登山地図GPSアプリの活用法をガイドが解説【山登り初心者の基礎知識】

YAMAPをはじめとする登山地図GPSアプリは、いまや多くの登山者が使っている、登山の必携アイテム。安全に登山するために、登山地図GPSアプリを利用するメリットと注意点を、登山ガイドが解説します。

2023.04.13

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

安全登山の要となる位置情報

現在位置と過去の位置情報

「今どこにいるのか」「いつどこにいたのか」

登山GPS地図アプリは、全地球測位システム(GPS,Global Positioning System)という人工衛星からの電波を利用し、スマートフォンの現在位置を取得しています。電波がつながらない山の中でも、「今どこにいるのか」を正確に把握できるのです。

他の地図アプリと何が違う?

この先の地形やルートを把握しにくいGoogle Mapなどの地図アプリ

地図アプリというと、多くの人にとってはGoogle MapやiPhoneのMAPアプリがおなじみ。入り組んだ街路を通って、初めての場所をめざす際には重宝します。

ただし、これは都市部でのアドバンテージ。これらの通常の地図では、山や登山道などの情報はほとんど表示されず、登山ではほとんど使うことができません。一方でYAMAPをはじめとする登山地図GPSアプリに表示されるのは、国土地理院の地形図です。

地形図に描かれた等高線は山の起伏を正確に描写し、その読み方がわかる人であれば、周囲の地形やこの先のルートのアップ、ダウンを把握できます。歩くべき登山道もわかりやすく表示されているのです。

さらに、人が移動するのに対応して、その位置情報を連続して取得してくれます。これによって「いつ・どこにいたのか」という情報も記録され、最終的にその登山の道のりを表す軌跡データになります。では、こういった登山地図GPSアプリをどのように活用すれば良いのでしょうか。

「今どこにいるのか」の活用法

道標のない登山口

道標に頼らず現在地を把握できる

ここは埼玉県・奥武蔵にある多峯主山(とうのすやま、270m)の本郷尾根コース登山口。いくつかの登山コースがある山ですが、このコースには登山口に道標がありません。

低山では、このように住宅地や農地の中に登山口があり、道標が設置されていない場所もあります。

現在地が登山口であることがわかる

こうした場合に登山地図GPSアプリを使えば、問題は一気に解消できます。青丸で現在地が表示されており、それが登山道の始点と重なっていれば、今いる場所が登山口であるとわかります。

分岐でどちらに進めば良いかチェックできる

分岐ではこまめに登山GPSアプリをチェック

登山における道間違いの原因のひとつが、分岐で誤った方向に進んでしまうこと。こうした場所では、こまめに登山地図GPSアプリをチェックしましょう。

YAMAPの場合は、現在地を示す青丸からサーチライト型の矢印がスマートフォンを向けている方向に延びています。

分岐では、いったん立ち止まって道標や周囲の景色も確認しつつ、矢印に従って少し歩きます。あまり進み過ぎないうちにアプリ画面を見て、正しいルート(YAMAPで登山計画を作成していればオレンジ色で表示)に進んでいるかチェックするのがコツです。

近くのランドマークとの位置関係を把握できる

青矢印の山は日和田山(ひわださん)かも知れない!

見晴らしの良い場所では、近くに見える山などのランドマークにスマートフォンを向けて見ましょう。YAMAPを起動している状態で画面の範囲内にあるものであれば、現在地を示す青丸から延びたサーチライト型の矢印の方向で、そのランドマークが何であるかを確認できます。

ルート外れ警告で道間違いを防止できる

左画面に赤丸部分が緑色になれば「ルート外れ警告」はONの状態/ルートを外れてしまった場合は右画面のように通知が届く

分岐以外でも、薄い踏み跡など登山道でない場所へ無意識のうちに進んでしまうこともあります。

YAMAPプレミアム限定の機能ですが、「ルート外れ警告」をオンにしておくことで、登山道や登山計画ルートから外れてしまった場合に警告を受け取れます。間違えたことに早い段階で気づく。実は、これがとても大切です。

▼参考記事
登山遭難を防ぐ!YAMAP「ルート外れ警告」で道迷いをいち早く検知

スピーディーな捜索・救助活動にも直結

この座標を伝えれば捜索者は現在位置を把握できる

もし疲労やケガなどで登山中に行動不能になってしまったら、警察・消防などに救助要請を行うことになります。この際に捜索・救助に関わる人々がもっとも困るのが、遭難者自身が「今どこにいるか」を理解していない場合。

位置の特定ができないと、広範囲を捜索する必要があるため、おのずと捜索・救助活動は長期化してしまいます。

YAMAPに緯度・経度で表示される座標を伝えれば、警察・消防などはピンポイントで位置の特定が可能になります。登山地図GPSアプリなどのGPS機器で遭難者の位置を特定することによって、スピーディーな捜索・救助活動が実現するのです。

▼参考記事
熊本・国見岳 遭難事故の記録|差し伸べ続けた救いの手

「いつどこにいたのか」の活用法

間違えて進んできたルートを戻ればOK

道を間違えても元のルートへ復帰できる

登山という山の中を移動する行為の「いつどこにいたのか」という情報を連続して取得することで、登山地図GPSアプリには歩いた軌跡が記録(YAMAPは青色で表示)されます。ルート外れ警告の通知に気づいたら、あるいは登山道の明瞭さなど少しでも違和感を覚えたら、早めにアプリ画面を確認しましょう。

本当に道を間違えていた場合でも、誤って進んでしまった軌跡もきちんと記録されています。こうした際には、基本的にその軌跡を忠実にたどって戻ることで、登山道や登山計画ルートへ復帰でき、道迷いを回避できるのです。「間違える」と「迷う」…。言葉は似ていますが、その結果は全く異なったものになります。

登山のスケジュール進行状況を把握できる

登山口まではペース222%でかなり順調!?

ルート上の地点を移動する位置情報とその時間を連続して取得することで、移動するスピードも把握できます。

YAMAPプレミアム限定の機能ですが、一定の距離を進むと活動中の歩行ペースが表示されます。自分が標準的なペースと比べてどれくらいのペースで歩いているかを、確認できるのです。

ただし、ペースが順調すぎる場合も安心は禁物。オーバーペースで歩くことによって、登山終了より前に体力を消耗してしまう場合もあります。

▼参考記事
YAMAPプレミアムユーザー向け機能「歩行ペース表示機能」とは?

きつい登り…でもあと20分弱で山頂に到着!?

ペースが把握できれば、次の地点に着く時刻もある程度予測可能になります。こちらもYAMAPプレミアム限定の機能ですが、到着時刻予測をオンにしておくことで、次のポイントへの到着時刻予測が表示されます。

急な登りが続く区間などでペースが上がらない場合でも、この到着時刻予測と登山計画上の到着予定時刻を見比べることで、順調に進んでいるかが確認可能です。

▼参考記事
YAMAPプレミアムユーザー向け機能「到着時刻予測」とは?

家族・友人など「待つ人」に位置情報を共有できる

登山者側が多峯主山の山頂に到着した時の、みまもり機能の画面

位置情報の把握がスピーディーな捜索・救助活動にも役立つことを先ほど紹介しましたが、登山者自身が意識を失っていたり、スマートフォン通話圏外で行動不能に陥ったりしている場合は、自力での救助要請は不可能です。

こうした際に、「下山予定時刻になっても連絡がない」などの異変を察知して、代わりに救助要請を行ってくれる“頼みの綱”が家族・友人などの「待つ人」です。

YAMAPの「みまもり機能」では、こうした「待つ人」のメールアドレスやLINE ID(※LINEでの通知はYAMAPプレミアム限定機能)を設定することで、その人にも画面のように位置情報を共有できます。

「待つ人」はYAMAPから送信されるメール・メッセージに記載のURLをクリックするだけで、YAMAPアプリをインストールしていなくても閲覧が可能です。

家族・友人など「待つ人」が救助要請を行う際にも、警察・消防などに「最後にいた場所」「軌跡が動かなくなっている場所」などの座標、すなわち位置情報を共有することで、範囲を絞り込んだ効率的な捜索・救助活動が可能になるのです。

▼参考記事
YAMAP「みまもり機能」について
YAMAP「家族や友人が遭難してしまった

▼参考事例
さとし 📷🌟🗻☕️ Satoshiさんのツイート
#YAMAP に父の命を助けてもらった(誇張なし)

通話可能エリアでは機内モードのこまめな解除を

ずっと機内モードにしていませんか?

電波状況が不安定な山中で、スマートフォンのバッテリー消費を抑えるために多くの人が使用するのが機内モードです。登山者本人のアプリ画面では機内モードでも軌跡(ログ)が取得され続けるため勘違いしがちですが、この間の位置情報は「待つ人」には共有されていません。

通話可能エリアで機内モードを解除することで初めて、みまもり機能にそこまでの区間の位置情報が共有されるのです。

YAMAPの場合、みまもり機能を構成する要素のひとつに「こんにちは通信」というものもあり、登山中に他のYAMAPユーザーとすれ違った際の位置情報も、みまもり機能に反映されます。しかし、これもそのすれ違ったユーザーが通話可能エリアで機内モードを解除し、電波の圏内にいることで可能になるものです。

位置情報共有の観点から考えると、通話可能エリアではこまめに機内モードを解除することがおすすめです。スマートフォンのバッテリー消費に備え、モバイルバッテリーは必ず携行するようにしましょう。

▼参考記事
YAMAP「こんにちは通信」について

スマートウォッチも活用しよう

スマートフォンを取り出さなくてもアプリ画面を確認できるスマートウォッチ

スマートフォンでのYAMAPの使用とあわせて、スマートウォッチの使用もおすすめ(*)です。文字盤にアプリ画面が表示されるので、スマートフォンを取り出す必要がありません。寒い時期のバッテリー対策や豪雨時の浸水対策など、スマートフォンを保護するためにも有効です。

また手元ですぐに現在地などを確認できるため、頻繁にスマートフォンを取り出すことが難しい岩稜登山や、スピーディーにアプリ画面をチェックしたいトレイルランニングなどのアクティビティにもおすすめです。

*2023年3月現在、YAMAPが使用できるスマートウォッチはApple Watchのみ。iPhoneユーザー限定の使用方法となります。

▼参考記事
YAMAP「Apple Watch」について

フィールドメモは情報の宝箱!

この場所に鎖があることも事前に知ることができます

ルートをイメージすることが可能

安全登山に重要なこととして、事前に登山ルートをなるべく具体的に「見える化」してイメージしておくことが挙げられます。たとえば、鎖場が苦手な人が登山当日に想定していなかった鎖場に出遭った場合、「え…!こんなところに!?」という動揺が平常心を脅かして転倒してしまうなど、思わぬ事態を引き起こすことにもなりかねません。

YAMAPアプリに青い旗マークで表示される「クチコミ・つぶやき」や、赤い⚠️マークで表示される「報告・注意」のフィールドメモには、YAMAPユーザーが投稿したさまざまな情報が満載。

前述の鎖場のような難所や、迷いやすい分岐などの要注意ポイント、そして登山に役立つ情報などが記載されています。

ベンチがあることがわかれば休憩ポイントのめやすにも

たとえば画像の例のように、ルート上にベンチがあることが予めわかっていれば、その場所を休憩ポイントに設定できます。この情報を知らずに「ほんの少し手前で地べたに座って休憩してしまった」という体験を減らすことが、心理的にも快適な状態で登山するために意外に重要です。

また紙の登山地図やガイドブックは1年ごと〜数年に1度の更新ですが、フィールドメモはYAMAPユーザーが随時投稿しているもの。台風による倒木など一時的な問題箇所も、リアルタイムで把握することが可能なのです。

フィールドメモを投稿しよう!

もちろん、フィールドメモは自分でも投稿できます。注意すべき場所や知っておくと有益な情報があれば、今後そのルートを歩く登山者のためにもぜひ投稿しましょう。

地図が読めれば不要!?

紙の地図と登山地図アプリそれぞれの利点を活かすことが大切

国土地理院の地形図をはじめとする紙の地図を読みこなす知識があれば、登山地図GPSアプリは不要では?という考えになりがちです。もちろん、スマートフォンがバッテリー切れを起こしてアプリを使用できない、気温の低い雪山などでグローブ越しにタッチパネル操作ができないなどのシーンを考えると、登山GPS地図アプリだけに頼り切りでは心もとない場合もあります。

また紙の地図にはスマートフォンの画面よりはるかに広範囲が記載されているため、ルート全体を俯瞰しながら「全行程のどれだけ歩いたのか」という振り返りや、「この先がどのようになっているのか」という先読みに適しているという利点もあります。

しかし、たとえば救助要請を行う際に、現在位置の座標を紙の地図から「北緯/東経◯度◯分◯秒」まで読み取ることは、地図読みに慣れたベテランでも困難です。それに、本人が救助要請できない場合に、家族・友人など「待つ人」に紙の地図から位置情報が共有されることは、もちろんありません。

しつこいようですが、捜索・救助活動においてもっとも重要なのが位置情報です。スマートフォンにダウンロードするだけでこれを正確に取得できる登山GPS地図アプリ、これを利用しない手はありません。紙の地図と登山GPS地図アプリの、それぞれの利点を活かしながら、より安全な登山を楽しんでください。


登山にあたり、命を守るために身につけておくべき装備・道具や、知っておくべき知識・技術は色々ありますが、登山保険もぜひ入っておきたい、大事な備えのひとつ。

YAMAPグループの「外あそびレジャー保険」は、いざ遭難救助が必要になったときの高額費用や、部位・症状別のケガの補償をしてくれるだけでなく、登山以外での外遊びや日常のケガの補償もしてくれます。

また、遭難・行方不明時には、同じ山に登っていたYAMAPユーザーから目撃情報を募ることができるサービスも提供。

期間は7日から選べるので、単発での山行にも対応。登山や海・川でのアクティビティによく行く方にも便利な保険です。

執筆・素材協力・トップ画像撮影=鷲尾 太輔(登山ガイド)

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。