冬山用登山靴の知っておきたい機能と選び方|雪山登山の基本 #05

冬用の登山靴はごつくてしっかりしている…だけではありません! 高い保温性や雪対策、アイゼン装着のための仕様など、雪山で快適かつ安全に過ごすための工夫が随所に凝らされています。登山ガイドの石山高明さんにお話をうかがうと、初心者向けの雪山ツアーでは必ず参加者に「冬用の登山靴は必要ですか?」と問われるのだそう。まずは夏用の登山靴との違いを紹介してもらい、冬用登山靴の種類や選び方のポイントなど、より実践的な解説をしていただきました。

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2021.02.15

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

INDEX

夏用と冬用の登山靴の違い|冬用は寒さや雪に対応している

いちばん違うのは暖かさ

登山靴は夏用と冬用で、その特徴は大きく異なります。一般的に、夏用の登山靴は冬を除く3シーズン用に作られていることが多く、アッパーに保温材などが使われていません。一方、冬用の登山靴は、保温材として中綿が入っていたり、保温性の高いゴアテックスなどが使われていたりします。冬用の登山靴なら、雪の中に足を突っ込んでも、氷点下の稜線でも、暖かく過ごすことができるのです。

雪山を初めて登るようなお客さんには、初めからすべての道具を揃えるのは大変なことですし、1時間程度のスノーシューハイクなら夏用の登山靴でも可としています。もちろん靴下はウールで暖かくしてもらいますが、安定した天候の中、短時間であれば夏用でも歩けなくはありません。

冬用の登山靴(左)と、夏用の登山靴(右)。見た目からも、冬用の登山靴の方ががっしりとしっかりした作りなのがわかる(写真提供・石川高明)

ソールの固さ

ソールの固さは重要なポイントです。夏用の登山靴はソールが柔らかく、力を加えると曲がるものが多いのですが、これは歩きやすさを重視しているため。岩場を歩くときなどは、ある程度安定感が必要なので、固いソールの方がおすすめですが、ハイキングや軽いトレッキングには柔らかいソールの方が歩きやすくて疲れにくいです。

ほとんどの冬用の登山靴は、ソールが固く、手で押したぐらいでは曲がりません。なぜかというと、ソールにアイゼンやスノーシューといった道具を装着するからです。特にアイゼンは、硬い雪などを蹴り込んで差し込むとき、ソールが柔らかいと力が伝わらず、硬い雪を削ることができません。しかも、ソールが曲がってしまうと、アイゼンが外れてしまうこともあるので、とても危険です。

夏用は手で両側から力を加えると、ソールがくにゃりと曲がる(写真提供・石川高明)

冬用は両側からグイグイ押しても、びくともしない(写真提供・石川高明)

ちなみに、ソールの形も違います。夏用は足運びを意識して、爪先の方が多少反り返った形になっていることが多いのに対して、冬用は、爪先までアイゼンを密着できるように、平らな形になっています。

夏用(左)は爪先が反り返り、少し浮いている。冬用(右)は平らで、地面についている(写真提供・石川高明)

ラバーの高さ

冬用の登山靴は、アッパーの下部にラバーが貼ってあります。数センチほどの高さがあり、アッパーを一周するように囲んでいます。つまり、雪の中で長時間いても防水性が高いままということです。

一方、夏用の登山靴は、ラバーは爪先周りだけに施されているものが多いのです。通常、地面が濡れていると、爪先から徐々に湿ってきてしまいます。これを防ぐために、夏用の登山靴は爪先付近を重点的にラバーで守る構造になっているんです。。

冬用(左)のラバーはしっかり立ちあがっている。夏用(右)は爪先だけ(写真提供・石川高明)

コバの有無

冬用の登山靴には、ワンタッチもしくはセミワンタッチアイゼンを装着するときに使う「コバ」があります。コバは細い溝のこと。爪先とかかとの2箇所、ないしは、かかとの1箇所にあり、これらのコバにアイゼンの金具をかけて固定します。ただし、ひと昔前の靴にはコバがついてないことが多いので、紐で縛るタイプのアイゼンを使わないと装着できません。

夏用の登山靴にもコバがついていることがありますが、溝が浅かったり、そもそもソールが軟らかめだったりして、アイゼンの装着には向かないことが多いのです。

冬用はアイゼンの装着を前提としているので、コバがあることが多い(写真提供・石川高明)

冬用登山靴の種類|メリットとデメリットを確認しておこう!

種類は大きく分けてレザー、化繊、プラスチックの3つ

コバの有無や、ゲイター付きか否かなど、注目点はいろいろありますが、ここではアッパーの素材で分類したいと思います。種類は大きく分けて、レザー、化繊、プラスチックの3つがあります。

プラスチックでできたものは通称「プラブーツ」といい、インナーにプラスチック製のアウターを重ねた2重構造のブーツです。かつては使用する登山者もたくさんいましたが、最近はほとんど見なくなりました。メリットとしては防水性が非常に高く、保温性も抜群なこと。また、低価格なのもポイントです。ただし、プラスチックの宿命として、数年で割れてしまうことも多いので注意が必要です。

現在の主流はレザー、化繊の2種で、どちらもメリット・デメリットがあるので確認してみましょう。

レザーは保温性&耐久性が◎

レザーは優れた保温性と、剛性(曲げやねじりの力に対する変形のしづらさ)の高さが特徴です。昔の冬用の登山靴といえば、がっちりした皮革のものが一般的でした。当時は高性能な保温材や透湿防水生地がありませんでしたから、皮革の性能だけに頼っているようなものでしたが、それでも十分に暖かかったんです。最近のレザーブーツは、先に挙げたような保温材や透湿防水生地も併用されているので、使用感は抜群によくなっています。

弱点は化繊ブーツに比べて重量があること。だいぶん軽量化が進んでいますが、片足で1kg前後のものが多い状況です。

クラシックな見た目のレザーブーツ。最近はこうしたオールレザーのブーツにも保温性の高いゴアテックス素材が併用されるようになった

化繊は軽くて価格が抑えめ

化繊の最大の強みは軽いこと。軽量なモデルでは片足で800gくらいと、レザーと200gも異なります。アイゼンやスノーシューを装着することを考えると、軽量なブーツの方が歩行は楽になります。ただし、硬い雪に蹴り込むときなどには、かえって重いブーツの方がパワーがあります。

第2のメリットは価格が抑えめなこと。冬用の登山靴は5〜6万円台が一般的ですから、そもそもが高級な品物ですが、化繊ブーツはレザーよりも数千円安いことが多いです。

化繊はレザーよりは耐久性が低いので、買い換えの頻度は多少高くなると思います。とはいえ、かなりハードに使わない限り、すぐにボロボロになってしまうことはありませんのでご安心を。

化繊ブーツ。化繊がメインで一部にレザーを使ったハイブリッドタイプのブーツもある(写真提供・石川高明)

冬用登山靴を選ぶときのポイント|試着時に靴下とアイゼンのサイズ合わせは必須!

サイズ感をチェック!

夏用の登山靴も同じですが、自分の足に合っているものを選びます。ここで注意したいのが、必ず冬用の靴下を履いて試着すること。冬用の靴下はかなり厚手なので、サイズ感を確かめるときには必須です。

サイズ感のチェック項目としては、爪先に1cmほどの余裕があるか、足の甲はきつくないか、横幅がちょうどよいか、かかとがちょうどよく収まっているか、などがあります。また、歩いたときの感じも大事なので、試着時に少し歩いて感触を確かめておきましょう。

冬用の靴下は厚みがあってふかふか。靴を選ぶときは、冬用の靴下を履いて合わせるのは必須!

アイゼンとの相性をチェック!

アイゼンとの相性は欠かせないポイントです。夏用の登山靴にはない観点なので、見逃されてしまいがちですが、必ず確認することをお忘れなく。。

また、どんな靴とアイゼンの組み合わせでも、「ざっくりと」なら装着できるので、「合っている」と勘違いしやすいのも要注意。

チェックすべき場所は、ソールと爪先&かかとの3箇所。ソールとアイゼンが一直線に重なっているか確認します。浮いているところがあったり、カタカタ揺れたりするときは、靴とアイゼンが合っていません。爪先&かかとも同様で、ぴったりフィットしているかを確認します。特にかかとは、靴によって横幅がかなり異なります。靴によっては、コバにはめて使うタイプのアイゼン(ワンタッチアイゼン、セミワンタッチアイゼン)が入らないこともあります。

靴を買い換えるときなどは、必ず自前のアイゼンを店舗に持っていくなどして相性を確かめましょう。靴とアイゼンを同時に購入する場合は、登山道具店の店員さんは靴とアイゼンのよい組み合わせも知っていますから、遠慮せずに相談してみましょう。

かかとの大きさは、靴によってかなり違う。左の冬用の登山靴は横幅が広くて、コバをはめて使うタイプのアイゼンが入らない(写真提供・石川高明)

本格的に雪山を始めたい人は、冬用の登山靴はじっくり選ぶことをおすすめします。冬山の装備の中でも特に高価なものなので、足に合わない、アイゼンとの相性が悪いなど、使えないものを買ってしまってはもったいない。きちんとメンテナンスをすれば長持ちしますし、ソールを張り替えて使い続けることもできますので、きっと長年の相棒になるはずです。

私のお気に入りの一足。長年の付き合いの相棒

写真/宇佐美博之(提供写真以外)

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

長野県在住。1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス ツェルマットで2年間トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、2008年長野県原村に移住。各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、 地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実 ...(続きを読む

長野県在住。1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス ツェルマットで2年間トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、2008年長野県原村に移住。各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、 地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実施してい る。
原村観光連盟 副会長/八ヶ岳観光圏 観光地域作りマネージャー
公認スポーツ指導者 山岳指導員/長野県信州登山案内人
(株)八ヶ岳登山企画 代表取締役/登山歴30年/スノーシュー歴20年

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