テントにシュラフ、マットなど宿泊に必要な装備を揃えて、いざ山に! といきたいところですが、テント泊には、もう少し用意しなければならない持ち物があります。著名登山ガイドの上田洋平さんに監修いただき、まずは押さえたい必需品に加えて、あると便利なアイテムまでをピックアップして紹介します。
「山小屋泊・テント泊を楽しむコツとスキル|初心者のための基礎知識」記事一覧
2022.12.30
YAMAP MAGAZINE 編集部
まずはテントとその周辺ギアを確認していきましょう。テントの設営や睡眠に欠かせない必携品です。
・テント(本体、ポール)
・グラウンドシート
・ペグ
・マット
・シュラフ(寝袋)
テントは山域や標高、シーズンにあったものを選ぶのがマスト。アルプスであれば防水性や耐風性といった強度のあるものを、またロングトレイルやULハイクであれば軽量性を追求したものを選ぶのがベター。
▼テントの選び方はこちらの記事で
登山テント泊初心者におすすめのテントと選び方
テントの下に敷く強度の高い防水シート。テントの底面を石や木の根などから守り、かつ雨天時には水の侵入を防いでくれる大切なアイテムです。各テントメーカーが出している純正のもの、安価なブルーシートや建築用防水シートのタイベックシートなどで代用するなどの選択肢があります。
テントを地面に固定するためのペグ。購入時に付属するものに加え、山行時の破損や紛失に備えて予備を数本持っていくことを推奨します。強度や重量、適している地面のタイプなどによって素材や形状のバリエーションも豊富です。
就寝時やテントの中で過ごすときに敷くマット。大きく分けて2タイプあり、空気を入れて膨らませるインフレータブルタイプと、発泡させたウレタンなどのクローズドセルタイプがあります。
前者はコンパクトさが特徴ですが、膨らませる手間がかかるのと、パンクのリスクがあります。後者は若干かさばるものの断熱性に優れ、岩の上にも敷いてもOKなど使いやすさに定評があります。
▼マットの選び方はこちらの記事で
テント用マットの選び方・使い方・メンテナンス【山登り初心者の基礎知識】
暖かさや重量、素材の選択肢が様々ありますが、テント泊をする山の季節や気温、使用する場所にあったものをセレクトしましょう。春から秋にかけての3シーズンの低山や夏の高山に対応する、ダウンのシュラフが初心者の選択としては主流です。
▼シュラフの選び方はこちらの記事で
初めてのテント泊を楽しむためのシュラフ(寝袋)の選び方【山登り初心者の基礎知識】
以上が必携アイテムとなりますが、ここで紹介したアイテムを一度に揃えるのは出費もかさむし、テント泊を今後も続けられるか不安、という方は最初はテントをレンタルしてテント泊してみるのもよいでしょう。
つづいてご紹介するのは、「睡眠の質」にフォーカスしたアイテムたち。
・シュラフカバー
・シュラフインナー
・エアピロー
・耳栓
シュラフをすっぽりくるみ、結露や濡れから守ってくれるカバー。透湿性の素材を使用しているものがほとんどで、シュラフ内の結露も抑えつつ保温性をキープ。また、テント内の結露でシュラフが濡れて保温性が下がってしまうことを防ぎます。シュラフの適応温度が足りないときなどにも使用できます。
シュラフの内側に敷くインナー(インナーシーツ)。肌触りがよく内部の保温性も高める効果があり、快適な睡眠を追求したい方には最適。新型コロナウィルス拡大以降、山小屋泊でも、持参を推奨されるケースがあります。
頭を安定させてくれる、ふくらませて使うタイプのまくら。ウェアなどを入れた小分け袋を枕がわりにするより快適性がUP。空気を抜けば薄くコンパクトになるので携行性もバツグンです。
風の音などの環境音が気になる方は耳栓を持っていくのが吉。隣のテントからのイビキが気になるときの対策にも効果的です。
テント内の活動を支えてくれるアイテムをピックアップ。自分の行動をイメージして、必要なものを選んで携行してみてください。
・LEDランタン
・テントシューズ・サンダル
・ドライバッグ
・携帯トイレ
・保温ボトル
・カイロ
・トレッキングポール
夜間のテント内の調理や作業時に活躍する灯り。光が拡散するタイプなので目に優しく、ヘッドライトのバッテリーの消耗も抑えられます。登山時に歩きながら充電ができる、ソーラーパネルのモデルがおすすめ。
テント場で過ごすときに履くサンダル。外で調理をしたり、トイレや山小屋に行ったりするときには登山靴をいちいち履くのも手間なので、ライトなテントシューズやサンダルがあると楽。
シュラフや着替え、電子機器などの濡らしたくないギアの携行や、雨天時のテントの収納に活躍する防水性のスタッフバッグ。テント泊に限らず、山行には欠かせないアイテムなので、サイズ別に複数持っているといいでしょう。
山小屋に併設されたテント場ならトイレを利用できますが、トイレのない避難小屋やお腹の調子が悪い緊急事態には、自身で処理する必要も。登山用の携帯トイレを持っていれば、突然の豪雨で外に出られないときなどにも用を足せて便利。環境に負荷をかけることもありません。
冷え込むシーズンは保温ボトルにお湯を入れておくと安心。コーヒーを飲みたい、体が冷えたときに温まりたいなど、都度お湯を沸かす必要もなく、行動がスムーズになります。
朝晩の冷え込み対策に活躍する使い捨てカイロ。ジャケットのポケットに入れて手の保温をしたり、寝袋の足元に入れて保温力を高めたりと用途はさまざま。
日帰り登山に比べて荷物が多くなるテント泊登山では、歩行をサポートするトレッキングポールがあるといいでしょう。バランスがとりやすくなり、膝の負担も軽減できます。
・ダクトテープ
・補修キット
・細引き(パラコード)
・エマージェンシーシート
強度の高い補修テープはテントの簡易的な修理だけでなく、壊れたギアの応急処置にも活用可能。行動範囲が広がり山行時間も長くなるテント泊では、自身でトラブルに対応する装備を持っていくのが鉄則です。
テントに穴が空いたり、ポールが折れてしまったりしたときの修理キット。購入時にテントに付属しているのであれば、忘れずに携行しておきましょう。
強風時にテントを固定したり、テント内で濡れたウェアやグローブなどを乾燥させたりと、何かと出番の多い細引き。太さ2mm程度のものを4mほどにカットして、複数持っていると便利。
山行時に怪我をして動けなくなったり、予想以上に寒かったりしたときなど、体の保温力をキープしてくれる軽量なシート。テント泊で冷え込みが強いときにシュラフの上にかけて使うことも可能です。
テント泊の必携品と、あると便利なオプション的なギアを紹介しました。「思った以上にいろいろ必要なんだな」と思うかもしれませんが、ご自身の山行に合わせて、適切なものをセレクトすればOK。テント泊を繰り返すうちに「やっぱりあったら方がいいな」「これはなくてもいい」と、自分だけのギアリストが完成していくのも楽しみのひとつです。
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1979年2月10日生まれ。愛知県名古屋市出身、神奈川県藤沢市在住。2児の息子の父。
日本の山々だけでなく、海外の山々(アフリカ最高峰キリマンジャロ、南米最高峰アコンカグア)への登山経験を経て、2017年から富士山の登山ガイド。
2019年4月に日本山岳ガイド協会登山ガイドステージI資格、2022年4月に登山ガイドステージII資格を取得し、専業ガイドに。
山岳写真を撮るため、フルサイズ一眼レフ、ジッツォの三脚、雲台、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズを担いだ登山も敢行。キャンプ、空手、筋トレ、旅行、読書、トレイルランニング、ギター、ゲームなど趣味多数。