さまざまな山で、いろいろな人たちに「なぜ山に登るのか?」をインタビューする『やまポトレ』連載。今回は、年間登山者数日本一の山・高尾山(599m、東京都)へ。都心からのアクセスのよさに加え、都内とは思えない豊かな自然が残る山には、まさに老若男女、そしてトレイルランナーや縦走登山者、さらには外国人ハイカーまで、山を愛する多様性あふれる人たちが集います。前回に続き、今回は高尾山・後編をお届けします。
2023.06.27
YAMAP MAGAZINE 編集部
高尾山登山には似つかわしくない、ひときわ大きなバックパックを見かけた編集部。声をかけてみると「山岳部の新歓登山」とのこと。今春入学したばかりの男子学生3人に山の楽しさを伝えようと、大学2年生の先輩が先導して奥高尾の山を縦走してきたのだそう。
陣馬山(854m)からのロングハイクをリーダーとしてナビゲートしていたのは、大学2年生のすずなさん。高校時代はスポーツクライミングに打ち込むだけでなく、山岳部にも所属。どっぷり登山に浸かった高校生活を送っていたのだそう。
今回は、明治大学体育会山岳部の将来を左右する(?)新入生を連れての新歓登山とあり、笑顔とともに責任感溢れる表情が印象的でした。
「山岳部では、体力も技術も求められるハードな山行も経験できます。30kgくらいの荷物を担ぐこともありました。今年の3月は先輩と一緒に剱岳(2,999m)にチャレンジしたのですが、とても思い出深かったですね」
山ポトレ vol.20|すずなさん
年代:10代
職業:学生
縦走登山からスポーツクライミングまで、山を楽しむ体育会山岳部2年生。
1年生のこうしろうさんは、入部を決意したひとり。子どもの頃から自然が好きで、旅行先もアウトドア要素がある場所を選ぶことが多いのだとか。
「山に登りたいと漠然と思っていて、山岳部の門を叩きました。実はワンゲル部もいいかなと思っていたのですが、抽選で落ちてしまって(笑)。でも、雪山とかも登ってみたいので、本格的な登山ができる山岳部でよかったのかなって思い始めています」
山ポトレ vol.21|こうしろうさん
年代:10代
職業:学生
入部したらいろんな山に登って絶景を見てみたい!
こうたさんは、高校生まではサッカー部だったそう。山岳部に興味を持ったのは「ツラそう」だから。厳しい苦行にチャレンジし、それを乗り越えていきたいと話してくれました。
「大学では新しいことに挑戦したいと思っていました。山岳部はキツそうなイメージがあって、とにかく体力的にも精神的にもタフになれる環境に身を置きたかったんです。山の経験はまだないのですが、重い荷物を背負って山を登っていくことはもちろん、先輩から聞いた景色のことや仲間との話などから、これまでにない経験ができそうだなと期待しています」
山ポトレ vol.22|こうたさん
年代:10代
職業:学生
登山道具がないので今日はサッカーウェアで。「少しずつ装備を揃えていろんな山に行きたい!」
大学での部活動は、登山部だけでなく、ヨット部と射撃部でも迷っているという、としやさん。その理由は、なんと「将来自衛官になりたいから」。野外活動でのスキルアップを目論み、入部を検討しているのだとか。
「ヨット部は、海上自衛隊に興味があるからで、射撃も同じような理由です。でも、体力もつきそうだし、登山経験があったら将来役に立ちそうなので、総合的には山岳部かなと思っているところです(笑)」
山ポトレ vol.23|としやさん
年代:20代
職業:学生
将来は自衛官を目指し、体力と山岳技術が身に付く山岳部へ。
品川の山岳同人会に所属しているというシニアハイカーの御三方。年に数回の「大登山」に向けての体力維持と親睦のために、高尾山に登りに来たのだそう。仲間とともに何十年も登山を楽しむ、登山=人生を体現する素敵な方々でした。
かわいらしいハットが光るさとしさんは、登山歴50年以上の大ベテラン。学生時代に登山をはじめ、今では毎週のように山に出かけているのだそう。5月には残雪の槍ヶ岳(3,180m)、7月は白馬の縦走登山など、今年も山のプランが目白押し。
「以前は仕事の関係で北海道にいたので、いろんな山を登りました。思い出深いのは石狩岳(1,967m)。原始林の美しさにうっとりしてしまいました。後期高齢者ですが、登りたい山がまだまだたくさんありますね」
山ポトレ vol.24|さとしさん
年代:70代
アルプス山行にも挑む現役ハイカー&コアなYAMAPユーザー。
あやこさんが山岳会に入ったのは今から20年前、子育てがひと段落してから。それ以前も20代の頃に、仕事場の仲間と那須岳(1,915m)やアルプスに出かけていたのだそう。当時は、冬はスキーにものめり込むなど、アウトドアが大好きなのだと話してくれました。
「思い出に残っているのは剱岳(2,999m)ですね。20代の頃に仲間と登ったのが初めてですが、山岳会に入ってからも登りに行ったことがあるくらい、とても好きな山です。とにかく景色が素晴らしいんです。機会があればまた行きたいです」
山ポトレ vol.25|あやこさん
年代:70代
「仲間と登山に出かけるのが生きがい。今日は南高尾から登ってきました」
ほがらかに取材に応じてくれた、きよしさん。最初に登った山は北アルプス。なんと小学校5年生のときにアルプス縦走を経験したのだとか。その後は仕事に打ち込み、10年前に山岳会に入会し、ふたたび山を楽しんでいるのだそう。
「親父が大学の山岳部出身だったので、小さい頃から山に連れていってもらっていました。蝶ヶ岳(2,677m)に登って、常念岳(2,857m)、大天井岳(おてんしょうだけ、2,921m)、燕岳(つばくろだけ、2,762m)を縦走しました。その印象がずっと残っているんです。当時背負っていたのは、横長のキスリングというザック。もう60年以上になりますね」
山ポトレ vol.26|きよしさん
年代:70代
「今日も下山後はビールで乾杯します(笑)」
3回目の取材となる『やまポトレ企画』。今回は、東京都に位置しながらも、豊かな自然が残る高尾山をセレクト。はじめて登る山としても人気を集める山ですが、あらためて訪れてみるとハイカーの多様さに驚くばかり。
そして、「人の数だけ山の楽しみ方があるのだな」と、山の素晴らしさを再認識しました。この記事を見て、「また高尾山に行ってみようかな」と思った方もいるでしょう。山の緑が美しい今、きっと楽しい山歩(さんぽ)ができるはずです。
みなさんの「山に登る理由」を伺いに、またどこかの山で編集部が声をかけさせていただきます。ぜひ、素敵な山でのエピソードを聞かせてくださいね!