家から登山口まで直行、山頂を目指し、下山したら急いで帰宅。そんな「直線的」な登山計画を立てていませんか? 今回ご提案するのは、寄り道OKの「山麓旅」。じっくり見て、食べて、体感することで、ピークを目指さずとも心身で山を感じることができるのです。
登場するのは漫画家の鈴木ともこさんとアウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さん。「麓の街まで楽しんでこその山歩き」、「山とつながっているという意味では、街歩きも縦走の延長」と、話す山旅の達人のふたりが厳選した山梨の「山麓」スポットを紹介しましょう。
※YAMAPでは、やまなし県央連携中枢都市圏の9市1町(甲府市・甲斐市・北杜市・韮崎市・南アルプス市・中央市・笛吹市・山梨市・甲州市・昭和町)にて、YAMAP×やまなし県央『山のぼり・まち歩き』キャンペーンを開催中。期間は2023年9月1日(金)から11月30日(木)まで。山や麓の観光スポットでデジタルバッジをゲットできるキャンペーンです。
2023.09.01
武石 綾子
ライター
昨年の山旅では、甲府の山と街をじっくり歩いたおふたり。今回訪れるのは、さらに範囲を広げた「やまなし県央連携中枢都市圏」と称される地域です。
少々イメージしにくいかもしれませんが、この一帯は、ほぼ山梨県の中央に位置する甲府市を中心に、西に南アルプス、北に金峰山などの名峰を望みつつ、味わい深い低山も無数に存在する、言わば「山岳天国」。加えて温泉、野菜に果物など、土地の恵みをぎゅっと詰め込んで楽しめるエリアなんです。
「去年の甲府は最高だったね。出会った人も皆優しくて印象に残ってる。今回はどんな出会いがあるかな」「はじめて行く街もあるからすごく楽しみ。お土産もたくさん買いたい!」
「気持ち良い場所! こんな場所でもぎたてのフルーツが食べられるなんて最高!」
カメラを構えながら気持ち高まる友里さんがそう話すこの場所は、山梨市の「萩原フルーツ農園」。南向きの斜面一面に広がる桃の木やぶどう畑が広がる様子は圧巻。眼前には甲府盆地が広がり、気象条件が良ければ富士山も望める絶景を眺めながらフルーツ狩りを体験できます。
特徴は農薬を避け、草や土壌本来の力によって果実を育てる草生(そうせい)栽培。山地ならではの南斜面による日照、水はけの良さ、雨や病気をふせぐ風通しの良いビニールハウス。そして何より、デリケートな果実を守る手間ひまと愛情。桃は8種類、ぶどうは9種類ほど、個性ある各品種がおよそ1週間ほどでバトンタッチしながら「旬」を迎えます。
※桃のシーズンは例年8月中旬まで。例年9月末頃までは本格的なぶどう狩りが楽しめます。
(最新情報はホームページ等でご確認ください)
「どれにしようかな〜。迷っちゃうな」。一つひとつの色や形をじっくり観察しながら食べごろの実を探すのも楽しいひと時。これと決めた実に出会えたら、両手で優しく包んで引っ張ります。「パチン」という音とともに掌に伝わるずっしり感。自分でもぎ取ると、食べるのが少しだけもったいないような、よりじっくり味わいたくなるような。そんな愛着を感じてしまいます。
涼やかな風が吹き抜けるカフェテラスでは、桃のコンポートを使用したプチパフェ、絶品のフルーツデザートを。収穫した桃は表面の産毛が取れる程度に丁寧に洗っていただきます。とろけるような熟した状態の実を皮をむいて食べる、そんなイメージのある桃ですが、山梨での食べ方は逆。糖度の高い硬めの品種を皮ごと食べる、それが「ツウ」。真似してみたら、本当に美味しくて手が止まらない! 地元の方との触れ合いは、時に「食」の楽しみ方をアップデートしてくれるから嬉しいですよね。
「山も温泉も近くて、旬の果物がその場で食べられるって最高だね。そうだ、山歩きと果物狩りをセットにしたフルーツハイクって楽しそうじゃない?」と提案する友里さんに、「それいいねー! ゴールはワイナリーだね」と盛り上がるともこさん。何て楽しそうなプラン。実現する日も近いかも…?
「勝沼ぶどう郷」の名でも知られる甲州市「ロリアンワイン 白百合醸造」は1938年創業の老舗。2023年G7広島サミットで提供されたことでも話題になった甲州を代表するワイナリーは、富士山・北岳・間ノ岳という国内トップ3の名峰含め、山々をぐるりと見渡せる好立地にあります。
「ワインってね、お店で飲むのはもちろんおいしいんだけど、産地、つまりぶどうそのものが生まれ育った場所に足を運んでもらえるともっと味わい深く楽しめると思うんです。『あぁ、山があって、恵まれた土壌があって、この環境があるからおいしいワインができるんだ』と、実感することができるでしょ」。
そう話すのは、社長の内田多加夫さん。ぶどう畑を案内しながらワインづくりへの想い、勝沼の恵まれた環境についてなど熱く説明してくれました。
扇状地形、山麓斜面による日照時間の長さや水はけの良さ、吹き下ろす風による昼夜の寒暖差など、ぶどうの栽培に適した環境は古代からの地形の変化、周囲の山々によって形成されたもの。甲州のワインは、まさに「山の恵み」の連なりによって生み出されているのです。
「お話を伺っていると、なんだかボトルの向こうに “産地の物語” が見えてくるような気がする」と友里さん。「そうだね。甲州ワインが有名なのは知っていたけど、改めて産地でワインになる前のぶどうに触れてみると、山と土地のつながりを実感するな」と返すともこさん。
店舗内には様々な日本ワインが並んでいますが、その時々のおすすめを試飲することが可能です(有料)。
「甲州ワイン、飲んでみたいけど時間がない…」。そんな方は笛吹市「石和温泉観光協会駅前案内所」へどうぞ。
駅に隣接する観光案内所では、笛吹市内のワイナリー10社が自信を持っておすすめする計16種類のワイン(赤、白、ロゼ)の試飲が可能(有料)です。説明書きに目をやると、「フルーティー」「爽やか」、中には「体育会系辛口」といった気になるものも。ワイン片手に駅前の足湯につかれば、電車を待つ時間が少し優雅に過ごせるかも。
中央市に位置する「道の駅とよとみ」では、これまで紹介したものとは少し趣きの異なる大地の恵みを。
ひとつめは「ゴールドラッシュ」と銘打たれたとうもろこし。別名「とよとみスイートコーン」。特徴的な甘みの強さは県内外にファンが多く、店頭に並べれば完売必須の早い者勝ち。なんと1シーズンに20万本売れるとのこと。残念ながら購入が叶わなかった場合も、中央市産のとうもろこしをベースにした焼酎やワインなど、他ではなかなかお目にかかれない名産品を手に取って。
もうひとつは、なんとシルクパウダー入りのソフトクリーム! 養蚕で栄えた中央市ならではの、なかなかに珍しい代物。聞けばシルクパウダーにはアミノ酸が豊富に含まれており、紫外線予防や保湿作用などの美肌効果が期待できるとのこと。登山帰りのハイカーには嬉しい一品。ぜひご賞味あれ。
第1弾の記事もそろそろ終盤。甲府市のスポットを2つほど紹介しましょう。
まずは、甲府駅からほど近い場所にある「寺崎コーヒー」。焙煎所が併設され、シンプルながらセンスとこだわりを感じる外観が目を惹きます。
「山に行く方は深煎りが好きな方も多いかもしれませんね。でも当店のおすすめは浅煎りなんです。浅煎りだと豆そのものの味や薫りがより楽しめるんですよ」そう話すのはオーナーでありロースターの寺崎亮さん。こだわりの焙煎で丁寧にドリップされたコーヒーに、手作りのデザートは山歩き・街歩きを満喫した体をほっと癒してくれます。
最後に、甲府を訪れたら必ず立ち寄りたいお店へ。山梨を代表する登山・アウトドアショップ「エルク」。
ハイカーたちの幅広いニーズに対応する豊富なラインナップの店内では、登山ガイド資格を保有したスタッフが親身に相談に乗ってくれます。購入だけでなくメンテナンスまで相談が可能なところも嬉しいポイントで、さながらベースキャンプ的な安心感。「服や道具と長く付き合いながら、安心してアウトドアを楽しんでほしい」というお店の想いが伝わります。
最近では「還る、服」をコンセプトにしたオリジナルのアパレルブランドをリリース。天然素材であるヤクの毛を使用することで環境へのネガティブな影響を極力抑え、機能性も抜群のアウトドアウェアを購入することができます。
立ち寄った際はスタッフの方に声をかけてみて。山の情報も、街の情報も、きっとここだけのとっておきを教えてくれますよ。
第1弾の記事では、山と街のつながりを感じながら大地の恵みをいただいた、ちょっとグルメ要素多めの山麓旅。第2弾は、やっぱりグルメと(笑)、アート、地元の方しから知らない名店を巡ります。ぜひ、併せてご覧くださいね。
「やまなし県央の山旅」の記事後編はこちら
*今回の「やまなし県央の山旅」で2人が訪れたスポットはこちら
YAMAPでは期間限定で、YAMAP×やまなし県央『山のぼり・まち歩き』キャンペーンを実施中。
これは、やまなし県央連携中枢都市圏の「9市1町」(甲府市、韮崎市、南アルプス市、甲斐市、笛吹市、北杜市、山梨市、甲州市、中央市、昭和町)にある指定のランドマークを訪れることで、YAMAPアプリの期間限定デジタルバッジ(5種類)を獲得でき、さらにデジタルバッジを3つ以上集めた方は、指定の配布場所で特製コラボ手ぬぐいがもらえるという大好評のキャンペーンです。実施期間は、2023年9月1日(金)〜11月30日(木)まで。
詳細は以下の記事武田信玄ゆかりの地「山梨」が舞台|やまなし県央「山のぼり・まち歩き」キャンペーンをご確認ください。
【旅をしたひと】
四角友里|Yuri YOSUMI
アウトドアスタイル・クリエイター。 「自然に触れる喜びを多くの女性たちに感じてもらいたい」との想いから執筆、講演、アウトドアウェア・ギアの企画開発を手掛ける。2023年秋、自身のオリジナルブランドを立ち上げ予定。著書に『一歩ずつの山歩き入門』、『山登り12 ヵ月』など。
鈴木ともこ|Tomoko SUZUKI
漫画家。自身の山登り体験を描いたコミックエッセイ『山登りはじめました』(KADOKAWA)シリーズがロングセラーに。近著は『山とハワイ』(新潮社)。山好きが高じて東京から長野県松本市に移住。、松本市観光大使も務める。
原稿:武石綾子
撮影:根本絵梨子
モデル・イラスト:鈴木ともこ(Instagram:suzutomo1101/)
モデル:四角友里(Instagram:yuri_yosumi)
協力:甲府市(やまなし県央連携中枢都市圏)