登山にはトレッキングパンツを! 賢い選び方、街着との違いを解説

山へ行くなら、普段使いの街着のズボンではなく「トレッキングパンツ」がおすすめです。 快適な足さばきができるものを正しく選ぶことで、快適かつ安全な登山を楽しむことができます。街着とは違う、トレッキングパンツならではの性能や機能、基本の種類と選び方についてお伝えします。

2023.12.01

YAMAP MAGAZINE 編集部

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街着とはここが違う! トレッキングパンツ4つのポイント

トレッキングパンツには、悪天候に耐えうる防風性や撥水性、動きやすさ、そして耐久性など、多くの機能が求められます。そのどれもが普段の街着として履いてるパンツには通常備わっていない機能です。

もし、街着のパンツで山を歩いてみたら……? まず、汗をかいても水分が外に放出されにくいため、服が濡れて汗冷えをしやすくなります。歩きにくさが疲れや転倒のもととなり、ケガをしてしまうかもしれません。自分の身を守るためにも、トレッキングパンツの性能をしっかりと押さえておきましょう。

① 伸縮性|行動時に動きやすい

登山では、岩場などで足を大きく上げることが多々あります。そのためトレッキングパンツには伸縮性に富んだ素材が使われており、動きやすく快適です。ストレッチ性の高い素材がパンツ全体への圧力を均一に分散してくれるので、足を動かしやすいのです。

また、ひざを曲げやすいように立体裁断されており、足を動かしても引っ掛かりがありません。街着のパンツは伸縮性に乏しく可動域が狭いものも多いため、岩場などで足を上げた際にパンツが突っ張り、転倒する恐れがあります。足さばきがよく動きやすいトレッキングパンツは、転倒などや引っかかりなどのリスクを低減できるのです。

② 吸汗速乾性|汗水を吸収し速やかに蒸発させる

行動中は、季節を問わず汗をかきます。汗でパンツが濡れると足が動かしにくくなり、休憩時などに気化熱で汗冷えを起こすことも……。ジーパンなどに使われる綿素材は吸水性に優れていますが、速乾性に劣るため汗冷えを起こしやすく、快適さに欠けます。

トレッキングパンツの表面は通気性に優れ、裏側には吸汗速乾性素材が使われています。そのため、長時間の登山活動でもドライで快適な状態を保つことができます。さらに、蒸れにくいことで登山のパフォーマンスも上がるのです。

③ 撥水性|多少の水がかかっても水を吸収しない

山では突然の雨や霧などで、思いがけず衣服を濡らしてしまうことがあります。早朝などの行動中に、草木の朝露でいつのまにかパンツの裾がびっしょり、なんてこともあるでしょう。

衣服を濡らす前にレインウェアを着られればよいのですが、上着はともかくレインパンツは履きにくい上、靴底でズボンの内面が汚れ、不快な思いをすることがあります。そのようなときに、ちょっとした水分なら弾いてくれる撥水機能がパンツに備わっていれば安心です。

④ 耐久性|服の擦れや引っ搔きに強い

山岳地帯では、不整地や岩場などでの摩擦や擦り切れのほか、枝や岩に引っかかってしまうことも珍しくありません。そのためトレッキングパンツには、強度が高く耐久性に優れていることが求められます。

たとえば、膝やお尻などの曲げ伸ばしによる摩耗や、岩場などでのスレにも対応できること。こうしたニーズを満たす素材として、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維、コットンやウールなどの天然素材、またはそれらを組み合わせたハイブリッド素材などが使われているのが特徴です。

また、多くのトレッキングパンツでは、縫い目の強度を高めるために「ダブルステッチ」と呼ばれる二重縫いを採用しています。

実はいろいろ…トレッキングパンツの種類と選び方

トレッキングパンツを選ぶ際には、機能性や素材、サイズ、季節など、さまざまな要素を考慮する必要があり、いろんな種類があって迷うことも多いはず。快適なトレッキングパンツの種類と選び方について紹介します。

① 基本の3タイプを知る

トレッキングパンツの主なタイプは次のとおり。はじめての1本には、ロングパンツの中厚手素材がおすすめ。オールシーズン使えるので汎用性が高く、とても便利です。季節に合わせて薄手や厚手のものなど、徐々に揃えていきましょう。

⚫︎ ロングパンツ
足首丈の長いパンツ。耐久性で選ぶなら、膝の部分が立体裁断になっていたり、二重生地になっていたりするものを選びましょう。ポケットの位置や数も快適さの要となるため、自分の好みで選びましょう。

⚫︎ ショートパンツ
ひざ丈までのショートパンツは足さばきが良く、パンツ内に熱気がこもらないため、夏山におすすめ。素足のまま履くと、紫外線や虫、草木などでケガをすることがあるため、タイツとの併用が安心です。

⚫︎ コンバーチブルパンツタイプ
ひざ下あたりから切り離せ、長ズボンにも半ズボンにもなるパンツ。ただし、ジッパーがあるのでやや重く、歩く際に肌触りや膝の引っかかりが気になることもあるので、試着して確認することが大事です。

② 素材に注目する

吸汗速乾性に優れ、伸縮性がある「ポリエチレン素材」、軽量で防風性、耐久性に長けた「ナイロン素材」など、季節やその時々の登山シーンに合った素材選びが、快適な登山の鍵となります。

夏用は、薄手で吸汗速乾性と紫外線対策に優れているものを。冬用は、吸汗速乾性かつ防風性のある暖かいい厚手のものを選ぶとよいでしょう。ただし、暖かいパンツを着用するときには汗冷えに気をつけて。保温性が高いパンツを履いていると、その分汗をかきやすくなるので、天候や気温なども考慮してパンツを選ぶことをおすすめします。

③ 便利機能やポケットにも着目を

引用元:YAMAP STORE

近年はさまざまな便利機能を兼ね備えた商品が増えています。立体裁断で動きがより自由になるもの。フィット性があって足元がもたつかないもの。足首を絞って小石や水分の侵入を防ぐドローコード(留め具付きのヒモ)が付いているもの。それから、蒸れを逃がすベンチレーション(通風機能)が付いているものなどなど。自分の好みや登山スタイルにより、相性のよいパンツを選びたいところです。

また、行動中は両手を開ける必要があるので、ポケットの数や大きさも重要です。登る、またぐ、座る、立ち上がるなど、足を大きく動かすことが多い登山シーンでは、物が落ちにくいファスナー付きがおすすめ。さらに、パンツに小物類を入れても足を動かした際の突っ張り感や不快感を感じなくて済むよう、収納力やポケットの位置に工夫を凝らしているものも、使い勝手がよいでしょう。

自分にぴったりのトレッキングパンツを見つけよう

山の厳しい環境を想定してつくられたがゆえに、高機能で耐久性に優れているトレッキングパンツ。普段の街着パンツに比べるとやや値が張るかもしれませんが、最近は普段使いも可能なデザイン性が高いものも登場しています。動きやすく快適な登山用パンツは、キャンプや屋外の活動など、アウトドアシーンでも活用できますね。

自分にぴったりのトレッキングパンツを見つけて、お気に入りの山へ出かけてみてください。

執筆・素材協力=上川菜摘、野々下桂子

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。