米国ポートランド発のアウトドア・フットウェアブランド〈KEEN〉が提案する「TRAVEL TRAIL(トラベル トレイル)」。日本各地のトレイルを歩き、その土地の文化に触れることで、アウトドアをもっと広く、深く満喫しようという「旅の楽しみ方」です。
YAMAP MAGAZINEとの共同企画第2弾は、大迫力の富士山が目の前に迫る東海自然歩道の富士吉田セクションをセレクト。モデルでアウトドアブランド“Okara”ブランドディレクターの新田あいさんがKEENのトレッキングシューズ「リッジ フレックス ミッド」で街から山へ、山から街へと旅する様子をお届けします。
【特集】KEEN × YAMAP /すべての記事を見る
2021.04.19
YAMAP MAGAZINE 編集部
まずは、今回の舞台となる「東海自然歩道」について紹介しよう。1969年に構想が発表され、1970〜73年にかけて整備・開通したトレイルで、総延長はなんと1,697km。東京「明治の森高尾国定公園」から大阪「明治の森箕面国定公園」まで、1都2府8県の国定公園をつなぐ日本でも歴史のある長距離トレイルだ。全踏破には40〜50日ほどかかるとされており、セクションごとに歩くのが一般的。ちなみに起点はなんと高尾山。見逃しがちだが、立派な石碑がケーブルカーの乗り場入り口に立っている。
取材では、東海自然歩道のなかでも日本が誇る世界遺産「富士山」を眼前に望むことのできる「富士吉田セクション」を歩く。 富士山の山麓の街、山梨県南都留郡にある大田和登山口から足和田山(1,354m) を登り、三湖台(1,203m) 、紅葉台(1,165m) へと尾根を歩くコースとなっており、もちろん「TRAVEL TRAIL」のコンセプトにのっとり、地元の街もたっぷり満喫する旅的な要素も盛り込んでいる。
シューズはKEEN「リッジ フレックス ミッド」。甲とかかと上部に「KEEN.BELLOWS FLEX」と呼ばれる蛇腹のようなパーツを組み込み、曲がりをよくすることで歩行時の負荷を軽減。そして険しいトレイルでもしっかりと地面を捉えるアウトソールパターン、安定感と安心感を与えてくれるアッパー、さらには防水透湿メンブレン「KEEN DRY」を使用することで防水性も持たせ、幅広いシーンに対応するスペックを備えている。
こちらのモデルはくるぶしの上までカバーしてくれるミッドカット仕様。日本人の足にフィットするKEENのシューズ設計と相まって、悪路や長距離歩行時でのホールド感も良好。重量は448g(24cm片足)と軽量。見た目と裏腹に軽やかな着用感を得られ、これまでのハイキングブーツを重いと感じていた方にもオススメだ。
ナビゲーターを務めてくれる新田さんは、友人に誘われたのがきっかけで登山をはじめ、ネパールにトレッキングに行ってしまうくらいの山好き。モデルでありながら、なんと山小屋で働いていたこともあるという異色の経歴の持ち主だ。
「今、山歴は8年くらいです。もともと富士山や屋久島といった世界遺産に興味があったのですが、最初は里山からはじめて、次第にいろんな山を登るようになりました。
東海自然歩道ははじめてだと思っていたのですが、高尾山から陣馬山まで歩いたことがありました。でもそのときは高尾山が起点だったとは知らず…。今回歩くセクションが高尾山につながっているのを想像すると不思議な気持ちになりますね」
今回のTRAVEL TRAILのスタートは河口湖駅。近くのスーパーで買い出しをしてから足和田山へ。
尾根沿いにつづくトレイルは左手には富士山、右手には西湖を望むことができる。登りで汗ばんだ体を風がクールダウンしてくれる
梢から覗く富士山を眺める。角度によって山容が変わるため見ていて飽きない。足和田山から紅葉台までのコースは、おおよそ3時間ほどのショートコース。ゆえに景色をじっくり見たり、気ままなペースで歩くことができる。ハードな山歩きが苦手な人も歩きやすいのも魅力となっている。
登山口から1時間ほどで足和田山の山頂へ。今回はのんびりハイク。ここでランチタイムにすることに。コースタイムに余裕があるからこそ、合間の楽しみをプラスできるのが気軽なハイキングの魅力でもある。山ごはんを作りながら、新田さんにとっての「山」について聞いてみた。
「高い山も好きなのですが、 低山をのんびり歩いて、ぼーっとしに行くことが多いですね。お茶と地元で買った和菓子やクッキーを持っていきます。普段の生活で気をつかって頭がカチコチになってしまっても、山なら気分が開放されてリセットできるんです。
ハイキングをはじめたころは『何が楽しいんだろう』って思うこともありました(笑)。でも、やっぱりいい景色見ると大変だったことも忘れてしまうし、仲間と過ごす時間も好き。
お気に入りの山は鈴鹿の竜ヶ岳。笹原がすごくきれいなんですよね。以前、山形の月山に登ったときに、笹原が広がっている場所があって、すごくきれいだなって思ったんです。それから笹原のある山が好きになりました」
最近は神戸に引っ越したこともあり、すぐ近くの「裏山」を登ることも多いのだとか。
「お天気がいいときに散歩気分で登っています。いろいろなコースがあるので、今日はここに行ってみようとか、踏み跡を追って歩いてみたりしています。結構探検気分で歩けて楽しいんですよ」
作ったのはお手製のピザ。ナンにトマトとチーズ、カットしたクレソンをトッピング。アルミホイルをかけてフライパンで温めれば完成!
地元の食材をプラスした料理は旅感たっぷり。山ではフリーズドライ食品が便利だけれど、ちょっとひと手間加えるだけで充実した食事になる。河口湖周辺には乳製品や山菜、ジビエといったユニークな食材が手に入る店が多い。車移動の場合はスーパーや道の駅を活用してみてほしい。
足和田山から45分ほどでちいさな草原が広がる山頂・三湖台に到着。このスポットの魅力はなんと言っても「絶景の富士山」。振り返れば目の前にまるっと裾野から山頂まで富士山が山容を見せてくれる。
「東海自然歩道の足和田山セクションを歩いてみて感じたのは、ずーっと富士山の見える最高な道なんだということ。いろんな角度で見る富士山は、かっこよかったり、柔らかい女性らしさもあったりして、ひとつの姿じゃないんだなって気付かせてくれました。
ここ三湖台は本当に最高な場所。富士山が見えるというだけで嬉しいのに、すごく近くて迫力がありました。
山の上から見る樹海は本当に「海」みたいでびっくりしました。知ってはいたけれど、今までのイメージとは違ってとても神秘的だったし、噴火の溶岩から森が生まれたという歴史も知ることができてよかったです」
三湖台は東海自然歩道のなかでも屈指の富士山ビューを楽しめるスポット。日中は逆光になりやすいため、朝か夕方など太陽が傾く時間に訪れるのがオススメ。紅葉台からはわずか15分ほどでアクセスできることもあり、お弁当を持ってピクニック気分で登ってみるのもいいだろう。
紅葉台から下山し富士吉田へ。宿泊するのは「hostel&salon SARUYA」。運営するのは八木毅さん。東京でデザイナーとして活動したのち、富士吉田で地域活性化事業に携わったのがきっかけで移住。「hostel&salon SARUYA」を立ち上げ、運営をしながら富士吉田の街づくりにも携わっている。
この施設も元々は空き家だったものをリノベーションしたもので、懐かしさを感じる木造の建物が都会的なセンスでアレンジされている。周辺には浅間神社をはじめ、ローカルな商店街や温泉など、旅先としても魅力的なスポットが多く、早めに下山して街歩きの時間を確保するのがベターだ。
「富士吉田の街を歩いてみて感じたのは『人があたたかい』ということ。道で声をかけてくれたり、温泉に入っているときも『どこから来たの〜?』『美味しいご飯屋さんはここよ』と教えてくれて、本当に優しいなと思ったんです。自然体でおもてなししてくれているような気がして、旅が豊かになりました。
何日も富士吉田を探索してみたいですね。東京からもアクセスがいいのでこのセクションだけ来たいくらい(笑)」。
今回歩いたセクションのコースタイムは3時間ほど。前後の移動時間があるとはいえ、無理のないコースタイムだからこそ、街に降りてからの時間にもゆとりがある。旅とアウトドアのふたつの要素を一度に楽しめるのが、まさに「TRAVEL TRAIL」の醍醐味なのだ。そして宿でゆっくり休んでリフレッシュすることで疲れを残さず翌日のハイキングに挑むことができるのもポイントだ。
2日目は富士の樹海へ。樹海は今から千年以上も前、864〜866年頃に起こった貞観大噴火によって流れ出した溶岩の上にできた森のこと。三湖台からは、富士山から裾野にかけて溶岩が流れてきた様子を知ることができたが、実際に森に入ってみると黒い溶岩が足元に見てとれた。
アップダウンはないものの、溶岩がそこかしこに点在する樹海のトレイルを歩きながら、新田さんに「リッジ フレックス ミッド」のインプレッションを聞いてみた。
「履いてみて感じたのはすごくフィットするということ。これまでブーツタイプのシューズを履くとかかとが靴擦れしたり、甲の部分を曲げたときにアッパーと当たってしまう感覚があったんです。それに長距離歩くと足が痛くなることもあって敬遠していたのですが、『リッジ フレックス ミッド』はまったくその心配がなくてびっくり」
新田さんは、足が疲れてくると足上げが悪くなり、くるぶしのあたりを蹴ってしまうことがあるのだとか。「リッジ フレックス ミッド」を履いてみて、あらためてミッドカットのメリットを再認識したという。
「トレッキングシューズですが見た目以上に軽くて、歩いていて疲れがなかったのもよかったですね。樹海のトレイルではゴツゴツした岩も多くて、ちょっと慎重に歩かなきゃいけないところもあったのですが、足を守ってくれる感覚があったので安心でした。
あと、かわいいルックスも好きですね。しっかりした作りなのに、カラーと素材がかわいいので、コーディネートもバッチリ。新しい技術や素材を使っているのにクラシックな感じもあって、その組み合わせがいいなって」
樹海に点在する「風穴」。溶岩流の流れが生み出した洞窟で、「富士風穴」「鳴沢風穴」といった大規模なものは観光地としても人気。こちらは「富岳風穴」という小さめのものだが、訪れる人が少ないので静かなのも魅力だ。
最後に、東海自然歩道の足和田山ハイクで使用した「リッジ フレックス ミッド」と新田さんのギアリストについて紹介しよう。「TRAVEL TRAIL」はもとよりハイキングも街の散策でも、シューズ選びが旅の楽しさを左右すると言っても過言ではない。快適かつ軽快に歩くことができ、靴擦れや疲れといったストレスを最小限に抑えることで、アウトドアをより満喫することができる。
あらためて「リッジ フレックス ミッド」がこちら。レザーとメッシュのコンビネーションが映えるKEENらしいデザインもさることながら、登山とハイキングに最適な機能が盛り沢山。日本人の足に馴染みやすいフィット感の高い設計、しっかりグリップするソール、足先を保護してくれる剛性の高いアッパーなどKEENのこだわりが詰まっている。
「リッジ フレックス ミッド」のフィット感を高めているのが、かかと上部に設けられたパッド。歩行時にかかとの動きを抑えて足を安定させるため、着用感のよさはもちろんのこと、シューズ内で足が動きにくいため靴擦れが起きにくい。見えないところにもフィット感のよさを追求した機能が設けられているのだ。
立体的なソールパターン。踏み込みと蹴り出し時の力がしっかり伝わる前後のデザインに加え、横のブレを抑えて安定感を高めるパターンを両サイドに配置。深めの溝が悪路での歩行の安定性を向上させている
KEENのこだわりが詰まったフッドベッドも見逃せない。柔らかくクッション性に優れ、シューズ内での足のブレを抑えてくれる。「KEENのシューズはフィット感が高い」と評価されるひとつの理由でもある
最後に、新田さんのギアリストを。
バックパックはわずか12リットルとコンパクトながら、レインウェアと防寒着、着替え、ウインドシェルといったハイキングの必須アイテムを収納。「軽やかに自由に歩きたいので荷物はコンパクトにまとめています」と新田さん。ほかにも調理用のアルコールストーブ一式、水筒、コッヘル、フライパン、ナイフ、傘、エマージェンシーキットも。ちなみにバックパックは新田さんご自身がプロデュースするブランド「okara(オカラ)」のもの。調理器具まわりはアルコールストーブを軸にまとめており、ULギアが好きな方は参考にしてみては。
関東圏在住者にとって富士山は、登る対象であると同時に、奥多摩や丹沢、八ヶ岳やアルプスからも望むことができるとても身近な山だろう。今回歩いた東海自然歩道の足和田山セクションは、そんな富士山を至近距離で感じることができるトレイル。山頂付近の岩肌のディティールが見えるほど迫り来るような山容は、自分たちが知っていた富士山のイメージを覆すものだった。
そして樹海。鬱蒼とした森に差す光、悠久の時間を感じさせる溶岩と森の成り立ちの歴史、富士山の一部だということを感じながら歩くことの神秘さ。短い旅のなかでもふたつの山の魅力を感じることができた。もちろん富士吉田の街も印象深く、まだまだ探索の余地があると感じた。名物の「吉田うどんめぐり」をしてみるのも面白いだろう。
登山をメインに考えていると、どうしても街で過ごす時間が短くなってしまうが、全体の行程を旅としてとらえ、山と街の両方を楽しむことで土地全体の魅力を体感することができる。それこそが「TRAVEL TRAIL」というコンセプトの本質でもある。この春、山に登りたい、街歩きもしてみたいという方。富士吉田を起点に富士の山々を歩いてみてはいかがだろうか。
「トラベルトレイル」のタグをつけて日記を投稿していただいた方のなかから合計30名様に「KEENのお好きなシューズと交換できるオンラインクーポン」をプレゼント!詳細はこちらのリンクよりご確認ください。
※新型コロナウイルスの状況や拡大防止への対応は、お住まいの地域によって異なります。国や自治体、関連機関の最新情報を参考に、安全を心がけた登山をしましょう。 コロナ禍における登山についてのYAMAPの考えはこちら
「富士山を見に東海自然歩道を歩きたい!」と思った方は、YAMAPアプリで地図をダウンロード!
足和田山セクションの地図はこちらから
ナビゲーター:新田あい
写真・文=小林昂祐
協力:キーン・ジャパン合同会社