親子登山をしてみたい。けれど、服装は?持ち物は?ごはんは?おすすめの山は?そもそも何歳から連れて行けるんだっけ?などなど、初めての親子登山は本当にわからないことだらけ。我が子が生後8ヶ月のときから親子登山をスタートし、現在も「山ヤ流子育て」を実践されているまつだしなこさんをお迎えし、これまでの実体験を踏まえた親子登山のノウハウを余すことなく教えていただく本企画。最終回の今回は、よくある親御さんの疑問・不安に徹底的に答えていただきました!
子どもと山へ! 0〜5歳の親子登山ガイド/ 連載一覧
2023.10.06
まつだ しなこ
子連れハイカー
|親子登山ノウハウ(はじめ方編) |
|親子登山ノウハウ(服装編) |
|親子登山ノウハウ(持ち物編) |
|親子登山ノウハウ(ごはん編) |
|親子登山ノウハウ(山選び編) |
子どもと一緒に山登りを続けていると、「うーん、困ったな」ということがなにかしら出てきます。
たとえば、娘が3歳になりベビーキャリアも抱っこ紐も使えなくなった頃。疲れて「電池が切れました」と動かなくなった娘をいかに再起動するかについては、ずいぶん頭を悩ませたものです。
ようやく娘がしっかり歩けるようになったと思ったら、今度は息子が生まれて「子ども二人連れ登山」という新たな挑戦が始まりました。それまでの大人二人、子ども一人の登山とはまた違う大変さです。息子は飽き性なので、娘のときほどスムーズに進めません。三歩歩いてはお菓子休憩です。子どもの性格によっても親子登山のやり方は異なるということを痛感してきました。
成功マニュアルはありません。子どもを注意深く観察しながら、どんどん試してみるしかないのです。
そうはいっても、山という非日常の世界なだけに、一つでも悩みや不安ごとがあると腰が重くなりますよね。
そこで今回は、よく質問をいただく親子登山に関する悩みに私なりに回答をしてみたいと思います。
A:子どもにはもって生まれた好き嫌いがあるので、「山に登ろう!」と誘っても渋い顔をする子どもも当然いますよね。
そんなときは、その子の興味があることと山を結びつけて誘ってみるのはどうでしょうか。たとえば、虫に興味があれば山は絶好の観察場所になります。料理が好きなら山ごはんに挑戦してみようと提案するのもいいかもしれません。
娘が3歳くらいまでは、グルメ登山というのをしていました。山の近くにある食べログ百名店のパン屋さんでパンを買って山頂で食べたり、下山後に大人気のかき氷を食べることを目標にしたり。
最近では、娘はカメラに興味が出てきました。私の古いデジカメをあげたところ、「いい景色を撮りたい!」ということが山登りのモチベーションになっているようです。
山の楽しみ方は、とても幅広いもの。登る人の数だけ、楽しみ方があります。その子の興味があることと結びつく山の楽しみ方がきっとあると思います。
A:わが家の経験では、子どもの「もう歩けない」はすなわち「もう飽きた」という場合がほとんどでした。歩けないから抱っこ、とぐずぐずしていた息子が、山小屋のかき氷の看板が目に入った途端にすっくと立ち上がって走り出す、なんていうことも多々あります。
こんなとき、「あとちょっと頑張ろう」とか「もう少し歩いたらお菓子食べよう」と、 “歩くこと” について必死に励ましてしまいますが、効果的だったのはそもそも歩くことから意識をそらすことでした。
どういうことかというと、子どもが座り込んだら、たとえば山歩きが楽しくなるようなゲームを提案すること。わが家では、「目印発見競争」として、登山道に結んである道標のテープを誰が先に見つけるかを競争したり、トランシーバーを使って交信しながら歩いたり。スマホで撮影した画像から花の名前を調べることができるアプリも子どもに人気で、植物の名前を調べながら進むとだいぶ気が紛れるようです。
とはいえ、本当に体調が悪かったり、バテているケースもあるでしょう。そういうときは無理に頂上を目指さず、山に足を踏み入れたことでよしとして潔く下山するのもいいと思います。山頂ではなくとも子どもが「抱っこ」と言わずに歩ける距離に本日のゴールを定めて、まずは短い距離でも自分でゴールまで歩けたという経験を積み重ねていくのもいいかもしれません。
A:山でテンションが上がっている子どもに「走らないで!」「大きい声で挨拶するの!」と山のマナーを伝えても、右から左へ聞き流されてしまうことも多いですよね。
特に他の登山者が多いときは、迷惑をかけないようにと必要以上に口うるさく注意してしまったりします。
そこで登山中にガミガミ言わないように、私は家で山に関する絵本をいろいろ読み聞かせてきました。ただ絵本に書いてある物語を読むだけではなく、絵を見ながら「転んだら危ないからゆっくり歩こうね」「すれ違う人に道を譲っているね」と言葉を添えて読むのです。
オススメは『ポレポレやまのぼり』(文・絵:たしろちさと/出版社:大日本図書)と、『あたしの やまのぼり』(作・絵:ゆーち えみこ/出版社:ひさかたチャイルド)。さりげなく山のルールが描かれています。寝る前に何度も読んできたので、すっかりボロボロになってしまいました。
山のマナーを教えるときは、理由を教えることも効果的です。最初、娘は挨拶ができませんでした。どうやら「いつも知らない人に声をかけちゃダメっていうのに、どうして山では挨拶しなくちゃいけないの?」と混乱していたようです。山では「私は元気です、あなたはどうですか?」ってお互いの元気を確認するために大きな声で挨拶するんだよ、とわが家流の解釈を説明したら納得したのか、大きな声で「こんにちは! 5歳です! 元気です!」と挨拶ができるようになりました。
A:子どものトイレは登山口で済ませるのが基本ですが、急を要するということはあります。私も、上り坂の途中で「トイレ!」と言われ、娘を抱えて下のトイレまで猛ダッシュしたことも……。
親子登山では、トイレが途中にあるコースを選ぶと安心でしょう。そしてトイレを見かけたら、必ず寄るようにしています。娘は山のトイレを嫌がって「出ないから大丈夫!」というのですが、大抵の場合、大丈夫ではありません。
水をガブガブ飲まないように子どもにアドバイスすることも効果的。水分をとらないことはもちろんNGですが、娘に任せておくとあっという間に水筒を空にしてしまいます。ペットボトルのように直接本体から飲むのではなく、コップに一杯ずつと決めてこまめに飲むと量が調整できます。
それから携帯トイレを持っていくこと。使用済みのものを持ち歩くことに抵抗があるかもしれませんが、アウトドア用の携帯トイレは驚くほど優れた防臭性があります。トイレットペーパーも忘れずに持っていきましょう。
娘の場合、和式トイレを使ったことなくしゃがんで用を足すことに最初かなり抵抗があったようです。荷物としては少しかさばりますが、まるで洋式トイレのように組み立て座れることができるタイプの携帯トイレもありますよ。
A:まず迷子について。山でもしものときにどうすべきかを、親子であらかじめ話し合っておきました。私は、保護者からはぐれて迷子になったらその場所を動かないこと、そしてザックに入れている笛を吹くことを教えています。これも絵本を読みながら何度も言い聞かせるのが良いでしょう。
親子そろって道迷いをするという事件も多いので、地図はもちろんのこと、大人がココヘリの発信機を持ち歩いています。ココヘリは会員制捜索ヘリコプターサービスで、遭難時に位置情報をキャッチしてくれる便利なサービスです。
怪我については、ファーストエイドキットとして最低でも以下の3つを持っていきます。
・絆創膏(子どもを元気づけられるよう、お気に入りのキャラクターものがオススメ)
・軟膏(殺菌効力がある「キップパイロール」という小さな缶入りの軟膏を愛用しています)
・ポイズンリムーバー
普段の生活でも子どもの怪我を100%防ぐことは難しいですよね。万が一に備えて、アウトドア保険に入っておくと安心です。PayPay保険など電子決済サービスが提供する1Day保険を利用すれば、手続きにかかる時間はものの1分です。
「誘っても乗り気になってくれない」「子どもがすぐ抱っこと言うのでイライラしてしまう」。そんな悩みは親子登山を始めようとしたとき、特に多くの人が直面することだと思います。
かくいう私も、かつては親に誘われて渋々、山に登っていた子どもの一人でした。
親と山登りをしたのは小学校低学年くらいまでで、楽しかった想い出が鮮明に残っているわけではありません。20代後半まで山のことなんて忘却の彼方に眠っていました。
ところが仕事や恋愛などいろんなことがうまくいかずに八方塞がりになっていたときに、ふと幼いときに山へ登ったことを思い出し、「山にでも登ってみようかな」と思ったのです。
そこから登山に夢中になるまではあっという間でした。閉塞感に苦しんでいた日々に、急に爽快な風が吹き始めたようにも感じました。
子どもの頃に山という世界へ連れ出してもらった経験が、20年以上も経ってから急に人生を豊かにしてくれたのです。
たとえ今は渋い顔をして登っている子どもでも、親子登山という体験をしたことは確実に大きな財産となり、何十年後も経ってから、突如として人生を支えてくれるきっかけになるかもしれません。
雨に濡れたことも、お漏らししたことも、ぐずる娘と喧嘩をしたことも、命に関わる大失敗をせず無事に下山できたなら、どんな親子登山も大成功なのです。
まずは無理のない範囲からとにかく一歩、山へ足を踏み入れてみてください。その思い出が、これから紡がれる家族の歴史の中でどう育っていくのか、きっと楽しみになりますよ。
家族で楽しむレジャーやスポーツ、登山の万が一を支えてくれるのが、ヤマップグループの「外あそびレジャー保険」。個人やグループでの加入プランだけでなく、家族最大8人まで一律の保険料で補償の対象となる家族プランもご用意しています。
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家族と一緒のときも、一緒にいないときも、より安心して過ごすために。「外あそびレジャー保険」は、アクティブに毎日を過ごしたい家族のための、いざというときのお守りです。