登山とカメラ。一見異なるようで、実は深く結びついている世界。その両方に魅了された3人が一堂に会し、登山とカメラへのこだわりや、メーカーや機種ごとの長所短所などを忖度なしに徹底議論しました。
持ち運べる機材などの制約がある登山において、どのようにして最高の1枚を追い求めていくのか──。山での撮影に役立つ装備品や気になるカメラの持ち運び方なども教えていただきました。
*座談会の前編は『YAMAP MAGAZINE』、後編はカメラと写真のWebメディア『GOOPASS MAGAZINE』に掲載します。
2023.11.01
YAMAP MAGAZINE 編集部
登山で使えるカメラには、軽さ以外に、どのような操作性能が求められるのか。そして山での失敗を通して学んできたカメラの持ち運び方や扱い方の注意点について、座談会に参加して教えてくれたのは、次の御三方。
【井上秀兵さん(35)】
山のある人生の豊かさをテーマに撮影するフリーランスフォトグラファー
【横田裕市さん(38)】
国内外の有名コンテストで多数の入賞経験を誇る風景写真家
【原和也さん(30)】
カメラサブスク「GOOPASS」のスタッフで、毎週のように山に繰り出す登山愛好家
── まず、自己紹介とともに「私といえばこの1台!」というカメラを教えてください。
風景写真家の横田裕市さん(以下、横田):風景写真家の横田裕市と申します。普段はウェブや紙のメディアで、ツーリスト・観光系の仕事をメインに風景写真を撮影しています。
30代に入り、自分の風景写真の引き出しを増やすことと、運動も兼ねて登山を始めました。結果的に、平地では体験できない山ならではの風景も撮影できるようになり、登山そのものの楽しさも実感できるようになりました。
メインの機材は、ミラーレスになってから使っているSONYの「α7R IV」です。山に特化してはいませんが、出来上がりは素晴らしく、グリップしやすくて手に馴染みます。
軽さをとるか、持ちやすさや総合的な使いやすさをとるのか、というのは非常に悩ましいと思いながら、持ちやすい「α7R IV」をメインのカメラとして山に登っています。
レンズは、色んなレンジで撮りたいので、SONYのズームレンズ「FE 24-105mm F4 G OSS」です。
こだわりたいときは単焦点でじっくり撮りたいんですけど、登山ではあまり余裕がなく…。便利さに振り切って、広角から望遠までズームレンズに頼っている部分があります。
横田:ひと昔前のズームレンズは、便利さと引き換えにやや描写力に欠けるというイメージがあったんですけど、近年は進化がすごく、これだけのズーム機能があっても画質も良いのかという感動があります。
フリーランスフォトグラファーの井上秀兵さん(以下、井上):井上秀兵です。フリーランスフォトグラファーとして13年目のキャリアになります。現在は企業広報の撮影をはじめ、キャンプ場やアウトドアシーンに携わる撮影を中心に活動しています。
山の魅力を知ったのは2021年ごろで、YouTubeで配信されていた北アルプスの最奥部、天上の庭と言われる雲ノ平の映像を視聴したことがきっかけでした。そこから本格的に登山をはじめました。
井上:機材は「私の2台」になっちゃうんですけど、1台目はSONYの「α9 II」。α9 IIは物理ボタンが多い点とカメラの形状として手にフィットしている点が優れています。手袋をしながら撮影するときに役立つので、山の気温が低いときにも操作しやすくていいですね。
井上:レンズは、カールツァイスの「CONTAX(コンタックス) Planar T*50mm F1.4 MMJ」。
このレンズが昔から好きだったのと、柔らかい描写や青みのある絵になるのが気持ちよくて使っています。
井上:他社メーカーなどの規格の異なるレンズを装着できるようにするマウントアダプターはUrth(アース)のもの。この企業はサステナビリティ(持続可能性)に特化し、「購入金の一部で5本の木を植える」という考えがあります。デザインも素敵なのでアダプターはこれを使っています。
あとは、RICOHのハイエンドコンデジ「GR III 28mm」が2台目です。基本はこのセットで山に登っています。
GOOPASSの原和也さん(以下、原):GOOPASSの原和也です。コロナ禍がきっかけで登山をはじめました。学生のときに買ったAPS-Cの一眼レフをずっと寝かせていたんですけど、あらためて再開し、登山・カメラ歴がそれぞれ3年くらいになります。
私も2台体制で、1台はSIGMA(シグマ)「fp」という、山では仲間をなかなか見かけないモデル。カメラレンタル事業を行っている自社サービスでいろいろ試した末に、登山用カメラの最適解として、ここにたどり着きました。
レンズは同じくSIGMA「28-70mm F2.8 DG DN」を使っています。ボタン類がシンプルで、カラーモードも結構あるので、初心者が現像しないことを前提に使う分には使い勝手が良いのかなと思います。
画質の良さと、見た目の通りのコンパクトさを両立させているのが特徴で、ボディ単体ではコンデジ並みの370gしかありません。レンズと組み合わせても余裕で1kgを切るので、登山で重量を気にする人にとっては持ち出しやすいカメラだと思っています。
原:登山は被写体が色々あり、山頂全体や稜線を広く撮りたいときは28mmくらい欲しいし、富士山に寄って撮りたいときは70mmだとちょっと足りない…ということがあります。
正直、150mmや200mmも欲しいのですが、SIGMAのLマウント用交換レンズには高倍率ズームがないので、「28-70mm F2.8 DG DN」で撮っています。
原:もうひとつは、ドローンで世界シェアの大半を占めているDJIのアクションカメラ「Osmo Action 3」です。岩稜帯で両手が離せないときに臨場感のある動画を残したいと思い、買いました。マグネットマウントで縦にできたり、自撮り棒に移せたりと、使い勝手がよいので重宝しています。
── みなさん、撮影するのにお好きな山や山地はありますか?
横田:登った時の景観は大前提ですが、水のせせらぎの音や苔が好きなので、水の音が聞こえる山は常に「癒される」と思いながら登ってますね。
横田:若干ニッチな山なんですけど、福岡県の糸島にある二丈岳(711m)という山が好きです。里山チックなところもあって、そこの歴史がすごく感じられるような森があります。
あと、ベタですけど屋久島の森。屋久島といえば縄文杉が有名ですが、縄文杉まで行かなくても山の中や森の中で癒されます。
逆にハードさは山に求めていなくて、撮るものがあるうえで登りはしますけど、わざわざ自分を追い込むように行くことはしないです。
井上:好きな山と言われると、ないですね…。
といったら変な話ですけど。山域でいうと、黒部源流(鷲羽岳、水晶岳周辺)あたりは素敵だなって思うし、(長野にある日本百名山の)霧ヶ峰と美ヶ原とかの開けた土地も結構好きです。季節によっての見え方があって、一概に「この山が好き」というのがなかなか決めきれない。
ただ、北アルプスの八方尾根から登る唐松岳(2,695m)には何度も訪れて、四季の違いを体感しています。時期が違うと、同じ山でも新しい山だなって思うんですよね。
それと、ピークハントするよりも、山小屋の文化や山岳建築に興味があって、そこで働く人たちにフィーチャーして考えることが多いです。どちらかというと山そのものより、山の文化だったり歴史だったりが好きですね。
原:深い話のあとにミーハーで恐縮なんですけど…。富士山が好きで、見る場所によって手前の風景が街だったり、山脈の後ろに富士山が見えたり、富士山しか見えない場所があったり。
とくに雪が積もっている富士山は圧倒される部分があるので、気づくと写真を撮っている被写体の1つです。
原:もう1つは稜線で、次の山に連なる道が見えるというのは山の上でしか見えない景色だなと思っています。
原:一本道ってあんまりないですよね、普段生きている中に。そこに行くまでの道が見えていて、人もほとんどいなくて、「この道を歩いていくんだ」というところに感動する部分があるので、稜線や次の稜線につながる道が好きです。
── 三者三様の好きがあふれ出ていますね。日ごろ山に登る際、どのようなスタイルでカメラを持っていくのかを、教えていただけますか。
横田:私も普段は「α7R IV」と「α7R III」の2台体制なんですけど、胸の前にLOWEPRO(ロープロ)というカメラマン御用達ブランドのバッグを装着して登っています。
横田:カメラをワンタッチで脱着できる「Peak Design(ピークデザイン)・キャプチャー」というホルダーをバッグ横につけて、サブ機はその中に入れ、メインカメラをキャプチャーにつけています。
山でレンズ交換はあまりしないので、メインにズームの「FE 24-105mm F4 G OSS」を、サブに「FE 14mm F1.8 GM」を付けて、超広角と望遠を使い分けるスタイルにしています。
山のスケール感を表現したいときはサブを取り出して、それ以外はメインでサッと撮影しています。
キャプチャーってザックのショルダーストラップにつけて登る方が多いと思うんですけど、それだとカメラが重くなると肩が痛くなってしまって…。
左右のショルダーストラップに短いベルトをつけて、ザックの前に短いベルトをつけて、サブバッグの重さが両肩へ分散するように吊るしています。
「直下が見えなくなるので危ないんじゃないか」というのもあるんですけど、個人的にはそこをデメリットに感じたことはありません。
カメラの重さを両肩に分散させるのが、長時間登山をするうえで大事な部分かと思っています。
── 山でレンズ交換を避けるのは、内部にあるイメージセンサーにゴミが入るリスクがあるからですか?
横田:そうですね。山は風や砂塵もあるので、なるべくイメージセンサーを裸にしたくないというのがあります。
落下リスクもあり、レンズを増やすことはリスクも増やすことになると思います。あと、山でカメラを使うならレンズのプロテクター(保護フィルター)はあった方がいいですね。
軽い装備で里山へ行ったときに、ストラップ斜め掛けで登っていたことがあったんですよ。下山中に滑ってカメラが砂利に当たり、プロテクターが割れてしまい…。
いつ何時岩に当たったりするかわからないので、プロテクターはあった方がいいんじゃないかと思います。
井上:山って岩場が尖っていて、街中で落とすよりダメージ大きいんですよね。僕もレンズ交換をしたくないから2台体制です。
昔の一眼レフカメラはプリズムファインダーでゴミがあまり気にならなかったんですけど、今のミラーレス一眼カメラはレンズ交換のときにセンサーが剝きだしになっちゃうから、レンズ交換をやりたくないっていうのもあります。
でも、一部の上位機種や最近のモデルは電源をオフにするとシャッター幕が下りて、センサーを保護できるようになりました。ちなみに、私の「SONY α9Ⅱ」も電源を切ったらシャッター幕が下りるんですよ!
横田:幕があるといいですね。私の「SONY α7RⅣ」にはありません。
井上:幕自体が壊れることもあるらしいんですけど、「SONY α9Ⅱ」は今のところ壊れていません。レンズ交換をするなら、幕を閉じてからやるようにはしています。
僕も昔、PAAGOWORKS(パーゴワークス)のカメラバッグ「フォーカス」を胸の前に付けてたんですけど、鎖場を通ることが多く、下が見えづらくて結局キャプチャー(左側)にしました。重さが左に偏るのが嫌なので、右側には水を入れています。
あと余談ですが、お腹に汗がたまるので汗冷えして少し苦手でした。
ただ、ザックの種類によってはキャプチャーが干渉して痛くなるので、それをどうしようかと悩んでいるところではあります。今の装備はベストではないけど、ベター。
── Peak Design(ピークデザイン)のキャプチャー以外に、「これだな」と思うものはないような気がします。
井上:競合他社はありますが、Peak Design(ピークデザイン)はキャプチャーにロックがかけられる点が安全だと思います。
でも、キャプチャーだと雨が降ったときに機材をしまわないといけないんですよね。
横田:さきほど私が名前を出したLOWEPROのバッグには防水カバーが付いているんですけど、防水スプレーをするだけでも強いんです。代わりにカメラに防水カバーを被せてあげる使い方もできるし、けっこう使いやすいですね。
── 正規の使い方じゃないところにアイデアを出してるんですね。
原:私は右肩にアクションカメラ、左肩にキャプチャーで一眼カメラのスタイルです。岩場とかは全然気にしないですね。でも、難易度が高いところだとカメラが当たることがあったので、しまった方がいいかなとは思います。
荷物をデポ(※)してカメラだけを持ってきたい、となったときにカメラを首へ掛けるので、あえてストラップは残しています。
※ 頂上などへ向かう際、不要な装備をテントや小屋に置いていくこと
井上:それは僕も同じですね。荷物をデポしたときのためにストラップは別で持ってますが、山の利便性関係なく、僕が愛用する革のストラップを持っていきます。
原:ストラップも簡単に伸び縮みするのが便利かなって思います。使っているのはPeak Design(ピークデザイン)です。
井上:Peak Design(ピークデザイン)は長さを変えるシステムが他のメーカーに比べて強いから、多分そのへんが山と相性が良いんでしょうね。
── そのほかに山へ持っていくアクセサリーはありますか?
井上:OD缶にアタッチメントできるミニ三脚「PROTOTYPE OPTION・prop02」がとくに重宝しています。30gほどですけど、prop02は重量と比例して雲台ネジが強いので、ミラーレス機であればしっかり固定してくれます。RICOHのGRⅢを載せてよく撮影しています。
井上:prop02の良いところは、小さいのでクッカーに入るんですよね。星を撮るときに山小屋のテーブルに立てたり、岩場でも水平のところを探したり、特に仲間との記念写真を撮る際に便利なので必ず持っていきます。
井上:あとTokyo grapherのOPFフィルター。特殊ガラスで光の色調をコントロールして、写真現像で得られるようなフィルム写真の雰囲気を未編集の状態でも出せるものです。
井上:夏の緑を出したいときは、OPF-550。海とか空の青さを出したいときはOPF-480、秋だとOPF-650のように自由に使い分けることで効果が出るので、手軽に写真を楽しみたい方をはじめプロフェッショナルの方々にも有効なフィルターです。
── それらはLightroomでは出せないのでしょうか。
井上:数値を理解すれば「それなり」には出せるんですけど、やはり光そのものの色味やフレアの度合いはフィルターワークでしか出せない味があります。
あと写真が主軸ではない方はカメラで撮影した写真をそのままスマホに転送する方が多いので、撮って出しの状態で良い味を出せる点でも有効だと感じています。
── ちなみに、SDカードはどれくらい持っていくのでしょうか。
横田:普段SDカードの替えは持って行かないです。私の場合は2台ともダブルスロットで4枚が中に入ってるので、SDがフルになって困った経験はありません。
井上:私の場合、一番大きいサイズのRAW+jpegで撮影を行なうのですが、毎回フォーマットしたカードをセットしているので、今まで一度もカード不足に陥ったことはありません。
趣味で撮影をしている方の中には、カメラを購入してからSDカードを交換せず写真データを累積している方も多いと聞いているので、バックアップも加味して32~64GB程度のカードを数枚購入して、山用と日常用で分けた方が良いのかもしれないですね。
原:1回の登山で200枚くらいしか撮らないので、私は64GBで余裕です。でも動画機は64GBだとちょっと足りないなと感じます。
── 登山の前の準備や登っているときに注意していること、お守り的に毎回持っているものなどがあればお伺いできたらと思います。
横田:些細なことですけど、遭難とか緊急時用のホイッスル「3D WHISTLE 2g」。めちゃくちゃ小さいですけど、少ない息の量で大きい音が出るんですよ。サコッシュの中に仕込んでいますね。
井上:僕は登山計画を綿密にやります。おおよそ「ここで何分の休みを取って」とか。コースタイムは標準で考えてるんですけど、撮影時間や天候条件を加味しても、実際は遅く着くことが多いので気をつけています。
YAMAPで登山計画を事前に作成しておくことや山域のマップをダウンロードしておくことは鉄則だと感じています。登山口の駐車場付近は電波がないことや微弱な場合があるので、「事前に」というのが重要ですね。
あと、COCOHELI(ココヘリ)という会員証兼のGPSをつけています。山で遭難してしまい、ヘリで捜索をするとなったときに、おおよその位置を特定できて、年間最大550万円までの捜索をカバー、そして何より自宅で待つ人にとって精神的、経済的負担をかけないための保険です。お守りみたいになっていますね。
横田:私も最近ココヘリを持つようになりました。YAMAPの「みまもり機能」も使っています。1回スマホの電源が落ちて、妻がまったく応答がなくて心配したことがありました。そうなるとやっぱりバッテリーが必要ですよね。
──ちなみに、YAMAPを起動しつつ、スマホのカメラと併用すると、バッテリーの減りはさらに早くなりますが、モバイルバッテリーはどうされていますか。
横田:私の場合は念のため撮影用スマホと、YAMAP起動用スマホは別で2台体制で利用しています。さらにモバイルバッテリーを2タイプ持ってます。
原:バッテリーは基本持っていきます。1回やらかした話で言うと、スマホがType-Cの充電なんですけど、持ってきたケーブルがType-A…。下山したタイミングで残り5%、みたいな危ない経験をしたので、そういうことがないように気をつけますね。
── バッテリーだけじゃなくて、ケーブルも大事ってことですね。
原:そういう意味では「SIGMA fp」も「Osmo Action 3」もType-Cなので、テント泊のときに楽ですね。でもそうすると10000mAh(一般的なスマートフォンでフル充電2回強)だとギリギリですよなので、20000mAhぐらいのものを探したんですが、単純に厚さが2倍になるっていう……。
あと、僕は以前、両神山(1,723m)の八丁尾根コースへ行ったときに、買って1週間の携帯を落として壊したことがありました。そのあとに携帯の落下を防止するためのバックアップシステムを入手しました。ワイヤーで伸ばせるタイプです。
── これから登山でカメラを始めたい方に向けて、どういう点を注意して撮影を楽しんでもらいたいですか。
横田:自分の戒めですけど、歩きながら撮るのはやめましょう。足元が不安定で転倒とかにつながるので、一呼吸置くというか、止まって撮りましょう。
── 山での一般的な装備も伺いたいと思うのですが、絶対持っていってるものがあれば教えてください。
横田:王道ですけど、トレッキングポール。Helinox(ヘリノックス)というブランドの物で、購入当時はアウトドア大手のモンベルさんで買える一番高級なポールでした。(現在は取扱い無し)。一時期ポールを使わないで登っていたんですけど、去年の秋に下山中いきなり膝が痛くなってからはポール使って降ります。医者にも言われました。「膝は消耗品だからね」って。
── 登りより下山に使うことが多いのですか?
横田:僕は下山ですね。使う人は上りも下りも使いますけど、下山のときは降りている勢いとか、負荷が全部脚へ行くので。ポールで体への負担を減らしてあげるのが良いかと思います。
Helinoxは突いたときに、ショックを軽減する遊びがちょっとあるんですよ。だから全然手に来る負担が違うんです。安いのは遊びが少なくて、振動の負担がそのまま手首に伝わるんです。
井上:膝でいうと、僕は膝サポーターを必ず持っていきます。降りるときに振動が膝にくるので、半月板を支えるためにつけています。
原:私も膝の話ですけど、丹沢の塔ノ岳を降りるタイミングで足を痛めてしまったことがあります……。「バカ尾根」って言われるくらい、長いじゃないですか。そのときに心優しいお姉さんが飲み薬と湿布とロキソニンゲルをくれて、これはもう必携だなと思い常備しています。
あと、山を始めた当時はライトを軽視してたんですけど、足が痛くて歩けなくなり日が暮れちゃったので、ヘッドライトは必ず携帯するようにしてます。
── 皆さん、失敗から学んでらっしゃることが多分にありますね。
井上:僕も日帰りでもライトは2個常備するようにしています。
横田:初見の山でナイトハイクはあまりやらないようにしています。
井上:ルートは必ず調べますね。YouTubeとかで、コースの見通しだけはインプットしておきます。
以前、五竜山荘から五竜岳の頂上へ行くときに細い道とか危ない所もあったんですけど、ナイトハイクしたときはちょっと怖かったですね。下が見えない分、日が昇ってくる前は怖くなったんですけど、そこからちゃんと調べようと思いました。
横田:夜、1人で登ってるときはiPhoneから音楽を流しています。僕はあまり熊鈴を使わない人間なので、動物対策もして、自分のテンションも上げて、と。
原:熊鈴は持ってますが、あまり音が鳴らないようにしてます。1人のときは不安なので鳴るようにしてます。
あと、マニアックな道は通らない。マニアックな道じゃなければ、ある程度道がしっかりしていることが多いので、道迷いは少ないのかなと思いますね。ライトを点けて、こまめにYAMAPを見ながら道迷いをしていないか確かめる、でしょうか。
井上:注意深くルートを確認しながら、YAMAPの道迷いアラートを設定しておくことが大切だと思います。先日、日中では絶対間違えないような分岐を間違えて少し焦りました。一応熊スプレーを持っていますけど、「何月何日に熊が出ました」みたいな看板に自分のコースが含まれていたら、コースを変えます。
横田:危険を感じるようなところへは行かないのが大事ですよね。個人的に九州の山しかナイトハイクはしたくない。撮りたいときはなるべく山小屋に泊まると精神的な負担が全然違うと思います。
── では最後に。どのような方に登山でレンズ交換式の一眼カメラをおすすめできるでしょうか。
横田:端的にいうとスマホの画に飽きた人。写真がちょっと好きになってきたなって感じた人は、そのうちその臨界点があると思うんです。そういう人は「カメラを持って行ってみようかな」って思うんですよね。
この機会に山と写真の魅力を再発見し、一眼カメラでの撮影に挑戦してみてはいかがでしょうか。新しい感動がきっと見つかるはずです。
軽さ、耐久性、画質、操作性……。
「軽さこそ正義」といわれる登山において、多くの要素を鑑みながら3人が山機材の最適解を探していきます。