年末年始の恒例になりつつある干支の山紹介。2024年は辰年です。辰、龍、竜となれば、いくつか頭に浮かぶのではないでしょうか。
23年の兎の山は探すのに苦労しましたが、24年の辰(龍・竜)は逆に絞り込むのに苦労しました。YAMAPの登山者数でみた「りゅう」の山ベスト3から、山歩向きな低山、干支をバトンタッチする山まで、全国各地の「りゅう」の山をご紹介します。登り納め、登り初めの参考にどうぞ。
2023.12.28
米村 奈穂
フリーライター
山名に「りゅう」のつく山で、YAMAPのユーザーに最も登られている山はどこでしょうか。2023年にYAMAPの活動日記にあげられた数を集計してみると、以下のようなベスト3がそろいました。まずはその三座をご紹介します。
鈴鹿セブンマウンテンの一座であり、三重県いなべ市と滋賀県東近江市の県境にそびえる竜ヶ岳(1099m)。山頂周辺には広大な笹原が広がり、360度の展望庭園歩きを楽しめます。
山名は雨をもたらす龍神を祀ることに由来し、雨乞い登拝が行われていたといいます。5月初旬から中旬にかけて満開となるシロヤシオの様子は白い羊の群れにたとえられ、秋には紅葉し赤い羊の群れとなります。
山麓には宇賀渓があり、滝巡りも楽しめます。代表的なルートは、遠足尾根から登り金山尾根を下りる周回ルート。登山口には「竜の雫」と呼ばれる水場もあります。冬季は雪も積もり、遮るもののない山頂周辺では強風に吹かれることも。万全な装備で望みましょう。
山梨百名山でもある竜ヶ岳(1,485m)は、富士五湖のひとつ、本栖湖が登山口。本栖湖は千円札の裏に描かれた「逆さ富士」が見られる湖です。
竜ヶ岳山頂では目の前に大きな富士山を望み、お正月登山にぴったりの風光明媚な山です。ちょうど年末年始は、富士山の山頂から日が昇る「ダイヤモンド富士」を拝めるタイミング。登るなら冬の間です。
竜ヶ岳には富士山にまつわる伝説が残っています。本栖湖から竜が現れ、村人に富士山の噴火を予言した後、小富士と呼ばれる山に消えました。おかげで村人は難を逃れ、山に龍神を祀るようになり、その山を竜ヶ岳と呼ぶようになったといいます。
ほかにも、富士山の噴火の際、本栖湖に溶岩が流れ、湖に棲んでいた竜が竜ヶ岳に逃げたという伝説もあります。
主なルートとしては、本栖湖キャンプ場から富士山が望める石仏ルートを登り、樹林帯の中を湖畔ルートへ下る周回ルートがあります。
竜王山(604m)と鵜冠山(とさかやま、490m)などからなる金勝(こんぜ)アルプスは、琵琶湖の南東、滋賀県の大津市と栗東(りっとう)市にまたがるように連なります。
金勝アルプスは、低山ながら耳岩や天狗岩などの奇岩の岩登りを楽しめ、岩の上からは琵琶湖や比良山系などの絶景を望むことができます。
山中には、約6m×4mの花崗岩に新羅系渡来人が彫ったと伝わる巨大な磨崖仏「狛坂(こまさか)磨崖仏」などの史跡も点在。アスレチック的な山登りと大展望に歴史探索と、表情豊かな楽しみのある人気の山です。
竜王山の山頂には山麓にある大野神社の本神である天之水分神(あまのみくまりのかみ)が祀られています。
天之水分神は水の分配を司る神様。竜は水神であることから「竜王山」と呼ばれるようになったといわれています。上桐生から登り、鵜冠山、天狗岩を経て、竜王山へはピストンで戻るのが主なルートです。
お正月に寝て飲んで食べてばかりのなまった体を慣らすには、低山がいちばん!ここでは、標高300m以下の山をご紹介します。
栃木市、佐野市にまたがるように南北約3.5kmに連なる三毳山(みかもやま、229m)は万葉集にも詠まれた山で、その最高峰は青竜ヶ岳と呼ばれています。
三毳山の一部は公園になっていて、四季折々の花を楽しめます。3月中旬〜下旬にかけては、青竜ヶ岳の北側でカタクリの大群落を見ることができます。晴れた日の富士見台からは、広大な関東平野の先に関東富士見百景に選ばれた富士山の姿が見えることも。
公園内の車道には乗合バスのフラワートレインが行き来していて、3カ所ある公園の各入り口をつないでいます。このバスを利用して登山口に戻ることもできます。
龍崖山(りゅうがいさん、246m)は、西隣の柏木山(303m)、入間川を挟んで北にそびえる多峯主山(とうのすやま、270m)とともに、飯能三山と呼ばれています。山頂は大河原城の跡で、山名は城を取り囲むその地形から「要害」が訛ったものと伝わります。
山頂からは望めるのは、奥武蔵の山々。登山道や道標は地元の方によって丁寧に整備されているので、初心者でも安心です。新年は、三社参りならぬ飯能三山参りをしてみませんか?
山城跡である龍ノ口山(256m)は、眼下に岡山市街、遠くに瀬戸内海を一望できる岡山市民いこいの山です。主なルートは、龍ノ口グリーンシャワーの森から登り、龍ノ口八幡宮を経て山頂へ向かうもの。
龍ノ口八幡宮は奈良時代にはすでに社があったとされ、江戸初期には池田藩が崇敬し、本殿が再興、新築されました。当時山麓は池田藩の狩猟場となっており、ある時藩主が狩の帰りに旭川を下っていた際、大蛇に道を阻まれ、退けば八幡宮の守護神として祀ることを告げると、龍ノ口山に姿を消したという伝説も残っています。
現在、龍ノ口八幡宮は学問の神様として広く知られ、受験シーズンには多くの受験生が山を訪れています。
中国百名山の一座である竜王山(613m)。360度大展望の山頂からは、眼下に日本海を、晴れていれば瀬戸内海や九州を望むことができます。
代表的なルートは、南東の深坂自然の森から竜王山、鋤先山(すきさきやま)へ周回するルート。年末年始はお参りも兼ねて、JR吉見駅を出発し、山麓の龍王神社と山腹の上宮に参拝し、ピストンするのもおすすめです。もしくは鋤先山まで縦走して、福江駅へ下山することもできますが、道はやや荒れています。
登り納め、登り初めにガッツリと歩きたい人は、北浦スカイラインという全長約18kmの縦走ルートにチャレンジしてみましょう。
身延山地の竜爪山(りゅうそうざん)は、北の薬師岳(1,051m)と南の文殊岳(1,041m)からなる双耳峰。駿府城の鬼門の方角にあったため、徳川家康も崇拝したとも伝わり、古くから信仰の対象として登拝されていた山です。
山名の由来には、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征する際に山から時雨が降ってきて衣が濡れたことから「時雨匝山(じそうざん)」と呼ばれるようになり、それが訛ったという説や、竜が山に降りてきて岩や木々に爪痕を残したという説など、諸説あります。
薬師岳の北側にはスギの巨木に囲まれた穂積神社があり、竜爪権現が祀られています。縦走路は東海自然歩道。文殊岳の山頂からは、三保の松原や駿河湾、伊豆半島の山並み、南アルプスの山々、そして富士山を望むことができます。
熊本県八代市の南北に連なる竜峰山(517m)。最高峰は竜峰山の北側にある竜ヶ峰(541m)です。この山には昔、隠れ蓑を使っていたずらをする天狗が棲んでいて、彦一という男がとんちで隠れ蓑を奪うという民話が残っています。
二つの峰をつなぐ稜線では、侵食された石灰岩のカルスト地形が続き、まるで竜の背中を歩いているような感覚に。竜ヶ峰の山頂からは眼下に八代平野、遠くに雲仙普賢岳を望めます。
この道をさらに南の八竜山(498m)からつなぎ、八竜山、竜峰山、竜ケ峰と3つの「竜」のつく山をめぐる「やっちろドラゴントレイル」というトレイルランニングの大会も開催されています。
石川県金沢市内にある卯辰山(うたつやま、141m)は、山全体が公園として整備されています。複数の別名があり、「臥竜山」とも呼ばれています。
金沢城を見下ろせる場所にあることから、江戸時代には軍事的に重要な山として位置付けられ、鉄砲を撃つことや幕を張ることなどが禁止されていたこともありました。
江戸時代末期から福祉施設や娯楽施設などの開発が始まり、明治時代にも引き続き一般市民の憩いの場としての整備が進んで、山麓一帯が賑わったといいます。見晴らし台や望湖台からは、金沢市街地や遠くに日本海も望むことができます。
下山後は卯辰三社の愛宕神社、卯辰山天満宮、豊国神社で三社参りもできます。東茶屋街の散策ついでに訪れたい山歩山です。
2022年末にもYAMAP MAGAZINEで紹介した干支の山。静岡県の粟ケ岳(531m)山頂に毎年お目見えするジャンボ干支。2024年の干支は辰ということで、いつもにまして迫力満点のジャンボ干支が登場です。
粟ヶ岳山頂の休憩所「かっぽしテラス」前に設置されるジャンボ干支は、世界農業遺産認定の「茶草場農法」に使用されるススキやササなどの茶草でつくられています。テラスからは広大な茶畑や富士山も望めます。
YAMAPの地図アプリには、指定されたランドマークを通過するとデジタルバッジがもらえるバッジ機能があります。昨年に引き続き、登り納め2023と登り初め2024の2種類の年末年始限定バッジを追加しました。それぞれ年末と年始の期間に山に登り、該当の活動日記を公開した方が対象となります。年末年始は山に登って、限定バッジをゲットしませんか?
期間や獲得の条件など、詳しい情報は以下をご覧ください。
※どの山頂ランドマークを通過してもバッジの獲得対象になります。人の多い人気の山でなくても獲得できるので、ぜひ近場の低山などにも登ってみてください。
トップ画像:ichi-rokuさんの活動日記より