山の写真を上手く撮りたいなら「好きの解像度」を上げてみよう|写真家・上田優紀さんが伝えたいこと

2024年秋、「山で感じたこころのうるおい」をテーマにしたフォトコンテストが開催されました。主催したのは、「健やかな肌こそ美しい」のコンセプトを持ち、ハードな活動で肌が荒れがちな登山者にも好評の大塚製薬のスキンケアブランド「UL・OS」(以下、ウル・オス)とYAMAP。

1,500件近い応募があったこのフォトコンテストの審査を務めたのが、写真家の上田優紀さんです。世界の辺境の景色を追い求め、エベレストやマナスルにも登頂。自然をテーマにした写真を発表し続けています。

今回は上田さんが思う「こころのうるおい」や、自然を写真に収めることの魅力をインタビュー。さらに、フォトコンテストで選ばれた「うるおい」の受賞作品も紹介します。

2025.01.23

大城 実結

アウトドアライター

INDEX

「好き」や「うるおい」を抱えて、この世界を生きている

──まずは、今回のフォトコンテストで審査した感想を教えてください。
上田優紀さん(以下上田):とても面白くて有意義なコンテストでした。多くの人が山にカメラを持っていきますが、皆それぞれ撮りたいものが違うんですよね。美しい風景や草花、そしてそんな情景に感動する人物など、撮影者が興味のあるものが写真には表れるんです。

だから、今回の作品を見ていると、例えば足元の落ち葉や、夏の風景と清涼飲料水、雲海を見ている人物など、撮影者が興味のあるものや好きなものが伝わってきて面白かったです。

僕がひとりで旅をしていたら目の前の壮大な景色を撮ってしまうんだけど、お花が好きな方だったら足元の花ばかり着目するかもしれない。いろんな方がいろんな「好き」を抱えて生きているのがこの世界なんだと改めて感じました。

上田さんが南米ボリビアのウユニ塩湖で撮影した作品(ウル・オス「Go My WAY」プロジェクトから)

──審査する上で大切にしたことは?
上田さん:今回のコンテストは技術的な面や構図、露出などではなくて、撮影者が感じた「うるおい」が伝わってくる写真を選びました。綺麗な写真ではなくて、写真と文章を見て、この人は何が好きなんだろう、何にうるおいを感じたんだろうと思いを巡らせながら選定しましたね。

どの写真からも、撮影者の「うるおい」が伝わってきたから、順位付けをするのには苦労しました。でも他のフォトコンテストとは全く違う視点で選べたので、とても充実した気持ちです。

写真家・上田優紀の「こころがうるおう瞬間」

──このフォトコンテストを通じて、「山で写真を撮ってみたい!」という人が増えたらいいなと考えているのですが、そんな方へのアドバイスは?
上田さん:「どうやったら写真が上手くなりますか」という質問をよく受けるのですが、僕は写真の本質って「想いを伝えること」だと考えています。そのためには、まず「好きの解像度」を上げていく必要があって、それからやっと撮り方などの技術的な部分の話になるんだと思います。

例えば花が好きで、花の美しさを伝えたいならば、どんな種類の花が好きで、それはいつどこに行けば撮れるのか、どのように撮影をしたら美しいと感じた自分の気持ちを伝えられるのかをまずは考える。好きを深めていくという行為は、インプットをたくさんすることなんです。

──「好きの解像度を上げる」、ハッとさせられる言葉です。ちなみに上田さんが写真を撮る中で「うるおいを感じる瞬間」はどんなときですか?
上田さん:僕にとってのうるおいは「そこにある風景が、誰かに届いた瞬間」です。だから皆さんが言う山でのうるおいとはちょっと違うかもしれない。エベレストもマナスルも、カメラがあったから登ったんです。

結局、僕の目的はそこにある風景を誰かに伝えること。言い方を変えると「写真を見てくれた人の心がうるおった瞬間」が僕にとってのうるおいです。

***

「山で感じたこころのうるおい」フォトコンテスト、YAMAPユーザーの受賞作品

ここからは、上田さんとプロジェクトメンバーで選び抜いた「山で感じたこころのうるおい」の受賞作品をご紹介します。上田さんの言葉を借りるならば「好きが伝わる力作」の数々、ぜひご覧ください。

大賞:雲海に沈む夕日

受賞ユーザー名:きーちゃんさん

【受賞者コメント】
2023年10月5日、後立山連峰の唐松岳に登り唐松岳頂上山荘に宿泊しました。初の北アルプス、初の山小屋泊と初めての体験ばかりの山行でした。

翌日にむけての荷物整理を終えて、小屋の談話室でひと息ついていた時に窓から見えた落陽が素晴らしく、夢中で撮影しました。雄大な雲海の向こうに沈んでいく夕日、次第に暗さが増していく周囲の山々。これまで登った山でも素晴らしい景色を見てきたし、SNSで山の夕景・夜景の写真もたくさん見ています。それでも実際に自分の目で見た日の入りの一部始終は本当に美しくて感動的でした。

まだまだ自分の知らない山の姿があることを知り、その絶景をこの目で見てみたいという静かに湧き上がる高揚感に包まれたひとときでした。冒険心というには大げさかもしれませんが、なにか体中にエネルギーがみなぎるような「うるおい」を感じました。

【上田さんの審査コメント】
この写真で一番いいなと思ったのは、人を入れて撮ったこと。この写真の主人公は雲海を見ている人で雲海じゃない。僕だったら思わず外に出て夕焼けと雲海を撮ってしまうんですけど、撮影者は夕景とそれを見ている人物、すべてを含めた風景に感動したんだと思うんですよね。

多くの人が「美しいな」と思うものをなぞったんじゃなくて、あえてそこを切り取っているというところがユニークだと思ったので大賞に選びました。

「五感」部門:山が見せてくれたもの

受賞ユーザー名:@kumagorou_photoさん

【受賞者コメント】
仕事の転勤で移り住んだ東北、初めての八甲田山を友人にアテンドしていただいた。初めて見る東北の山々の雄大さと、歓迎してくれているかのような雲海のパレード。これからの新天地での不安を一瞬で忘れさせてくれた景色。どうやら山があれば僕はどこまでもやっていけるようだ。

【上田さんの審査コメント】
この写真はパッと見て美しい写真だということに加え、文章が素敵なのが印象的でした。これからの新天地、仕事の転勤で東北にやってきて不安になっていたんだろうけれど、それを山の風景が忘れさせてくれて。

「山があれば僕はどこまでもやっていける」というのは、間違いなく心がうるおっているんだと思います。例えば10年経ったときに、東北にいるのかわかりませんが、きっとこの時の気持ちは忘れないんだろうなというのが伝わってきます。

「人のうるおい」部門|剣山次郎笈 二人歩記

受賞ユーザー名:yasuさん

【受賞者コメント】
子育てをしていくなかでいがみ合い、すれ違い、いつの間にかギクシャクしてきた夫婦仲。

昨年、私が会社勤めをしているなかで精神的にまいっていた状況で、ふと一緒に歩こうと、YAMAPをダウンロードしてくれた妻。それ以降、コツコツとトレーニングを重ねたようで、剣山に行きたいなあと妻からの提案がありました。

親族の協力もあり、久しぶりに夫婦水入らずの四国山旅。一年前は想像できなかった、百名山剣山での妻の笑顔。いろんな意味で心うるおった一枚です。これからも少しずつ、二人歩記は続いていくのでしょう。宜しくお願いいたします。

【上田さんの審査コメント】
この写真はエピソードも含めて、伝わってくる一枚だなと思い選びました。多分、奥様が前を歩いていて、「ちょっと」と呼びかけて撮ったのかわからないのですが、ふとした瞬間に撮った一枚というのが伝わってきますよね。

子育てをしていくなかでギクシャクしていたというのは、この写真からは伝わってこなくて、山を登っているなかで、もうその感情はなくなっているんだろうなと思うんです。

最後の「宜しくお願いします」も、奥様に伝えたい言葉なんでしょうね。それが僕はすごく素敵だなと思いました。「いろんな意味で心うるおった」というのは、元々うるおっていたけれど、環境の変化や時間の移ろいによって乾いてしまったものが、山によって再びうるおったということなのでしょう。

「山頂のうるおい」部門|希望の朝

受賞ユーザー名:hideさん

【受賞者コメント】
何度も登って初めて見ることができた光景。霧島連山を横に見ながら息を呑んだ。
同じくこの光景を見ている皆が、感動していることが伝わってくる。

【上田さんの審査コメント】
この写真の魅力は「光景に感動している人たち」にクローズアップをして写真を撮ったところです。やはり夕日や雲海を見ると景色だけを撮りたくなるものなのですが、この写真の主人公は絶景を前にした人々。その人々に感動した撮影者さんの感性が素晴らしいなと感じました。

絶景を見てうるおうという体験は多々あります。自然が持つエネルギーというものはものすごいので。けれど、そうではなくて、もっと柔らかくて温かいような、人が感動している姿に感動するというのが素敵だと感じました。

「森のうるおい」部門|静かに朽ちていく

受賞ユーザー名:こーたくさん

【受賞者コメント】
雨続きだった盛夏が過ぎ、雨上がりの森では地表を覆う苔が一層深い彩りを見せていました。朽ちゆく中、なお枝を保ち、葉を茂らせるトチノキの古木も、また少し苔を厚くまといながら秋を迎えようとしていました。

その崇高さに思いを寄せ、グローブを外して静かに木肌に触れ、この場を後にしました。この先も永くこの木がありますように。(撮影場所:長野県長和町 本沢渓谷トレッキングコース)

【上田さんの審査コメント】
コメントの「グローブを外して静かに木肌に触れる」という行為って、山をやっている人なら経験があることだと思うんです。僕もでかい木があったらつい触ってみたくなっちゃう。それは、僕たちよりはるかな年月を生きている木から、エネルギーみたいなものを感じ取りたいという意識があるのかもしれません。

撮影者さんがうるおった瞬間というのは、この木と触れ合ったときなのでしょう。自然からもらえるエネルギーを感じられると思い選びました。

「水のうるおい」部門|漂う霧と。

受賞ユーザー名:ぺんぐさん

【受賞者コメント】
初めてカメラを持ち、向かった場所は明神岳の麓。
木々の隙間から見えたこの小川は、ここだけ時の流れが止まっているかのような景色でした。都会の喧噪のなかで暮らす私の心では感じるコトのできない、悠々閑々としたひとときを与えてくれた思い出の一枚です。

【上田さんの審査コメント】
初めてのカメラだということが信じられないほど、よく撮れている写真だと感じました。写真をやっていると、美しく見せようという気持ちが強くなり、加工を強くしてしまうことがあります。それは写真の好みですので、良いも悪いもありません。ただ、僕はストレートに伝わる写真が好きです。

その点、この写真は「加えていない一枚」なんです。本当にこの人がこの風景を見ていたんだろうなと感じられるのが素敵ですね。この一枚のように、これからも心がうるおう瞬間をどんどん記録していってもらえたら嬉しいです。

ウル・オスとYAMAPは「山でのうるおい」を応援します

スキンケアの枠を超えて「身体と心のうるおい」を応援する、大塚製薬の肌ケアブランド「ウル・オス」とYAMAPがコラボした本企画は、いかがだったでしょうか?

山での体験を通して、汗をかいた先にこそ、出会える風景があるはず。山でのかけがえのない時間や写真を撮ることを通じて、自分らしいこころのうるおいを見つけてくださいね。

最後にこのフォトコンテストを主催した大塚製薬の担当者さんからコメントをもらいましたので紹介しましょう。

【大塚製薬 小島涼太朗さんのコメント】

まずは、たくさんのご応募、ありがとうございました。応募作品を一つ一つ見せていただく中で、写真の美しさだけでなく、それぞれのストーリーに感銘を受けました。

「ウル・オス」ブランドは、「Go My Way」というプロジェクトを進めています。このプロジェクトを通じて、日々の生活の中から一歩外に踏み出すことで「こころのうるおい」を感じ、それにより、生活もうるおうのではないかと思っています。

今回のフォトコンテストも、登山者の皆さんに、「こころのうるおい」を感じられるような機会が作れたらと思って実施しました。「ウル・オス」は、これからもこうした活動を続けていければと願っています。

「ウル・オス」スキンケアシリーズは登山にもぴったり

保湿・洗浄・紫外線対策の3つの視点から肌を整える「ウル・オス」シリーズは、登山で過酷な環境に晒される肌にぴったりのケア製品です。山では通年欠かせない日焼け止めにも、独自の保湿成分「AMP*」を配合し、健やかな肌をサポート。下山後の洗浄〜保湿もトータルケアできるラインナップも揃っており、大塚製薬の肌へのこだわりがふんだんに盛り込まれています。

さまざまな肌質の方にご満足いただけるように、オイリー肌から乾燥肌まで幅広いケアアイテムを展開。これまでスキンケアには縁がなかったというハイカーの方もぜひ一度お試しください。
※1 アデノシンリン酸(スキンローション、スキンミルク、スキンジェルクリーム、プラス 日やけ止め、大人のシート)アデノシン一リン酸(薬用スキンブリージーローション)

原稿:大城実結
協力:上田優紀、大塚製薬株式会社

大城 実結

アウトドアライター

大城 実結

アウトドアライター

自転車キャンプや登山など垣根なく楽しむアウトドアライター。Webや雑誌にて、体当たりをモットーに取材執筆をする。どこでも寝られる特異体質を持つ。