茨城県の県北エリア6市町の豊かな自然と里山暮らしの文化を感じながら歩くことのできる「常陸国(ひたちのくに)ロングトレイル」。2020年から地域住民やボランティア、行政が一体となって整備を進め、今年の3月には水沼ダム周辺など新たに約114kmのコースが開通。これによって全長約320kmのうち、約200kmの整備が完了しました。
今回は、その中でも登山ビギナーの方にも歩きやすく、海の幸もたっぷりと味わえるオススメの山旅を登山系YouTuber・モデルの山下舞弓さんと一緒にご紹介します。
2024年10月から始まる「常陸国ロングトレイル デジタルバッジキャンペーン」の対象エリアにもなるので、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
〜茨城県県北振興局にて、Instagram投稿キャンペーン開催中〜
常陸国ロングトレイルを歩き、Instagramに投稿していただいた方に、「常陸牛」、「常陸の輝き」を抽選で各1名にプレゼントするキャンペーンを2024年7月21日(日)まで開催中。
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2024.05.16
大関直樹
フリーライター
「常陸国(ひたちのくに)ロングトレイル」は、日本にある50以上のロングトレイルの中でも、500m前後の低山歩きがメインなのが大きな特徴です。そのため、山と里の距離が近く、自然だけでなく地域の文化にも触れられる楽しさがあります。
そんな常陸国ロングトレイルの魅力を5つにまとめてみました。
1.標高が低いにもかかわらず、大展望、滝など豊かな山の表情を楽しめる
2.スタート&ゴールを自分で自由に設定できる
3.常陸国風土記の時代からの神社など、多くの歴史スポットが残っている
4.里と山をつなげながら歩くことで、人里の日常と山の非日常を体感できる
5.山麓は地域色豊かな特産品グルメが目白押し。下山後のお楽しみもたっぷり
自然も、文化も、グルメも、欲張りに楽しみたいという人には、本当におすすめのトレイル。実際にトレイルを歩いた人も、2022年は約1万人だったのが、2023年は約4万人と4倍に増えています。
常陸国ロングトレイルは、スタートやゴールが決まっているわけではありません。自分の興味あるスポットや体力、登山後のグルメなどをチェックしながら、自由にルートを設定できます。
今回紹介するルートに加えて、これまでに紹介したものを一覧にしてみました。なお、アクセスに公共交通機関を使う場合、電車やバスの本数が少ないため、事前に調べておく必要があるので注意しましょう。
常陸国ロングトレイルのエリア図
コース概要 | 歩行時間 | レベル | 見どころ | グルメ | |
1 | 御岩神社~高鈴山 | 約2時間30分 | 初級 | 日本最強のパワスポ、2つの山頂からの大展望 | 日立市の海鮮 |
2 | マウントあかね~水沼ダム | 約2時間20分 | 初級 | ダムの眺望、木漏れ日の樹林帯歩き | 北茨城市の海鮮 |
3 | 竪破山~土岳
紹介記事はこちら |
約3時間30分 | 初級 | 奇岩の太刀割岩、竪破山の大展望 | 高萩市の味噌 |
4 | おかめ山~西金砂神社
紹介記事はこちら |
約5時間40分 | 中級 | 地割の絶景、おかめ山からの大展望 | 常陸太田市のフルーツ |
5 | 生瀬富士~袋田の滝
紹介記事はこちら |
約5時間 | 中級 | ジャンダルムの絶景、袋田の滝 | 大子町の奥久慈しゃも |
それでは、今回は1泊2日で御岩神社~高鈴山、マウントあかね~水沼ダムの2つのルートを周るモデルコースを紹介します。
どちらもコースタイムが約2時間20分〜30分と短く、登山初心者の方でも気軽に歩くことができます。また、下山後には新鮮な魚介を使った海鮮グルメが待っているのもお楽しみです!
東京駅から特急を使って約1時間30分でJR日立駅に到着。
まずは、遅めの朝ご飯を食べに、駅に直結した「シーバーズカフェ」へ。太平洋が一望出来る絶景カフェは、海の上に浮いているようで、抜群のオーシャンビューが楽しめます。ここのおすすめは、オリジナルパンケーキ。ふわとろのスクランブルエッグと甘じょっぱいパンケーキは、絶妙のコンビネーションです。
「ロケーションも料理も、とても素敵です!朝7時から営業しているので、早朝に日立駅に到着しても立ち寄ることができますよ」(山下さん)
シーバーズカフェ
定休日:無休
営業時間:7:00~22:00(ラストオーダー 21:00)
http://seabirdscafe.com/
JR日立駅でレンタカーを借りて、トレイルヘッドである御岩神社に向かいますが、その前にちょっと寄り道。
山の上で食べる昼食を購入するため、地元で評判のおにぎり屋さん「やまがた屋」へ。お米屋さんが経営しているだけあって、ふんわり&もっちりとしたおにぎりは、遠くから買いに来る人もいるほど。売り切れることも多いので、早めの来店がおすすめです。
やまがた屋
定休日:毎週木曜(月2回水曜・木曜連休)
営業時間:8:30~17:30
http://www.onigiriya.co.jp/
常陸国最古の霊山と言われている御岩山(おいわやま・標高530m)の麓に鎮座するのが「御岩神社」。「日本最強クラス」との呼び声も高いパワースポットだけあって、高い杉の木が立ち並ぶ入り口から荘厳な空気が漂っています。
楼門をくぐり、御神橋を渡ると御岩神社の社殿に到着。この神社の主祭神は、国常立神(くにのとこたちのかみ)、大国主神(おおくにぬし)、伊邪那美神(いざなみのみこと)ほか、26柱の神様が、御岩山全体では188柱の神々が祀られております。これは日本の神社の中でも大変珍しいもの。ここからは、茨城県庁でインバウンド対応などのお仕事をしているイギリス人のコン・ソフィーさんにも同行いただきました。
「常陸国ロングトレイルは中東にあるヨルダントレイルともパートナーシップ協定を結んでいて、海外向けのPRにも取り組んでいます。私の友人にもこのトレイルが好きな人が多いですよ。」(ソフィーさん)
登山道から数分で、白亜紀(約1億年前)とカンブリア紀(約5億年前)の境界に到着。
「橋を渡っただけで4億年を飛び越えたことになりますが、実感はありません(笑)」(山下さん)
歩きだしてから約1時間で、御岩山の山頂に到着です。見渡す限りの大展望がごちそうで、那須連山のほか、遠くには太平洋が望めました!
ここで正午になりましたが、御岩山は山自体がご神体なので食事が禁止されています。そこで、もう40分歩いて、高鈴山を目指すことにします。
「ここからは常陸国ロングトレイルのコースが一望できるんですね!今度はあそこを歩いてみたいな」(山下さん)
日立アルプスのひとつである「高鈴山」(たかすずやま)は、標高623mで日立市最高峰。
山頂は、広々としておりベンチがたくさんあるので、昼食を食べながらゆっくりできます。また、御岩山に負けないほどの大パノラマが広がり、太平洋から筑波山、那須連山、阿武隈山地などの眺望が楽しめるんです。
「今回のコースは、道がすごく整備されているので歩きやすかったです。とくに御岩山から高鈴山までの尾根歩きが気持ちいいですね。また、登山道のあちこちに神様が祀られているもの、神聖な気持ちになりました。常陸国ロングトレイルのどこを歩こうかと迷っている方には、ファーストコースとしておすすめです」(山下さん)
高鈴山で展望を思う存分楽しんだら御岩神社まで戻って、クルマで今夜の宿&明日のトレイルヘッドであるマウントあかねに向かいます。その途中で、とても美味しい和菓子屋さんがあると、地元の方に教えていただいたので立ち寄ってみました!
日立市で1948年に創業した老舗和菓子店が「菓匠風月」(かしょうふうげつ)。栗蒸し羊羹「万羊羹」(まんようかん)をはじめ、どら焼き、かまくら大福などが人気。ひとつひとつのお菓子が、すべて職人さんの手作りなので、本当に美味しいです。
「トレイルを歩くときの行動食にもおすすめですね!」(山下さん)
菓匠風月
定休日:火曜日
営業時間:8:00〜18:30
https://www.kasho-fugetsu.net/
2023年にリニューアルオープンした全室オーシャンビューの宿泊施設「マウントあかね」。リーズナブルな料金ながら、全10部屋の客室からの眺めは素晴らしいです。食事も地元産の海の幸と山の幸をふんだんに使ったもので、宿泊者から大好評だそう。
公共の宿 マウントあかね
宿泊料金:(1泊2食):10,900円~
https://www.mountakane.com/
2日目は、マウントあかねをスタートして、新しく開通したトレイルを約2.8km歩き、「水沼ダム」まで向かいます。トレイルの入り口には、案内プレートがあるので迷うことはありません。
旧林道から再び山道に入ると20分ほどは、なだらかな尾根歩き。途中で樹木の間から展望を楽しめるところも、いくつかあります。
目的地の水沼ダムに到着したら、往路を戻ります。水沼ダムの管理事務所では、トイレを借りられるほか、ダムカードの配布も行っています。
このコースは、今年の3月にボランティアの方などの尽力で開通したものですが、多くの人が利用すると道が踏み固められて、さらに歩きやすくなります。読者のみなさんも新しい道を歩くことで、常陸国ロングトレイルの整備に協力してみませんか。
「始めは旧林道をのんびり歩く感じでしたが、最後の30分の下りが冒険感満載で楽しかったですね。ダムの裏側に降りるというのも初めての経験だったので、面白かったです」(山下さん)
水沼ダムからはクルマで北茨城市街へ。海鮮料理の「太信」(だいしん)は、オーナーが大津港や勿来港(なこそこう)で水揚げされた魚を直接買い上げる海鮮卸問屋を経営。だから、いつでもとれたての新鮮な魚介類が食べられます。
おすすめは、旬の魚介をたっぷり使ったプレミア海鮮丼(2,280円)やあんこうをカリッと揚げて卵とじにしたあんこ~る丼(1,050円)です。
食彩 太信
定休日:水曜日
営業時間:月~土曜日 11:30~14:00、17:00~21:00(ラストオーダー20:30)、日曜日 11:30~14:00
https://syokusai-daishin.com/
食彩太信から、クルマで5分のところにあるのが、北茨城の新鮮な魚介類を豊富に取り揃えている「松野屋」。海産物のお土産を買うなら、ここがおすすめ! 鮮度抜群&リーズナブルなものがいっぱいなので、目移りしてしまうほど。
人気の商品は、大津港でとれたメヒカリ、ヤナギカレイ、釜揚げシラスとのことでした! 生魚だけでなく冷凍したものもあるので持ち帰りも心配ありません。
松野屋
定休日:水曜日(祝日の場合は要問合せ)
営業時間:9:00~18:00
Webサイトなし
「六角堂」は、近代日本美術の発展に貢献した岡倉天心が自ら設計した六角形の建築物。「関東の松島」ともいわれている景勝地・五浦海岸(いづらかいがん)の中でも優れた景観を呈するところに建っています。
敷地内には彼の邸宅などもあり、縁側に座って波の音を聞いていると心が休まります。
六角堂(茨城大学五浦美術文化研究所)
定休日:原則月曜日(要ホームページ確認)
営業時間:8:30~17:30(入場は閉館時間の30分前まで、10・2・3月は17:00閉館、11~1月は16:30閉館)
https://rokkakudo.izura.ibaraki.ac.jp/
『グランピングヴィレッジIBARAKI』の敷地内にある日帰り入浴施設が「湯かっぺ」。
2階の浴室からは、太平洋が一望できるのが素敵です。お風呂は、カルシウムやマグネシウム等を豊富に含んでいるミネラル水を使っており、薬湯などの替わり湯と炭酸泉の2種類が楽しめます。営業時間は、午前が8時〜10時、午後が15時からなので注意しましょう。
湯かっぺ
定休日:無休
営業時間:8:00〜10:00/15:00〜21:00(最終入館20:30)
https://www.glamping-village.jp/activities/yukappe/
今回のモデルコースからは、少し離れていますが、もうひとつ3月に開通したおすすめコースを紹介します。
創建から1200年以上の歴史がある「花園神社」を起点に花園山を経て、茨城県内でほかの県と接しない山としては最高峰となる「栄蔵室」(えいぞうむろ・標高882m)へと続くトレイルです。このコースは、アズマシャクナゲの群生地や野鳥の宝庫で、四季を通じて花やバードウォッチングが楽しめます。
JR日立駅からクルマで約8分の宿泊施設「うのしまヴィラ」。目の前にある太田尻海岸を散策したり、部屋から眺めてゆったりと過ごすことができます。自慢は、地元の野菜や鮮魚などの食材を使った、身体にやさしい食事。添加物を使わない自然な素材と手づくりにこだわった料理は、女性客を中心に大好評とのこと。
うのしまヴィラ
宿泊料金:(1泊2食)14,300円~
https://unoshima-villa.com/
日本最強パワースポットに大展望、海鮮グルメとお楽しみが盛り沢山の今回のコースは、いかがでしたでしょうか。5月から6月にかけては、新緑がますます勢いを増し、爽やかなハイキングが楽しめます。
「常陸国ロングトレイルは、どの季節に来ても食べ物が美味しいので、その点がうれしいですね。それに加えて、地元の方がとても気さくなことが印象的でした。取材でお話をうかがった人はもちろん、食堂のおかあさんなども本当にフレンドリーなんですよ。人が温かいところって、また来たくなってしまいます(笑)」(山下さん)
文章:大関直樹
写真:西條聡
モデル:山下舞弓
協力:茨城県県北振興局