登山のパッキング、基本とコツ。ザックの重さ軽減&必要なモノがすぐ見つかる

登山のパッキングにはコツがあります。「ザックにただモノを詰め込めばいい」と思っていたら大間違い。パッキングの仕方を誤ると、同じアイテムを詰めているはずなのに重たく感じたり、バランスの悪さから持ち運びがしにくくなったり、必要なアイテムをすぐに取り出せずまごついてしまったり…と、様々な困りごとが起こります。登山を快適に楽しむための「正しいパッキング方法」を、登山ガイドの岩田京子さんにお聞きしました。

山道具の教科書|登山初心者必見の「服装&持ち物」完全マニュアル #06連載一覧はこちら

2020.05.07

岩田 京子

登山ガイド

INDEX

簡単3ステップで正しいパッキング方法を

登山道具、ただなんとなくアイテムを詰め込んではいませんか? パッキングは、ただ荷物を詰め込むだけの作業ではありません。長時間、不整地を歩く登山では、パッキングが正しくできているか否かでその快適度が大きく変わってしまいます。パッキングがいまいちなザックを背負って山道を歩くことは、重さ、疲れだけでなく、バランスを崩し転倒してしまうリスクにもつながります。

これからお伝えする正しいパッキング方法を実践すれば、これらのリスクは確実に回避できます。しかも、そのやり方はとってもシンプル。たったの3ステップで完了です。ぜひしっかり習得して、普段の山行でも実践してみてください。

●登山のパッキング、正しい手順

ステップ1:選別
ステップ2:整理
ステップ3:パッキング

ステップ1:選別|要るモノ、要らないモノをどう選ぶ?

まずはバックパックに入れるものを選ぶことからはじめます。バックパックには容量があり、自分の体力にも限界がありますから、選別せずに何でもかんでも詰め込むわけにはいきません。山へ行き慣れていないビギナーの方ほど「あれも必要、これも必要かも…」と、バックパックにあれこれ詰め込みすぎてしまう傾向があるようですが、荷物の持ちすぎは快適登山を妨げる原因になります。

荷物の持ちすぎを防ぎ、正しくパッキングをするためには、シミュレーションが欠かせません。「この道具は本当に必要なもの?」「いつ、どんなときに使う?」などと、一つひとつのアイテムに対し、使う場面を思い浮かべるのです。このシミュレーション作業をしておくことで、不要なアイテムを持参し、荷物を必要以上に重たくしてしまうリスクを避けることができます。

そしてもう一つ、シミュレーションと同じくおすすめしたいのが「持ち物リスト」です。バックパックに詰め込むアイテムは、季節や行き先、行程などによって少しずつ変わってきますが、山行スタイルが固まってくれば、自分にとっての基本アイテムも自ずと決まってきます。毎回使うもの、持っていくものはあらかじめ持ち物リストに書き込んでおくことで、うっかり入れ忘れを防ぐこともできますし、山行後の”答え合わせ”にも便利です。

“答え合わせ”というのは、シミュレーションがうまくいったかどうかの答え合わせのこと。 山行を振り返って「一度も使わなかったもの」や、逆に「足りなかったもの」があったら、それらのアイテムは見直す必要があります。山行のたびにこうした”見直し”を持ち物リストに反映しておくと、選別作業がラクになるし、選別の精度も高まります。

パッキングのコツは、はじめの選別作業にあり。持ち物リストもうまく活用しながら、シミュレーションをしっかり行いましょう。

STEP2:整理|「使う頻度」でグルーピングを!

必要なアイテムを選別したら、次はそれらを種類別に分けて並べていきます。ここでポイントとなるのはどう分けるかということ、つまりグルーピングの仕方です。その人の山行スタイルなどによって多少異なる場合もありますので、ここでは例として私のいつものやり方を参考に解説していきます。

私はいつも「山行中の使用頻度」に焦点をあて、必要なアイテムをおおよそ3つのグループに分けています。

グループ① 頻繁に使うもの
地図やコンパス、水筒、行動食など

グループ② たまに使うもの
レインウェア、手袋、スパッツなど

グループ③ あまり使わないもの
寝袋、小屋に到着してから使うもの、念のためのものなど

私はこれらを「防水バッグ」と呼ばれる袋に入れて分けるのですが、色で中身がわかるように明るめな色の袋を3種類使っています。小分けにする袋は防水処理がおすすめです。山では雨が降ることもありますし、雨が降らなかったとしてもザックの中に湿気が溜まることもあります。濡れてしまっては困るアイテムも多いので、防水処理は念入りにするように気を付けています。

主に小屋で使う保温着で一袋、雨天時に使う雨具(ジャケットでズボンを包んで上下セットにして持ち運びます)やゲイターなどで一袋…というように、使うシーンで袋分けしておくと便利

手軽に使えるビニール袋を使ってしまいがちですが、ビニール袋だと荷物を出し入れしているうちに破けてしまったり、シャカシャカする音で周りに迷惑をかけてしまうことも。

ちなみに、小分けにする以外にも、バックパックと同じかバックパックの容量より少し大き目のスタッフバッグや防水バッグ使ってパッキングするという方法もあります。どちらにするかはお好みですが、袋もたくさん使うと重量がかさみますし、開け閉めにも時間がかかります。スタッフバッグ選びにも、自分にとって適正な数、大きさを心がけてください。

STEP3:パッキング|ポイントは「縦収納」と重たいモノの置き場所

選別とグルーピングが終わったらいよいよパッキング!…ですが、この詰め込み作業にこそパッキング最大のコツがあります。それは「重いものはバックパックの上部、かつ背中側に入れるのが好ましい」とういことです。

これは「重心を考慮した考え方」であり、しっかりした根拠もあります。事実、きちんとしたパッキングができていると、歩いているときに感じる重さやバランスが全然違います。私自身も以前、パッキングの効果を実感したことがあるのですが、それは明らかな違いでした。その日は急いで出発したために荷物を適当に詰め込み、水筒2本を体から遠い場所に入れて歩き始めてしまいました。すると歩いているうちにいつもと違う重たさやつらさを覚え、疲れさえ感じはじめてしまったのです。きっと、不安定なバランスを調整するために余計な筋力を使っていたのでしょう。これではダメだと、休憩時にきちんとパッキングをし直したのを今でもよく覚えています。皆さんはそんなことにならないよう、しっかりパッキングの基本を押さえて実践してくださいね。

テント泊は別ですが、日帰り登山や小屋泊で特に重さを感じやすいものは、水筒や食べ物でしょう。そのほか自身の荷物で思い当たるものは、できるだけザックの上部、もしくは背面に近い場所にパッキングするようにしましょう。

さらに、先ほどSTEP2の整理で使う頻度によってグルーピングした袋たちを、

上:グループ① 頻繁に使うもの
中:グループ② たまに使うもの
下:グループ③ あまり使わないもの

…の順序でバックパックに詰めていきます。出し入れしやすくパッキングするには「縦を意識した収納」をおすすめします。横に詰めていく収納でも間違いではないのですが、それでは下の方に入れたアイテムを取り出すのに時間がかかってしまいます。上・中・下と縦を意識してアイテムを積み重ねるように収納しておけば、何が入っているのかも見やすく、取り出しやすくなります。

シンプル・パッキングで無駄な荷物の出し入れをなくそう

ザックからほとんどの荷物を出して、小分けにした袋の中身もすべて確認し、また入れ直す。小屋に着いてから、お手洗いに行くとき、さらには翌早朝…と、何度も同じように出し入れ作業をしている…。登山ツアーなどで山小屋に宿泊すると、こんなふうにずっと荷物整理をしている方を見かけることがあります。これは明らかに無駄な作業ですし、他のお客様にも迷惑です。この記事でお伝えしたパッキング術を実践すれば、無駄な荷物の出し入れをせずに済みます。

ちなみに私は、小屋に到着してからほとんど荷物の出し入れをしません。小屋に到着したら、チェックインを済ませる前に防寒着を着用して、ポケットに貴重品とヘッドライトを入れて終了。他に出すものといえば、お湯を追加するためのポットくらい。あるいは、汗をたくさんかいたときにはボディシートを1枚という感じです。到着してからのルーティンが決まっていれば、おのずと必要なものがわかります。

パッキングで重要なのは、頻繁に使うものをいかに取り出しやすくしておくかということ。分かりやすくシンプルにパッキングができていれば、今まで「あれはどこにしまったっけ?」「使いたいアイテムがすぐに取り出せない」などと、荷物探しに要していた時間も減らすことができます。シンプル・パッキング術で、より快適で有意義な山での時間を楽しんでくださいね。

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岩田 京子

登山ガイド

岩田 京子

登山ガイド

1976年、横浜市生まれ。日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド。 MTB、スノーボード、キャンプ、フィッシング、マラソン、野外フェスなど、さまざまなアウトドアイベントの制作に携わり、外あそびの楽しさを広めてきた実績を持つ。現在はフリーランスで、国内では山のガイド、海外ではツアー登山やトレッキングの添乗をしている。海外添乗の仕事では高所登山にも携わり、キリマンジャロ、エルブルース、チンボラソなど。プラ ...(続きを読む

1976年、横浜市生まれ。日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド。 MTB、スノーボード、キャンプ、フィッシング、マラソン、野外フェスなど、さまざまなアウトドアイベントの制作に携わり、外あそびの楽しさを広めてきた実績を持つ。現在はフリーランスで、国内では山のガイド、海外ではツアー登山やトレッキングの添乗をしている。海外添乗の仕事では高所登山にも携わり、キリマンジャロ、エルブルース、チンボラソなど。プライベートでは8000m峰のチョーオユー、マナスル、エベレスト、ローツェと4座の登頂。

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