ミレー100年の集大成|快適な背負い心地を求め「サースフェー」が全てを刷新

YAMAP MAGAZINEの読者なら、アウトドアブランド「ミレー」の名前を聞いたことがある人も多いはず。今回は、ミレーのフラッグシップ(旗艦)モデルであるバックパック「サースフェー(SAAS FEE)」が、大型アップデートで、とても使いやすくなったことを紹介します。

なお、記事の末尾にて、本記事で紹介している「サースフェー NX」をお試しいただけるYAMAPユーザーモニターを募集しますので、ぜひ最後までご覧ください。
※募集期間は3/28(火)で終了しました。

2023.03.14

大関直樹

フリーライター

INDEX

人類初の8,000m峰登頂でも活躍したミレー

旧モデルのサースフェーも登山者から高い人気を得ていましたが、今回のアップデートでは、背負い心地、耐久性、収納性などあらゆる面での改良を実施。主力商品であるサースフェーを、これほど大胆にモデルチェンジしたのは、ミレーの並々ならぬ意気込みを感じます。

では、新サースフェーがどのように変わったのか見る前に、ミレーがどんなアウトドアブランドなのか、簡単に紹介しましょう。

創業100年を越す老舗、ミレーの名前が一躍世界に知られるようになったのは、1950年のことでした。人類が初めてヒマラヤの8,000m峰(アンナプルナ)に立ったとき、2名の初登頂者が背負っていたのはミレーのバックパック「アンナプルナ50」だったのです。

この出来事をきっかけにミレーは、登山用バックパックのスペシャルブランドとしての地位を確立。バックパックに初めてナイロン素材を使用した「シェルパ50」を1964年にリリースすると大反響を呼びます。このアイテムはミレーが独自開発し特許を取得したストラップをはじめ、フォーム入りのパッド、シームレス(縫い目が無い)など、これまでにない革新的な機能が搭載されたものでした。

そして、ミレーの100年以上に渡る技術の集積が産み出した傑作が今回ご紹介する「サースフェー NX」。ちなみにサースフェーとは、スイス南部の山岳リゾート地の地名です。

それでは、サースフェー NXがどのように変わったのか、じっくりと見てみましょう!

新サースフェーの5つのリニューアルポイント
1:雨と汗を防ぐドライの追求
2:ストレスフリーの背負い心地
3:ユーザビリティ抜群のポケット
4:収納力のさらなる向上
5:ディテールにも機能満載のこだわり

リニューアルポイント①:雨と汗を防ぐドライの追求

表地のシリコン加工と筒状デザインによる雨の侵入防止
新サースフェーは、表地にシリコン加工を施すことで、耐水圧が1,500mm以上になりました。これは一般的なバックパックのレインカバーやテントのフライシートと同じくらいの耐水性能。小雨がパラツつく程度なら、レインカバー無しでも歩くことができます。さらにメイン気室を1枚の筒状の生地で仕上げ、縫い目を極力減らしたので、雨の侵入を最大限に減らすことに成功しました。

コーデュラナイロンにシリコン加工が施されているので、撥水性と耐久性が非常に高い

一枚の布で筒状のデザインになったサースフェー NX(写真左)。写真右の旧モデルと比べると縫い目を極力減らしたことで雨の侵入を大きく防げるようになった

3層構造で常にドライ感がキープされる背面パッド
夏山登山でバックパックを背負っていると、背中が汗でビショビショになってしまったという経験はありませんか。しかし、サースフェー NXならそんな不快な思いをすることはありません。3層構造の背面パッドが、瞬時に汗を吸収し拡散してくれるので、濡れてもすぐに乾き、快適な背負い心地が持続します。この機能は、旧モデルに搭載されていましたが、ユーザーからの評判がよかったのでサースフェー NXにも引き継がれたものです。

背面はメッシュで通気性の高い構造。背中に当たる部分はムレを防ぐパッドが入っているので快適性も損なわない

リニューアルポイント②:ストレスフリーの背負い心地

なで肩の人にも自然にフィットするショルダーハーネス
バックパックで最も大切なのは、長時間背負っても疲れにくいこと。旧モデルも、背中に吸い付くような重心設計がされているため、とても背負いやすいと評判でした。しかし、ミレーはさらなる快適性を追求して、ショルダーハーネスの取り付け角度をやや斜めに改良。日本人に多いなで肩気味の人でも、ハーネスが自然に肩にフィットするようになりました。

サースフェー NX(写真上)は、旧モデル(写真下)とくらべるとショルダーハーネスの取り付け角度が斜めに設計されている。これによって肩のフィット感がさらに向上した

重心を安定させてくれるボディフィットストラップ
登山中は、バックパックが身体にピッタリと密着していると、重心のコントロールがしやすくバランスを崩しにくくなります。そこでサースフェー NXは、パック本体をより身体に近づけるためにボディフィットストラップを搭載。このストラップを引くことで、荷物の量にかかわらずより荷重を腰部分に引き寄せることができるため、安定性がさらに向上しました。

サースフェー NXは、パック本体にストラップがついている(写真左)。これによって、旧モデル(写真右)よりも、荷重をさらに腰に引き寄せられるようになった

レディスモデルは、女性の体型を考慮した設計
サースフェー NXのサイズ展開は、S、M、Lの3タイプ。このうちSはレディスモデルで、M、Lはユニセックスモデルとなっています。レディスモデルでは、ショルダーハーネスのシェイプを曲線にすることで胸元を圧迫せずに身体にフィットするように設計。さらにウエストハーネスも短めに作られているので、細身の女性でもしっかりと腰で荷重を支えることができます。

上の写真がレディスモデル。下のユニセックスモデルに比べてショルダーハーネスのシェイプが胸を圧迫しないように曲線で設計されている

リニューアルポイント③:ユーザビリティ抜群のポケット

行動中も出し入れ可能なチェストポケット
チェストハーネスには、多彩な用途に利用できる2つメッシュポケットを搭載。スマホを入れて撮影ポイントでサッと取り出したり、ドリンクボトルを入れて歩きながらの給水がスムーズにできます。素材は伸縮性のあるメッシュなので、6インチオーバーの大型スマホもストレスなく出し入れできるのは便利です。

左右のチェストハーネスは、メッシュポケットになっている。スマホやボトルのほかに、サングラスや行動食を入れておくこともできる

アイテムに合わせて拡張できるフォールディングポケット
ウエストハーネスの左部分には、マップやカメラ、ハンドタオルなど行動中に頻繁に使用するアイテムを収納できる大型ポケットを装備。使わないときは、折りたたんで面ファスナーでハーネスに留められるので邪魔になりません。このくらいの大きさのポケットがあれば、これからはサコッシュを持たなくても済みそうです。

折りたたみ式の大型ポケットをウエストハーネスに搭載。地図など行動中に頻繁に使用するものを入れておくのに便利(右写真)。写真左のように折りたたんだ状態でも使用可能

2方向からアクセス可能なサイドのメッシュポケット
右サイドには上と横2つの開口部からアクセスできるサイドアクセスポケットを配置。バックパックを背負ったまま横の開口部からドリンクボトルや薄手のウインドブレーカーなどを出し入れすることが可能。休憩時にバックパックを下ろして、わざわざ必要なものを取り出さなくても、瞬時に水分補給やウェアの着脱ができるのは、本当に便利です。

左写真のようにウインドブレーカーをサイドポケットに入れておくと、寒さを感じたらパックを背負った状態でも瞬時に取り出すことができる(右写真)

リニューアルポイント④:収納力のさらなる向上

パッキングしやすいデザイン設計
前述のようにメイン気室をシンプルな筒状デザインにしたことで、防水性が向上しただけでなくパッキングもしやすくなりました。テントやシュラフ、レインカバーなど登山用具には円筒形で収納するものが多いので、角型のバックパックだと四隅にデッドスペースが生まれがち。しかし、筒状だとストレスなくパッキングできます。しかも、メイン気室の開口部を斜めにしたことで、トップスカートをつかみやすくなり荷物の出し入れがとてもラクになりました。

開口部を斜めにしたことで、腰をかがめずにサッと荷物を出し入れできる。一見すると、それほどの機能に見えないかもしれないが、使ってみると本当にラクなのが実感できる

パックの正面にも大きめのギアが取付可能
スノーシューやワカン、ウレタン製のスリーピングマットなどの大きなギアは、サイドのコンプレッションストラップを使ってパック正面に取付ることが可能です。さらに、旧モデルでは細めだったベルトを太くしたことで、安心感を持って持ち運ぶことができます。

サイドコンプレッションストラップをフロント部分に回すことで、ワカンやスノーシューなど大きなアイテムを取付けられる

2気室でも長モノを入れられる便利な構造
サースフェー NXは、重量バランスを調整しやすく、荷物の取り出しがスムーズな2気室構造を採用しています。その仕切り部分は、旧モデルはファスナーだったのですが、新モデルでは2本のベルトに改良。これによってテントポールなどの長い荷物は、上下の気室を貫通して入れられるようになりました。もちろん、行き帰りで荷物の量が大きく減ったときなどは、1気室としても利用することができます。

パック本体は2気室構造になっているので、フロントからも荷物を出し入れできる(左写真)。仕切り部分がベルトなのでポールなどの長モノは、貫通して収納可能(右写真)

荷物の量によって容量をプラスできる
「サースフェー NX 40+5」の「+5」とは、40Lのバックパックでも、トップスカートを伸ばして45Lまで拡張できることを表しています。これはトップスカートを長めに設計し、雨蓋の高さをストラップで変えられるからできること。長期間の縦走で荷物が多いときなどは、本当に便利な機能です。付属のレインカバーも大きめに作られているので、容量を拡張しても雨に濡れることはありません。

通常時(左写真)と容量を増やしたとき(右写真)の様子。トップスカートもシリコン加工されているので、レインカバーと合わせて荷物の水濡れを防いでくれる

リニューアルポイント⑤:ディテールにも機能満載のこだわり

悪天候でも安心なレインカバーが付属
シリコン加工を施し、縫い目を減らすことで雨に強くなったサースフェー NXですが、縫製部分がゼロではないので強い雨のときは、レインカバーが必要です。そこで、旧モデルと同様に脱落防止ストラップのついたレインカバーが雨蓋のポケットに付属。カバーはパック本体に被せた後にストラップで固定する設計になっているため、強風時でも風に飛ばされる心配がありません。

最近は、レインカバー付属のバックパックが増えているが、風に飛ばされないための脱落防止ストラップがついているのは便利

細かな部分にも隠れた機能が充実している
ミレーのバックパックを使っている人は、ご存知かもしれませんが、登山中に指をかけて荷重を一時的に軽減させるハンドレストストラップは、サースフェー NXでも健在です。一見すると普通のループテープに見えますが、ここに親指を入れるだけで重心がブレなくなるので、とても歩きやすいです。

また、チェストベルトのバックルには、ホイッスルを搭載。もし万が一遭難してしまったときや仲間とはぐれてしまったときは、すぐに知らせることができるのでとても便利。このようなディテールにまでユーザーの使い勝手を考えた機能があるのも、ミレーのバックパックの大きな特徴と言えるでしょう。

なんの変哲もないストラップに見えるが、これがあると非常にラク。写真のように親指をハンドレストストラップに引っかけて歩くと、肩の荷重を分散できる

チェストベルトのバックルは、ホイッスルが内蔵されている。このような細部まで、登山者のユーザビリティを考えているのが、ミレーのバックパックだ

サースフェー NXは「早く山で使ってみたい」と思わせてくれるバックパック

以上、新しくなったサースフェー NXの5つのリニュアルポイントについて紹介しました。旧モデルも名機として評判でしたが、サースフェー NXは耐水性、背負い心地、収納性などあらゆる面でさらに進化を遂げたことがわかっていただけたと思います。

実際、今回の記事を書くにあたってサースフェー NXを触ってみて思ったのは、「このバックパックを早く山で使ってみたい!」ということ。仕事柄、いろいろなアウトドアギアに触れることが多いのですが、これほど山で試してみたいと感じたことは、それほど多くありません。本当に画期的なバックパックが生まれたと思います。しかも、これだけドラスティックにアップデートされたにもかかわらず、価格は旧モデルに比べて10%ほどしかアップされていないのもうれしい限りです。

次回は、サースフェー NXを山で使ってみたインプレッションをYAMAPユーザーのみなさんに報告させていただきますので、ご期待下さい!

ミレーの中型バックパック「サースフェー NX」・YAMAPユーザーモニター募集

今回の記事で紹介した「サースフェー NX」のモニターになっていただけるYAMAPユーザーを「5名」募集します。(ユーザーモニターの募集は終了いたしました。ご応募いただいた皆さまありがとうございました。)

モニターに選定された方には「サースフェー NX」を、実際に登山で使用し、その使用感や感想をYAMAPの活動日記でレポートしてください。また、レポートいただいた後で、ユーザーモニターのみなさんによる「サースフェー NX」のオンライン座談会を実施し、レポートと合わせてYAMAP MAGAZINEの記事にする予定です。

なお、お送りした「サースフェー NX」は、そのままプレゼントさせていただきますので、奮ってご応募ください。募集の詳細は以下のリンクから。

原稿:大関直樹
撮影:永易量行
協力:ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン

大関直樹

フリーライター

大関直樹

フリーライター

小中学校はボーイスカウト、高校はワンダーフォゲル部で自然に親しむ。好きなものは、タバコとお酒と競輪。最近は、山頂で一服すると周りの目が厳しいので肩身が狭いのが悩み。「みなさんが山で嫌な思いをしないように風下でこっそり吸いますので、許してください」