登山の楽しさに彩りを添える「山ごはん」。最初のうちは、ほかの人がどんな食材を使っているのか、気になるものです。今回はコンビニ食材から、調味料や加熱調理で作る本格的なものまで、山ごはんのコツを紹介します。
2023.01.06
YAMAP MAGAZINE 編集部
登山では基本的に冷蔵で保存ができないため、常温で保存できる食材を選ぶのが鉄則です。
フリーズドライ食品は、凍結させた食品を真空状態に置き、水分を昇華させ乾燥させた食品。常温で長期保存ができ、コンビニやスーパーでも売られています。乾物やレトルトパウチの食材、缶詰、カップラーメンなども定番。登山口へ行く途中に立ち寄るコンビニで手軽に入手でき、必ずしもアウトドアショップでそろえる必要もありません。
ここからは、山ごはんにおすすめの食材の具体例をレベル別に紹介します。
おにぎりやお弁当は調理不要で手軽に食べられるのがメリット。家や会社で食べると味気なくなりがちですが、山で食べるごはんは、何を食べてもおいしいと感じさせてくれるのが、おにぎりとカップラーメンです。
日帰り登山でお昼に食べるなら当日の朝にコンビニでおにぎりやお弁当を購入すると良いでしょう。
カップラーメンは有人の山小屋でも販売されていることが多いですが、持っていくのがベター。山小屋で購入する予定なら、事前に確認を。
サーモスの「山専用ボトル」など保温性の高いステンレスボトルにお湯を入れておけば、バーナーやコッヘルを使ってお湯を沸かさなくてもアツアツのラーメンを楽しめます。
山頂でのラーメンはいつ食べても最高です。ただ、ラーメンを持っていっても箸を忘れることがあるので、忘れずに。
お湯を入れるだけで炊きたてご飯が楽しめる「アルファ米」や、フリーズドライは、乾燥しているため食中毒のリスクが低く、軽量化もできる食材です。
アルファ米は白米や味付けごはんが基本でしたが、最近ではチャーハンのほか、インドネシアのナシゴレン、インドのビリヤニなどのエスニック系もあり、選択肢が増えました。
異なる種類のアルファ米が入ったバラエティパックもあるので、災害時の備蓄も兼ねて購入しておいても良いでしょう。
フリーズドライ食品はお湯を注ぐだけで調理ができて、保存性が高いのが特徴。登山用品店だけでなく、スーパーやコンビニでも売られていて、その種類は多岐に渡ります。
・みそ汁
・スープ
・カレー
・丼もの(親子丼、牛丼、麻婆丼)
・雑炊
・リゾット
・にゅうめん
アルファ米と合わせれば、どちらもお湯だけで調理が完結。お手軽、軽量な食材なので、調理手段の限られた登山で、これを利用しない手はありません。山行が長期になる縦走登山では、食材の軽量化はかなり重要な要素です。
フリーズドライで軽量化もいいですが、もう少し本格的な料理を山で食べたい、という人にはレトルト食品や缶詰がオススメ。
コンビニでも売られていますので、うっかり買い忘れた場合も、登山口まで行く途中のコンビニで当日に買えばなんとかなります。
しかし、缶詰やレトルトパウチ食材は、水分を多く含むため、重量とかさが増すのが難点。日帰りや縦走登山の1日目に食べるのであれば許容範囲です。
かつては缶詰でしか入手できなかったツナがプラスチック容器に入ったものもあるので、そのような食材を積極的に活用して軽量化できます。缶詰の味も進化しており、お酒の肴には最高です。
レトルトパウチ食材の温め方は、コッヘルにレトルトの袋がひたひたになるまで水を入れてバーナーに着火して温めるか、レトルトの中身をコッヘルに入れて直接温めるかの2通りです。
山ごはんに慣れてきたら生肉や生野菜を使って本格的な山ごはんにチャレンジ!とはいえ、生の食材やコッヘル、フライパン、バーナー、水をあわせるとかなりの重量になるため、最初は近所の低山でお昼ごはんを作ってみることをおすすめします。
材料と混ぜて炒めるだけの簡単な調味料を使うと、お手軽に本格的な山ごはんが作れます。上の写真の麻婆茄子は、合わせ調味料にナスとパプリカを切って炒めただけです。
山ごはんの食材を山に持っていくのには、コツがありますので紹介します。
山ごはん食材持ち運びのコツの一つ目は、「食材を献立ごとに小分けにすること」。
スーパーやコンビニで売られている食材は過剰包装になっていることもしばしば。山で持ち帰るゴミを少なくするため、包装をある程度自宅で捨て、ジップロックなどの密封できるポリ袋にまとめておくと、山での調理がスムーズにできます。
上の写真のガーリックシュリンプを例にあげると、以下の通り。
・エビは登山前日に背わたを取ってオリーブオイルとにんにくみじん切りに漬け込み、ジップロックに保存
・バターは一回分に小分けにして、小さい容器に入れる
・塩、こしょうなどの調味料も、少量を小さい容器に入れる
・レモンは切りたてを使いたかったので、あえて1玉持っていく
調味料を入れる小さい容器は100均で売られているので、登山使えそうなものを探すのも楽しみです。
山ごはん食材持ち運びのコツの二つ目は「調理用の食材は切っておくこと」。前日の夜に可能な限り切っておき、ジップロックなどの密封ポリ袋にいれておけば、包丁やまな板を山に持っていかずにすむため、荷物の軽量化ができます。
あらかじめカットされた野菜がスーパーで売られているので、それらを持っていくと時短で作れるのでおすすめです。
肉や魚は細菌が増えやすいため、冷凍したものを準備しましょう。一般的に食材が10℃以下なら細菌の繁殖を抑えられます。食中毒防止の観点から、生肉や生魚は必ず1日目に食べきるようにして下さい。
冷凍しておけば、登山初日のお昼にはちょうど解凍されています。夜に食べる場合は保冷剤として凍らせたペットボトルと一緒に保冷バッグに入れて持っていくのもおすすめです。
注意点として、生肉を使う時は必ず加熱しましょう。肉の中心部温度を75℃にして1分以上維持すると、菌は死滅します。
山ごはんは準備が8割。山の中では残りの2割の工程として、煮る・炒めるなどの火を使った調理をさっとできるようにしておきます。
<登山前日からの下準備の流れイメージ>
登山前日の夜
・食材を事前に切る
・下ごしらえ(下味をつける等)をする
・冷蔵庫(野菜)や冷凍庫(肉・魚)に保存
登山当日
・冷蔵庫や冷凍庫から食材を取り出し、保冷バッグなどに入れ、ザックで持ち運ぶ
山で食べれば、自宅ではあまり感動のないカップラーメンやコンビニ惣菜も、絶品料理にはやがわり。山頂の達成感は最高のスパイスです。登山が初めての知人に山ごはんをふるまってあげれば、きっと山登りが好きになってくれるはず!
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執筆・素材協力=上田洋平(登山ガイド)