阿蘇登山と一緒に訪れたい!地元民おすすめの「絶景」「グルメ」観光スポット

阿蘇の山々の上から、外輪山に囲まれた街を眺めていると、この巨大な自然の中にどんな人の営みがあるのか気になってきます。ふもとの街を歩き、人気の名物を食べたり、もっと土地のことを知りたくて本屋に寄ったり、そうするとまた歩きたくなったり…。阿蘇は下山後もまた楽しみが満載です。

今回は、地元の方がオススメする絶景ポイントや名物料理が食べられる食事処、街の情報がギュっと詰まった小さな本屋さんなど、阿蘇に行ったならぜひとも立ち寄りたいスポットを紹介します。

2020.03.18

米村 奈穂

フリーライター

INDEX

【大観峰】阿蘇五岳の絶景を独占できる!? 裏ルートからのアクセス

阿蘇に来るたびもう100回は訪れているかもしれない。「今回はパスしよう」と思っても、早朝や夕方に近くを通ることがあれば、雲海や夕日の様子が気になりハンドルを急転回して向かってしまう。そんな場所だ。

大観峰は北外輪山の中央に岬のように飛び出していて、遮るもののない大展望が広がる。左右には火山がつくりだした外輪山の壁がカルデラに向かって美しい深緑色の裾を伸ばし、真正面には阿蘇五岳を望むことができる。

古くは「遠見ケ鼻」と呼ばれていたが、この景観に感動した熊本出身の文人「徳富蘇峰」により、大正時代に「大観峰」と名付けられた。

大観峰からの絶景。目前に阿蘇五岳を、足下にはふもとの田園風景

と、ここまでは観光情報。地元の方が大観峰のことを「展望所に向かう道中で、既に展望所と同じ景色が見えている」と言っていた。確かにその名の通り大展望すぎて、駐車場に着く前からすでに展望所状態なのである。強いて言えば、目を開けてみてビックリ感にやや欠ける。

そんな贅沢すぎる不満を満たしてくれるちょっとしたルートを発見した。以前から気になっていた展望台の突端からその先に続く道。調べてみると、南側から短い登山道を歩き、大観峰を目指すルートがあるようだ。

車で何度も行ったり来たりして登山口を見つけた。内牧から大観峰に向かう国道212号の途中、右手に「山田駐車場」という展望所がある。そこから400mほど歩いた右手が今回見つけた取りつきだ。

歩き始めは暗い杉林を進む。踏み跡はしっかりしている

しばらく杉林の中を歩くと「大観峰へ」という道標が出て来てホッとする。15分ほどで視界が開けてきて、振り返れば大展望の独り占め。真下には、まるでプラレールのような車道を走る車が見える。あちらからこちらは見えているのだろうか? ススキを抜けると、目の前に見慣れた展望所が現れた。

展望台から景色を眺める人々を、その景色の中から眺めてみる

展望台から景色を眺める人々を、景色側から眺めるという味わったことのない感覚。ここまで約30分。途中にも数箇所見晴らしのいい場所がある。「あの人は一体どこから来たのだろう?」という視線を背後に感じながら、再びみんなが眺める景色の中を下っていった。

大観峰のYAMAPルート情報はこちらから

【田子山展望所】ブラタモリでも紹介された穴場の大展望

阿蘇最大の温泉郷、内牧温泉。観光名所の大観峰からも車で10分ほどの人気の温泉街に穴場の展望スポットがあると聞いた。なにやらNHKの番組「ブラタモリ」でも紹介されたという。

温泉街の西にそびえる田子山展望所。整備をしている方がちょうど草刈りをしていると聞き、案内してもらうことに。案内してくれたのは、内牧温泉街で老舗の食堂を営む今村聡さん。日本百名山踏破を目指す山好きでもある。100年以上続く食堂の4代目の今村さんだが、田子山の整備もお父様の後を引き継いだ。

田子山展望所を整備中の内牧在住今村聡さん

今村さん曰く、阿蘇を代表する展望所の大観峰は、そこに向かう道中も既に展望があるが、田子山は山頂に到着して初めて視界が開けるところがいいのだという。

田子山展望所の駐車場までは、内牧温泉の西端にある内牧菅原神社を過ぎ、湯浦川に架かる橋を渡った先の折戸地区コミュニティーセンターそばの駐車場から山道へ入る。

田子山展望所へ向かう途中。この先の展望が気になる道

駐車場から30分程度であっという間に田子山の山頂である展望所に到着。阿蘇五岳はもちろん、今まで見上げていた北外輪山の真っ平らな上部を目の高さで見ることができる。吉永小百合主演の映画「まぼろしの邪馬台国」のロケ地にもなったそうだ。

田子山展望所から阿蘇五岳を望む

黒川に沿って立ち並ぶ内牧温泉街もよく見える。江戸時代には、参勤交代の際に熊本城から大分港へ向かう全長124kmある豊後街道の宿場町だった。山頂からその道を目で追ってみるが、すぐに外輪山の巨大な壁にぶつかってしまった、古の人々の苦労を思う。

暮らしの中にある展望台から見る景色は、高い山から遠くに眺める景観とはまた違い、自然と人の関わりをより感じることができる。今も昔も人々は、火山が作り出した大きな壁を越え旅をし、火山が生み出す温泉で旅の疲れを癒していたのだろう。いつか豊後街道も歩いてみようと思った。


田子山のYAMAPルート情報はこちらから

【内牧・いまきん食堂】「あか牛丼」は阿蘇の絶品グルメ!

田子山を案内してくれた今村さんの営む食堂は、内牧温泉で100年続く老舗の人気店で、平日でも行列ができるという。並ぶのを覚悟で行ってみることにした。開店時間の少し前に着くと、店の前にはまだ誰もいない。しかし、中に入って驚いた。なんと1階は既に満席。2階に通されたが、ここもギリギリで滑り込めた感じ。静かな温泉街のどこからこんなに人が湧いて出てきたのだろう。

土日はかなり混雑する。整理券配布され、待ち時間も教えてくれるので、番号を呼ばれるまでは周辺を散策したり温泉に入ったりして待つことができる

人気のメニューは「あか牛丼」。隙間なく並べられた肉の上に温泉卵が乗り甘いタレがかかる。添えられたワサビと自家製肉味噌で二度三度おいしい。運ばれて来た時はこんなに食べられるだろうかと一瞬ひるんだが、あっという間にたいらげてしまった。店を出る頃には、表はたくさんの人で賑わっていた。あぁ、何度も阿蘇を訪れておいて、今までどうしてここに来なかったのかと心底後悔した味をぜひお試しあれ。

人気メニューの「あか牛丼」。このボリュームをあっという間に完食!

いまきん食堂

住所:熊本県阿蘇市内牧290
TEL:0967-32-0031
営業時間:11:00~15:00(14:00受付終了)
定休日:水曜日・第3木曜日

【一の宮・家入書店】阿蘇の魅力がつまった小さな町の本屋さん

遠出をして山に登る際の習慣がある。下山後にその土地の本屋を訪れることだ。できるならなるべく小さな個人商店がいい。郷土本が揃っていれば嬉しいが、そうでなくとも本屋にはその土地を表す空気が漂っている気がする。

訪れたのは、阿蘇神社そばの門前商店街の一角にある「家入書店」。新聞で店主の家入桂子さんが阿蘇の人と自然の物語をつづる「草原の国通信」を創刊したという記事を見て気になっていた。店内には阿蘇の歴史や自然に関する本から古本まで品揃えは決して多くはないが、その分店主の人柄が分かる選書に思わず手が伸びる。

雰囲気のある店構えの家入書店

阿蘇の草原のことが分かる本を探していると伝えると、家入さんが3冊ほど勧めてくれた。選んだのは、一の宮町の町史。知らない土地のことを調べるために図書館で町史を見ることがよくあるが、大抵は閲覧のみの貸し出し禁止。しかも図鑑のように分厚く読みづらい。この町史は新書版で、自然・歴史・民族などテーマ別に刊行されているので興味のある分野を選んで手に入れることができる。

こうして、自分たちの暮らす町のことを深く知るヒントをくれる”街の本屋”がある一の宮の人たちを羨ましく思った。

本の他にも阿蘇の絵葉書や雑貨も並ぶ。あちこちに湧水が出ている門前商店街は、古道具屋やお土産屋が軒を連ね楽しく歩ける。商店街の先の旧女学校跡には、古い校舎を利用した雰囲気のあるカフェや家具店などがあり、こちらもおすすめだ。

あちこちに湧水が流れる門前商店街。春には桜並木になる

家入書店

住所:熊本県阿蘇郡一の宮町宮地160
TEL:0967-22-0568
営業時間:11:00~18:00
定休日:なし(都合により休みあり)

【高森・高森殿の杉】草原の奥に潜む巨木にパワーをもらいに

根子岳に登った後、南阿蘇の高森に杉の巨木があると聞き訪れてみた。放牧地の先にある杉を見るには、入り口のゲートで手足を消毒して入る。ゲートの先は放たれた牛がのんびりと草を食み、眼下に南阿蘇の景色を望む牧歌的で明るい草原が広がる。

向かい合うようにそびえる2本の大木に木漏れ日が注ぎ、心落ち着く場所

一転して暗い杉林に下るとその大木はあった。突然目の前に現れたその巨体に思わず足が止まる。樹齢は400年を超え、幹回りは10メートルはあるそうだ。目いっぱい両手を広げた姿は、暗い森の中で必死に光を求めているようにも見える。高森城主が島津軍に追われ、この地で自害したことにより「高森殿の杉」と呼ばれるようになったそうだ。かつてはここに墓があったが、今は同じ高森町内の含蔵寺に移されている。

高森殿の杉

住所:阿蘇郡高森町高森3341-1

麓に広がる街を歩き、山の恵みとともに人々が営んできた生活に触れると、山頂からは見えなかった山の表情が見えてくる。山が美しいように、阿蘇の街もまた、美しく奥深い。阿蘇の山をより深く愉しむためにも、ぜひ下山後には時間を作って、麓の街を覗いてみてはいかがだろうか?

米村 奈穂

フリーライター

米村 奈穂

フリーライター

幼い頃より山岳部の顧問をしていた父親に連れられ山に入る。アウドドアーメーカー勤務や、九州・山口の山雑誌「季刊のぼろ」編集部を経て現職に。