、日中暖かくなってきたタイミングで脱ぐようにしました」
「個人的には、モコモコした可愛らしいデザインも気に入ってます(笑)。だから、私はフィールドだけじゃなくて、街着としても着ているんですよ。家を出るときはスルーウォーム1枚で、山でも着続けてそのまま家に帰っています。山も街もシームレスで着られるのも魅力かなと思っています」
リリースから3シーズン目を迎えたミレーの中でも人気のサーマルレイヤー。
極細のメリノウールを70%含む生地を、サイドに縫い目のない筒状に編み上げたことで、非常に柔らかい肌触りなのが特徴です。しかも生地の表面には凹凸のあるワッフル起毛が施されているので通気性も高く、汗抜けがよい仕上がり。また、背中や脇、口元などの汗をかく部分は編み方を変えることで、より一層の汗抜けと動きやすさを実現しています。ウールは、耐久性に劣るというデメリットがありますが、ナイロンを混紡することで、その弱点を克服。使い続けてもピリング(毛玉)も起きにくくなっています。
「初めてワッフルウールフーディを着たときは、とても柔らかくて動きやすいなという印象でした。フードのフィット感も良く、頭をすっぽり包み込んでくれるので、寒い日でも本当に暖かいんですよ。また、スリムフィットなので、傍から見ると薄着に見えますが、全然寒さを感じません」
「自分は、ウール素材特有のチクチクした肌触りが気になることがあるのですが、この製品は直接ベースレイヤーとして着ても、全然チクチクしないんですよ。その点もうれしかったですね。しばらく着用して感じたのは、適度な保温性、動きを妨げない柔軟性、そして通気性のバランスの取れたサーマルレイヤーだということです」
▼登山ガイド横山秀和さんのおすすめレイヤリング
ドライナミック+ワッフルウールフーディ+ティフォンウォーム
「夏以外の3シーズンは、ワッフルフーディを中心にレイヤリングを考えています。保温性がありながら、パフォーマンスを妨げることのない柔軟性もあるので、どんなアクティビティにも対応できます。自分の場合は、登山以外にウィンタースポーツのインナーとしてもかなり使っていますが、フードがバラクラバタイプなのでネックウォーマーが要らないんですよ。首元がスッキリとして動きやすいのもうれしいですね」
汗を素早く吸収して拡散させる機能に優れたカットソー。
ファストハイクやトレランなど運動量の大きなアクティビティには、最適なサーマルレイヤーです。肌面には、水分を弾くポリプロピレンを立体のグリッド状に配置。汗を急速に吸い上げてくれるので、肌は常にドライな状態をキープできます。さらに表面のポリエステルが吸い上げた汗を拡散してくれる仕組みになっています。1枚でも十分な吸水速乾性がありますが、汗かきの人はミレーのドライナミックメッシュと組み合わせることで、さらにその効果を実感できるでしょう。
「ドライグリッドフーディは、軽くて伸縮性があるので、動きやすいサーマルレイヤーです。肌触りも良いので、着心地が抜群なんですよ。機能面としては、生地の肌面が水を含まない素材で、表面は速乾性に優れた素材というハイブリッド構造になっているため、ドライ感がとても優れているなと感じています」
「とくにトレイルランニングやファストハイクなど、運動量の多いアクティビティの際に着用するのがおすすめです。激しく動いて汗ばんでしまうような状況でも、熱がこもって暑くなったりすることが少ないですし、ちょっと肌寒いと感じたときに羽織って使うこともできます」
▼スカイランナー遠藤健太さんのおすすめレイヤリング
ドライナミック+ベースレイヤー(半袖Tシャツ)+ドライグリッド
「汗をかいても、まずドライナミックのメッシュ構造が汗を吸引してベースレイヤーに素早く運んでくれます。さらに、ベースレイヤーで拡散された汗がドライグリッドによって外側へ誘導されることで最大限の汗処理効果が発揮されます。秋冬の中〜低山で激しい運動をするなら、このレイヤリングがおすすめです」
「スタイリッシュなデザインと落ち着いたカラーも個人的に気に入っています。山での行動中はもちろん、家から登山口に向かう際の移動着や街着としても使えますよ!」
通気性と保温性を両立させる高機能素材として、最近注目を集めている「ポーラテックアルファ」。その性能を最大限活かすために、通気性のあるメッシュ生地で挟み込んだサーマルレイヤーです。
薄手でストレッチ性に優れているため、着心地も抜群。タウンユースとしても着回せるデザインなので、家を出るときに着込み、そのまま登山中も着続けることもできます。さらに気温や天候に合わせてインサレーションやアウターと組み合わせることで、レイヤリングをカスタマイズできる汎用性の高さも魅力です。
「街からフィールドまで幅広いエリア、そして幅広い季節で着用できる有り難い一着です。一言で言うなら『快適な着心地と優れた保温性と通気性を兼ね揃えたサーマルウェア』ですね」
「フィールドではハードな雪山でもサーマルウェアとしての威力を発揮してくれますが、個人的には秋・冬・春先の2,000m前後の山でハイキングや登山に使うことが多いです。そのくらいの標高まででしたら、ドライナミックメッシュの上にアルファライトスウェットⅡを着るだけで事が足りるので本当に便利です」
▼登山ガイド杉本龍郎さんのおすすめレイヤリング
ドライナミック+ベースレイヤー(キャスター)+アルファ ライト スウェット II+ブリーズバリヤー トイ
「このレイヤリングは、標高が高い2,500m~3,000mの山域で威力を発揮します。例えば奥秩父の金峰山、八ヶ岳の赤岳、天狗岳、南アルプスの鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳などですね。ただし、全てレイヤリングすると結構暖かいので、急な登りや風が抜けない樹林帯などでは、ブリーズバリヤー トイを脱いだほうがいいでしょう。また、雨や雪の場合は、一番外側には防水素材のハードシェルがいいと思いますが、それ以外の天候なら、このレイヤリングで対応できると思います」
「個人的には、秋冬の時期に街で着ることも多いですね。僕が住んでいる山梨の山間部は、標高600m以上なのですが、本当に重宝しています。着心地が抜群に良くて生地が軽いのにも関わらず温かい。デザインがカッコ良いのでどこでも着て行けるのもうれしいですね」
以上、ミレーの個性的な4つのサーマルレイヤーは、いかがでしたでしょうか。どのウェアも、それぞれ特徴がはっきりしているので、自分の山行スタイルや季節によって選ぶことができると思います。今回紹介したアイテムは、ミレー直販サイトのほか、全国の石井スポーツや好日山荘などのアウトドアショップで販売されていますので、ぜひ、手に取ってチェックしてみてください!
原稿:大関直樹
撮影:永易量行
協力:ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン