新潟の名峰「妙高山・火打山」に登山予定の方は必見! 入域料をご存知ですか?

新潟県南部の上越地方にそびえ、日本百名山にも数えられる名峰「妙高山(みょうこうさん 2,454m)」と「火打山(ひうちやま 2,462m)」。湿原に咲く可憐な高山植物や、愛らしいライチョウ、雄大な景色を求め、夏山シーズンには多くの登山者で賑わいます。しかし今、地球温暖化や外来種の問題によって、この美しい自然が壊れようとしているのです。今回は、自然を大切に守り育むため妙高山・火打山で始まっている取り組み「入域料」についてご紹介します。

2021.07.05

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

百名山にも選ばれる「妙高山」「火打山」

北陸地方を代表する名峰「妙高山」と「火打山」。新潟県と長野県の県境に並び立つこの2座は周辺一帯の山々とともに「妙高戸隠連山国立公園」に指定されており、全国屈指の美しい自然が広がる山上の楽園です。

標高2,400mを超える山々が連なる雄大な山容は多くの登山者を魅了し、年間でこの2座を目指す人々は2万人に迫るとも言われています。

妙高山は、5回の大きな噴火によってできた火山です。もともとは3,000mを超えるような山体だったと考えられています。前山、神奈山、大倉山、三田原山、赤倉山などの外輪山に囲まれ、心岳とも呼ばれるこの峰は、急峻な斜面が続く登りがいのある山。燕温泉登山口、新赤倉登山口から往復しようとすると、標高差1,000m以上を登下降することになります。

近年は、笹ヶ峰登山口から登り、山上の山小屋(黒沢池ヒュッテや高谷池ヒュッテ)で1泊、西側から妙高山に登頂する行程を選ぶ人も増えています。笹ヶ峰登山口から入山し、往復してもいいですし、燕温泉、赤倉温泉に縦走するのも一興です。

妙高高原いもり池に映る夏の妙高山

一方、その隣にそびえる火打山は火山である妙高山とは異なり、隆起によって形成された山。

『日本百名山』で深田久彌氏が、「一点の黒もなく真白になる山」として挙げたとおり、冬には純白の雪に覆われた姿を目にすることができます。

笹ヶ峰登山口から登っていくと、森林限界線に佇む高谷池ヒュッテの前に湿原が広がり、開放的な視野の先に火打山の山頂が臨めます。健脚の人であれば日帰りも可能ですが、この山の魅力はやはり山上での1泊。山々に囲まれた湿原の畔で、静かな時の流れを感じながら、夕陽を眺め、星を見上げるひとときは何ものにも変え難い至福の時間です。

高谷池ヒュッテそばの「天狗ノ庭」から望む夏の火打山

笹ヶ峰登山口から登り、火打岳・妙高山を縦走し、新赤倉登山口に降りるモデルコース(高谷池ヒュッテに1泊)。YAMAPの詳細地図はこちら

特異な環境が生み出した貴重な自然

新潟県の上越地方といえば、世界的にも有数の豪雪地域。冬には日本海で成長した雪雲が妙高山・火打山とその周辺の峰々にぶつかって大量の降雪をもたらします。深い積雪と日本海からの季節風によって、妙高山・火打山には、実際の標高以上に高山らしい生態系が息づいているのです。

7月の半ばには、天狗ノ庭にハクサンコザクラが絨毯のように広がり、イワイチョウの白い花も顔を覗かせます。木道のすぐ脇にはハクサンチドリがピンクの彩を添え、水辺には真っ白い綿毛を風に揺らすワタスゲの群生。

盛夏、天狗ノ庭に咲くハクサンコザクラ

秋には、山々を覆う低木と湿原の高山植物たちが色とりどりに染まり、美しい紅葉を見せてくれます。

天狗の庭から望む秋の火打山

また、この山域には、もうひとつ大きな特徴があります。それは日本におけるライチョウの分布北限地であること。

ライチョウといえば、登山者憧れの動物。その愛らしい姿を一度は見てみたいと願う方も多いことでしょう。世界的には寒冷地に生息する鳥ですが、日本では不思議なことに本州のアルプス周辺にのみ分布しています。火打山はその生息地の日本最北限であり、30羽ほどが生息しているそうです。

迫力ある山容と湿原に咲き誇る花々、そして登山者の心を癒してくれる可愛らしいライチョウ。妙高山・火打山は、まさにここでしか出会うことのできない美しい自然が残る、山上の楽園なのです。

ライチョウや美しい高山植物に迫る危機

ライチョウの卵。ウズラよりやや大きめの卵を5〜10個ほど産む

しかし2019年、ライチョウについてイギリスの科学誌に衝撃的な論文が発表されました。その内容は”地球温暖化がこのままのペースで進むと、今世紀末には日本のライチョウが絶滅してしまう”というもの。

中でも、3,000m級の南北アルプスに比べ標高の低い火打山では、ライチョウの生息に適した高山環境が圧倒的に狭く、温暖化の影響を受けやすいのだそうです。

そのため、火打山では以前より研究機関と環境省、妙高市が連携して生息数や生息環境の調査を進めてきました。調査の過程で明らかになったのは、山頂部の植生が大きく変わってきたということ。

ガンコウランやコケモモなどの高山性の低木群落が減り、ハイマツの背丈が大きくなって、高茎草原が広がるようになりました。また、イワノガリヤス、ヒゲノガリヤスなどイネ科の植物も増えており、国内の他生息地と比較しても明らかに環境がかわってきているそうです。

ボランティアスタッフによる稲科植物の除去作業風景

現在、同地域では専門家の指摘を踏まえて、イネ科植物の除去作業が実施されています。更に「地球温暖化等によりキツネやテンなどの捕食者が高山帯に進出してきているのでは?」という懸念もあり、捕食者に関しても情報の把握と対策が講じられようとしています。

また、地球温暖化に伴う環境の変化は、美しい高山植物にも深刻な影響を与えつつあります。オオハンゴンソウやアレチウリなど、本来国立公園内に自生していなかった植物の侵入が見られるようになり、無垢な自然景観がジワジワと損なわれつつあるのです。

自然を守る新たな取り組み「入域料」とは?

これまで、ライチョウの生態調査や保護活動、外来植物の除去活動などは、主に国や地方自治体、山小屋などの取り組みによって支えられてきました。

しかし近年、地球温暖化による生態系への影響はますます深刻化し、豪雨による登山道の荒廃など、新たな問題も発生しています。限りある人手と財源の中、妙高山・火打山の自然を守ることが困難な状況になりつつあるのです。

そこで、「生命地域妙高環境会議(妙高市環境生活課内)」が主体となって、2020年から本格的に始まったのが「入域料」という取り組み。妙高山・火打山の美しい自然を未来に残していくために、登山者の力を借りようという活動です。

具体的には、妙高山・火打山に登る登山者から、任意協力金として500円、もしくは1,000円を寄付してもらおうというもの。寄付されたお金は、ライチョウの生態調査・保全活動や登山道の維持管理に当てられ、山の自然を守ることに活用されます。

笹ヶ峰登山口に設置された入域料の集金箱。※協力金の一部は事務管理費としても活用されます

この「入域料」という考え方、実は妙高山・火打山だけに限った取り組みではありません。同様の問題は全国各地で発生しており、屋久島(鹿児島県)や大山(鳥取県)、富士山(静岡県・山梨県)、知床五湖(北海道)、白神山地(青森)などでも試験運用を含め、すでに実施されているのです。

登山道のそばに落ちているゴミを拾うこと、登山道を外れずに歩き植物を傷つけないこと、登山道整備・自然保護の取り組みにボランティアとして参加すること…。そして、山を整備する人々とその取り組みに敬意を払い、入域料を寄付すること。

そういった小さな取り組みを積み重ね、山を愛する私たち登山者が、山を守る役割をも担う。そんな文化が少しずつ広がろうとしています。

入域料の寄付は事前のオンライン決済がオススメ

妙高山・火打山の入域料の寄付方法は「現地での支払い」と「オンライン事前支払い」の2種があります。

現地での支払いについては、主要登山口である「笹ヶ峰登山口」「燕温泉登山口」「新赤倉登山口」の3ヶ所で受け付けています。募金箱があり、係員の方が立っているので、入山時にそちらに入域料を納める方法です(平日は無人対応となりますが、募金は可能)。

実施期間:令和3年7月1日(木)〜10月31日(日)
実施時間:5:00〜17:00
実施場所:笹ヶ峰・燕温泉・新赤倉登山口の3箇所
※天候等の事情により、実施期間・時間は変更となる場合があります。また、大雨等の異常気象時および道路状況が危険な場合は受付を中止する場合があります。※新赤倉登山口の受付については、ロープウェイの運行状況によって実施されない場合があります

一方、「オンライン事前支払い」は、2021年より始まった新たな取り組み。こちらの事前支払いページに必要情報を入力し、クレジットカードを用いて決済するものです。事前にWeb上で決済し、登山当日は、上記3つの登山口で係員の方に決済完了メールの画面を提示してください(平日は無人対応となりますので、そのまま通過)。

「入域料」の支払いは、この2つの方法から選ぶことができますが、オススメしたいのは「オンライン事前決済」。現地で入域料の管理を行う「生命地域妙高環境会議」としては、将来的に登山口での徴収形式から事前徴収の形式に完全移行し、その人手を活用して環境保全をより充実させたいという希望があるためです。

限られた人手・資金の中で、妙高山・火打山の自然を守ろうとしている人々のことを想い、私たち登山者としても、少しでもその負荷が軽くなるように配慮したいものです。

協力してくれた方には嬉しい特典も

寄付をした登山者には嬉しい特典も。500円の寄付をしてくれた方には木製の記念木札が、1,000円の寄付をしてくれた方には、記念木札に加えてライチョウをデザインした記念ピンバッジがプレゼントされます。受け渡しの詳細については、下記をご覧ください。

「現地支払い」の特典受け渡し法

記念木札については、前出の3つの登山口での支払いと引き換えに受け取りが可能です(平日は、登山口の管理BOXに保管されている記念品をご自身でお受け取りください)。ライチョウバッジについては、笹ヶ峰登山口に設置された自動販売機、もしくは燕登山口最寄りの土産店「大日屋」で1,000円を支払い、受け取ることが可能です。

「オンラインによる事前支払い」の特典受け渡し法

記念木札については、「オンラインによる事前支払い」完了時に届いた決済完了メールの画面を、前出の3つの登山口で係員に提示してください(平日は、登山口の管理BOXに保管されている記念品をご自身でお受け取りください)。ライチョウバッジについては、「オンラインによる事前支払い」時に入力した住所に後日郵送されます(郵送には、最大1ヶ月程度掛かる場合があります)。

左:記念木札 右:記念ピンバッジ

国や自治体だけでなく、地元に生きる人々や山を愛する登山者が各々協力し、貴重な自然を守る「入域料」という新たな取り組み。

まだ始まったばかりで、検討すべき点も数多くあるそうですが、自然を守るための新たな一歩が踏み出されたことは紛れもない事実。 この夏、妙高山・火打山への登山を計画されてる方は、ぜご協力をお願いします。

問い合わせ先

生命地域妙高環境会議(妙高市環境生活課内)
新潟県妙高市栄町5-1
電話:0255-74-0033

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。