アイゼン、ピッケル、スノーシューなど、一度は耳にしたことがある雪山登山の道具(ギア)たち。硬い雪や氷の上で使う、深い雪のときに役立つなど、それぞれに使う場面や使い方が異なります。初心者向けの雪山ツアーも数多くこなす登山ガイドの石川高明さんに、初心者が雪山に挑戦するにあたり必須となる道具をピックアップしてもらい、それぞれの特徴や用途を解説してもらいました。
雪山初心者必見!登山ガイドが教える「雪山登山の基本」 #04/シリーズ一覧
2023.02.09
石川 高明
信州登山案内人・登山ガイド
雪山で使う道具(ギア)は挙げ始めたら切りがないほどたくさんありますが、初心者に必須のギアはそう多くありません。ここでは、最も基本的な登山靴とアイゼン、ピッケルを中心に、その特徴と用途を紹介しようと思います。
かつての雪山登山靴はごつくて重たかったのですが、近年はだいぶんスリムで軽量になりました。見た目には夏用の登山靴とあまり変わらないなと思われるかもしれませんが、雪山仕様の工夫がたくさん詰まっています。
まず、防水性が高いこと。アッパー下部はラバーで覆われているものが多く、雪で濡れにくくなっています。アッパー内には断熱材が入っているので、長時間雪の中を歩いても冷たくなりにくいのも特徴です。
私が初心者のスノーハイクをガイドするときは、3シーズン用のしっかりとした登山靴でも可としていますが、それは短時間のハイキングであるため。また、スノーシューで雪の中に足が埋まらないことが前提です。スノーシューを使わないようなシーンでは、3シーズン用の登山靴でツボ足(登山靴のみで歩くこと)で歩くと雪の冷たさが伝わってしまい、足先がかなり冷えます。
冬山登山靴は堅牢強固なのも特徴です。雪や寒さ、岩場に対応するため、さらにはアイゼンをしっかり装着させるためでもあります。柔らかいソールは堅いアイゼンと相性が悪く、外れやすくてとても危険です。
雪山にこれから挑戦していきたいと思っているなら、ぜひアイゼンとあわせて揃えて欲しい道具の筆頭と言えます。
冬山登山靴の特徴や選び方については、第5回の記事でさらに詳細に説明していますので、合わせて読んでみてください。
アイゼンはクランポンとも呼ばれています。プレートに尖った爪が10〜12本ついていて、登山靴に装着し、歩行時に滑らないよう爪を硬い雪や氷に突き刺して使います。
アイゼンは爪の数によって大きく2つに分けることができます。標準的な10〜12本爪に対して、軽アイゼンは爪が少なく、6〜8本ほど。本格的な雪山登山には使えませんが、例えば首都圏の低山に雪が降ったときなどには便利です。
アイゼンを購入する際は、必ず靴とセットで考えます。アイゼンがソールの形状に合わないと、隙間ができたり、しっかり固定できなかったりして、外れやすくなります。また、持ち運びのためにアイゼンケースも一緒に購入しましょう。
アイゼンの種類や選び方については、第7回の記事でさらに詳細に説明していますので、合わせて読んでみてください。
ピッケルは土木作業に使うつるはしのような形をした道具です。シャフトという棒の部分にヘッドがついています。ヘッドの形状は前後で異なり、一方は尖っていて、もう一方はハンマー型やブレード型になっています。ヘッドの先端を氷に刺してバランスを取ったり、ハンマーやブレードで雪を削って足場を作ったりと、上級者は各部位を上手に使い分けて活用します。
初心者は硬い雪や氷の上でバランスを取るため、杖のように使うことがほとんどです。トレッキングポール(ストック)と似た用途ですが、硬い雪や氷だとトレックングポールの先端がはじかれてしまうため、森林限界以上の雪上歩行ではピッケルを使うケースが多くなります。なお、私の雪山初心者向けツアーではピッケルを使用することは稀です。
縦走用、アイスクライミング用など、用途によって形状が異なります。シャフトの長さも重要なので、ピッケルについて詳しく説明している第8回の記事で選び方で確認してください。
アイゼンやピッケルは、硬い雪や氷に対応するためのギアですが、ふかふかの深雪を歩くときは別のアイテムが必要になります。
まず足元は雪に埋もれないように、スノーシューやわかんなどを装着します。どちらも足裏の面積を広げ、雪の上で浮力を得るための道具です。一般的にスノーシューの方が浮力が大きく、スノーハイキングなど、平坦なところを歩くのに適しています。わかんは小さめの作りなので、登山道などの狭いところでは小回りが利いて使いやすさもアップします。
スノーシューやわかんは、トレッキングポールとセットで使います。ポールの先端にはスノーバスケットをつけて、雪の上で止まるようにします。また、滑落の危険が少なく、雪がそれほど硬くないときは、「アイゼン+トレッキングポール」という組み合わせを使うこともあります。
ここまで雪山の道具を紹介してきましたが、ウエアと違って、冬にしか使う機会がないものばかりです。初心者の方にとっては、雪山に定期的に行くことになるのかまだかわからないのに、高価なギアをすべて揃えるのは大変なことです。そこでおすすめなのが、まずは冬山登山靴だけを購入し、その他は専門店で借りるなど、レンタルを活用してみるというもの。
雪の多いエリアでは、スキー場や宿泊施設などでもスノーシューのレンタルを行っています。スノーハイクのガイドツアーはレンタル料込みのことが多いので、気軽に楽しむにはぴったりです。私の初心者向けの雪山ツアーでも、アイゼンやスノーシューは必要な方に対しては貸出しています。
アイゼンやピッケルに加え、冬山用の登山靴やウエアについても、登山道具のレンタル専門店で借りることができます。1泊からの貸し出しで、アイゼンは4,000円前後、ピッケルは3,000円前後が相場。セット割や、長期レンタル割など、お得なプランもあるようです。
ちなみに、YAMAPレンタルでも冬山道具のレンタルサービスを展開しており、冬期登山靴、12本爪アイゼン、ピッケル、ヘルメットの「冬期登山4点セット」で、14,500円/3泊〜となっています。
今回紹介した雪山に必須の道具は、サイズ感やギア同士の相性がとても重要なので、フィッティングして購入することをおすすめします。冬山登山靴とアイゼン、ピッケルについては、具体的な選び方や使い方を次回以降で詳しく説明していきます。冬山の服装(ウエア)については第3回の記事も参考にしてください。
写真/宇佐美博之(提供写真以外)
1点1点を吟味し、商品ラインナップに加えているYAMAP STORE。冬山装備や道具も揃えられます。記事で紹介したアイゼン、ピッケルなど、雪山へのチャレンジを本格的に検討している方は、一度覗いてみてはいかがでしょうか。
(左)PETZL(ペツル)
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