山ごはんを始めるうえで揃えておきたい道具や知っておきたい知識、初心者でもトライしやすい簡単レシピを大公開! 登山ガイドのヤッホー!!さんとアウトドア料理研究家のshiho、夫婦そろって管理栄養士の二人が「山ごはんのいろは」を伝授します。【山ごはん作りの必須道具で「洋風チキンラーメン」と「じゃがいものポタージュスープ」にトライ】というのが今回のお題。さあ、山ごはんの楽しさに目覚めましょう!
ヤッホー‼さん&shihoの山ごはんを始めよう #01/連載一覧はこちら
2020.07.03
ヤッホー‼さん&shiho
管理栄養士・山の料理研究家
山行中、昼の休憩でサッとバーナーを取り出し、手際よく山ごはんを作っているハイカー。そんな姿を見てかっこいいなあと関心してしまうこと、ありますよね。自分でもやってみたいなと思っても、どんな道具が必要で、どのようなことに注意をすればよいのか分からないという人も多いのではないでしょうか?
このシリーズでは、私たち登山ガイドのヤッホー‼さんとアウトドア料理研究家のshiho、夫婦そろって管理栄養士の二人が、山ごはんを始めるうえで「揃えておきたい道具」&「知っておきたい知識」を紹介します。
揃えた道具、覚えた知識で作れる「簡単レシピ」も必見! 初回テーマは、山ごはん作りに欠かせない必須アイテムを使った、洋風チキンラーメンとポタージュスープです。
ヤッホー‼さん:山ごはんを始めるなら、まずは火を使ってお湯を沸かせる道具が必要! なんといっても登山用ストーブとコッヘルの2点が必須アイテムだね。
いろんな燃料を使うものがあるけど、はじめての人が選ぶのであれば、取り扱いが簡単なガスストーブが断然おすすめ。登山ではOD缶といわれる、丸いころっとした形のカートリッジタイプのほうが使い勝手がいいと思う。ストーブを選ぶポイントは本体の大きさ、重さ、ゴトクの大きさ、火力の強さ、音の静かさ、火加減の調節しやすさ、風に対する強さ、電子着火の有無など。登山用品店には沢山の商品があって、きっと迷ってしまうので、どんな山で何を調理したいのかをはっきりさせてから、お店の人に相談するといいんじゃないかな。
shiho:私は軽くてコンパクトに収納できるものが好きだなぁ。水や食材も持たなければいけないので、女性には大切なポイント。あと、見落としがちなのが「弱火調整のしやすさ」かな。カタログ等では火力(最大発熱量)ばかりが比較されるけど、あまり最大火力で調理することはないので、私はそんなに強い火力のストーブは必要ないと思う。
ヤッホー‼さん:雪山などの過酷な環境で使わないのなら、このシリーズで紹介する山ごはんレシピはアミカス(SOTO)といった比較的安価で購入できる入門モデルで充分だね。
ヤッホー‼さん:ガス缶のカートリッジの形状には規格があるから、同じOD缶であれば、違うメーカーの製品でも取り付けることは可能。でも、ガスの比率の違いによる機能の低下や、故障などのトラブル、粗悪品によるガス漏れといった危険性もあるので、絶対にストーブと同じメーカーのガス缶を使うこと。それを考慮すると、登山用品店やホームセンター、山小屋などでガス缶を入手しやすいPRIMUS(イワタニ・プリムス)やSOTO(新富士バーナー)といったメーカーのストーブを購入しておいたほうが無難じゃないかな。
ガス自体は経年劣化しないけど、ガス缶のゴムパッキンの耐久年数は7年といわれているので、ガス缶の裏などに記載されている製造年月日から7年以内に使い切るように注意が必要(保管条件によっては、さらに短くなる可能性も)。
あと、電子着火装置は気圧の低い場所で使えない。環境によっては標高1,000m程度の山でも使えないこともあるので、必ずフリント式(火打石タイプ)のライターを忘れずに。
ヤッホー‼さん:お湯を沸かすだけの用途であれば、丸型の深いタイプのコッヘルが使いやすいけど、1~2人前の山ごはんを前提に購入するのであれば、内径15cm前後で、容量1ℓ程度のコッヘルが使いやすいかな。素材で考えると、初心者でも使いやすいのは熱伝導の良いアルミ製のもの。表面にハードアノダイズド加工されているものであれば耐久性もあるし、料理に金属臭が移りづらくなるのがいいね。
shiho:フタが付いていれば調理の幅が一気に広がるので、山ごはんづくりには必要だと思う。蒸気を逃がす穴が開いているものや、重ねた時にフタが鍋の内側に入るタイプのフタだったら、ご飯を炊くときでも吹きこぼれが出にくいので、便利だと思う。
ちなみに私たちが夫婦2人で山に登る時には、アルパインクッカースクエア13(mont-bell、写真左)とか、ヤエンクッカー1000(snow peak、写真右)を使うことが多いよね。大人数分の山ごはんを調理するときには、もっと大型のコッヘルを買い足せばOKです!
shiho:ここからは私が登山用ストーブとコッヘルを使って、はじめての人でも5分で簡単につくれる山ごはんをみなさんにご紹介します。一品目は、疲れた体にマイルドなトマトの酸味が優しい洋風チキンラーメン。今までのチキンラーメンとはひと味違った美味しさを発見できるので、ぜひお試しください。
チキンラーメン:1袋
トマトジュース:200ml
にんにくチューブ:3センチ
水:250ml
粉チーズ:適量
オリーブオイル:小さじ1
お好きな具材:適量
【1】 コッヘルにトマトジュースと水・にんにくを入れ、中火にかける
【2】 沸騰したらチキンラーメンを入れ、麺をほぐしながら1分ほど煮る
【3】 火を止めて、粉チーズとオリーブオイルをかけ、好きな具材をのせる
shiho:写真では加熱のいらないハムとかいわれを最後にのせましたが、加熱が必要な具材を入れる場合は短時間で火が通るものを選び、【2】で加えてください。
今回はトマトジュースを使っていますが、野菜ジュース(果実無添加のもの)で代用しても、とっても美味しくできました。
ヤッホー‼さん:山でラーメンを食べるときは、スープを残さないことが大切。水分や塩分の補給ができるし、ごみも出さないので環境にも優しい。だからこそ、さっぱりした味わいのスープが食べやすくていいね。
shiho: 二品目はポタージュスープを紹介します。手間がかかりそうなイメージですが、乾燥マッシュポテトを使えば、あっという間につくれます。乾燥マッシュポテトはジャガイモをフレーク状もしくは粉末状に加工していて、常温で長期間保存が可能です。
マッシュポテトって子供たちが好きな料理なのですが、ジャガイモを茹でて皮をむいて、潰して、調味して…って結構手間がかかるんですよね。乾燥マッシュポテトならお湯を注いでぐるぐる混ぜるだけ!手間いらずで普段から時短調理に重宝しています。アレンジ次第でいろいろな山ごはんにも使えるので、常にキッチンにストックしています。
乾燥マッシュポテト: 大さじ5
(フレーク状のものを使用)
牛乳: 200ml
水: 100ml
バター: 5g
コンソメ顆粒: 小さじ1
フライドオニオン: 適量
塩・こしょう: 適量
【1】 コッヘルに水を入れ、中火にかける
【2】 沸騰したら牛乳・バターを加え、スープをかき混ぜながら、乾燥マッシュポテトをゆっくりと加える。とろみがつき、スープが温まったら塩・こしょうで味を調える
【3】 器に注ぎ、フライドオニオンをのせる
shiho:牛乳は常温で保存可能なものを使用しました。保冷しなくてもよいため、夏場など衛生面が心配な時に役立ちます。普通のスーパーでも売っているので、チェックしてみてください。ちなみに牛乳は豆乳でも代用可能。どちらも加えたら沸騰させないことがポイントです!
ヤッホー‼さん:スープのとろみと、フライドオニオンのカリカリ食感がベストマッチ! パンやおにぎりと一緒に食べれば、腹持ちもよくなって、いっぱい歩けそうだね。
shiho:普段使っている箸&スプーンでも全く問題ないけど、せっかくなら山ごはん専用のカトラリーを揃えるのもいいかも。おしゃれなカトラリーも沢山あるので、アウトドア用品店でみているだけでも楽しい!
ヤッホー‼さん:おすすめは折り畳みの箸とシリコンスプーンかな。特にシリコンスプーンは食器に付いたソースやスープなどをきれいに取りながら食べることができるので、後片付けがとても楽に。我が家では折りたためて、携帯に便利なFDシリコンスプーン(UNIFLAME)がお気に入り。国産・間伐材の割り箸を使うことで、里山保全に貢献するといった考えもあるね。
shiho:おひとり様であればコッヘルから直接食べることもありだけど、2人以上であれば皿などに取り分ける必要があるよね。そんなときに一番便利なのがシエラカップだと思う。深さがあるのでスープなど取り分けることもできる。カラビナを使ってザックに取り付けて干しておけるので、荷物の邪魔にならないんじゃないかな。
ヤッホー‼さん:チタン製であれば、金属臭も少なく、料理の味を邪魔しない。チタンは強度が高いので、薄くて軽く加工できるのが特徴。熱伝導が悪いので調理には向かないけど、直接火にかけてお湯を沸かすくらいなら問題なし! 我が家では取手の形状が手になじみやすく使いやすいチタンシエラカップ(snow peak)を愛用中。
ヤッホー‼:山ごはんに包丁やまな板を使うのは、装備を増やすだけでなく、後片付けの手間も増えてしまう。折り畳み式のアーミーナイフなどを使う人もいるけど、水分の多い食材をカットすると、折り畳み部分が汚れてメンテナンスが必要になるから面倒くさいなぁ。
shiho:調理用のキッチンバサミを使えば、包丁やまな板を使わずに直接クッカーに切り入れたり出来た料理を切り分けたりすることができるよね。普段、私が山で使っているカーブキッチンバサミ(貝印)は一般家庭用だけど、収納ケースもついて携帯しやすくなっているので、山ごはんにもおすすめ。あまり力を使わなくても切りやすいカーブ&ギザ刃なのがgood。実際に持ってみて、手になじむものを選ぶといいんじゃないかな。
ヤッホー‼さん&shiho:いかがでしたか? 今回は山ごはんの入門編として、「揃えておきたい道具」&「知っておきたい知識」をご紹介しました。まずはどんな山で、どんな山ごはんをつくりたいかイメージしたうえで、道具を揃えてみてください。
いきいき登山ガイド・ヤッホー‼さん
登山ガイド(ステージⅡ)・管理栄養士・健康運動指導士
横浜市金沢区在住。健康づくりを専門とした登山ガイド。食事指導・運動指導・山の安全管理を柱とした中高年者向けの山歩きを案内している。また、登山経験を生かした「防災食」や「転倒予防体操」などの講習会も各地で開催。著書に、ヤマケイ登山学校『登山ボディ』、 山登りABCシリーズ『もっと登れる山の食料計画』(ともに山と渓谷社)がある。
https://www.cocolohas.jp/
shiho
管理栄養士・アウトドア料理研究家
大学卒業後、病院栄養士として勤務したのち結婚を機に退職。結婚相手がたまたま登山ガイドだったことがきっかけで登山を始め、山ごはんの楽しさに目覚める。現在は料理家として雑誌やウェブサイトでの連載を持つかたわら、夫の「ヤッホー!!さん。」が出演するイベントや著書にてレシピ監修やスタイリング等を担当。プライベートでは2人の子供を持つ親でもあり、休日は家族で山やキャンプなどを楽しみ、自然を通して心を育むことを大切にしている。
https://www.instagram.com/shiho_yahho/
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