テントを長持ちさせるための手入れ・メンテナンス【山登り初心者の基礎知識】

テント泊を楽しみ、自宅に帰って装備を収納。そんなときに、「テントはこのままで大丈夫?」と不安に思うかもしれません。答えは、「濡れていたり、汚れがついたままだとNG」です。しっかりと手入れとメンテナンスを施さなければ、テントの寿命が縮まってしまうことも。山行を支えてくれる大切なテントのお手入れについて、紹介していきます。

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2023.05.19

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

メンテナンスが必要な理由

山で使ったテントは、土や泥、砂がついていたり、雨や結露で水分が付着しています。それ以外にも、調理時の汁や油はね、こぼした飲み物が付着して汚れてしまうことがあります。そのままにしておくと生地にシミがついたり、劣化したり、さらにはカビや悪臭の原因になるなどして、最悪の場合使えなくなってしまう可能性も否めません。

メンテナンスが必要な理由は以下のようなものが挙げられます。

フライシートの撥水性がなくなる

テントの最も外側にあるフライシートは、撥水性のある生地を使用しています。その加工が劣化してしまうと撥水性や透湿性がなくなり、雨天時に水が染み込んできてしまうことも。

生地が劣化する

劣化する理由はいくつかありますが、生地に付着した水がコーティングを痛めてしまう加水分解や砂や泥で擦れて物理的にダメージを与えてしまうケースなどがあります。

使用による経年変化

岩場の上に設営したり、強風に煽られたりすると、少しずつテントにダメージが蓄積していきます。紫外線による生地の劣化なども、どうしても避けられない経年変化です。

山行後の手入れの基本

山行から戻ったら、テントを棚に収納する前に、汚れがないか、濡れていないかをチェックしましょう。基本は乾かして、汚れを拭き取ればOKです。

フライシートとインナーを乾燥させる

結露を拭き取ったとしても、多少の水分はどうしても生地に付着したまま。シーツを干す要領で、ベランダの物干し竿などで乾燥させましょう。生地の劣化を避けるために、できるだけ直射日光に当てないようにするのがポイントです。

土や泥、砂などの汚れを取る

テントの裏側やペグを地面に打ち込む(ペグダウンする)四角の周辺などは、設営時に気をつけていても汚れが付着しやすい箇所。濡れた雑巾やマイクロファイバーのクロスなどで拭き取りましょう。テントを撤収する際に、できるだけ汚れを落としておくと、自宅での作業が軽減されます。

拭き取りでは落ちない汚れや匂いなら洗うことも

食事や汗の匂いがインナーシートに染み込み、テント内にいると臭いと感じるときは、思い切って洗ってしまいましょう。大きなタライやバケツ、もしくは浴槽にぬるま湯を貯めてすすぎ洗いをするだけで、かなり軽減されます。汚れがひどい場合は、少量の中性洗剤を使用し、しっかりすすぎましょう。

自分でできる修理・メンテナンス

テントを使っていると、穴が空いたり、傷がついてしまったりといったダメージを受けてしまうことも。軽微なものであれば自分で補修することも可能です。山という過酷な環境で使う道具だからこそ、常にメンテナンスを施して良好な状態をキープしておきましょう。

穴が空いてしまったら

木の枝が刺さったり、岩に擦れて穴が空いてしまった場合は、テント補修キットを使うのがおすすめ。

アウトドア用品店などで購入できるもので、山行中の破損に備え、補修用のシールや生地を少し携行・常備しておくと安心です。強度の高いダクトテープがあると大きな破損にも対応できます。

縫い目から雨漏りがしてきたら

フライシートの縫い目には、防水性を高めるシーム処理が施されています。この防水性はテントを使っているうちに弱くなってきたり、剥がれ落ちてきてしまうケースも少なくありません。そんなときはシーム処理を自身でやってみましょう。こちらも低温アイロンをかけることで対応できる専用キットなどがあるので、手順を確認して挑戦してみるといいでしょう。

撥水性が落ちてきたら

雨で濡れたり、紫外線を受けたりすると、フライシートの撥水性は次第に落ちていきます。雨粒を弾かなくなったなと感じてきたら、専用の撥水スプレーをかければOK。室内などではスペースや換気の問題もあるので、晴れた日に公園やキャンプ場などでテントを設営し、処理をしておくとよいでしょう。

保管時の注意点

汚れを落とし、しっかりと乾かしてスタッフバッグに入れたらテントを収納しましょう。しかし保管場所にも注意が必要です。

風通しのよい場所に置く

乾かしきれなかった水分を飛ばしたり、湿度が溜まらないようにしたりするため、可能であれば風通しのよい場所に置くのがベター。棚や靴置きに入れておくのもおすすめです。また、クローゼットや衣装ケースに収納する際は、乾燥剤を一緒に入れておくとよいでしょう。

高温・多湿にならない場所に置く

直射日光が当たったり、風通しのよくない湿度の高い場所に入れておくのはNG。生地が劣化したり、カビが生えてしまうこともあります。できるだけ温度変化の少ない場所を選びましょう。

山行前の点検も忘れずに

久しぶりにテント泊をするシーズン開始時には、テントの点検をしておきましょう。収納する際には気づかなかったダメージや劣化が見つかることもあります。必要に応じて対策を施してから山行に挑むのが鉄則です。

確認したいポイントを、以下にまとめてみました。

穴が空いたり、劣化していないか

テントの快適性や安全性を担保する要素のひとつが生地。ダメージの有無や、防水性が保たれているかを確認しておきましょう。

ポールの不具合がないか

ポールが曲がっていたり、内部のゴムが劣化したりしていないかも確認しましょう。ポールの組み立てはゴムの伸縮性が頼りなので、もし伸び切っていたら交換しておくことが大切です。

ループが切れていないか

ペグを打ち込んだり、ガイライン(テントを張る際に使用するロープ)を通すループが切れたり、ほつれたりしていないかもチェック。破損があると、最悪の場合、設営ができなかったり、強風時に正しい耐久性が得られなかったりしてしまいます。縫製が関わる修理の場合は、メーカーに対応してもらうのが安心です。

ガイラインが正しく接続されているか

テントの安定性を高め、強風でも耐えられるように設けられているガイライン。テントの撤収時などに外れてしまうこともあるので、紛失していないかも確認しておきましょう。切れてしまうこともあるため、数本予備を用意しておきましょう。

末長く大切なテントを使い続けるために

テントを使っていれば少しずつ不具合が出てくるのは、仕方ないこと。しっかりと手入れをし、補修をすることで製品の寿命はグッと伸びます。また何より、安全で快適なテント泊のためには、テントを万全の状態にキープしておくことが大切です。

山行後の簡単なケアはもちろん、定期的な点検をしておくことをおすすめします。

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。

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