登山の服装はレイヤリング(重ね着)が肝! 特に、気温が下がり、行動中の体温と気温の差が大きくなる秋はさらにその重要性が増します。どんなアイテムを、どう重ねたらいいのか? 秋山登山・紅葉トレッキングにふさわしい服装のポイントを、登山ガイドの岩田京子さんに教えていただきました。登山初心者必見です!
秋山登山を安全・快適に楽しむための注意点 #01/シリーズ一覧はこちら
2024.09.05
岩田 京子
登山ガイド
過去記事でも紹介しているとおり、登山の服装はレイヤリング(重ね着)が基本です。
基本の重ね着の仕方はそちらをご参考いただくとして、秋山は行動中の体温と気温の差が大きいため、有効的なレイヤリングが特に重要になってきます。
ということで、まずは私が普段、秋山登山でどんなレイヤリングをしているのか、についてお伝えすると、一番上から
①ソフトシェル
②薄めのフリース
③ベースレイヤー
④ドライレイヤー
の順に重ね着しています。これから、①から順番に詳しくお伝えしていきますが、その前にひとこと!
レイヤリング(重ね着)と言えど、「何でもかんでもとにかく重ね着すればいい」というわけではないのでご注意を。
大事なのは、ウェアそれぞれの特徴・機能を理解し、状況に応じ適切な重ね方をすること。寒いからといって、同じような機能のウェアを何枚も重ねて着てしまうのは、適切なレイヤリングではありません。
以下で紹介するポイントをおさえて、安心安全に紅葉登山を楽しんでくださいね。
ソフトシェルとは、中間着として位置づけられることもありますが、撥水性(生地の表面についた水をはじく効果)があるものが多いです。
ストレッチ性があるものがほとんどなので、保温着を着ない行動中などに活躍します。
もしソフトシェルがなければ、ゴアテックスのレインウェアやウィンドブレーカーなどでも対応は可能。ですが、行動中にたくさん汗をかいた場合には、本来ならば水蒸気として外に排出されるはずの汗や湿気が内側に溜まり、濡れてしまうことがあるのでご注意を。
その点、ソフトシェルは汗を発散しやすいので、低温時の行動中におすすめです。
一言でフリースといっても、厚さや種類があり気温や季節に応じて上手に使い分けが必要です。
秋山にかぎらず、年中通して使えるのが薄めのフリース。というのも、標高の高い山では平地より気温が下がります。暑い夏でも例外ではありません。特に朝晩などは冷えを感じやすいので、こうしたときにさっと羽織れる薄めのフリースがあると重宝します。体温の変化が起こりやすい「登り始め」や「行動中」にも便利。脱ぎ着の調節が簡単にでき、おすすめです。
このように、登山時にはウエアでの体温調節が欠かせません。汗でウエアが濡れてしまうと体も冷えやすくなるので、こまめな脱ぎ着、調節を心がけましょう。
肌に近いものは、綿素材などの汗で濡れて乾きにくいものは体を冷やしてしまうため、NG。下から2番目に着るベースレイヤーは、速乾性や吸水性があるものがほとんど。
かいた汗を素早く生地に吸水してくれて(吸水性)、綿素材などよりも早く乾く(速乾性)のが特徴です。
ちなみに私は、特に焼けやすいうなじの日焼け対策として、ハイネックのものを選んでいます。袖部分に関しても、直射日射が肌に当たるのを防ぐため、夏も秋もロングスリーブ(長袖)のベースレイヤーを愛用中です。
行動中は体温が上がって汗をかきます。だからこそ肌に直接身につけるものは、水分を遠ざけてくれる「疎水性」があるものを着用するのがいいと思います。
上述したように、秋とはいえ、下界から比べると風は冷たく感じます。風にあたって体が冷えるだけでも低体温症になり、命に直結することも。
汗によるベタつきを防いで快適な登山をするためにも、内側から汗冷えを防いで安全な登山をするためにも、特に注意が必要です。
登り始めは、「ドライレイヤー」と「ベースレイヤー」の2枚重ねで、途中休憩をはさんで体が冷えそうになったらその上からフリースを羽織ればOK。さらに道中、気候や気温、体温に変化があれば、ソフトシェルを着てこまめな対応を。
上記で紹介した4つのアイテムを元に、天候や気温、行動に応じて臨機応変に重ね着しましょう。
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編集協力/EDIT for FUTURE 写真/駒田達哉